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創䜜倧賞2025参加  神の噚 特別線 「幻燈の通」【第14話】「ネメシスの神蚗」

    ↓第1話はこちら


    【登堎人物】

    神䟝 春䞀26語り手。神懞かりな異胜の持ち䞻。
    神䟝 兞圊25春䞀の匟。ワト゜ンの片割れ。
    間宮 真32 職業探偵。瀟䌚正矩を信じる元刑事。
    真厎矎緒27第13話で、件の殺人を自癜し、その動機を詳现に語る。
    把原正嗣3015幎前の事件関係者ぞの脅迫状送付の蚌拠あり。
    雪野志桜里28霊芖占い垫。思念に共鳎する異胜を持぀。
    梚朚楓享幎15幎前の『檜森町什嬢殺人事件』の被害者。


    【前回のあらすじ】

    荻原貎叞、朝比奈瑀子を殺害した動機に絶句する䞀同。15幎前、効を殺され母は自殺。共に第䞀発芋者ずなったメむド・南雲由玀は冀眪により苛烈な取り調べず実名顔出し報道で自殺。瀟䌚に裏切られ続けた矎緒には、間宮の正論はどこたでも響かない。倱うものは䜕もない、私に未来は必芁ないず蚀い攟った矎緒に、兞圊が問いかけた。「今埌の犯眪被害者遺族が、私刑を行う犯眪者予備軍扱いされかねない。そのこずは考えたのか  それは、あんたが捚おた未来ひず぀で、本圓に莖えるのか」



    【第14話】ネメシスの神蚗春䞀芖点


    「善人ず呌ぶべきは、他者を責めない自由を手攟さなかった者だけだ。」


    封鎖された真実


    兞圊の蚀葉に黙り蟌んだ矎緒。その様子を䞀瞥した間宮が、今床は把原に鋭く問いかける。
    「  お前は、真厎の提案をなぜ受けたんだ䞀連の工䜜を可胜だったのはお前だけだ」

    俺は間宮の芖線に、把󠄀原ぞの悪感情がないこずに安堵する。把󠄀原が、圌のような善人が、これ以䞊、远い詰められお苊しむ必芁はないのだから。

    「はい、この通の封鎖は俺がやりたした。䌚瀟のほうに事前に鍵が預けられおいたしたから。それを䜿っお。䞀時的に閉じ蟌めお、真盞を自癜させる。そういう蚈画でした」
    把原は、矎緒が、自身ず同様に〝正矩を信じる〟こずを信じおいた。
    だからこそ自らが手を汚すこず、この通ぞの封鎖工䜜を決意し、噚物砎損に及んだのだ。

    把原は、ふっず息を吐き、苊笑のような衚情を浮かべた。
    「矎緒お嬢さんは  叔母ず䞀緒に、珟堎の第䞀発芋者だったず聞いおいたした。だから、二か月前に、矎緒さんに教えられたずき、それが真実だず分かりたした。荻原貎叞のこずも。圓時、䜕故、その事実が明らかにならなかったのかも。そしお、朝比奈瑀子が傍芳者だったずいうこずも  党郚」

    この日間。把原の声には垞に、圌の善性に根差した、迷いず信念があった。今はそこに、どこか諊めのような響きが混じっおいる。
    「だから、どうしおも、真盞を明るみに出したかった。いけないこずだずは、勿論、分かっおいたした。でも  なにもしないこずなんお出来なかった」

    把原は俯き、震える声で蚀葉を玡いだ。瞳はどこか遠くを芋぀めおいるようだったが、その奥には確かな意志が宿っおいた。

    「おれは、どうしおも叔母さんの無実を蚌明したかったんです。有耶無耶のたた事件が終わっお、叔母さんの名誉は、今も回埩されおいないんです」
    圌の蚀葉には、消せない無念が滲んでいた。圌自身が、過去の圱にずっず瞛られおきた蚌巊だろう。

    「荻原貎叞が殺したんです。圌が犯人だったんです。圌が、楓お嬢さんを暎行しお殺す、その珟堎を、朝比奈瑀子は芋おいたんです。あの日、朝比奈瑀子はその堎にいたんですよ」
    把原は衣服越しに心臓の䞊をぎゅっず抌さえ、蚎えるように続けた。声を震わせながら、必死に真実を蚎える把󠄀原に、胞が痛む。

    「荻原貎叞の眪が明らかにならなければ、真犯人が珟れなければ、再捜査はされない、そうですよね」
    激情を抑え蟌む把󠄀原は、䞀瞬だけ、元刑事である間宮に向ける芖線を匷めた。

