品性という言葉を知らない(第2話)連載小説
第1話はこちら
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栗山杏奈は歯科クリニックの受付で働いている。
今日は金曜日。
いつもの金曜日なら、晩ご飯食べに行って、朝まで騒ぐのに。
明日は朝早いから珍しく家で大人しく過ごしている。
「あー!めんどくさい!でもとりあえず服選んどくか!」
そう言いながら、広いクローゼットの奥まで服で埋め尽くされた中から
杏奈は明日の“衣装”を探す。 “衣装”なのか“戦闘服”なのか。
「ショーパンで元気さでもアピるかー?」と言いながら、
姿見の前で、後ろからお尻の丸みが見えそうなショートパンツを
自分の腰にあてる。
「これなら上はふわふわシャギーのオフショルニット?」
白のニットを上半身にあててみるが、明らかに肩から大きく滑り落ちそうな空き具合だ。
「よし!これでいいっしょ!完璧ー!」
そう言いながら、ため息をついてソファに腰を下ろす。
スマートフォンに向かって打ち込んだ。
「あーーーん!明日は街コンだぁあああ!行きたくねー!
断る理由考えてる間に明日になったからとりあえず行ってくる!
期待しないで報告待ってて!笑
本物の愛見ーつけた!なんて言って帰ってくるかも」
Xはほんと、本音で書けるから楽。
今の私にXがなかったら、本音書ける場所も話せる人もいない。
明日街コン一緒にいく子たちは、正直“友達”なのかな、って感じ。
なんかピンとこない。 でもこれって、今はじまったことじゃないんだよな。
子供の頃からいつも抱えてた気持ちだし 相手が誰でも感じてきた。
まぁ、その場のノリで一緒にいるときに私を演出してくれるし、
写真撮れるしね。 深く考えないで行けばいいかぁ。
そんなことを考えながら杏奈はアロマキャンドルに火を点けた。
部屋の照明を落とす。
キャンドルの小さな炎だけが、部屋をぼんやり照らす。
この瞬間が杏奈は大好きだった。
何か“特別な自分”になったような感覚すら覚える。
アロマキャンドルは、美容室を経営している佐々木に買ってもらった、 入手困難なVoile(ヴォワル) のもの。
経営者の佐々木にとって、入手困難な15,000円のアロマキャンドルを手に入れることなんて たやすいことなのだ。
翌朝。
東都バスポートに8時集合。
のはずが少し遅れた。
雪乃と萌衣の姿が見えた。
「ごめーん!お待たせしましたぁ!」2人をめがけて走って行った杏奈は、そう言いながら2人にお辞儀をした。
「萌衣がさぁ、“杏奈気合入れすぎてメイクも髪もやって、時間かかってるかもよ”なんて言うんだからー!」雪乃がふざけながら言った。
「えー!そこまで言ってないよ!杏奈おはよ!今日も杏奈やーっぱりかわいい!」そう言って胸の前に両手でハートマークを作って見せた。
「あはは!ごめん!ごめん!行こー。今日は楽しもうね!」そう言って杏奈は自分の胸の前にハートマークを作って見せた。
今日はバスで女の子たちが、男性たちが住む街へ向かう街コンなのだ。
その名も榛名原恋活バス ツアー」
榛名原に住む男性たちとの街コンなのだ。
バスでは雪乃と萌衣が一緒に座り、杏奈は知らない人と座った。
通路を挟んで2人が楽しそうに話すのをにっこり微笑みながら見つつ
スマートフォンを開いた。
「あー、女の嫉妬面倒!
ちょっと送れたからってメイクや髪に時間かけすぎやん?みたいに言われた!心外!あなたたちは時間かけても変わらないからある意味羨ましいです!笑」
Xに投稿。
あーほんと、やってられん。
バスに乗る前の青空の写真を選んで今度はインスタグラムを開く。
「雲ひとつない空。
好き。
楽しくなりそな朝」

そう書いたストーリーズを投稿する。
続き(3話)はこちら
