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品性という言葉を知らない(第21話)連載小説

SNS社会の生々しさや、主人公の人格のゆがみに迫る現代サスペンス


栗山杏奈は歯科クリニックで働くいわゆるキラキラ女子を演じているが
実は夜職の顔がある
――――さらには2つのSNSで使い分ける顔
恋愛・友達・仕事・家族――――

杏奈には、既婚者の佐々木と瀬戸、彼女持ちの良平という3人の男がいる
与えてくれる男
自分を求めてくれる男
杏奈はそういう関係こそが、自分にとって都合のいいものだと思っていた

――しかし 
杏奈自身うまくいっていると思っていた
仕事も、人間関係も、男との関係も、
「上から見下ろしていた」はずの世界が少しずつ狂い始めていったある日
2つのSNSで使い分ける顔が少しずつ明るみに出ていく――――


20話はこちら


良平は、何事もなかったように、いつもと変わらない良平だった。
そのほうが杏奈も気が楽だった。

良平はこないだ行ったライブの話をしたり、
出張で行った福岡のご飯や焼酎が美味しかった話をした。
良平の顔が好きなのもあるけれど、こうやって楽しい話をして周りを楽しませるところもいいなぁと思ってたんだ。
そんなことを思い出しながら、良平の次から次へと出てくる面白い話に
笑ったり、あいづちを打ちながら聞いていた。

ふと良平が話をやめた。そして焼酎の水割りを一気に飲み干した。
「ちょっと!良平!その飲み方ダメだって!」
良平は、お酒の場は好きだが、お酒は弱い。
杏奈の前で初めて酔いつぶれた時は、足は立たないし、呂律も回らなくて、タクシーに乗せるまでが大変だった。

タバコをふかしながら良平が言った。
「こないださ、ちょっと杏奈に話聞いて欲しかったってかさ。おもいっきり飲みたかったんだろうな。だから急に店行ったりした。」
「そうだったんだ。」

「都合いいよな。俺さ、彼女とうまく行ってなくてさ。前に少し話したけど、どこで誰と何食べたの?とかさ。前はそういうこと聞かなかったのに、急に聞くようになっちゃったんだよな。」


そう言いながら首を傾げた。

「でもさ…うぅぅぅ…でも…俺…う…うぅぅ…やっぱりあいつのこと好きでさ。なんとか修復したいんだよ。」


そう言って、良平の頭は思い切りうなだれていた。
杏奈は何も言わなかった。
何も言わずに、ただ良平の肩や背中をポン、ポンと叩いた。

「あはは、ごめんな!杏奈!」そう言って笑いながら顔をあげた。
「俺のキャラじゃないよな!あはは!情けねー。う…うぅぅ…でもやっぱり俺…あいつが好きだーーー!よし!杏奈!今日はとことん飲むぞ!ほら、グラス持って!かんぱーい!」
そう言って、杏奈に乾杯をせがむ。

それから杏奈と良平は、日本酒を飲み始めた。
何度も乾杯をしながら、良平はすっかり酔っている。
泣いたり、笑ったり、
結局最後は「俺は彼女のことが好きだ」と言って泣く。

杏奈も一睡もしてないからか、いつの間にか酔いが回っている。
「りょーーへ!おい!」
「あはは!なんだよ!」
「よく私の前で彼女大好きとか言ってくれてるな!あははは!」
「お!杏奈今日は素直じゃん!言ってみなよ?ん?」
そう言って杏奈を引き寄せて耳元でささやいた。

「好きって。言えよ。俺が気付いてないとでも思ってんの?」


いつもなら良平を突き放すところだが、今日はそれすらも面倒に感じる。
それにもしかしたら私、良平のこと好きなの?
顔と体の相性よくて一緒にいたけど。
彼女のこと好きとかいうの見てたらムカついてるのはたしか。

もうよく分かんないけど、とりあえず今日が楽しくて、
今の本能のままに進もう。
そんなことを考えていた。

そして今度は杏奈が良平の腰に手をまわして、耳元にささやいた。

「好き…くるでしょ?」


「ああ。早く杏奈の部屋行こう」

そう言って杏奈の頭を撫でた。

「りょうへ!ちょっとトイレ行ってきていい?」
「え?トイレで?いいよ!」
「バカ!私が!トイレに行ってくるから!ちょっと待っててね!」
良平はあははと笑った。

ふらふらとトイレに向かって歩く杏奈。
個室に入って鍵を閉める。

「ふぅぅぅ…たっくさん飲んだぁ。
う…っぷ。えっと…今日の盛れてる写真は…っとぉ…
あ!これにするぅぅ!」

そう言って焼き鳥を手に持って微笑む杏奈の写真を選んだ。
「たのしい~~♡ありがと♡」

良平と杏奈がお猪口で乾杯する手元を映した写真
「SNSでいやなことあったけど、元気なった♡らぶ」

Instagram ストーリーズ投稿。


そしてXを開く。



「寝ないで日本酒、最高ですっっ!酔ってめっちゃくちゃ気持ちいい!これからもっと気持ちよくなるやろな!ごちそうさまです!よだれじゅるり」


「気楽にバカになって騒げる友達ってサイコーだ!!!男とか女とか、恋愛とか、彼女、パパ活、不倫とか、そうゆう世間の狭い価値観に縛られないし、私は私のやりたいように生きるだけ」


投稿。

ふらふらとトイレを出て、良平が待つ席に戻る。


続き(22話)はこちら


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