2026年6月の音楽月報(Miles Davis, YHWH Nailgun, Trooper Salute etc...)
筆を執るのがだいぶ遅くなってしまいました。
Trio Grande(Will Vinson, Gilad Hekselman, Nate Wood) / The Past
ドラム叩きながらベースをタッピングし合間にキーボードを弾く曲芸師、Nate Woodつながりで4月に知ったトリオの新作。
イントロからステレオでサックスとエレキギターが同じメロディーをユニゾンするのですが、ボリューム奏法を駆使してギターが管楽器的なアプローチをすることで、逆に両者の音色の豊かさが浮き彫りになるというか。Gilad Hekselmanの滲むような歪み加減が絶妙なギターの音色が素晴らしかったです。
Miles Davis / Helen Butte/Mr. Freedom X
Miles Davisを遡るシリーズ。
アルバムを通してベースの跳ねるようなリフ一発が延々と続き各楽器が手を変え品を変えソロを重ねていく様は、ジャズというよりDAWでの編集を前提としたダンスミュージックの構造に近いなぁと思っていたら、愛聴してるラジオでこの作品がリアルタイムに言及されていて驚きました。
当時はテープ録音だったから切り貼りする職人(Teo Maceroという方だそう)が録音時に専門で付いていたと。面白い話。
ビートルズのRevolverとかもそうですが、昔の作品でも編集や録音のやり方の工夫を凝らすことで、他の作品との同時代性から脱却した作品は逆説的にある種の普遍性を獲得するのですね。私もじわじわとMiles Davisの偉大さが分かってきた気がします。
YHWH Nailgun / Burns
昨年のフジにも出ていたポストパンクバンド、YHWH Nailgunの2作目。前作は10曲20分という昨今でも珍しい位に短距離走的な作品でしたが、今作は遂に10曲10分というグラインドコア級のスプリント勝負をかけてくる作品でした。
全編を通して「面白いリズムパターンが出来た!これ曲にしたろ!」 という潔いアイデア一発勝負で作った作品という印象。
それが悪いということでは当然なくて、そのアイデアが曲の体をなす最短尺で次々と襲いかかってくることで全く飽きずに何回も聴くことができました。
Trooper Salute / 成れの果て
読み方はトルーパーソリュート。自分用メモ。
ストリングスアレンジしましたーとクラムボンのミトさんが告知していたのを目にして、ジャケットに惹かれるものがあり聴いて完成度の高さにぶっ飛ばされました。
これが結成2年目のバンドが出す1stアルバムですか。底知れなさすぎる。
ポストロック、昭和歌謡、シティポップ、エレクトロ等様々な音楽を吸収した上で出力される音楽ということは分かりますが(M-2 絶縁のイントロ、カットアップされたボーカルが旋回する様なんて正にポストロックを経過したバンド的)
そんな音楽的多様性を脇においておきたくなる程に女性ボーカルの圧力が凄まじい。
アルバムを締め括るこの曲。凝ったアレンジに耳が行きがちですが、よく聞くとこの曲ボーカルのメロディはずーっと変わないんですよね。
バンドの演奏が白熱していくのに合わせて不協和音スレスレの悲鳴をストリングスが上げる中で、それに呼応するように熱を帯びるボーカリゼーションが素晴らしい。
シンフォニックインディロック、という肩書をどういった意図で名乗っているのかは知りませんが、それは単に弦楽器や管楽器を取り入れた音楽をやるという訳ではなくて
歌も合奏の一部と捉えて、楽器隊と歌がぶつかり合いとんでもない迫力を生み出すことが彼らにとってのシンフォニーなのかな、なんて想像しました。
People In The Box / 市場
ピープル、初夏の社員研修という名のツアーが終わりましたね。
私は諸事情により行けず、セットリストを見て悔しさのあまり歯軋りをし倒して火を吹く有様だったのですが、改めて聴きたくなったのがこの曲。
ここ数年の混迷を極める世情に関連した事柄を歌う曲が目立った今回のセットリストで、特に直接的に毒を吐くこの曲の存在は大きかったのでは。
すすめ 純粋無垢な憎悪のかたまり
武装解除して押し黙ったきみは危ない
暗闇は見えるよりはるかに広大なスペース
物体にまつわる情報量を超えていく
光はきみの想像に制限をかける
マイナーセブンスをゴリ押す毒々しいディスコティックなギターとベースに重いビートがかさなり、乗ってはいけないレールに強制的に従って進められているような感覚になる曲。
いわゆる自粛警察が蔓延り、お肉券などピントのズレた補助策のニュースが流れていたコロナ禍に繰り返し聴いていた私的な思い出も、なんとなく書き残しておきます。
THE NOVEMBERS / 消失点
ノベンバ、春のツアーが終了しましたね。私は諸事情により行けず(以下前項と同文)。
ノベンバには珍しいクラシックなシャッフルビートで口火を切ったかと思いきや、調律がズレた古代の弦楽器のようなピンと張り詰めた音色のギターとハープシコードがメロディを奏でるミスマッチ感は時代感覚にバグが起こったような錯覚に陥るようでとても好きな曲。At the Beginnigツアーからほぼ披露されていなくてとても寂しかったんですよ…。
downy / 無空
行けなかったライブの話ばかりするのも虚しいので、観れた人たちのことも。paranoid void企画、downyとのツーマンを観てきました。
昨年downyのワンマンを観れなかったことはかなりの失態だったので、早い段階で第8作品集の曲たちを聴けて満足。
downyの魅力を説明する際によく目にする言葉は「圧倒的な演奏力」「変拍子ポリリズムを駆使した複雑な曲構成」など、兎角そのプログレッシブな側面に焦点が当たることが多くて。
もちろん私もそこに惹かれている1人ですが、downyの魅力の根幹って、硬質なビートに乗っかって踊ってるうちに時間や空間感覚がねじ曲がったように感じられるトリップ感だよなぁとスタンダードな4拍子のこの曲を聴きながら思いました。
本当に素晴らしいバンド。誇張抜きに日本に住んでて良かったことの1つにdownyのライブを比較的気軽に観に行けることは含まれると思います。
paranoid void / Synchronized
そして主催のparanoid void、1月の月報でも触れた新作がとても良かったのでワクワクで観に行きましたが、期待以上の素晴らしい演奏でした。
ほぼ最新アルバムの曲だけで構成されたセットリスト、ほとんどダンスミュージックと言っても過言ではないリフの反復とブレイクの快感。過去に共演していた大先輩LITEの面影も少し感じたりして。
音楽で踊るのに変拍子がとか関係なくて、いかに曲のノリを掴むかだけだと思っているのですが、それを改めて教えられた楽しいライブでした。
そんな踊らせるライブだったからこそ、最後に演奏されたこの曲はクラブのチルタイムのような心地よさがありました。
今月分は以上となります。
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