メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

君を食べさせる倢を芋る 〈第34話倖ぞ出る〉

    #長線小説 #異䞖界ファンタゞヌ #異䞖界転移 #ファンタゞヌ小説 #生掻ファンタゞヌ


    第34話 倖ぞ出る

     
     目を開けるず、癜い倩井があった。

     森の岩肌を芋慣れ始めたせいか、䜕もない癜さが劙に明るい。

     玗奈は仰向けのたた、しばらくたばたきをした。

     廊䞋を通るワゎンの音。扉の向こうを行き亀う足音。遠くで誰かが呌ばれおいる。

     病院だった。

     昚倜、眠りに萜ちる前に考えおいたものが、ひず぀ず぀頭ぞ戻っおくる。

    「忘れないうちにやろ」

     身䜓を起こす。

     胞の奥から重さが぀いおきお、䞀床枕ぞ背䞭を戻した。

     息を敎えおから、もう䞀床起き䞊がる。

     母の姿はなかった。

     怅子には鞄だけが残っおいる。どうやら病宀の倖ぞ出おいるらしい。

     今なら、荷物を広げおもあれこれ聞かれずに枈む。

     気持ちは急いでいるのに、身䜓はゆっくりずしか動かない。しゃがんで床頭台の䞋から黒いリュックを匕き寄せた。

     再入院した日に着おきた黒い長袖シャツずカヌゎパンツを畳む。胞に倧きく入った OUT OF PLACE の文字を芋お、玗奈の口元が少し䞊がった。

     今たで気にしおいなかったが、持っおいく先を考えるず出来すぎおいる。

     それを䞀番䞋ぞ抌し蟌み、カップ付きのタンクトップを二枚。䞋着ず靎䞋を二組ず぀。

     薄手のタオルを二枚。

     ヘアゎム。

     歯ブラシ。

     最埌に、ベッドの䞋に眮いおあったハむキングシュヌズを袋ごず入れた。

     そこたでやったずころで、肩から腕ぞ鈍い疲れが溜たっおいた。

     玗奈はファスナヌに手を掛けたたた、床にぞたり蟌むず乱れた息を敎えた。

    「荷造りだけでもうヘトヘトだ」

     けれど、母が戻っおくる前には終わらせたい。

     少し䌑んでからファスナヌを閉め、リュックを先にベッドぞ茉せた。

     玗奈もゆっくり身䜓を起こしおベッドぞ戻り、暪になる。リュックを腹の䞊ぞ匕き寄せ、䞡腕で抱えた。
     
    「これ、持っおいく」

     ルアンのいる掞窟ぞ。

     今床は、垰れなくなった時のためではない。

     向こうで䜿うために持っおいく。

     目を閉じるず、身䜓の重さがそのたた眠気ぞ倉わっおいった。

         

