椎骨動脈解離で入院して No.4|死ぬ心配の次にやってきた、お金の心配
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入院してしばらくは、「死ぬかもしれない」ということばかり考えていた。
掃除のおじさんの
「みーんな退院してった」
という言葉に救われて、ようやく、
「私も家に帰れるかもしれない」
と思えるようになった。
そうすると、人間とは現金なものである。
次に気になり始めたのは、
お金だった。
私は特別手厚い医療保険に入っていたわけではない。
医療事務として働いていたこともあり、高額な医療費については公的な制度があることを知っていたし、それまでは大きく医療のお世話になることもなかった。
だから、民間の医療保険について深く考えたこともなかった。
ところが、自分が長期入院する側になってみると、
「医療費」以外にもお金がかかる。
食事代。
病衣やタオルなどのアメニティ代。
そして、差額ベッド代。
特に私がすっかり忘れていたのが、差額ベッド代だった。
私が勤務していた病院では差額ベッド代を取っていなかったため、その感覚がすっぽり抜け落ちていた。
今回、私は絶対安静だったこともあり、看護室から近い部屋に入れてもらっていた。
その部屋が、1日8,300円。
30日なら、およそ25万円。
……高い。
しかも、1泊いくらではない。
「1日当たり」だ。
そしてもう一つ。
入院が月をまたいだ。
医療費について知識があるつもりだった私でも、実際に自分が支払う側になると、
「あ、そうか」
と思うことがいくつもあった。
とうとう私は、主治医の先生に恥を忍んでお願いした。
「差額ベッド代のかからない部屋へ移らせてください」
先生からは、
「今が一番危ない時期なので、すぐに大部屋は難しいけれど、相談してください」
という話をしてもらった。
病気になったら、身体のことだけ考えていればいい。
そんなわけにはいかない。
仕事を休んでいる間の収入はどうなるのか。
入院費はいくらになるのか。
退院するまでに、あといくら必要なのか。
命の心配をしていたはずなのに、その横では現実のお金の心配もしなくてはいけない。
でも今思えば、
「入院費、大丈夫かな」
と考えられるようになったこと自体、少しだけ私が冷静さを取り戻していた証拠だったのかもしれない。
死ぬことしか考えられなかった私が、
退院したあとの生活のことを考え始めていたのだから。
