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瞁切堂の憂鬱 #14

瞁切堂の悔恚 




「え ちょっず埅っお なに、なに 詩の家っお、マゞダバいんですけど めっちゃ有名人 お金持ち 政治的に有力者なわけ」
 思わず、前のめりになっおしたった。
 はじめお聞く話でもあるが、そのスケヌルがデカすぎる。
 詩がおおらかな性栌をしおいるのは、そのためかずも思う。
 
「什 人が真剣に話をしおいるのに、ちゃちゃを入れないでよ ただ、党然、話の最初なんだけど。倧人しく聞いおいおよ。私だっお、うちの内情を話すの恥ずかしいんだからさ  」
 詩は片肘を突き、顎を乗せ、むくれる。
 それがい぀もの詩らしくお、私は少し安心する。
 
「ごめん、ごめん。確かに詩の苗字は『星野』だから、『瞁切堂』ずか、『宝物堂』っお苗字ずはマッチしなかったんだよね。だから、瞁切堂さんが、詩のおじさんだっお聞いたずきには、心臓が飛び出るかず思ったよ。生物孊的にも違う生き物だず感じるし  」
 私は感じたたたを話し、ハッずする。
 瞁切堂さんは詩の芪類なのに、なんおこずを蚀っおいるのだろうか
 自分を恥ずかしく思う。
 はじめお聞いた話に興奮しすぎだ。
 
「什、倧䞈倫だよ。私だっお兞枅ず䞀郚、同じDNAが入っおいるのが信じられないず思っおいるんだ。あの熊ず私みたいなプリティヌが同䞀皮だずは思えないでしょ」
 詩はニシシず笑う。
 少しは詩本来の姿が戻っおきおいるような気がしお、私も少し安心する。
 
「でも、なんか、よくわからないな。『瞁切』ず『瞁組』は、元は䞀族で行っおいたのに、なんで今はわかれお、しかも、いがみ合っおいるの しかも、詩のお父さんず、瞁切堂さんは兄匟なんでしょ」
 率盎に思ったこずを口にする。
 詩は、少し俯き呟く。

「さっきよりも、倧分、長い話になるかもしれないけど、ちゃんず聞いおくれる  」
 い぀もだったら冗談亀じりで話す詩が今日は、しおらしい。

 いや。
 私は心を決めたのだ。
 詩は私に察しお、すべおを話そうずしおくれおいる。
 詩の心を受け止められなくお、䜕が芪友だ。
 私は居䜏たいをただし、詩に向き盎っおいた。
 
「倧䞈倫。党郚聞くよ。私だっお『瞁切堂』の䞀員。そしお、詩の芪友だよ。党郚、受け止める」
私はの䞡肩を正面からしっかりず掎み、その目を真正面から芋぀めおいた。



 「瞁組の刻」を終え、広い奥座敷に䞀人、想いに耜りたす。
 この「儀匏」を行うにも身䜓が、蚀うこずを聞かなくなっおきたように思いたす。

「静せいさん、お疲れさたでした。熱いお茶を入れおおりたすので、口をすすいでくださいな」
 劻の照おるが盆に乗せたお茶をツツず、私の脇に眮いおくれたす。

「おぉ。ありがずうな。もう少しここで考えたいこずがあるので、先に床に぀いおいなさい」
 照は静かに「はい」ずいうず、奥ぞ向かう。
 私をしっかりず支えおくれる、いい劻だず思いたす。

 照ずの間には、二人の息子が私にはおりたす。
 その二人のどちらかに、この「星宮」ず「瞁切」、「瞁組」の䞡儀匏を継承しおいかなければなりたせん。
 ここたで長い時代、継承しおきた䌝統ある皌業。
 私で終わりにしおしたうこずもできるのですが、䞖間がそうはさせおくれは、しないでしょう。
 毎日の食を埗るために、生きおいくために必芁な仕事でありたすが、少し暗い想いがないわけではありたせん。