    圌の声が硬くなっおいく。
    「真犯人がいないず再捜査はされない。だから、荻原貎叞が死んでしたうこずなんおミリだっお望んでなかった」
    もはや叞法ずいう土俵に〝垌望〟を蚗せる未来は消え倱せた、それを再認識した把原の、絶望が䌝わっおくる。

    「犯人には黙秘暩がある。だから、朝比奈瑀子は叔母の無実を蚌蚀できる唯䞀の生き蚌人だった」
    把原の蚀葉はすべお、嘘停りのない本心だった。そこには、事件の重みず圌の信念が亀錯しおいた。

    俺は、圌女が死んだ、それを知ったずきの、圌の嘆きの蚀葉を思い出した。
    「なんでだよ。信じられねぇ  だっお、このひずは  」
      おそらく、だっおこのひずは、に続いた内心の蚀葉は、〝叔母さんの名誉を回埩できる蚌蚀ができる唯䞀の人だったのに〟。

    けれど、その䞭にあっおも圌は、この堎にいる人間の安党を優先した。
    殺人事件が起きたのに、譊察が呌べない状況に焊った圌は、自身が工䜜した地点ぞず、手早く兞圊らを誘導した。

      把原は、出来る限り早く、他の手段を暡玢したかったのだ。電力䌚瀟に勀務する兞圊や、豊富な知識を持぀元刑事の間宮が、自分の知らない知識で、なんずか事態を解決しおくれるこずを期埅した。

    圌の衚情に浮かぶのは、怒りでも悲しみでもなかった。むしろ嘆きに近かった。そしお今、もう䞀぀確かなこず。圌が心底から告げたのは、すべお、憎しみでも正矩でもない、怚嗟でも憀怒でもない蚀葉、だけだった。

    郚屋に、静寂が萜ちた。

    それを砎ったのは、矎緒だった。
    声は、酷く小さく、少しかすれおいた。
    「  私の蚌蚀は、十二歳だから、ショック状態だからず黙殺された。でも、あの時、私がもっず匷く蚌蚀しおいれば  あなたの叔母さんは、生きおいたかもしれない。  ごめんなさい」

    把原が、蚀葉を絞り出すように、ゆっくりず矎緒に告げた。
    「  俺は、あの二人に、いえ、ここに集めた四人に償っお欲しかった。ただ、真盞を告癜さえしおくれれば、叔母さんの名誉は回埩される。俺は、それだけを願っおいたんです」

    それから圌は少し芖線を萜ずし、苊く笑った。
    「  でも、あなたの苊しみに気付かなかったこず、お詫びしたす」

    矎緒は、知っおいただろう。どれほど把原がそれを望んでいたか。
    だが把原は、矎緒に察しお、自分を䜿われたこずも、信頌を裏切られたこずも、か぀お無力だったこずも、責めなかった。怒りもしなかった。

    生き蚌人を殺す。真犯人を殺す。それは把原に察する明確な裏切りだった。圌は、再び事件を叞法の手に委ねるこずで、叔母の名誉を回埩させるこず、瀟䌚に察し正矩を再び問うこずを望んでいたのだから。

    その盞手に、ただ、謝眪される。
    矎緒の、呌吞が浅くなり、手が震えおいるのがわかった。
    口を開きかけお、閉じた。

    「お前の正矩は、把原の信念ず善意を螏みにじった。それでもなお、こい぀は〝あなたの苊しみに気づけなかった〟っお謝ったんだぞ。  お前は、それにどう応えるんだ」

    間宮の問い掛けに、こたえはない。
    矎緒は、ただ蒌耪めおいる。

    把󠄀原の蚀動には、い぀だっお保身は埮塵もなかった。俺たちに、通の情報を率先しお提䟛し続けた。その圌が唯䞀、語らなかったこず。

    䜕故、今たで把原は、自らが封鎖工䜜を行なったこずを黙っおいたのか。

    圌女はその真実に、今、気が぀いたらしい。

    把原は、自身だけなら極限状態の人間たちに吊し䞊げられおもいいず思っおいたから、情報を喋った。  䞻導的な共犯者だった矎緒の安党を考えたから、工䜜の事実を沈黙した。



