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創䜜倧賞2025参加  神の噚 特別線「幻燈の通」【第話】「女王のルビヌ」

    桜子

    ↓第1話はこちら


    【登堎人物】

    間宮 真 32職業探偵。指揮胜力に優れた元刑事。
    神䟝 春䞀26語り手。異次元の掞察力ず異胜の持぀。
    神䟝 兞圊25春䞀の匟。春䞀の庇護者を自認する。
    荻原貎叞35卑屈な孊童保育指導員。


    【前回のあらすじ】

    矎ず教逊に満ちた、春䞀の瞳に映る䞖界に感嘆しおいた兞圊は、通に仕掛けられた異様なたでの密閉構造に気づく。窓にぱポキシ暹脂、非垞電源は人為的に切断、内偎から砎壊された非垞口の鍵穎。間宮ず兞圊は、通信断絶ず物理封鎖は偶然ではないず確信する。


    【第話】女王のルビヌ春䞀芖点

    「疑いの先にこそ、真実は埮笑む。」


    疑念の閉鎖空間


    グランドホヌルにいた俺を迎えに来た兞圊ず間宮は、俺を連れおリビングルヌムぞず戻り、通の滞圚者たちに䞀぀の事実を告げた。
    「通信蚭備に现工がされおいたした。配線の䞀郚が鋭利な工具によっお切断されおる。通信手段の断絶は、雷や嵐のせいだけじゃない。玠人にはできない、かなり蚈算された手口で、です」

    間宮が険しい衚情で顎を匕いた。
    「぀たり、ここにいる誰かが  倖ずの連絡手段を断ち、脱出経路も塞いで、完璧な“閉ざされた堎”を䜜り出したっおこずだ」

    郚屋の䞭で、初めお明確な事実が瀺され、重苊しい沈黙が広がる。誰もが息を呑み、音ひず぀立おなかった。

    そこに、志桜里の蚀葉が、ぜ぀りず零れた。
    「朝比奈さんは  本圓に自殺だったのでしょうか」

    矜賀が茶化すように話し出す。
    「た、確かに。取り乱し方は異垞だったが、あの女がマゞで自殺なんおする可愛げある性栌しおるかねぇ」

    把原が震える声で続けた。
    「もし、もし、仮に、誰かが圌女を殺したずしたら、その人間は今、この通にいるずいうこずですよね」

    蚀っおはならないはずの蚀葉だった。たるで鈍い刃のように党員の胞に突き刺さり、リビングルヌムが静たり返る。
    誰もが耳を傟け、心の䞭で反芻した。おそらく党員が考えおいたが、蚀及するこずを避けおいた珟実だった。

    「倖に出られない」
    「誰ずも連絡が取れない」
    「殺人者がただ、この通にいるかもしれない」

    間宮が硝子窓の倖を芋た。雷鳎が闇を裂き、雚が激しく叩き぀けおいる。
    「殺人か自殺か事故か、断定できない。ただ、ここが〝閉ざされた堎所〟になったのは事実だ。譊察にも連絡できず、倖にも逃げられない  ならば次にすべきは真盞の解明だ」

    宀内には、もうただの沈黙ではない空気が挂っおいた。疑念、恐れ、そしお確信。誰かが、状況を甚意したのではないか。
    嵐も封鎖も、偶然ずは思えない。誰もがそう考えた。

    「  こんなタむミングで、党郚遮断されるなんおありえるかよ」
    吐き捚おるような荻原貎叞の呟きが、決定打だった。誰も吊定しなかった。
    党員の䞭に、同じ認識が芜生える。

    これは仕組たれおいる。

    俺たちはただの蚪問者じゃない。
    この閉じられた舞台の、出挔者になったのだ。

    その予感は、じわじわず胞の奥に突き刺さり、党員の心に氷のように広がっおいった。雚の音が静かに響く䞭で、ただ䞀぀確かなこずがあった。

    それは、ここから誰䞀人ずしお出られないずいう事実だった。
    この通は、䜕者かの意図で封鎖され、殺意のために〝閉じ蟌められた〟のだず、誰もが理解しはじめおいた。



    黒の鞄


    間宮が䞀歩前に出るず、重たい沈黙がリビングルヌムを包んだ。党員の芖線が圌に泚がれおいるのを、ひしひしず感じた。

    芖線を䞀身に受けながらも、圌は淡々ず、しかし力匷く蚀った。
    「ここにいる党員に、手荷物の確認ず簡単な事情聎取に協力しおもらいたい」
    声は䜎く、だが揺るぎなかった。
    「俺は調査員ずしおここに来た。譊察が来るたで、ただ埅っおるわけにはいかない。呜がかかっおる。党員の無事を守るためだ。  協力しおくれ」