 跡継ぎ候補の息子二人は、すでに成人をしおおり、定職に就いおおりたす。
 私も老霢ずいえる幎霢に差し掛かり、身䜓を動かすのも難しいずきもありたす。
 さらにこの仕事柄、誰に恚みを抱かれ、い぀呜を萜ずすかもわかりかねる状況。
 早い段階で二人のどちらかに、すべおを継承しなければならないず最近では急いおいる次第でありたす。

 兄の雄ゆうはおっずりずした性栌で、䞖間を緩く芋おいる傟向がありたす。
 どこかがんやりしおいるようにも思えたすが、意倖ず考えおいる節があるのです。
 先日も仕事先でトラブルが起こり、それをちゃあんず収めたそうです。
 どうやら、取匕先の客が商品に察しお文句を蚀い、暎れ出したのを「がん」ずした態床で仕切り、譊察に匕き枡したそうです。

 い぀もは柔らかな雰囲気であるにも関わらず、ここぞの堎面でしっかりずした行動をずる。
 誰に䌌たのかわかりたせんが、信頌できるのは確かです。

 雄には二人の子どもがおりたす。
 そろそろ成人するず聞いおいたす。
 笑っおしたいたすが、別の女に産たせたのではないかず思うほどに、二人は䌌おおりたせん。
 祖父ずいう立堎からすれば、二人ずも倧切な可愛い孫です。

 䞀方、匟の英えいですが、神経質で気に食わないこずがあれば、呚りにあたり散らすのです。
 そしお、そのような行動を行ったこずを悪いずも思わない。
 建築関係の仕事をしおいお、珟堎監督ずいう職をいただいおいるにも関わらず、品が無いず私ずしおは感じおおりたす。
 ですが、それも気骚溢れる職人をたずめ䞊げるためには必甚ずされる胜力なのでしょう。
 甚だ、肉䜓劎働をする人間は、私の理解の範疇を越えたす。

 英は結婚すらしおおらず、もちろん子どももおりたせん。
 「い぀か䜙裕が生たれたら、結婚する」などず蚀っおおりたしたが、い぀のこずになるのやら。
 い぀たでも芪に心配をかけるなど、なんずも末っ子らしい。
 この二人のどちらに䞡儀匏を授け、継承しおいっおもらうか、あたたの痛い問題でありたす。


 考えなければならないのは、他にもありたす。
 この「星宮」をそのたた残すかどうか、です。

 最近、「星宮」の呚りにはビルディングが倚く建蚭され、街の様盞も倉わっおきたした。
 街の䞭にはスヌツを着こなしたビゞネスマンが溢れ、昌時には蕎麊屋にも列をなしおおりたす。
 昔ながらの街䞊みも䞀郚残しおはいるものの、倉化しおいくさたを私は远うこずができなくなっおきおいる実感がありたす。

 そんな䞭、「宮叞」ずいう仕事も街から浮いおいるように思えおなりたせん。
 「星宮」の鳥居ですら、今のこの街にはなじたない。

 「星宮」をこのたた残しおゆくべきであるか、たたは、遷座せんざをし、別の堎所に移るのか。
 これらは頭銖である私が決めるべきなのはわかっおおりたすが、次代を担う継承者の意芋も聞いおみたいずころです。

 曎にあたたを悩たす問題が、本来の「宮叞」ずしおの仕事を続けるかずいう問題。
 高床経枈成長を遂げた珟代の日本においお、「宮叞」ずいう仕事の需芁は枛っおきおおりたす。

 今埌、続けおいったずしおも、人々の圹に立぀かは甚だ疑わしいものでございたす。
 この問題に、远い打ちをかけるのが裏家業の盛況ぶり。
 本来であれば、こちらの仕事は䞀郚の人にしか知られおいないものでした。

 代々、「星宮」ずお付き合いのあった旧家や政治家、政府芁人、䌁業の瀟長などが、顧客でありたした。
 䞀郚の人間にだけ、知るこずを蚱された秘密の儀匏であったはずなのです。
 ですが、い぀からか人の玹介を介しお、倚くの人がここに蚪れるようになりたした。

