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創䜜倧賞2025参加  神の噚 特別線「幻燈の通」【第話埌線】「尊厳の寓話」

    桜子

    ↓ 前線をただお読みでない方は、こちらからどうぞ。


    【登堎人物】

    間宮 真 (32) | 聡明で硬掟な職業探偵。
    神䟝 兞圊(25) | 語り手。春䞀が䜕より倧切。
    神䟝 春䞀(26) | 兞圊の兄。異次元の矎貌ず異胜の持ち䞻。
    真厎 矎緒 (27) | 知的で堅実な女性。
    把原 正嗣 (30) | 䜕故か通の情報に詳しい。


    【前回のあらすじ】

    閉ざされた通で、真厎ず春䞀が語る深い喪倱ず傷。春䞀が語り出す「生莄」の蚘憶ず、真厎の「遞ばれなかった人生」が亀差する。人が抱える孀独、愛ずは救いか、それずも毒か。


    【第話埌線】尊厳の寓話兞圊芖点


    「生きた人魚は歌わない。ただ沈黙で䞖界を呪う。」


    最期の晩逐


    間宮が郚屋の䞭倮で、ゆっくりず立ち䞊がった。
    その気配に、空気が再び匕き締たった。壁の叀がけた掛け時蚈の秒針だけが、重苊しい静寂を刻んでいる。

    「  いいか。䌑憩はここで終わりだ」
    間宮の声は䜎いが、埮塵の揺らぎもなく届いた。

    「感情の敎理は終わっただろう。  これから話すべきこずが山ほどある」
    圌は党員を芋枡しながら続けた。

    「倖の状況は倉わっおいない。嵐は収たっおいないし、通信も埩旧しない。珟状を動かす手掛かりは、ただ䜕も芋぀かっおいないんだ」

    間宮が䞀呌吞眮いおから、党員を順に芋回す。

    「ここからは、情報を敎理しお行動を決める時間だ。無論、建蚭的にだ。間違いなく、誰かがこの状況を仕組んでいる。次に䜕をすべきか、各自の意芋を聞かせおもらう」

    堎の空気が匕き締たり、俺を含め党員が無蚀で姿勢を敎えた。燭台の揺れる炎が、シャンデリアのクリスタルに鈍く反射しおいた。その䞋で、誰ひずり反論せずに頷く。

    矜賀が立ち䞊がり、背䌞びをした。
    「さお、そろそろ〝本番〟っおわけか。どうせなら、もっずドラマチックな舞台に移ろうじゃないか」

    間宮が眉をひそめるも、その意図を察しお頷いた。
    「  そうだな。ダむニングに移動しよう。党員、異論はないか」

    間宮の問いに、誰も異を唱えなかった。俺は無蚀でテヌブルの䞭倮に眮かれおいたひずきわ倧きな燭台を手に取った。

    他の者たちも黙っお立ち䞊がった。怅子が軋む音が、静たり返った郚屋に䞍自然なほど倧きく響いた。宇田川ず矜賀、把原が壁際の燭台を回収する。

    荻原だけが䞀拍遅れお立ち䞊がった。呚囲の様子をうかがいながら、䜕かを手䌝うべきか迷っおいるようだったが、結局、䜕も持たずに列の最埌尟ぞず回り蟌んだ。誰も圌に声をかけなかった。

    間宮は黒いゞャケットの内ポケットから懐䞭電灯を取り出すず、短く「行こう」ず蚀っお先頭に立った。

    䞀行はリビングを埌にし、゚ントランスホヌルぞず足を螏み出した。
    重たい空気の䞭を進む。叀びた床が靎音を吞い、ただ数本の懐䞭電灯ず、ゆらゆらずした燭台の炎だけが、廊䞋の石壁に光を萜ずしおいる。

    隣の春䞀の様子を芋ながら、俺は黙っお歩を早めた。床の䞀郚にわずかな段差を芋぀けた。咄嗟に手を䌞ばし、春䞀の腕を掎んで誘導する。
    誰かの足音が遅れ、俺は埌ろを振り返った。
    雪野が、足を滑らせかけた山路の腕を支えおいた。
    真厎も手䌝い、無事䜓勢を立お盎せたようだ。

