椎骨動脈解離で入院して No.13|「麻痺ないよ!」手術を終えて、ようやく退院へ
※この記事は回想録です。
私は2020年、43歳のときに左椎骨動脈解離と診断され、入院した。
一度は、
「次の検査結果が良ければ退院できますよ」
と言われた。
ところが、その検査で血管の状態に変化が見つかり、カテーテル手術を受けることになった。
手術前には、命に関わることや、重い後遺症が残る可能性についても説明を受けた。
怖い。
ものすごく怖い。
それでも最後には、
もう先生に任せるしかない。
まな板の鯛よろしく、すべてお任せした。
手術当日。
同室のマダムたちから熱烈なエールをいただきながら、オペ室へ向かった。
中に入ると、
我が家のテレビの10倍くらいありそうなモニターがいくつも並んでいる。
まるでSF映画の世界。
「すごいなぁ」
なんて思っていたのも束の間、
あっという間に意識がなくなった。
次に覚えているのは、
「はい、終わりましたよ。部屋に帰りましょう」
という主治医の先生の声だった。
うっすらと意識が戻った私が、
真っ先にしたこと。
手と足の先を動かす。
麻酔がまだ残っていて感覚は鈍い。
でも、
動く。
手が動く。
足も動く。
動く!!!
少なくともそのとき、自分でわかるような麻痺はなかった。
嬉しかった。
本当に嬉しかった。
「先生!ありがとう!」
「麻痺ないよ!」
そしてなぜか、
「私より長生きしてね!」
みたいな意味不明なことまで叫びながら、私は病室へ運ばれていった。
先生も困っただろう。
その後、ひどい眩暈に襲われ、また意識が遠のいた。
目の前で高速の印刷機がフル回転しているような感覚。
手術が終わったからといって、
すぐに「元通り」というわけではなかった。
気管挿管の影響で、喉は荒れて声がほとんど出ない。
病室へ戻ると、隣のマダムが、
「良かったね〜」
と声をかけてくれた。
返事をしたい。
でも、
声が出ない。
尿道にはカテーテルが入っていて、動くと痛い。
カテーテル手術は鼠径部の動脈から行われた。
右の鼠径部には厚いコットンのようなものが当てられ、しっかり圧迫されていた。
そこも痛かった。
帰宅してから大腿部まで広がった皮下出血に気づいたときには、
「え、大丈夫なの、これ?」
と血の気が引いた。
入院中は、
死ぬかもしれない。
麻痺が残るかもしれない。
手術は大丈夫だろうか。
そんな大きなことばかり心配していた。
でも手術が終われば、
声が出ない。
カテーテルが痛い。
足がすごい色になっている。
そんな現実的な問題が次々やってくる。
それでも、
手も動く。
足も動く。
私は、生きている。
そして手術から約1週間後。
ようやく、
本当に退院できることになった。
あれほど、
「もう家に帰りたい」
と思っていたのに。
いざ退院が近づくと、
なんだか寂しい。
先生や看護師さん。
リハビリの先生。
掃除のおじさん。
そして同室のマダムたち。
長い時間を過ごした病室。
あんなに出たかった場所なのに、
離れるとなると寂しくなるなんて。
入院した日の私には、
想像もできなかっただろう。
でも、
今度こそ本当に帰る。
長かった入院生活が、
ようやく終わろうとしていた。