    兞圊が口火を切った。
    「道理です。調査に必芁なら圓然、協力したす」
    そしお兞圊は、すぐ隣の俺に優しい芖線を向けた。
    「  春䞀も問題ないか」

    声色が䞁重だ。どうやら俺を心配しおいるらしい。兞圊に埮笑みかけおから、間宮に察しお肯いた。
    「俺にできるこずなら。  お話しするずきは、兞圊が傍にいおもいいですか」
    おそらくこれが正解である。匟が嬉しそうで䜕よりだ。

    続いお志桜里が、巊手銖の粟緻な腕食りを撫でながら蚀った。
    「はい。倧䞈倫ですよ。でも、取り扱いには、どうかお気を぀けおくださいね。商売道具などもございたすから」

    宇田川は䞀぀咳払いをしお、スヌツの襟を敎える。
    「よろしく頌みたすよ。これ以䞊の事件は埡免ですからね」

    矜賀は、匟むように間宮に同意する。
    「おお、雰囲気あるなぁ。いいねえ、元ずはいえ匷行犯の刑事さんの取り調べが受けられるずは。喜んで協力するよ」

    どうやら少々䞍謹慎ずは自芚しおいるようだが、抑えきれないらしい。こんな事態だが、嬉しいものは嬉しい。それはそれ、これはこれ。ずおもよく解る。

    察照的に、山路は苊虫を噛み朰したような顔をしたたた腕を組み、吐き捚おるように蚀った。
    「君に埓う理由はないな。たったく、元刑事だからず偉そうに」

    間宮はそれに反応せず、次ぞず目を向ける。荻原貎叞が、やや背を䞞めお立ち䞊がった。
    「ああ、はい。わかりたした。  よろしくお願いしたす」
    その語尟には、どこか卑屈さず皮肉めいた調子が混ざっおいた。

    矎緒は静かに、しかしはっきりずした声で応じた。
    「はい。勿論です。必芁なこずでしょう」
    圌女の瞳はたっすぐ、間宮を芋おいた。

    そしお最埌に、把原がそわそわず身を揺らしながら挙手する。間宮の鋭い芖線が、少し苊手らしい。
    「はい。えっず、あの、俺なんでも協力したす」

    圌は今たで、なんでも協力しおきた。おそらくこれからもそうだろう。

    沈黙は嘘じゃない。圌の遞ばなかった蚀葉。そこにある、たった䞀぀の真実が報われるために、俺に䜕ができるだろう。

    こうしお、屋敷に閉じ蟌められた九人の関係者は、䞀人を陀き、職業探偵である間宮の求めに応じ、それぞれの立堎から協力の意思を衚した。

    間宮はリビングルヌムにある䞭倮の円卓の前に立ち、鞄やポケットの䞭身を広げるための堎所を敎えるず、淡々ず告げた。
    「順にお願いしたす。私が確認し、必芁に応じお事情も䌺いたす。拒吊暩はもちろんありたすが、その堎合はこちらで盞応の刀断をしたす」

    「君に䜕の暩限がある。改めお蚀う。私は拒吊する」
    山路は、間宮を睚み぀け、そう蚀い攟っおから、暖炉の前の長怅子ぞず向かった。間宮の元刑事ずいう肩曞、それが癪に障るのだろうか。

    「わかりたした。ただし、拒吊されたこずは蚘録ずしお残したす。これは皆さん共通です。埌で譊察が来たずき、状況説明の参考になりたすので」
    間宮は、刺すような鋭い芖線で呚囲を芋回す。
    その芖線に促され、皆が䞭倮の円卓から距離をずり、壁際に散っお埅機する圢になった。

    最初に進み出たのは、矎緒だった。
    端の剥げた黒い合皮のトヌトバッグを差し出し、静かに開く。

    䞭には草臥れた淡墚色の長財垃。䞭身は千円札がほずんどだ。小さな手鏡、小ぶりな化粧入れ、スマヌトフォン、濃藍の折り畳み傘、花色の手垳、苗色の垃補筆入れ、ポケットティッシュ、薄青の氎筒、キヌケヌス、電灯付き小型防犯ブザヌが入っおいた。どれも䜿い蟌たれおいお、堅実な生掻感がにじみ出る䞭身だった。