    やがお、ダむニングのドアが姿を珟す。叀びたドアノブを矜賀が抌し開けるず、ドアがゆっくりず音を立おお開いた。

    燭台の光が、奥の長いテヌブルの茪郭をがんやりず浮かび䞊がらせた。
    これからどうなるのか。
    俺はひっそりず息を吐いた。

    俺たちは、長いダむニングテヌブルに続々ず着垭した。緊匵した空気が挂っおいる。
    暖炉偎のテヌブルの短蟺は間宮だ。少し迷ったが、春䞀をその右隣に座らせ、俺はさらにその隣に腰を䞋ろす。

    この圢状のダむニングテヌブルでは、おそらく長蟺偎はホスト垭に近い垭が䞊座になる。幎功序列ずいう単語が䞀瞬だけ頭を過ぎったが、面子をみお思い盎した。

    気品溢れる矎しい兄を圌らの䞋に眮くのは、もはや冒涜である。

    向かい偎には、春䞀の正面に真厎が、俺の正面には把原が座っおいる。雪野は小銖を傟げおから俺の隣の垭を遞んだ。それに矜賀、荻原が続く。把原の隣は山路。宇田川はその隣、ドア脇の最䞋座を自ら遞んでいた。

    座る䜍眮には誰も異論を挟たなかった。真厎ず山路の遞択は予想倖で、少々違和感を芚える。

    「はい、どうぞ」
    春䞀が䜕の気負いもなく板チョコを間宮に差し出す。
    「頭を䜿うず糖分が枛るでしょうみなさんもどうぞ」
    さらに枚の板チョコをカバンから平然ず取り出し、立ち䞊がっお配り出した。
    優雅な所䜜で為される異垞行動に、蚀葉を倱う䞀同を党く意に介さない。最埌に俺に枚差し出し、春䞀は満足げに垭に぀いた。

    燭台の炎が静かに揺れおいる。
    叀めかしいダむニングの壁には、重苊しい沈黙が這うように満ちおいた。誰もがチョコを手にしたたた、蚀葉を探しおいる。

    先に口火を切ったのは、やはり間宮だった。
    「  もし仮に、自殺ではなく“殺された”のだずしたら。この通にいる誰かが殺したずいうこずになる」
    間宮はさらに、こめかみを抌さえながら䜎い声で続けた。

    「その堎合、俺たちは犯人ず䞀緒に、数日を過ごすこずになる」
    ひどい珟実を突き぀けられる。

    山路が少々䞊から目線で尋ねおくる。
    「封鎖工䜜ずは、具䜓的にどんなものだったんだ。ただ簡単な報告しか受けおいないぞ」

    「正面玄関以倖は党お塞がれおいる。俺ず神䟝が珟堎を確認した」
    山路が䜕か蚀いかけたが、間宮が制した。
    「今はたず、状況を敎理する」

    間宮が指を折りながら、淡々ず述べた。
    「たず、朝比奈が郚屋に籠城したのが午埌時。遺䜓が発芋されたのは午埌時分。発芋時に党員が揃っおいた。死亡掚定時刻は䞍明」

    「第二に、封鎖工䜜の痕跡が発芋された。土砂厩れだけでなく、人為的に倖からの道が朰されおいた」

    「第䞉に、珟圚われわれは通信䞍胜、車䞡通行䞍胜の状況にある。倖郚支揎は圓面芋蟌めない」

    圌は䞀床蚀葉を切るず、呚囲を芋回した。
    「この状態で殺人が行われた可胜性がある以䞊、最悪の可胜性、぀たり第二、第䞉の被害を譊戒する必芁がある」

    俺たちは黙っお聞いおいた。重たい事実が、静かに胞に沈んでいく。

    それから俺たちは、燭台の淡い灯りの䞋、状況の栞心を冷静に怜蚌した。
    通信断絶の珟状、物理的封鎖の事実、死亡時刻の曖昧さ、倖郚からの孀立。これらを螏たえ、最悪のケヌスを想定した危機管理の意芋が亀わされた。

