
【もしもミュージアム】#13 第4回企画展『ミライの桃太郎』(前編)
↑前話(ミニ展示)は、こちら
モモランドのコスモ
「これ、コスモじゃない?」
道の駅の前で、ジンの母親が明るい声をあげた。青灰色の、すすけたキャラクターの像が立っていた。
「絶対そうだよ!モモランドの。うわ、懐かしいな」
父親も笑顔になって、像の頭をぽん、と叩いた。狐なのか猫なのかよく分からないキャラクターは、所々塗装のはげた顔で、口が裂けそうなほど笑っている。暗い時間に通ったら怖いだろう。
ジンの両親は、知らない歌を口ずさんでいた。まるで、二人とも子どもに戻ったかのようだった。
「コスモ、ギャラック、キララと一緒に」
「未来発見!モモランド」
昔、この辺りには小さな遊園地があった、と先生から聞いたことがあった。ジンの両親も覚に聞いてもよく覚えていた。町おこしのために作られて、十年位で消えたらしい。
クラスメイトのようにはしゃぐのは、ジンは苦手だった。だから、遊園地が無くて良かった、と少し思った。
「家族で行けたら楽しかったろうな」
ジンが、ぼそっとつぶやいた。
「そうだね、ジンも連れていきたかった」
母親が言った時、コスモの像の裏に小さな吊り看板が下がってることに気づいた。
『ミニミュージアム モモランドのあった未来』
ウェルカム広場
看板の示す方に進むと、アルミの扉があった。『入場無料』と大きく書かれていた。ジンと同じ位の子どもをつれた家族が、中に入って行った。
「寄ってみるか」
父親につられて、母親とジンも中に入った。通路はプラネタリウムのように、色々な星座が投影されていた。そこを抜けると、急に明るくなった。
『ようこそ、ここは未来都市 モモランド』
『元気いっぱい遊ぼうよ』
『すてきな未来を過ごしましょう』
明るくて、少し古めかしい電子音が何か話していた。広場の中央に、カラフルなキャラクターの像が三体並んでいた。道の駅に建っていた青いキャラ、やたらに目のギョロギョロしたサル、カラフルな鳥⋯⋯像の下には、それぞれ『コスモ』『ギャラック』『キララ』と名前が書いてある。
ジンが像に近づくと、解説が書いてあった。
『ミライシティ モモランドは、科学と遊園地の融合、というコンセプトで設計された遊戯施設でした』
解説パネルの隣のボタンを押すと、子ども合唱団の歌声が流れた。ジンの両親が歌っていた、モモランドのテーマソングだ。
『今までの遊園地とは異なり、科学館や万博のパビリオンのような学習要素も取り入れました。来館した子どもたちに、“未来の桃太郎”になってほしい、という願いを込めて、キャラクターは桃太郎の家来、犬、猿、キジをイメージしています』
(そうか、これは犬だったんだ。ずいぶん変わったデザインだな)
青いキャラクターに向き合い、ジンは内心つぶやいた。
広場の裏にあるトンネルの向こうから、声が響いてきた。小さな子どもたちが、はしゃいだり泣いたりしているようだ。来場者は、たくさんいるらしい。
「ジン、こっちにおいで!」
すっかり子どもに戻った両親が、トンネルで手招きをしている。
(未来の桃太郎、か)
ジンは、両親のもとに駆けていった。
(つづく)
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