    鞄を自ら開き、手荷物を明かす、それは自身の生掻や䟡倀芳を晒すこずになる。真っ先に進み出た矎緒は、同䞖代の志桜里ず比べられるこずを欠片も恐れなかった。それは、薄い化粧、控えめな服装でも隠せない匷さだ。

    次いで志桜里が続く。
    圌女が差し出した゚トゥヌプの鞄。Chlorisのゞャンヌ。圌女が埡母堂から受け継いだその鞄には、䞁寧に手入れされ、倧切に慈したれおきた歳月が刻たれおいる。

    䞭身は、スマヌトフォン、槿花色の長財垃、星図・数列・顧客情報が䞊ぶ花玺青の革手垳、墚玺のむンクの桜柄の䞇幎筆、玫氎晶の数珠、小ぶりな鈎、癜檀のお銙、タロットカヌド、ハヌブポプリ、䞃皮類の倩然石が䞊ぶ銖食り型アミュレット、槿色の華奢な氎筒、携垯甚ハンドクリヌム、日焌け止め、ハンカチ二枚、リップクリヌム、ポケットティッシュ、぀げ櫛、猶入りのアロマキャンドル䞉個、小さく畳たれた玅藀色の矜織もの。信仰ず感性ず趣味、それらをすべお詰め蟌んだような内容物。

    次は俺たちの番らしい。間宮に無蚀の芖線で告げられる。圌はずおも芖線の䜿い方が䞊手だ。芖線だけでこれほど明確に指瀺が出せる人は垌少だろう。

    たず兞圊が、俺の手荷物怜査に付き添うようだ。促されるたた、鞄を兞圊に枡す。先月兞圊に莈られた、山矊革で仕立おられたグリヌニッシュブルヌのドラムバッグ。

    兞圊は俺の鞄を受け取るず、間宮の前で䞭身を取り出しおいくが、途䞭で奇劙な衚情が混じった気がする。なぜだろう。
    入れおいたのは、スマヌトフォン、浅葱色のミニりォレット、ハンカチ、キヌケヌス、小型LEDラむト、鎚の矜色の氎筒、象牙色の鹿革の小物入れ、懐䞭時蚈、板チョコ十䞀枚、キャンディ包みにした手䜜りキャラメル二十個瓶入り。

    間宮の顔が明らかに匕き攣った。そこたで驚くこずだろうか。䞉日ほど前、断片的ながら芖えた未来に備えお、少し準備しおおいただけなのに。

    でも、蚀及はなかった。圌は本圓に正しく優しい。人品ずいう蚀葉は間宮のような人のためにあるのだろう。

    兞圊は、間宮ぞ自身の鞄を匕き枡した。間宮が確認する間に、䞁寧にドラムバッグに荷物を詰め盎しおくれた。

    深瞹のフラップショルダヌ。䞀枚革で䜜られた無駄な装食のないそれは、俺に莈っおくれた鞄ず同じお店で、数幎前に賌入したらしい。柔らかな質感で革本来の個性を生かす゚シカルブランドを匟は気に入っおいる。

    䞭身は、スマヌトフォン、金青色のミニりォレット、玺桔梗の折り畳み傘、ハンカチ、ポケットティッシュ、キヌケヌス、モバむルバッテリヌ、藍色の氎筒。

    それから、现身の懐䞭電灯ず小型飲料。可愛い匟のために春䞀が気を利かせお入れおおいたその二぀に、兞圊は䜕故だか䜕ずも蚀えない顔をした。嬉しそうだけど、どこか困惑した衚情にも芋える。

    矜賀は軜快な足取りで、間宮の埅぀円卓ぞ向かっおいった。
    鈍色のWAY鞄から取り出されたのは、スマヌトフォン、海老色の二぀折り財垃、䞌錠の氎筒、デゞタルカメラ、モバむルバッテリヌ、黒革のA4取材ノヌト、ボヌルペン二本、USBメモリ、小型ノヌトパ゜コン、ICレコヌダヌ、充電ケヌブル、名刺入れ、ガム、サングラス、懐䞭電灯。
    たるで倖回り取材の完党装備だ。これでもかず䞊ぶ機材に、圌の執念深さが滲んでいる。

    次は把原。人懐こい笑みを浮かべながらも、どこか萜ち着きがない。
    玠錠のナむロン補ビゞネスリュックを勢いよく間宮ぞず差し出す。

    スマヌトフォン、萱草色の䞉぀折り財垃、玺錠の折り畳み傘、錫色の倧きい氎筒、モバむルバッテリヌ、銙染の小型手垳、ボヌルペン、雚合矜、図面ファむル、ICレコヌダヌ、安党手袋、ミントタブレット、ハンカチ、日焌け止め、懐䞭電灯。
    持ち物は倚いが、敎理されおおり、業務に忠実な性栌ず安党ぞの思いがよく刀る。だからこそ圌は、この事態を本気で案じお、本気で怯えおいる。党おを飲み蟌んででも守りたいのだろう。圌の持぀善性は、人間ずしお䜕より称賛に倀する。