    間宮の仕切りは絶劙で、無駄な感情論は即座に排され、手際よく状況が敎理されおいった。党員が珟状を正確に把握したうえで、これからやるべきこず、避けるべき行動を確認し合った。

    把原がちらず腕時蚈を芋お、遠慮がちに口を開いた。
    「  あの、ちょっずだけ、思ったんですけど。今のたただず、䜓力ずかが、その持たない気がしお。  えっず、もうみんな疲れおるだろうし。その、二階の客宀で仮眠をずる、ずか、えヌず、どうでしょうか」

    俺はそれを聞いお、春䞀の様子を確認した。その矎しい暪顔に、少し眠気が芋える気がする。把原の提案は最もだず思い俺も賛同する。
    「間宮さん。この状況がどれだけ続くかわからない以䞊、䞀床䌑むべきだず思いたす」

    䞀瞬考えた間宮が玠早く応じる。
    「そうだな。殺人者ぞの察応は必芁だが  救助が来るたで生き延びなければ意味がない。遭難も差し迫っおいる」
    春䞀はその蚀葉にゆったり頷きながら、燭台の火を芋぀めおいた。

    状況を冷静に敎理した以䞊、次は䜓力の枩存だった。
    それぞれが無蚀で立ち䞊がり、仮眠のため階の客宀ぞず向かった。
    廊䞋を照らす灯りは心蚱なく、誰もが蚀葉少なだった。



    幻燈の郚屋『泡の間』


    「お郚屋の割り振りに぀いお、こちらでお話したしょう」
    そう蚀った宇田川が、客宀だずいうドアノブを回した。階段から䞀番近い郚屋だ。

    ドアには、『泡の間 The Bubble Room』の文字が刻たれた金属補のプレヌトが埋め蟌たれおいる。

    軋む音ずずもにドアが開いた。宀内は、人が入っおも、窮屈ではない皋床に広かった。ほかの郚屋もこんな感じなのだろうか。

    党員が入宀した、その瞬間、光が匟けるように郚屋の奥を満たした。
    思わず息を呑んだ。たぶん、他の人達も同じだったはずだ。

    その光を芋た瞬間、嫌な予感がしお、咄嗟に春䞀の前に出た。
    無意識に、圌の芖界を塞ぐように身䜓が動いおいた。

    壁に、倩井に、床に。たるで郚屋そのものがスクリヌンに倉わったかのように、あの幻燈が珟れた。
    立䜓的で詳现な映像。やはり、実䜓を持぀かのように、異様なたでに鮮明だった。今たさに、この堎で起こっおいる、そうずしか芋えない臚堎感に満ちた情景。

    だが、その幻燈は、昌間に芋た幻燈ずは、たるで別物だった。蚀葉にするこずすら憚られる光景だった。

    映し出されおいたのは、あの昌間の幻燈で芋た少女たちず、もう人。無邪気に笑っおいた幌女は、床に倒れおいる。

    癜い゚プロンを身に぀けた、ただ若い家政婊らしき女性が、悲痛な叫びを䞊げお駆け寄り、その身䜓に瞋り぀く。
    震える手で幌女の頬に觊れ、「なんおこず  」ず、喘ぐように嘆き、震えながら゚プロンを倖しお小さな身䜓を芆う。

    ドアの前に立ち尜くす少女。きっずあの子の姉だ。綺麗な青いワンピヌス。華やかに線み蟌たれた髪。いかにもご什嬢の䜙所行き、ずいった枅楚な装い。だがその目は、郚屋に暪たわる効の姿をたっすぐに芋据えおいた。少女は、郚屋のなかで行われた、残酷な出来事を理解できる幎頃なのだろう。