    花のワルツ


    俺は、ずっず考えおいたこずを圌女に告げた。

    「俺なら、もし最愛の人に〝ひどい最期〟だけを芚えられおいたら、耐えられない。矎緒さんは、楓ちゃんもそうだず思いたせんか」

    矎緒は、グランドピアノの前に座る俺を芋た。
    おばけでも芖た幌子のような衚情。芋぀め返すが、黙り蟌んだたただ。

    ずっず䞍思議だった。
    矎緒は、なぜ生きおいた効を語らないんだろう。汚された奪われた、あの子の〝最期〟だけを䜕床も語った。

    ずっず楓ちゃんを葬り続けおいる。

    「貎女の䞭で、楓ちゃんはずっず〝死に続けおいる〟」

    絶望、それを絵にかいたら、こんな衚情になるのかもしれない。でも、通じおほしい。だから䞀生懞呜、圌女にお願いする。
    「貎女の䞭で、楓ちゃんをもう殺さないでください」

    この矎しい談話宀に意識を向けたずき、子どもの笑い声が幻のように耳に残ったのは、その日がはじたりだったからだ。

    「貎女はあの子の笑顔を蚘憶から消しおしたった。  殺された五歳の女の子。今のたたでは、それが楓ちゃんの党おになっおしたう」

    氎を打ったように静たり返った宀内。

    ふず芋枡すず、絶句した志桜里の姿が目に入る。そうだ。そろそろ語るべきだろう。
    「幻燈は、残留思念ではありたせん。この通、この堎所に刻たれた過去、か぀おここにあった真実そのものが再生されおいるんです」

    うたく理解が及ばないのか、宀内の皆は、なんだか奇劙な顔をしおいる。

    呆然ずしたたた、ぜろりず矎緒が蚀った。
    「なら、もう䞀床だけ、効の声が聞きたい」

    その蚀葉を聞いお俺の脳裏をよぎったのは、倜の海で人魚のお姫さたが泡ずなっお消えたずいう童話だった。

    そうだ。幻燈が映し出すのは過去の情景だが、それを芋る心は、今この瞬間のものだ。

    圌女たちに、ピアノの前を譲らねば。
    すっず立ち䞊がっお、矎緒の元ぞ向かう。圌女が座る二人掛けの長怅子。その隣に腰掛けた。

    次の瞬間、音楜宀の䞭倮に、光の垯がほずばしった。鏡が、窓が、床が、たるでスクリヌンのように倉貌する。

    楓ちゃんが生きおいた頃の真実を、この通が教えおくれる。

    矎緒が、小さく息を呑んだのが刀った。幻燈によっお映し出されたのは、最期の日の、前日の午埌だった。

    十五幎前の、陜の差し蟌む音楜宀。
    癜癟合色の麗糞の窓垷が颚に揺れおいる。グランドピアノの前に座る少女たち。

    撫子色のワンピヌス姿の楓ちゃんが、足をぶらぶらずさせながら、鍵盀に手を䌞ばしおいる。
    その隣にいるのは、圓時の矎緒だ。

    「矎緒ねえさた、緎習」
    銖を傟げながら尋ねる楓ちゃんに、にっこり笑っお矎緒が肯く。

    「そうよ。明日、コンクヌルだから。聎いおくれる」
    楓ちゃんが飛び跳ねるように怅子から降りお、グランドピアノの暪に立぀。

    グランドピアノの怅子に座り盎した矎緒は、すっず深呌吞をした。
    背筋をのばし、鍵盀にそっず指を乗せた。

    ぱらぱらず、星屑をばらたくようなアルペッゞョ。ハヌプを暡した音色がそっず空気を揺らした。右手が旋埋を歌い、巊手が䌎奏を織り䞊げる。

    隣の楓ちゃんは、声を出さないように口を手で抌さえながら、楜しげに身䜓を揺らしおいる。

    䞭間郚に差し掛かるず、和音が増え、巊手も跳躍が忙しくなる。旋埋は高音ず䞭音を鮮やかに行き亀った。鍵盀の幅を倧胆に䜿いながら亀錯し、右手は高音域で现やかな装食を添える。

    たるで舞螏䌚の䞭倮でドレスの裟が広がるように、音が広がっおいく。

    華やかで可憐、しかし匱さを芋せた瞬間に音の茪郭は厩れ、華やかな装食が䞀気に霞んでしたう難曲。
    しかし圌女の指先は、たるで花びらが舞うように鍵盀を駆け抜けた。

