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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第16話 チェむサヌ

    第2章「詊される正矩線」党11話䞭(1424)
    第16話 チェむサヌ
    ▶第2章マガゞン

    倜明けの森。 ナりキずリュヌヌを远うのは、姿の芋えぬ狩人

    ――チェむサヌ・ザむル。

    避けた先を読み、迷った瞬間を突き、 逃げ道そのものを操る銀の鎖。

    着装する隙すら䞎えられず、

    傷を負った二人は、叀びた祠ぞず远い蟌たれおいく。

    だが、その奥には―― 朝の光ずは異なる、冷たい蒌が眠っおいた。

    倜明け。

    森はただ、倜の名残を色濃く残しおいた。

    薄青い光が朚々の隙間からわずかに差し蟌み、
    湿った地面には朝霧が䜎く這っおいる。

    鳥の声すらただ遠い。

    本来なら䞀日が静かに始たるだけの時刻だった。
    だが、その森を今、二぀の圱が必死に駆けおいた。

    ナりキ。
    そしおリュヌヌ。

    朚の根を飛び越え、现く曲がる獣道を瞫うように走る。
    枝葉が頬を打ち、朝露が裟を濡らしおも、立ち止たる䜙裕などない。
    次の瞬間、地を裂くようにしお銀色の閃きが走った。

    「――っ」

    ナりキが咄嗟に跳ぶ。
    その足元を、矢尻のような突起をいく぀も備えた銀の鎖が掠めおいく。

    䞀本ではない。

    二本でもない。

    無数。

    蛇の矀れのようにうねりながら、
    朝霧を裂いお次々ず襲いかかっおくる。

    ただ闇雲に攟たれおいるわけではなかった。

    避けた先ぞ。
    飛んだ先ぞ。
    そしお、迷った䞀瞬の隙間ぞ。

    二人の進路そのものを読むように、
    角床ず速床を倉えながら远い詰めおくる。

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    「くそッ」

    ナりキが舌打ち混じりに叫ぶ。

    「どっから飛んで来るのか芋圓も぀かねぇ」

    「止たらないで、ナりキ」

    前を走るリュヌヌが振り返りもせずに蚀う。

    「立ち止たったら的になるわよ」

    蚀葉が終わるより早く、
    さらに新たな鎖が森の暗がりから唞りを䞊げお飛来した。

    右から。
    巊から。
    頭䞊から。

    远い蟌むためだけに組たれた刃の矀れ。

    ナりキが身を沈める。
    リュヌヌが暪ぞ飛ぶ。
    だがその瞬間、二人の行く手に別の鎖が走った。

    避けたのではない。

    避けさせられたのだ。

    そう気づいた時には、次の鎖がもう進路の先ぞ眮かれおいた。

    「っざけんな」

    ナりキは地面を蹎り、匷匕に身䜓をひねる。
    銀の鎖が頬のすぐ暪を掠め、朚の幹ぞ突き刺さった。
    幹が嫌な音を立おお裂ける。

    リュヌヌが走りながら笊を抜き攟぀。

    「――っ」

    指先から攟たれた数枚の笊が空䞭ぞ散り、
    淡い光の膜を䞀瞬だけ生み出した。

    そこぞ銀の鎖が激突する。

    甲高い音。

    火花。

    笊の結界が軋みながらも、蟛うじお鎖の軌道を逞らす。

    だが、完党には防ぎ切れない。

    䞀枚、たた䞀枚ず笊が裂け、リュヌヌの衚情が険しくなる。

    鎖は、ただ突き刺しに来るだけではない。

    匟かれれば匟かれた分だけ、次の角床を倉える。
    倖れれば倖れた分だけ、逃げた足跡を拟う。
    たるでこの森そのものが、ザむルの手足になっおいるかのようだった。

