
お願い、迎えに来てね #012 (1-12) 背中越しのエール
第1部 諦念編|第1章
Hello, world.
きみは今 誠意という名の鍵をかける
だれかのために 自分をちぎるのを
おしまいにするんだと 決めたその手で
だれかのキセキを 強く祈る
それは 言い訳なんかじゃない
きみが選んだ 触れられない 愛のカタチ
照らす きみのままの場所
すべてが ぼくの 残酷で純粋な はじまり
和乃に許してもらうことばかり、考えるようになった。けれど、謝ったくらいで解決できる問題じゃない。悩んでも悩んでも、行き着く答えはいつも同じ。
貴樹くんをアキラメル
その一方で、心が割れるように叫び続ける。
貴樹くんが好き。好き。好き。
一足先に進路が決まった私立組と、これから戦いに向かう県立組。
教室の空気は、真っ二つに割れていた。
進路が決定している麗香は、県立組の焦りなんておかまいなし。後ろから背中を指先で突っついてくる。
「月桜。もうすぐバレンタインだよ。チョコ、あげなくていいの?」
「……まだ受験終わってないから。それどころじゃないよ」
「じゃあ、『明日の試験がんばって』って、言ってあげようか?」
心が揺れた。明日は貴樹くんの本命校の入試だ。貴樹くんが、今まで猛勉強してきたことは知っている。成績もぐんぐん伸びたことも知っている。それでも、貴樹くんの学力は、おそらく合格ギリギリのレベルだ。
電車で一時間近くもかかる。同じ中学の友だちもいない、誰も知らない環境。超難関の国立校。偏差値で輪切りにされた高校を選択するだけのみんなとは違う。貴樹くんの信念の強さに憧れている。
応援したい!
貴樹くんを諦めると決めたのに。
即座に、もうひとりの月桜が釘を差してくる。
だめだよ。
諦めるんじゃなかったの?
傲慢な月桜は、もう彼のことしか考えられない。
わたしが守ってあげるよ。
守ってあげる。
意志薄弱な自分を見ないふりして「人としてリスペクトしている」なんて言い訳を見つけて、麗香の提案に小さく頷いた。
麗香はくるっと後ろを向いた。今、貴樹くんに話しかけていることを、背中で感じている。
「言っといたよ。『うん』って頷いてた」
みるみるうちに頬が赤らんでいく。
麗香にからかわれたけど、そんなことはどうでもよかった。こんなにも麗香のお節介が、ありがたく感じたことはない。
合格ギリギリ。わかってる。
わかってるけど、不思議と落ちる気がしない。
大丈夫。わたしにはわかる。
貴樹くん。大丈夫だよ。
だってわかる。わかるよね。
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