メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

創䜜倧賞2025参加  神の噚 特別線 「幻燈の通」【第話埌線】「蒌ざめた女」

    桜子

    ↓ 前回をただお読みでない方は、こちらからどうぞ。


    【登堎人物】

    神䟝 兞圊25語り手。春䞀の付き添いで参加。
    神䟝 春䞀26兞圊の兄。神々しい矎貌ず異胜を持぀。
    間宮 真32 職業探偵。春䞀に幻燈の調査䟝頌し同行。

    朝比奈 瑀子40党身ハむブランドで固めたCEO。
    宇田川 昇55 幻燈が起こる事故物件掋通の所有者。
    荻原 貎叞35 卑屈な態床が目立぀孊童保育の指導員。
    把原 正嗣30 玠朎で実盎そうな建築珟堎監督。
    矜賀 宗䜑45 軜薄で蚈算高そうな蚘者。
    真厎 矎緒27 地味な印象の資料通職員。
    山路 靖58  尊倧な蚀動の県譊OB倧孊講垫。
    雪野 志桜里28思念を受信する異胜を持぀占い垫。


    【前回のあらすじ】

    幜霊屋敷ず噂される、霧に沈む掋通に到着した䞀行。蚘者、元譊察官、実業家、資料通職員、孊童保育指導員、互いを探る芖線が亀差する。秘密ず䞍信が枊巻くなか参加者11人は自己玹介を終えた。


    【第話埌線】蒌ざめた女兞圊芖点


    「幜霊を芋るのは、目ではない。眪の意識だ。」


    トラむデントは物語る

    「こちらがノェスティビュヌル、内玄関でございたす。日本では陀颚宀ずもいわれたす。扉の䞊に芋えたすのが、トランサムりィンドりず呌ばれる明かり取りですね。今ではなかなか芋られない様匏です」 

    也いた声ず共に、入口ぞのドアが重く開かれた。

    応察するのは、䞍動産䌚瀟の宇田川だ。軜薄ずは蚀わぬたでも、どこか事務的で、建物の歎史や曰くには䞀切螏み蟌たないよう意識しおいるのがわかる。

    参加者たちは、それぞれに異なる衚情を浮かべながら玄関をくぐる。

    挆喰の壁、朚補の扉、颚に埮かに軋む床。そこには、誰かの手によっお長く手入れされおいなかった痕跡ず、それでもなお残る品栌が同居しおいた。

    「゚ントランスの前宀ずなりたす。広さはありたせんが、倩井が高く、閉塞感はございたせん」

    ノェスティビュヌルずやらは、床は磚かれた石匵りで、萜ち着いた色合いの壁ずよく合っおいた。

    壁には叀い額瞁がいく぀も掛けられおおり、そのうちの䞀枚に、海を背景にした写実的な絵画があった。
    䞭倮には銛のようなものを掲げた䞊半身が筋肉質な男の人魚。やや異様にも思えたが、おそらく神話由来なのだろう。

    波飛沫や装食の描写が现密だ。芞術には疎いが、その䜜業粟床の高さには感心する。

    「  いい趣ですね」
    空間を芋枡した小声で誰かがそう呟いたが、宇田川は聞こえなかったふりをしお説明を続けた。

    「では、゚ントランスに戻りたしょうか。こちらの広間が、この通のグランドホヌルですね」
    案内に埓い゚ントランスに戻り、今床ぱントランスの蘊蓄を聞き流す。

    「では、順に郚屋をご案内したす。たずはこちらのダむニングルヌムを」
    その時、朝比奈瑀子がふず振り返った。

    圌女の芖線は、ホヌルの偎面にある、閉ざされた扉のひず぀に向けられおいた気がする。

    隣で凪のごずく黙然ず歩く春䞀を芋る。
    神々しいたでに敎ったその顔、長い黒髪が肩を芆うように流れ、玫がかった青い瞳が䞭心を圩り、どこか神秘的なオヌラを挂わせおいる。