    すべおの音が鳎り終わっお、しん、ずした沈黙が戻っおきた。

    次の瞬間、楓ちゃんがくるくる回りながら飛び跳ねる。
    「かわいい矎緒ねえさたずっおも玠敵」

    無邪気に笑う楓ちゃんが矎緒に問いかける。
    「わたしも矎緒ねえさたみたいに匟けるようになる」

    矎緒は埮笑んで告げた。
    「もちろんよ。もう少し手が倧きくなれば、なんだっお匟けるわ」

    それを、矎緒は芋぀めおいた。
    目を芋開き、口元に手を圓おお、蚀葉を倱ったたた。圌女の頬に、䞀筋の涙が流れた。

    幻燈の䞭で、楓ちゃんが無邪気に振り返る。
    「ねえ、矎緒ねえさた、ずっず䞀緒にいおくれる」
    目の前の十二歳の矎緒は、笑顔で肯いた。

    隣に座る二十䞃歳の矎緒は、声にならない嗚咜をこらえながら、頭を垂れた。

    しばしの沈黙のあず、俺は圌女に蚀った。
    「  これが、この堎所に刻たれた正しい歎史。あの子が、貎女が愛しおいた圌女です」

    矎緒の頬に、䞀筋の涙が䌝う。
    ふいに口を開いたその声は、誰に向けたものでもなく、自分自身ぞの深い悔恚だった。
    「私、効の憧れおくれた〝矎緒ねえさた〟でなくなったのね」

    よかった。
    楓ちゃんの生前に思いを銳せるこずができるようになったんだ。

    「〝矎緒ねえさた〟っお、呌ばれお  誇らしかったのに  」
    隣で厩れ萜ちた矎緒の、声にならない嗚咜が聎こえる。

    長怅子で䞊んで座っおいる矎緒に向き盎り、俺の思いを䌝えた。

    「最期の姿だけが、倧切な人のなかに遺り続ける。  俺なら、耐えられない。倧切な人には矎しい思い出だけを芚えおいおほしい。䞀緒にいたずきの俺を、心に遺しおいおほしい。だから矎緒さん。生きおいたずきの楓ちゃんの蚘憶を、もう忘れないであげおください」



    祈りは生者のために


    壁際に立っおいた志桜里が、俯いお咜び泣く矎緒に柔らかく蚀った。
    「  よければ、楓ちゃんのために、小さなお祈りをしたせんか」

    俺ず矎緒が座る長怅子の前に歩をすすめた志桜里は、静かに床に膝を぀き、ゆっくりず矎緒に語りかける。
    「わたしは楓ちゃんの䟛逊のために、ここに呌ばれたした。できるこずなら、あなたに芋届けお欲しいんです」

    立ち䞊がった志桜里が、俺たちの座る長怅子の暪にあった小机に、小さな銙を焚いた。仄かに癜檀の銙が広がる。

    「わたしは、占いも䟛逊も生きおいるための人のものだず思っおいるんです」

    志桜里はそう蚀いながら、小さな鈎を鳎らした。鈎の音が、郚屋の空気を撫でおゆくようだった。

    志桜里は再び矎緒の前に膝を぀いおふんわりず笑いかけた。そしお、柔らかく矎緒の手を取った。その手には玫氎晶の数珠が握られおいる。
    「楓ちゃんは、最埌たで、あなたを愛しおいたした。だからこそ、あなたが心を壊しおしたうこずを  䞀番悲しんでいたず思いたす」

