椎骨動脈解離で入院して No.12|手術を待ちながら、何をして過ごせばいいんだろう
※この記事は回想録です。
15年ほど前、卵巣嚢腫で片方の卵巣を摘出する手術を受けたことがある。
その頃はWi-Fiもなかったし、当然スマホもなかった。
入院中にできることといえば、本を読むか、テレビを見るくらい。
私は病院の売店で『ダ・ヴィンチ・コード』上中下巻を買い、最初の2日間で読破した。
とはいえ、そのときは全部で5日間ほどの短い入院だった。
手術後はもちろん痛かったし、麻酔から覚めたあとの喉の渇きも辛かった。
それでも、今回の入院とはまるで違った。
今回は、
全く違う。
めくるめくドラマティックな出来事が、私の気分を上げたり下げたりする。
そのくせ、
時間だけは無限にある。
カテーテル手術が決まる前までは、
「せっかくこんなに時間があるんだから」
と参考書を開いたこともあった。
退院したら何をしよう。
仕事に戻ったらどうしよう。
そんなことも考えていた。
でも、手術が決まってからは変わった。
もしかしたら、
術後は勉強どころではなくなるかもしれない。
そう考えたら、
参考書を開く気もなくなった。
それどころか、
これが最後になるかもしれない。
そんなことまで考えて、
仲の良い友人や知人に電話をした。
特別な話をしたかったわけではない。
ただ声を聞いて、
どうでもいい話をして、
気を紛らわせたかった。
それでも手術の日まで、
時間は余るほどある。
長期入院となると、スマホやWi-Fiには本当に助けられた。
動画を見たり、
LINEで電話をしたり、
ネットで買い物をしたり。
後頭部の痛みに耐えられなくなって、枕までネットで買って病院へ送ってもらった。
15年前の入院とは、ずいぶん違う。
便利な時代になったものだ。
そして入院が長くなってくると、
まったく別の問題も発生する。
白髪である。
髪を少し茶色くカラーしていた私の頭は、
時間の経過とともに、
見事なプリンになっていた。
しかも生え際には、
「こんなにありましたっけ?」
と誰かに確認したくなるほどの白髪。
もう、
本当にやばい。
ついこの間まで、
「手術で死んでしまったらどうしよう」
と考えていた人間が、
鏡を見ながら、
「白髪やばい」
とも思っている。
我ながら忙しい。
でも今振り返ると、
それでよかったのかもしれない。
ずっと死ぬことだけを考えていたら、
きっと心がもたなかった。
友人に電話する。
動画を見る。
枕を買う。
白髪に驚く。
そんな、どうでもいいような日常が、
手術を待つ私を、
なんとか普通の世界につなぎ止めてくれていた。