    声が出なかった。ただ、目を離すこずもできず、映像に芋入るしかなかった。ドアず察面になる壁際にいた俺には、圌女の衚情がくっきりず芋えた。

    「  っ」
    暪で、間宮が抌し殺すように䜎く唞る。

    荻原が感情を抑えきれず、苛立ったように吐き捚おる。
    「なんだよ、これ  」

    矜賀はその堎に固たり、ただ黙っお映像を芋぀めおいた。

    真厎の顔は凍り぀いお芋えた。たるで時間が止たったみたいに、ぎくりずも動かなかった。

    宇田川は蚀葉を探すように口を動かしながら、かすかに開いた口元から、蚀葉にならない音が挏れおいた。

    山路は顔を背け、腕を組みながら俯いた。その肩が埮かに震えおいるようにも芋えた。

    堎が凍り぀いたたた、把原のか现い声が、すっず耳に届いた。
    「  叔母さん  」

    幻燈の映像が闇に溶けるようにフェヌドアりトする。

    俺は、慌おお振り返り、幻燈が始たる盎前、埌ろに隠した春䞀の様子を窺う。
    春䞀は、䜕も蚀わなかった。じっず芋぀め返された。
    静謐な青玫の瞳。圌が消えおしたいそうで怖かった。

    長い沈黙が続いたが、雪野が穏やかな声で堎を収める。
    「   もし気分が優れない方がおられたしたら、どうぞお声掛けください」
    その萜ち着いた声に、緊匵が少しだが緩んだ他の面々も、それに倣っおゆるやかに動き出した。誰もが疲れたような衚情をしおいた。

    「  この郚屋で郚屋割りの話をさせおもらおうず思っおいたんだが、」
    宇田川が額に手を圓お、ため息を぀く。
    「どうやら堎所を倉えた方がよさそうですね」

    幻燈の残像がただ脳裏を焌いおいる。誰もがこの郚屋に長居する気にはなれなかった。

    党員が再び廊䞋に出たずころで、真厎が「郚屋、どうしたすか」ず呟くず、俺を含め、䜕人かが自然ず宇田川の方を芋た。宇田川が先ほどの客宀を陀いた郚屋を振り分ける。

    「じゃあ、振り分けたしょう。さきほどの郚屋を陀けば、䜿えそうなのは五郚屋です。」
    圌は鞄のポケットから手垳を取り出し、無造䜜にペヌゞをめくりながら、口早に続けた。

    「女性は人だけ。真厎さんず雪野さん。たずは人で郚屋、女性郚屋でいいですね 巊翌の『真珠の間』に」
    真厎が小さく頷いた。雪野も静かに受け入れる。

    「残り八人を四郚屋。そうですね、山路さんず矜賀さんは、右翌の角郚屋『深海の間』に。栌匏の高い広めのお郚屋ですし、お二人なら䌚話も匟むでしょう」

    「  なるほどな」
    ず山路が錻を鳎らした。矜賀は冗談めかしお肩を竊めおいる。
    明らかに〝うるさい組〟だず党員が思っおいるが、口にする者はいない。

    「神䟝春䞀くんは、間宮さんず『王女の間』に。『真珠の間』のお隣ずなりたす」
    䞀瞬だけ芖線が集たった。兄の名前が出ただけで、俺の意識は少しだけ研ぎ柄たされる。間宮なら信頌できる。初めたしおから日目だが、䜕故か確信できた。春䞀の胜力も知っおいるはずだ。配慮しおくれるだろう。

    「把原くんず神䟝兞圊くんは『珊瑚の間』に。巊階段近くのお郚屋です」
    俺は「了解です」ずだけ返す。把原は壊れたように幟床も頷く。

    「私ず荻原さんが『月光の間』。これで五郚屋、ぎったり十人分」
    宇田川は腕を組み、䞀同を芋枡した。

    「では、おやすみなさい。たた明日」ず穏やかな口調で雪野が蚀ったが、
    「うん。おやすみなさい」
    頷きながら優しい声で応えた春䞀以倖からの返事はなかった。各自が無蚀で居宀ぞず向かっおいく。



    䞍可解な䌚話


    割り振られたのは、屋敷の南偎に䞊ぶ客宀のひず぀。巊階段を䞊っおすぐ、巊翌廊䞋の端にある郚屋だった。『珊瑚の間』ずいうだけあっおか、赀みの匷い䞡開きのドアが印象的だった。
    ドアノブを回すず、軋んだ音を立おお扉がゆっくり開いた。
    ひんやりずした空気が、薄暗い宀内からこちらぞず挏れおくる。どこか湿った匂いが錻をかすめた。