    宇田川は躊躇うこずなく鞄を差し出した。その所䜜には、早期の収束を望む珟実的な姿勢がにじんでいる。
    「手短に頌みたすよ。こういうのは段取りが肝心ですから」
    口調は淡々ずしおいたが、協力の意志は明確だった。

    朜葉色の曞類甚革鞄の䞭から出おきたのは、鬱金色の長財垃、スマヌトフォン、盞枈茶の氎筒、加熱匏たばこ、名刺入れ、目薬、キヌケヌス、県鏡入れ、薄型タブレット、ハンカチ、ミントガム。
    どれも、身なりや察面を意識する職業人ずしお、ごく劥圓な持ち物である。

    最埌に荻原貎叞。圌は枋々ず黒の合皮補マグネット匏ブリヌフケヌスを差し出した。最小限の所持品に察しお、少々䞍釣り合いな倧きさの鞄。空間が䜙り収玍物が泳いでいる。鞄は䜿い分けない䞻矩らしい。

    内容は、スマヌトフォン、墚色の䞉぀折り財垃、ワむダレスむダホン、キヌケヌス、モバむルバッテリヌ、ペットボトル飲料。
      そしお、玅玉の耳食りが䞀぀、無造䜜に鞄の䞭に転がっおいた。暗い鞄の底で、赀い宝石は鮮やかに茝いおいた。

    「  これは、どういうこずだ」
    間宮がそっず拟い䞊げる。燭台の光を受けた玅玉は、深玅の炎のように揺れた。

    「これ、お前のでは、ないよな」
    間宮が凄む。䞀斉に芖線が荻原貎叞に向く。揺れる、疑惑ず譊戒の色。

    「なあ春䞀、あのむダリングっお、確か  」
    あれは朝比奈瑀子の耳元にあったもの。でも、女性の装食品にはあたり自信がないらしい匟に尋ねられた。即座に明瞭な答えを返す。
    「兞圊。あれは間違いなく、初めお䌚ったずき、朝比奈瑀子さんが身に぀けおいたむダリングだよ。圢状からみお巊耳のもの」

    鞄の䞭身が広げられた円卓の前で狌狜える荻原貎叞に向かい、把原がぜ぀りず呟いた。
    「じゃあ、どうしおお前が持っおるんだよ」

    宇田川が冷たく蚀い攟った。
    「たさか、朝比奈さんの遺品を」

    疑いの芖線を䞀心に集めた圌は、唇を戊慄かせ、血の気を倱った顔で立ち尜くす。
    「違うっ  俺じゃない 誰かが、入れたんだ」

    玅玉を芋぀めおいた矜賀が、息を呑む。
    「おい  その倧粒のルビヌのむダリング。それ、Kallistaの限定モデルだぞ。 癟貚店で即完売だったや぀。売れば、片方だけでも䞇はくだらない  」

    矎緒の声が䜎く響いた。圌女は、荻原貎叞に冷ややかな芖線を向けおいる。
    「そのむダリング、あの倜、朝比奈さんの耳には  ぀いおいなかったわ」

    圌女は、朝比奈瑀子の亡骞のある郚屋に足を螏み入れた䞀人だった。俺たちが床目に郚屋に入ったずき、続いお入宀した圌女に埌ろから声を掛けられた。

    「いや  違う  俺は、本圓に知らないんだ  」
    その声は震え、远い詰められおいく。

    だがそこで、矜賀がぜ぀りず呟く。
    「でもたあ、ちょっず出来すぎじゃないか  自分のカバンに蚌拠を入れずいお探偵に玠盎に枡す犯人なんお、今たで芋たこずないぜ」

    「では、あるいは、誰かが入れた、ず。圌に眪を被せるために」
    矎緒が、䜎く呟いた。

    䞀瞬で、堎が凍り぀く。





     
     
     

    桜子

     
     
    珟圚は無理せずノンビリ投皿。小説「間宮真の機胜的ロココ探偵事務所」を連茉䞭。昚幎投皿した「神の噚 幻燈の通」を倧幅加筆修正した新䜜旧䜜「倜に灯る〜幻燈の通〜」を投皿。北郚九州圚䜏。小説を曞き始めお早幎カ月。

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