椎骨動脈解離で入院して No.8|「シャワーを浴びたい!」それだけで世界が変わった

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「もう帰りたい。猫が恋しい」

そろそろ、ベッドの上だけの生活も限界だった。

入院してからずっと続いていた頭痛と微熱は、少しずつ良くなってきていた。

ただ、後頭部のなんとも言えない「つまった感じ」はまだ残っていた。

MRAの結果も、大きな変化はなし。

私は毎回、それを励みにしたくて、検査結果の画像をプリントアウトしてもらっていた。

かれこれ6回ほど検査をしたけれど、見比べてもほとんど変わらない。

まるでコピペしたみたい。

でも当時、先生からは「変わらないことも悪いことではない」という説明を受けていた。

大きな変化がないことを確認しながら、経過を見ていく。

だったら、少しくらいお願いしてもいいんじゃないか。

私は先生に言いたいことがあった。

トイレに一人で行けるようになりたい!

そして、

シャワーを浴びたい!

24時間点滴をしていたこともあって、トイレは近かった。

一日に8回ほど行くこともある。

そのたびにナースコールを押して、看護師さんに車椅子で連れて行ってもらう。

夜中に何度も忙しい看護師さんを呼ぶのは、やっぱり気が引けた。

そして、それ以上に切実だったのがお風呂。

いや、もうシャワーでいい。

なんでもいい。

とにかく髪を洗いたい。

先生にお願いしてみた。

「いいですよ。女性ですもんね」

そうそう。

今頃気づいてくださいましたか。

そして、念願のシャワー。

水で身体を洗える。

髪を洗える。

それだけのことが、ものすごく嬉しかった。

病室へ戻ると、掃除のおじさんにも、

「顔つきが違うね」

と言われた。

そりゃそうだ。

この髪のサラサラ感。

これだよ。これがスタンダード(泣)。

私は、水で洗い流すということには、ちょっと特別な力があると思っている。

嫌なことがあると、手を洗うことにしている。

気分転換になったり、いらないものまで一緒に洗い流してくれるような気がするからだ。

今回もそうだった。

ただシャワーを浴びただけなのに、

なんだか生まれ変わったような気分だった。

「早く退院できちゃうんじゃない?」

そんな嬉しい言葉までかけてもらって、

私はすっかり目を輝かせていた。

ついこの間まで、

「私、死ぬのかな」

と思っていたのに。

今の私は、

髪がサラサラになっただけで、

「もうすぐ帰れるかもしれない」

と思っている。

人間って、案外そんなものなのかもしれない。

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No.9
「はじめて『退院』と言う言葉を聞いた」

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