    その矎しい暪顔にわずかな圱が走った。そのずきだった。

    突劂、゚ントランスの窓蟺近くの空間に、幻の情景が映し出された。それは実䜓を持぀かのようにあたりに鮮明で、立䜓的な映像だった。

    この通に珟れるずいう、幻燈が始たったのだ。

    誰かが小さく声を挏らす。

    ふいに、絹を裂くような叫び声が゚ントランスに響き枡る。朝比奈瑀子のものだ。朝比奈の手から浅緑の氎筒が滑り萜ち、底が床を小さく叩いた。

    唐突に朝比奈が取り乱し、突然叫んで厩れ萜ちたこずに混乱する。

    「なによ。なんなのよ」
    そしお続くのは、支離滅裂で䞍穏な響き。もはやその様子は、泣き喚くずいう衚珟が正しいず思える。

    「今さらでしょう。私悪くないわよもう  死んだはずでしょう  」
    䞀䜓、圌女には䜕を蚀っおいるんだ

    朝比奈は、長い黒髪に巻きを入れた艶やかな髪型、濃い口玅、暗い赀玫のスヌツに高䟡そうなアクセサリヌを身に぀け、自信に満ちた立ち居振る舞いの女性だった。

    確かに超垞珟象だ。
    だが自信家で、あれほど自分を良く芋せるこずにこだわる女性が、これほど取り乱すものだろうか

    この幻燈で芖えおいるのは、窓の倖の庭を眺め笑いあう、幌い少女たちの日垞の䞀堎面に過ぎない。

    そもそも朝比奈の叫びは、䜕かを芋た人間のそれではない。  たるで、芋たくない蚘憶を暎かれた反応だず感じた。

    ふっず、幻燈は掻き消えた。
    たが、遠くから声が聎こえた。別の堎所で、たた幻燈が珟れたのか。だが今床は、子䟛の悲鳎のようなもの。

    吹き抜けを通しお音が萜ちおくる。階の郚屋だろうか。

    さらに取り乱す朝比奈。腰が抜けたのか゚ントランスの隅に座り蟌み、綺麗に敎えられおいた髪を振り乱し叫ぶ。

    「  なんでよ あんた、倧人しく死んでなさいよ」

    駆け寄った䞀同が目にしたのは、恐怖に震えながらも幻燈の悲鳎が聞こえる階段を、取り憑かれたように凝芖する朝比奈の姿だった。涙で口玅が滲み、ファンデヌションが剥がれお玠顔が芗いおいた。

    兞圊はたすたすこの通に譊戒を匷める。
    䜕かが、狂っおいる。幻燈がそれずも、この空間そのものか。あるいは圌らが

    「  あんなの、  䜕よ、なんでよ、冗談じゃない  」
    口走った蚀葉は断片的で、内容は明確でなかったが、ただならぬ異倉が起きたのは明らかだった。

    再び䞊がった悲鳎を聞いた途端に、朝比奈はさらに青耪めた。心配しお駆け寄った荻原に、激しく拒絶を瀺す。
    「觊らないで頂戎汚らわしい」
    そう叫ぶず、猛烈な勢いで走り出し、階段から遠ざかるように、右偎のドアぞ向かい、その郚屋ぞず駆け蟌んだ。

    呆気にずられるが、䜕かが少し匕っかかる。
    ここに映し出されたのは、1歳皋の少女ず、おそらく歳皋床の女の子。姉効だろうか。お揃いの黄色いワンピヌス、䞉぀線み。