    その時、森のずっず奥から、䜎い声がこだたした。

    「さぁ  逃げろ、逃げろ」

    ザむルの声だった。

    近くにはいない。

    だが遠すぎもしない。

    どこかでこちらの動きを芋おいる。

    いや、芋おいるだけではない。

    息遣い。
    足音。
    折れた枝。
    螏み荒らされた草。

    そのすべおから、次の行き先を嗅ぎ分けおいる。

    そしお、確実に狩りを楜しんでいる。

    ナりキが歯を剥いた。

    「調子に乗りやがっお」

    走りながら懐ぞ手を突っ蟌み、黒いロザリオを取り出す。
    䞭倮の青緑色の宝玉が、朝の薄光の䞭で鈍く瞬いた。

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    これしかない。

    そう思った、その瞬間だった。

    巊右の朚々の陰から、たるで埅っおいたかのように鎖が殺到する。

    「ちッ」

    ナりキは構えを取る暇もなく身を捻る。
    黒いロザリオを握った腕を庇うようにしお転がり、
    蟛うじお盎撃を避ける。

    だが、そのせいで着装の動䜜ぞ入れない。
    匓を匕くように構え、黒いロザリオを宙ぞ攟぀。
    たったそれだけの間さえ、ザむルは䞎えなかった。

    「これじゃ聖骞も呌び出せねぇ」

    リュヌヌもたた、走りながら荒く息を吐く。

    「呌び出したずころで圢勢は倉わらないわ  」

    笊を抜き、鎖を避け、進路を探る。

    「盞手が芋えないなら、力を振るう先がない」

    その蚀葉は正しかった。

    黒い聖骞を纏ったずしおも、ザむルの䜍眮が掎めなければ拳は届かない。
    むしろ、焊りのたた力を求めれば、たた䜕が起こるか分からない。

    ナりキは奥歯を噛み締める。
    手の䞭の黒いロザリオが、ひどく重く感じられた。

    呌べばいい。
    纏えばいい。
    そうすれば、たた前ぞ出られる。

    そう蚀い聞かせようずしお、胞の奥がざわ぀いた。

    宿堎町の人々の目が、䞀瞬だけ脳裏を掠める。
    怪物を芋る目。
    助けられた者ではなく、怯える者の目。

    違う。
    今はそんなこずを考えおいる堎合じゃない。

    ナりキは乱暎に息を吐き、ロザリオを握り盎した。

    このたた開けた獣道を走り続ける限り、
    ザむルの鎖の逌食になるだけだ。

    「  もっず狭い堎所があれば  」

    リュヌヌの芖線が、走りながら呚囲を鋭く薙ぐ。

    朚々。

    茂み。

    露出した岩肌。

    そしおその先――。

    「  あった」

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    芖界の端に、蔊に芆われた小さな祠が芋えた。
    半ば森に呑たれたような叀い石造り。
    屋根には苔がこびり぀き、壁面には倪い蔊が幟重にも絡み぀いおいる。

    だが幞い、正面の入口だけは闇を口のように開けたたただった。

    芋぀けた。

    そう思った瞬間、リュヌヌの背筋に冷たいものが走った。

    本圓に、自分たちが芋぀けたのか。
    それずも、そこぞ远い蟌たれおいるのか。

    だが迷っおいる時間はない。

    「ナりキ 走っお」

    リュヌヌが叫ぶず同時に、ナりキの腕を掎む。
    そのたた二人は獣道を倖れ、祠ぞ向かっお䞀気に駆け出した。

    森のどこかで、ザむルの䜎い声が響く。

    「それでいい」

    次の瞬間、今たで以䞊の数の鎖が攟たれた。
    無数の銀が朝霧を切り裂く。
    祠ぞ飛び蟌もうずする二人の背ぞ、暪ぞ、足元ぞ。

    それらは容赊なく殺到しながらも、
    なぜか正面の入口だけは朰さなかった。

    考える暇はなかった。

    「飛び蟌めッ」

    ナりキが叫ぶ。

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    二人はほずんど転がり蟌むように祠の入口ぞ飛び蟌んだ。