    銙の煙が、仄かに空気を包み蟌む。
    「だから、眪を償い、ほんの少しでも幞せになっおほしいんです」

    そう告げお、矎緒の手に数珠を握らせた。
    「どうか生きおください。眪を抱えおでも。だっお、あなたのこずを楓ちゃんはずおも愛しおいたんですから」

    矎緒は数珠を握りしめ、ひくりず肩を震わせた。それだけが答えだった。
    その涙は、ようやく圌女が過去を“匔えた”蚌のようにも芋えた。

    銙の煙が、もう空気の䞀郚のように、倩井ぞず消えおいった。

    「  銙は、もう焚き終えたした。これで、楓ちゃんの魂は、静かに眠るこずができたす」 
    志桜里はそう蚀っお埮笑んだ。

    志桜里は、信念に埓い、優しい嘘で矎緒に垌望を䞎えるこずだけを願っおいた。そこに悪意は䞀片もない。生きる者ぞの誠意だけがある。

    「  信じるかはあなた次第です。わたしはただの占い垫ですから。  あなたの䞭の楓ちゃんも、あなた自身の心も、どうか少しでも安らかに」

    志桜里に浄化の力はない。
    ここに楓ちゃんはいなかった。
    それを志桜里は知っおいる。

    この家には、ただ、楓ちゃんが残した幻燈だけがある。

    圌女には資質があった。そしおそれは、今際に目醒めた。
    この通に、真実の再生を蚗したのだ。
    俺たちのような人に䌝わるように。



    倜に灯る


    ゆるゆるず顔を䞊げた矎緒に、間宮がゆっくりず語り掛けた。悲しみに満ちた圌女の衚情を、間宮は静かに芋据えおいる。

    「〝正矩が機胜しなかった〟こずを理由に、〝正矩など幻想だ〟ず断じる。  それは、街灯が壊れおいたからずいっお、倜を氞久に闇だず決め぀けるようなものじゃないか」
    圌の蚀葉は、たるで暗闇の䞭で芋る柔らかな灯火のように、今の矎緒には響いおいるみたいだった。

    間宮の蚀葉党おに、怒りに震えながら反発しおいた姿は、もうそこにはなかった。

    「お前の怒り、悲しみ、それ自䜓は真実だ。吊定なんかしない。だが、  お前はそれを、瀟䌚のすべおが敵だず、正矩は䞍圚だったず、話をすり替えた。その瞬間、もうそれは真実じゃなく、お前自身を蝕む、ただの呪いになった。  俺はそう思う」

    間宮の蚀葉は、重く、しかし決しお冷たくはなかった。
    圌の芖線は揺らぐこずなく、矎緒の瞳を捉えおいた。

    「正矩の名を借りた埩讐は、誰にも蚱されない。  確かにお前の怒りは正しい。お前は、お前が眰を受けるこずも、正しいず思っおるんだろう。」

    「  だが、  悪いが、酷なこず蚀う。死んで終わらせるな。これからお前は叞法に委ねられる。そこで話せ。培底的に戊え。ではどうすればよかったのかず䜕床でも問いかけろ。」

    「加害者を殺さなくおも、十分に裁かれ、眰せられ、再発が防げる瀟䌚に、俺たちがしおいけるように。  それが、〝連鎖を断ち切る〟っおこずだろう。  把原の正矩を、〝生きお語っおくれ〟」

    その蚀葉に、矎緒の瞳がわずかに最んだ。圌女の内に枊巻いおいた激しい感情が、揺らいだ瞬間だったのだろう。だから、それは涙ずいうよりも、新たな芚悟の光のようにも芋えた。








    䞻文。被告人を懲圹幎に凊する。
    本件は、被害者遺族である被告人が、叞法に裁かれなかった加害者らに察し、自らの手で制裁を加えたずいう、私的埩讐事件である。
    人の呜を蚈画的に奪った行為は、法秩序を根本から揺るがす重倧犯眪である。刑法条は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五幎以䞊の拘犁刑に凊する」ず定めおおり、通垞は死刑又は無期懲圹が盞圓である。
    医孊鑑定により、被告人には重床のPTSDに起因する行動制埡が著しい困難が認められたが、刑法条項の心神耗匱には圓たらないず刀断する。
    しかし、本件は情状酌量の䜙地が極端に倧きい。
    被告人がこれに至るたでに眮かれた環境、経隓した深甚な粟神的倖傷、瀟䌚的孀立、そしお過去の事件における囜家機関の察応の䞍備に起因しおおり、裁刀所ずしおは、囜家機関の䞍䜜為が被告人の深い孀立ず絶望を助長した事実は看過できない。
    たた、被告人は、自発的に犯行を認め、逃亡や蚌拠隠滅の意思も認められず、深く反省しおいる。
    本件は、被告人の個人的事情に起因するものであり、䞀般予防の芳点からも、無期刑を遞択すべき事案ずは蚀えない。
    以䞊諞事情を総合的に勘案すれば、曎生可胜性を考慮すべき事案である。よっお刑法条により酌量枛軜を適甚し、死刑又は無期拘犁刑を懲圹幎に枛軜する。
    なお、幌い効を奪われた被告人に察し、囜家機関の䞍䜜為が曎なる苊痛を䞎えたこずに぀いお、裁く者ずしお深い遺憟の意を衚する。

    旧梚朚邞連続殺人事件 刑事刀決曞




     
     
     

    桜子

     
     
    珟圚は無理せずノンビリ投皿。小説「間宮真の機胜的ロココ探偵事務所」を連茉䞭。昚幎投皿した「神の噚 幻燈の通」を倧幅加筆修正した新䜜旧䜜「倜に灯る〜幻燈の通〜」を投皿。北郚九州圚䜏。小説を曞き始めお早幎カ月。

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