     胞の䞊に硬い感觊があった。

     玗奈は目を開ける前に手を動かす。䞭身で倧きく膚らんだ垃地が、腕の䞭に収たっおいる。

     持っおこられた。

     目を開け、ゆっくり呚囲を芋回す。

     火を挟んだ向こう偎では、ルアンがただ眠っおいた。

     毛皮から片腕を出し、顔のそばに眮いおいる。昚倜、自分が眠るたで歌っおいたのだから、これくらい寝おいおもらわないず困る。

     玗奈は起き䞊がる途䞭で動きをゆるめた。

     リュックを胞から䞋ろし、なるべく音を立おないようにファスナヌを開く。

     䞭を芗く。

     党郚ある。

    「よし」

     小さく声を挏らしたずころで、金具が觊れおかすかな音を立おた。

     向こうで毛皮が動く。

     ルアンが寝返りを打ち、薄く目を開けた。

    「  サナ様」

     眠気の残った声は䜎く、少しかすれおいた。

    「あ、ごめん。起こした」

     ルアンは手の甲で目元を擊り、ゆっくり身䜓を起こした。ほどけた髪が顔ぞ掛かっおいる。それを無造䜜にかき䞊げ、玗奈ぞ顔を向けた。

    「戻ったのですね」

    「うん」

     玗奈はリュックを抱えおルアンの寝床のそばたで行き、口を広げおみせた。

    「持っおきたよ。靎も」

     ルアンの目が䞭身ぞ萜ち、それから玗奈ぞ戻る。

    「党郚ですか」

    「必芁そうなのはね」

    「よかったです」

     ルアンはリュックの䞭をもう䞀床芋お、短く息を吐いた。

     玗奈はリュックを自分の寝床の脇ぞ眮いた。

     黒い垃ず金具が、暹皮や毛皮ばかりの掞窟の䞭で劙に浮いおいる。

     昚日たでは䜕もなかった堎所に、自分の荷物がひず぀増えた。

     それだけで、呚りが少し違っお芋えた。

    「よし、着替えよ」

     持っおきた服を手に取ろうずするず動きに合わせお、煙の匂いが錻に぀いた。

    「ルアン、身䜓拭く甚の氎がほしいんだけど」

     このたた着替えたら、新しい服にもすぐ匂いが移っおしたう。先に身䜓を拭こう。

    「分かりたした」

     ルアンは奥の岩陰から、割れた土噚の底を持っおきた。

     瞁は倧きく欠けおいるが、底の郚分だけは浅い噚のように残っおいる。倖偎は䜕床も火に圓おられお黒く焌け、内偎には也いた癜い筋が幟重にも茪になっおこびり぀いおいた。

     玗奈は受け取りながら、その跡ぞ目を留めた。

    「これ、䜕か煮詰めた跡」

    「はい。塩の䜜り方を詊しおいた時に䜿いたした」

     ルアンも癜い跡ぞ目を萜ずした。
     指先が、土噚の瞁を䞀床なぞる。

     十幎前に二人で話した、その先を、この噚は知っおいる。

    「塩の跡っおこずか。今もここで煮詰めおるの」

    「今は塩堎で枈たせおいたす。これは氎を少し䜿うにはちょうどいいので」

    「簡単には捚おない  ゚コだねぇ」

     感心しおいる間に、ルアンが氎を泚いだ。癜い茪の䞀郚が濡れ、岩のような鈍い色ぞ倉わる。

     玗奈はタオルを氎に浞しお絞り、銖筋ぞ圓おた。

     ひやりずした感觊に、肩の力が抜ける。

    「ふぅヌ  」

     銖の埌ろから腕ぞ拭いおいくず、癜い垃にうっすら色が぀いた。

    「やっぱ汚れおる」

    「煙の匂いですか」

    「それもある。汗もかいたし」

     露出しおいるずころを拭き終え、パゞャマのボタンぞ手を掛ける。

     そこで止たった。

     ルアンは火のそばで手を動かしおいお、こちらを芋おいるわけではない。

     それでも、さすがにこのたた脱ぐ気にはならなかった。

    「あのさ、悪いんだけどちょっずだけ倖にいおくれる」

     ルアンが顔を䞊げた。

     玗奈の手元ず開いたリュックを芋お、すぐに立ち䞊がる。

    「分かりたした」

     背䞭が入口の向こうぞ消える。

     远い出したようで少し悪い気もしたが、玗奈は息を吐いおパゞャマを脱いで党身を拭く。

     正面は問題ない。背䞭ぞ腕を回すず、思ったより届かなかった。

    「む」

     身䜓をひねっおようやく拭き終える頃には、肩が少しだるくなっおいた。

    「健康でも、めんどいものはめんどいな」

     䞋着ずカップ付きのタンクトップを替え、靎䞋を履き、寝床ぞ座ったたたカヌゎパンツを穿く。

     長袖シャツを頭から被り、髪を埌ろでたずめた。

     最埌にハむキングシュヌズぞ足を入れる。

     玐を締め、靎底を手で抌した。

     適床な匟力が、そのたた掌ぞ返っおくる。

    「よし」

     立ち䞊がっお䞡足ぞ䜓重を乗せた。

    「ルアン、いいよ」

     倖から戻っおきたルアンが入口で足を止める。

     玗奈の姿を䞊から䞋ぞ芋お、最埌に靎ぞ芖線を萜ずした。

    「動きやすそうですね」

    「でしょう。靎も完璧」

     玗奈が片足を少し前ぞ出すず、ルアンは靎底たで確かめるように芋お、短く頷いた。

     その芖線が、今床は胞元で止たる。

    「胞にある印は䜕ですか」

    「これ」

     玗奈はシャツの垃を぀たみ、文字を芋せた。

    「これも文字。本に描いおあるのず同じ」

     ルアンが少し身を乗り出した。

    「䜕ず描いおあるのですか」

    「『堎違い』ずか、『ここに合っおない』ずか、そんな感じ」

     ルアンの衚情が止たった。

    「なぜ、それを着るのですか」

    「意味で遞んだんじゃないよ。柄が奜きだったの」

    「意味があるのに」

    「そんなの気にしないもん。かわいければいいの」

    「かわいければ  」

     ただ匕っかかっおいるらしく、眉間に薄く皺が残っおいる。

     玗奈は説明を諊め、脱いだパゞャマずタオルぞ目をやった。

    「これから沢に行く」

    「はい。氎を汲みに行きたす」

    「じゃあ私も行く。぀いでにこれ掗いたい」

     ルアンは玗奈の足元を䞀床確かめた。

    「分かりたした。行きたしょう」

         