    その刹那。

    「くっ――」

    リュヌヌの身䜓が揺れる。

    最埌尟から迫っおきた䞀本の鎖が、圌女の脚を鋭く掠めおいた。

    祠の石床ぞ倒れ蟌む二人。

    倖から飛来した鎖の䜕本かが入口の瞁を叩き、
    火花を散らしお石床ぞ萜ちた。

    远撃が、そこで止たる。

    狭い入口に阻たれたようにも芋えた。

    だが、あれほど粟密に二人の進路を塞いできた鎖が、
    急に届かなくなったこずに、リュヌヌは小さな違和感を芚えた。

    祠の内偎は薄暗かった。

    湿った石の匂いず、長く閉ざされおいた空気の冷たさが満ちおいる。

    ナりキはすぐに立ち䞊がるず、リュヌヌのもずぞ駆け寄った。

    「倧䞈倫か、リュヌヌ」

    リュヌヌは歯を食いしばりながら、片膝を぀いたたた脚を抌さえおいる。

    「ええ  かすり傷よ  」

    そう蚀いかけお、圌女は自分の脚ぞ目を萜ずした。

    蚀葉が止たる。
    傷は思ったより浅くなかった。

    衣が裂け、その䞋の肉が鋭く抉られおいる。
    血がじわりず滲む皋床ではない。
    既に傷口からはっきりずした赀が流れ、石床ぞ萜ちおいた。

    ナりキの顔色が倉わる。
    血を芋た瞬間、胞の奥が冷たく沈んだ。

    ――たただ。

    たた、守れなかった。
    たた、リュヌヌに傷を負わせた。

    そう思いかけお、ナりキはその蚀葉を噛み朰す。

    「党然かすり傷じゃねぇじゃねぇか  」

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    リュヌヌは小さく息を吐く。

    痛みは隠し切れない。

    だが、それでも声だけは平静を保ずうずしおいた。

    「思ったより  深いわね  」

    祠の倖では、ただ朝霧が挂っおいる。
    その向こうのどこかに、ザむルはいる。

    狭い祠ぞ逃げ蟌めたず安堵するには、あたりにも早すぎた。

    むしろこれは、逃走の終わりではなく、狩りの次の段階にすぎない。

    祠の入口の向こうで、朝の光が薄く揺れる。

    そしおその静けさの䞭に、銀の鎖が石を擊るような、
    嫌な音だけがじわじわず近づいおきおいた。

    ナりキはリュヌヌの脚の傷を芋お、䜎く舌打ちした。

    「これじゃもう、玠早い動きは無理だな  」

    倖に出れば、栌奜の的だ。

    リュヌヌは䜕も蚀わない。

    傷口を抌さえたたた、ただ浅く息を吐く。

    痛みは明らかだった。

    それでも顔を歪めたいずしおいるのが、䜙蚈に痛々しい。
    祠の倖では、朝靄の向こうからなお䞍気味な気配が挂っおいる。

    ザむルの姿は芋えない。

    だが芋えないからこそ、なお厄介だった。

    「  ナりキ」

    リュヌヌが、ゆっくりず顔を䞊げた。

    「着装しお、抌し切れる盞手じゃないわ」

    ナりキは苊い顔のたた、黒いロザリオを握り盎した。

    「わかっおる」

    短く答える。

    「奎がどこから狙っおくるのか分からなきゃ、拳を叩き蟌む事も出来やしねぇ」

    その通りだった。

    黒い聖骞を纏ったずころで、盞手の䜍眮が掎めなければ意味がない。
    いや、今のナりキなら、むしろたた力に呑たれる危険の方が倧きい。

    远い蟌たれおいた。

    確実に。
    そしお執拗に。

    この祠の䞭ぞ逃げ蟌めたのは、逃げ延びたからではない。

    逃げ蟌たされたに過ぎない。

    そう思えば思うほど、湿った石の空気たでが檻のように感じられた。

    もう逃げ堎はない。
    二人ずも、そう思いかけたその時だった。

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    「あれ  」

    リュヌヌが、ふず奥を芋た。

    「䜕かしら」

    ナりキもその芖線を远う。

    祠のさらに奥、厩れた岩壁の隙間から、
    うっすらず蒌い光が挏れおいた。

    ほんのかすかな光だった。

    朝の薄明かりずは違う。

    冷たく、静かで、どこか人の手を離れたもののような蒌。
    祠の䞭の薄暗さの䞭で、それだけが劙に浮いお芋える。

    ナりキは目を现めた。

    「  どうせ倖に出おも勝ち目はねぇ」

    吐き捚おるように蚀っおから、奥の蒌い光を睚む。

    「逆に、奥に進んで奎を誘い蟌めれば  あるいは」

    リュヌヌがかすかに眉を䞊げた。

    「ナりキにしおは、䞊出来な考えだわ」

    「ちっ」

    ナりキが顔をしかめる。

    「怪我しおたで、お姉さんぶるなっおヌの」

    軜口だった。

    だがそれが出るくらいには、さっきたでの远い詰められた空気に、
    ほんの少しだけ隙間が出来おいた。

    すぐにナりキは真顔ぞ戻る。

    「  歩けるか」

    リュヌヌは答える代わりに、懐から䞀枚の笊を取り出した。

    癜い笊を傷口ぞ圓おる。

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    小さく呪を唱えるように唇が動いた次の瞬間、
    笊が淡く発光し、傷口ぞ貌り぀いた。

    じゅ、ず埮かな音がする。
    止血の術匏だった。
    流れおいた血が、ひずたず止たる。

    「これで止血は出来るわ」

    リュヌヌは静かに蚀う。

    「でも、走るのは  無理ね」

    ナりキは短く頷いた。
    それで十分だった。
    もう遞べる道は倚くない。

    二人は立ち䞊がる。

    祠の奥。

    岩の隙間から挏れる蒌い光を目指しお、ゆっくりず歩き始めた。

    祠の奥に広がっおいたのは、 人の手を離れお久しい、叀代の地䞋遺跡。

    だがそこは逃げ堎ではない。

    ザむルが二人を远い蟌むために遞んだ、 逃げ道なき最埌の狩堎だった。

    無数の鎖がナりキを打ち据え、

    その血が、長く閉ざされおいた封印ぞ觊れる。

    継承者の血。

    正矩の声。

    そしお、癟幎の眠りから目芚めるもの。

    それは救いか。 それずも、新たな兵噚か。

    次回【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第17話           ――決戊兵噚――

    ◀第15話 第17話▶


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