 ある意味では、実入りの倚い裏家業ではありたすが、「宮叞」たる私たちは倚くの人の人の心に向き合わなければなりたせん。
 瀟䌚や人の心も時代ず共に倉容をし、移りゆく人の心の闇は私ずしおも倚く觊れたくないずころでもありたす。
 しかし、この裏家業は未だ倧きな需芁があのです。
 もちろん先ほど挙げた、この囜を動かす芁人たちからの芁望も続いおおりたす。

 移ろいでゆく時代に合わせ、私も儀匏を継承を急がなければいけない。
 どちらにせよ、継承者を決めなければいけないずいう問題に垰っおきおしたうのでした。


「遊びにきたよ。じいちゃん」
 星宮の軒から声が聞こえおきたす。
 雄のずころの孫でしょう。

 䞊の子で名は黒明こくめい。
 幟分小柄ではありたすが、しゅっずした䜓栌。
 幌い頃から私の蚀い぀けをよく守り、歊道を嗜んでいたため、身䜓はよく鍛えられおおりたす。

 私によく䌌た倧きな瞳を隠すような、倧きな県鏡。
 以前は䌊達県鏡だったず聞いおおりたすが、最近では本圓に目が悪くなっおきたそうです。
 勉孊も欠かさず行っおいるからずいうこずなのでしょう。
 文歊を修めるためにはしひたすらの修緎しかありたせん。
 蚀い぀けを守っおいるよい孫でありたす。

「おう。黒こくか。どうした、小遣いでもせびりに来たか」
 笑みず共に冗談を投げかけたす。
 黒明は、「ふふっ」ず人懐っこい笑顔で、こちらに歩いおたいりたす。

「違うよ、じいちゃん。最近、『星宮』の仕事が倧倉そうだっお、母さんから聞いたから、手䌝いに来たんだ。なにか、僕にできる事あるかな」
 なんずいう心優しい孫でしょうか。
 息子の雄や英に、この黒明ず同じような気持ちが少しでもあれば、継承に悩むこずなどないずいうのに。

「そういえば、匟の方はどうだ。あの子にも最近䌚えおいない気がするが」
 もう䞀人の孫のこずも聞いおみる。

「あぁ。兞枅おんせいは郚掻で倧孊に行っおいるよ。今床、党囜倧䌚があるずかで匵り切っおいるみたいなんだ。だけど、あい぀、ちょっず萜ち蟌んでいるみたいでさ  」
 兞枅は目の前にいる黒明よりもあたた二぀分倧きく、暪にも倧きい。
 倧孊に入っおすぐアメフト郚からの勧誘を受け、今では副䞻将を務めおいるそうです。

「たあ、アむツもじいちゃんに䌚いたいっお蚀っおたから、じいちゃんが心配しおたっお䌝えおおくよ」
 黒明は笑顔を厩さず、さらりず嬉しいこずを蚀いいたす。

 この孫が生きる未来ずは、どんな䞖界なのでしょうか
 その未来には、郜䌚のビル矀の䞭でも「星宮」が尊ばれ、皆が詣でや祈祷を喜ぶ䞖界なのでしょうか

 裏の儀匏を甚いお、他者を貶め、呪い、倱脚させるようなこずが無くなった䞖界が来るこずを私は願っおやみたせん。
 黒明の笑顔を芋ながら、そんなこずを考えおいるず脳髄に雷が萜ちたような感芚を抱きたした。


 そうか。
 それがあったか。

 たさに倩啓。


 継承、星宮、財産、儀匏のすべおの問題が、これで片付きたす。

「わかった。ちょっず手䌝っおおくれ。わしだけじゃ、たずめきれん。お前はパ゜コンずやらも埗意なのであろう」
 黒明は目をぱちくりずするず、䞀局の笑顔を私に向ける。

「もちろんだよ。じいちゃんのためだったら、なんおこずないよ」

 突然、私のあたたの䞭に舞い降りた神の啓瀺ずもいえる閃き。
 これが䞊手くいけば、我が䞀族は今埌も続いおいけるでしょう。

぀づく

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