
【もしもミュージアム】#14 第4回企画展『ミライの桃太郎』(中編)
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レトロコースター
広場を抜けると、たくさんの乗り物やアトラクションが動いていた。
「ジン、乗ってみよう。これならお前でも乗れるから」
両親に連れられて、ローラーコースターに乗った。絶叫マシンが苦手なジンは、気乗りしなかったが、仕方なく乗り込んだ。スタッフの人に安全バーを設置してもらっている間、キャラクターたちの会話が流れた。
「みんなようこそ。ここでは、遠心力と無重力を体験できるよ」
「『遠心力』と『無重力』ってなあに?」
「遠心力は、速い力でぐるぐる回ると外に飛ばされそうになる力、無重力は、地面に引っ張っられる力が無くなることだよ」
「そうしたら、お友達みんな、モモランドの果てまでとんでっちゃうよ!」
「大丈夫だよ、安全バーをしっかりロックしているからね」
「じゃ、いってらっしゃい!」
会話が終わると。出発のアナウンスが流れてコースターは動き出した。車体は次第に轟音を立て、速度を上げていった。コースターは建物の中を縦横無尽に走り抜けた。昇ったあとに急降下したり、何度もカーブを曲がったり、そのたびに悲鳴があがった。
ジンも怖かった。でも、父親が言うように、思ったより怖くなかった。小さな子どもたちも安心して乗れる設計になっているのか、少し旧型のアトラクションだからなのか、ジンには分からなかった。
ミラーハウスのモンスター
コースターを降りると、子どもの泣き声が聞こえた。声のする方向をみると、派手な入口に、飾り文字が躍っていた。
『ギャラックのドッキドキ!ミラーハウス』
隣には、目玉のぎょろっとした猿のキャラクターの看板が貼られていた。母親が、引きつった表情を浮かべた。
「これ、かなりこわいよ」
父親は、にやっとジンに笑いかけた。中から、子どもの悲鳴と泣き声が聞こえた。
「入ってみるか?」
「⋯⋯うん」
列に並ぶと、ジンたちはすぐに案内された。前の組の子どもたちが怖くて進めなくなり、リタイアしたらしい。ジンの母親も、小さい時に同じ経験をしたという。今も怖いと言うため、母親だけ外で待つことになった。
ジンと父親が入口に入ると、少しガサついたギャラックの声が響いた。
『ようこそ!鏡の世界で僕と鬼ごっこをしよう。僕が十まで数える間に逃げてね』
声は、カウントダウンを始めた。
「ジン、行こう」
父親と一緒に、ジンは駆け出した。中はたくさんの鏡の壁で作られた迷路になっていた。通り抜けようとすると何度も行き止まりに阻まれては、引き返した。走っている間『こっちかな』『まてー!』と、ギャラックの声が響き渡った。途中、万華鏡や凸面鏡のトラップで、目がくらみそうになった。
そして、曲がり角を抜けた時だった。
『ばあ!』
その先に、巨大なギャラックが立っていた。ジンは、思わず叫んだ。父親も本気で驚いたが、すぐに笑い出した。
「なんだ、大きく見える鏡だよ」
父親に手招きされて、巨大なギャラックの隣をのぞきこんだ。売店にあったギャラックぬいぐるみが吊るされていた。凹面鏡や鏡を組み合わせて、巨大なギャラックが鏡の中にいるように見せていたらしい。理科の授業で聞いた話をジンは思い出した。
「なんだ⋯⋯ふざけるなよ」
ジンは、吊るされた人形を小突いた。
その後、鏡の迷路をしばらく歩くと、ジンたちは出口にたどり着いた。
『君の勝ちだよ、トホホ』
ギャラックの情けない声が響いて、ジンは外に飛び出した。
「二人とも、すごいね」
母親が驚きながら出迎えた。
「怖くなかったの?」
「全然怖くなかったよ」
ジンが得意気な顔をすると、父親と母親は目を合わせて笑った。
(つづく)
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