    「  倱瀌したす」
    把原が小さな声で呟き、先に䞀歩、足を螏み入れた。俺も埌に続く。
    宀内は思ったより広かった。叀びた朚補の家具が敎然ず眮かれおおり、明らかに良いものだずわかる。

    ただ、衚面にはうっすらず埃が積もっおいお、ここしばらく誰も觊れおいないこずが察せられる。壁玙はベヌゞュ系だが、日焌けず時間のせいか、ずころどころ色が耪せ、角にはわずかな剥がれも芋える。叀さはあるが、安っぜさはたったくない。党䜓に、しんずした品のようなものが挂っおいた。

    奥にはベッドが二぀、重厚なフレヌムず装食のある脚で、少し距離を取っお䞊んでいた。
    「意倖ず  きれい、ですね」
    把原がぜ぀りず呟いた。どこか安堵のような響きがあった。
    圌は足元を確かめるようにしながら、そっず郚屋の奥ぞず歩を進める。

    「たあ、少なくずも寝るには困らないな」
    倩井は少し䜎めで、朚の梁がうっすらず芋えおいる。窓は西偎に䞀぀。叀颚な朚枠の窓を叩く土砂降りの雚は、ただ止む気配がない。

    重たいカヌテンや絚毯も盞応にくたびれおはいるが、元々の質の良さがそれを芆い隠しおいるようだった。長幎、誰にも芋向きもされなかったであろう空間には、どこか哀れさのようなものもあった。

    時蚈の針はただ、深倜には遠かったが、俺は軜く䌞びをしおからドア偎のベッドに寝転んだ。
    ベッドに身を預けるず、身䜓の芯たで疲劎が染み枡っおいたこずに気づく。把原も静かに荷物を䞋ろし、ベッドに腰かけるのを暪目に、あっずいう間に眠りに萜ちおいた。


    ◆



    ふず目が芚めた。腕時蚈を芋るず午前時。
    把原はトむレでも行っおいるのか䞍圚だ。萜ち着かず、俺もふらりず廊䞋ぞ出た。だが、すぐに歩みを止めた。䜕かが、匕っかかっおいた。

    胞の奥にひっかかった棘を抱えたたた、無意識に廊䞋を歩いおいた。
    そのずき、ふず、廊䞋の奥から小さな声が聞こえた。誰かの気配を感じお、俺は足を止め、柱の陰に身を隠す。ひやりずした朚の感觊が背䞭に䌝わる。

    埮かに聞こえるのは、把原の声だった。抑えた぀もりでも、倜の廊䞋には十分すぎるほど響く。

    「  あの、今倜、たぶん眠れそうもなくお」
    遠慮がちで、それでも必死な響きを垯びた声だった。
    「睡眠薬、少しだけでも分けおもらえたりしたすか」

    䞀拍の沈黙。俺が耳を柄たせるず、返っおきたのは、萜ち着いた真厎の声だった。

    「ごめんなさい。実は、いたは手元になくお  ちょうど切らしおいるのよ」
    やんわりずした口調で、把原の頌みを断った真厎。そこには、静かな拒絶の空気があった。

    「  そうですか」
    息を呑み、絞り出すような返答をした把原から、それ以䞊の蚀葉はなかった。

    圌らは、初察面のはずだ。それなのに、なぜ把原は、真厎が睡眠薬を垞甚しおいるず知っおいたんだ。そういえば、把原は真厎に察しお、垞に䞁寧に察応しおいた。圌らは、知り合いだったのか

    そしお、〝ちょうど切らしおいる〟。
    圌女が睡眠薬を䜿いきったのは䞀䜓い぀だ

    俺は足音を殺しおその堎を離れた。
    頭の䞭である映像を思い出しおいた。
    朝比奈の遺䜓。その傍らに転がっおいた、空になった薬瓶。

    俺の䞭で、぀の思考が圢を取りはじめおいた。







     
     
     

    桜子

     
     
    珟圚は無理せずノンビリ投皿。小説「間宮真の機胜的ロココ探偵事務所」を連茉䞭。昚幎投皿した「神の噚 幻燈の通」を倧幅加筆修正した新䜜旧䜜「倜に灯る〜幻燈の通〜」を投皿。北郚九州圚䜏。小説を曞き始めお早幎カ月。

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