     掞窟を出る。

     小石を螏んでも、也いた枝を螏んでも、今床はそのたた進めた。

     颚が頬を抜ける。

     玗奈は䞀床立ち止たり、胞いっぱいに息を吞った。

     病院のベッドで思い出しおいた森が、目の前にある。

     足元には、䜕床も螏たれた现い道が続いおいた。

    「沢、こっち」

    「はい」

    「じゃあ案内よろしく」

     ルアンが先に立぀。

     玗奈は掗濯物を抱えお、その埌ろを歩いた。

     朚の根を跚ぎ、少し䞋る。

     倏の終わりの森は、日陰ぞ入れば涌しい。それでも歩いおいるうちに、銖筋にはたた汗が浮いおくる。

     地面は思ったよりでこがこしおいた。

     靎があるから歩ける。

     けれど、靎があるだけで䞊手に歩けるわけではない。

     枝ぞ぀た先を匕っかけそうになっお足を䞊げるず、前を歩いおいたルアンが振り向いた。

    「倧䞈倫ですか」

    「平気。靎あるし」

    「靎があっおも転びたす」

    「そこたで信甚ない」

    「芋おいたす」

    「芋られおる方が転びそう」

     玗奈が片眉を䞊げるず、ルアンは前ぞ向き盎った。

     ただし、それたでより少し歩幅が小さくなった。

     ほどなく沢の音が近づいた。

     朚々の間から氎面が芋える。

     玗奈は平らな石のそばぞ腰を䞋ろし、氎ぞ手を入れた。

     透き通った流れに指がゆがんでゆれる。熱が冷たされおいく。

    「気持ちいい」

     冷たいずいうより、歩いお火照った手にちょうどいい。

     掗濯物を持ち䞊げるず、ルアンが沢の脇から现長い葉の぀いた草を取っおきた。

    「これを䜿いたす」

    「草」

     茎ごず揉んで氎を加えるず、指の間に现かな泡が立った。

    「え、泡立っおる」

    「汚れを萜ずす時に䜿いたす」

     玗奈も受け取っお揉んでみた。

    「森に石鹞たで生えおる」

    「せっけん」

    「石鹞ずいうのは、私のずころで、身䜓ずか服を掗うものの名前。こういう泡が出るの」

    「これず同じですね」

    「うん。かなり同じ」

     玗奈は草を持っお、ルアンに教えられた少し䞋流の岩陰ぞ移った。 

     䞋着ずタンクトップ、身䜓を拭いたタオルをたずめお掗い、自分で氎を切った。

     掗ったものを抱えお元の堎所ぞ戻り、最埌にパゞャマを氎ぞ浞す。

     すすいで持ち䞊げ、䞡手で絞っおみたが、垃はたっぷり氎を含んだたた、い぀たでも雫を萜ずしおいた。

    「ツラいっ」

     もう䞀床力を入れたずころで、手銖の方が先に疲れた。

     その様子を芋おいたルアンが手を出した。

    「サナ様、貞しおください」

     玗奈の返事を埅぀前にパゞャマを広げ盎し、垃を重ねるように持ち替え、䞡手で抌した。玗奈の手では残っおいた氎が、たずたっお石の䞊ぞ萜ちおいく。

    「ねじらないんだね」

    「サナ様のやり方だず垃が傷みたす」

    「え、そうなの」

     玗奈は慌おお、絞ったたた眮いおいたタンクトップを広げた。右偎が芋事によれおいる。

    「掗濯機でしか掗ったこずないし、そんなの知らないし」

     玗奈はぶ぀ぶ぀蚀いながら、タンクトップを敎えた。

    「次は、ねじらずに抌しおください」

    「はい、先生」

    「先生」

    「教えおくれる人」

     ルアンは少し考えおから、濡れたパゞャマを籠ぞ入れ、氎を汲んだ桶を抱えた。

     垰り道は、玗奈も少し慣れおいた。

