
お願い、迎えに来てね #022 (3-5) 4文字で切り取らないで
第1部 諦念編|第3章
Hello, world.
消費されていく コンテンツ
明日になれば 忘れられている
その瞬間を 刹那に彩るだけの
上っ面の 極上フレーズ
そんなものは 溝へ捨ててしまえ
都合よく 切り取らせはしない
記憶に刻み込む
きみがいた 確かな存在
ぼくらはそれを 愛と呼ぶのかな
そこには、たくさん、本当にたくさんのお花が手向けられていた。
紗良ちゃんとお金を出し合って買った白い花束を、そっと供えた。
「どうしてここだったのかな?」
「どうしてあの日だったのかな?」
「何かあったのかな?」
「何がつらかったのかな?」
「いつからそう思ってたのかな?」
「突発的だったのかな?」
わたしも紗良ちゃんも、お互い疑問をぶつけ合っている。そんなことしたところで、問いの数が増えるばかりで、回答率はいっこうに上がらないのにね。
映画館の近くにある小さな踏切。遥真くんの自宅とは方角が違うから、どこかの帰り道とするには不自然で、わざわざここに来たように思える。何か思い出の映画でも……いや。ちょうど駅間の中間地点だから、電車の速度が出ている場所を選んだだけかもしれない。
「遥真くん。勉強大変だったみたいだよね」
地元の新聞には、学業不振で悩んでいたと報道されていたからか、原因を確認するかのように、紗良ちゃんが問いかけてきた。
「成績よかったからさ。当然、進学校の瀬波野高だと思ってたじゃん。本人は野球がやりたくて、勉強か野球か相当悩んでたらしいよ」
告別式に行けなかった紗良ちゃんに、そのとき聞いた話を続ける。
「それだけじゃないみたい。遥真くんには障害のある弟がいて、将来は自分が弟のめんどうみなきゃって思ってたみたい。だから立派な職につかなきゃ。そのためには大学行かなきゃ。私大はお金かかるから国立大に入らなきゃ。だから成績上げなきゃ……かなり追い込まれてた、って話。弟くんの人生も背負ってたみたい」
「知らなかった。ぜんぜん知らなかったよね?」
「うん。ぜんぜん知らなかった」
その話がどこまで本当のことかも、本人がどれだけ悩んでいたのかも、わたしたちにはわからない。だけど、わたしたちの知らない遥真くんがいたことは、紛れもない真実だ。
もし、わたしが死んだら、どんなふうに報道されるのだろう。なんにも知らないくせに「学業不振」とか、憶測で勝手に理由付けされるのかな?
上辺だけをみて、たった4文字で切り取られるなんて、絶対に嫌だ。
それでひとりの人間を納得したつもりなの。なかったことにされたくはない。
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