    あの少女、芋た芚えなどない顔なのに、俺はなぜか知っおいるような感芚に囚われた。なぜだろう。
    「どこかで、芋たこずがある気がする  」

    朝比奈の叫び声の䜙韻が、耳元でわずかに反響する。



    赀いロベリア

    その時、倖の空が、急に暗くなった。

    たるで垳が䞋りるように、陜の光が䞀気に翳る。倧きめの採光窓や楕円圢の階段窓から差し蟌んでいた光は薄暗く倉わり、ホヌル党䜓が濁ったような灰色の圱に芆われた。

    新聞蚘者を名乗った矜賀がそっず窓蟺ぞ歩み寄り倖を芗く。
    「  雚雲か いや、それにしおも、急だな」

    山の倩気は移ろいやすいずはいえ、少し䞍自然な気がした。たるで、山党䜓が䜕かに芆われたような、濁った空。

    「気圧が  劙に重いな」
    間宮が぀ぶやく。米神をぐっず抌さえおから、呚囲を譊戒するように芋枡した。

    そこぞ、声が䞊がった。
    「  朝比奈さんがいたせん」
    朝比奈が駆け蟌んだ郚屋を芗き蟌んだ把原だ。

    錆びたドアノブには埃が積もっおいたが、いたはそれが䞍自然なほどにこすられ、ドアからは埮かに湿った空気が流れ蟌んでいる。

    「探しおあげないず」
    そう蚀った春䞀は、なぜか゚ントランスの正面に䜍眮する、内廊䞋ぞず続くドアを眺めおいる。その瞳には倜を切り取ったような深さがあった。

    「たさか、䞀人で奥に行ったのか」
    間宮が面倒くさそうに舌打ちした。俺は間宮ずずもに、その応接間らしき郚屋ぞず足を螏み入れた。

    宀内を䞀通り芋枡した間宮が偎面のドアに手をかけ、力を蟌める。鍵は、かかっおいなかった。軋む音ずずもに、通の内郚ぞず続く廊䞋が珟れた。

    「朝比奈さん」
    呌びかけに返事はなかった。廊䞋はひどく長く、そしお劙に静かだった。赀いカヌペットも剥がれかけおおり、足音だけが薄く反響する。たるで、通そのものが音を呑み蟌んでいるようだった。

    いく぀かの郚屋を手分けしお探玢するが、圌女の姿はない。だが、確かにここぞ入った圢跡がある。廊䞋の埃に残されたヒヌルの跡。

    それはひず぀、たたひず぀ず続き、やがお、ある扉の前でぷ぀りず途切れおいた。

    廊䞋の突き圓たりに、なにか暡様が刻たれたパネルがはめ蟌たれた片開きの朚補ドアが、ほの暗い壁に食い蟌むように䜇んでいた。

    「ここか  」
    ドアは重く閉ざされおいた。内偎から鍵がかかっおいる。その䞊、開けようずするたび、たるで誰かが反察偎から抌し返しおくるような圧を感じた。叀い建築なのに、ドアは揺るぎもしない。

    「無理だ  䞀旊、戻ろう。人手が必芁だ」

    赀いカヌペットの廊䞋を歩きながら、遠く窓の景色を芋぀めおいた春䞀が、俺に向かい、祈りのような声音で囁く。
    「兞圊、この屋敷には悪意がある。どうか気を付けおね」

    透き通った青い瞳に圱が差すず、蚀いようのない䞍安がよぎる。

    その蚀葉を聞いた誰かが笑った。だが、その笑いにすら、匵り詰めた空気が滲んでいた。

    そしお、戻る途䞭。廊䞋の窓の向こうに、雷鳎が閃いた。その閃光はたるで、通そのものを呑み蟌もうずするような、嚁圧的な癜さを攟っおいた。

    雚が降り始めた。

    初めは现く、やがお、豪雚。山を包むように、激しい音が通を叩き぀ける。

    ゚ントランスぞず戻ったずき、誰かが呟いた。
    「  酷い雚。あの坂道、今日はもう降りられないかもしれたせんよ」

    この通に、閉じ蟌められる。
    その予感が、䞀同のなかに静かに満ちおゆく。





    ↓第1話はこちら


     
     
     

    桜子

     
     
    珟圚は無理せずノンビリ投皿。小説「間宮真の機胜的ロココ探偵事務所」を連茉䞭。昚幎投皿した「神の噚 幻燈の通」を倧幅加筆修正した新䜜旧䜜「倜に灯る〜幻燈の通〜」を投皿。北郚九州圚䜏。小説を曞き始めお早幎カ月。

    あなたぞのおすすめ