     行きに匕っかけそうになった朚の根を今床は先に避け、石の倚いずころでは歩幅を狭くする。䞋りより登りの方が息は䞊がったが、足が止たるほどではない。

     前を歩くルアンは、時々振り返った。

    「倧䞈倫ですか」

    「うん。このくらいなら平気」

     玗奈は額の汗を手の甲で拭った。

    「でも、思ったよりちゃんず山道だね」

    「山ですから」

    「知っおるよ」

     軜く口をずがらせお蚀い返し、もう䞀぀朚の根を跚ぐ。

     ルアンの芖線が萜ちた。

     䜕か蚀われるかず思ったが、今床はそのたた前を向いた。

         

     掞窟ぞ戻るず、ルアンは近くの枝を䜿っお簡単な干し堎を䜜った。

     パゞャマずタオルを広げ、小さなものは内偎ぞ寄せる。

     颚が通るたび、濡れた袖がゆっくり膚らんだ。

     玗奈はふず、土が぀き、溝には现かな葉が挟たっおいるハむキングシュヌズに目を向けた。

     昚日は、掞窟の入口から先ぞ出るこずもできなかった。

    「今日は掗濯しおおわった」

    「そうですね」

    「普通過ぎる」

     颚に流れた髪を、玗奈は片手で抌さえた。

     䜕だか急に、ここで暮らしおいる人みたいだった。

         

     倕方、玗奈がパゞャマの也き具合を確かめおいるず、そばに来たルアンが足元ぞ目を萜ずした。

    「足は痛くないですか」

    「痛くないよ」

    「疲れは」

    「ちょっずは。でも普通」

     玗奈は片足を軜く䞊げ、足銖を回しおみせた。

    「沢くらいなら党然平気」

     ルアンはそれを芋おから、今床は玗奈の顔ぞ芖線を䞊げた。

     沢ぞ向かう時も、戻る時も、䜕床か同じように芋られおいた。

    「なに」

    「明日、塩を取りに行きたす」

     玗奈の目が開いた。

    「あそこ」

    「はい」

     獣が舐めおいた石、湿った泥やその先の岩の裂け目が脳裏に浮かんだ。

    「行きたい」

     考えるより先に声が出た。

    「沢より遠いです」

    「うん」

    「足堎の悪いずころもありたす」

    「芚えおる」

     ルアンは䞀床、森の奥ぞ目を向けた。

    「でも、今日の歩き方なら行けるず思いたす」

     玗奈は暪から顔を芗き蟌んだ。

    「もしかしお、今日ずっず芋おた」

    「芋おいたした」

    「塩堎たで行けるか」

    「最初から決めおいたわけではありたせん」

     ルアンの芖線が、もう䞀床玗奈の靎ぞ萜ちる。

    「でも、沢たで埀埩しおも足取りが厩れなかったので」

    「チェックされおたんだ」

    「危ない堎所ぞ連れおはいけたせん」

     玗奈は森の奥を芋る。

     沢ぞ続く道の、その先。

     蚘憶に残っおいるのは、十五歳のルアンの背䞭を远っお登った岩堎だった。

    「じゃあ、合栌」

     ルアンは玗奈の靎をもう䞀床芋お、今床は迷わず頷いた。

    「はい」

     玗奈は口元を䞊げた。

    「よし。明日はもっず先たでだ」

     颚に抌されたパゞャマの袖が肩ぞ觊れる。

     玗奈はそれを干し堎ぞ戻し、もう䞀床、沢の先ぞ続く森を芋た。



     
     
    剣ず魔法が出おこない、 塩ず食べるこずにこだわる異䞖界ファンタゞヌ 『君を食べさせる倢を芋る』を曞いおいたす。 フェむスペむンタヌ☆ミホりの名前で、 フェむスボディペむンタヌずしお掻動䞭。 小孊䞀幎生からずっずファンタゞヌ奜きで、 人生を倉えた本は『ゲド戊蚘』です。

    あなたぞのおすすめ