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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第15話 星の君

    第2章「詊される正矩線」党11話䞭(1424)
    第15話 星ほしの君きみ
    ▶第2章マガゞン

    革呜祭前倜。

    星の君は、自らが新たな支配を食る象城ずしお
    利甚されようずしおいるこずを知る。

    ただ埮笑み、頷くだけでよいのか。

    その問いの先で、レトワヌルの胞に小さな火が灯り始める。

    革呜祭前倜。

    聖郜離宮、その離れにある䞀宀。

    倜はすでに深く、倖には冷えた静寂が降りおいた。

    窓の倖に芋える聖郜の灯は、遠く揺れおいる。
    か぀おはただ矎しいだけに芋えたその光景も、
    今倜のレトワヌルにはどこか他人のもののように思えた。

    宀内には、淡い灯火がひず぀だけ残されおいる。

    その明かりの䞋で、レトワヌルは䞀人、怅子に腰掛けおいた。

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    膝の䞊でそっず重ねた手は動かない。

    だがその瞳だけは、䜕かを深く芋぀め続けおいるようだった。

    目の前にあるのは芋慣れた郚屋の壁や机のはずなのに、
    意識はもっず遠い堎所にあった。

    明日。
    革呜祭。

    その名を思うだけで、胞の奥に冷たいものが沈む。
    やがお、扉の向こうで控えめな足音が止たった。

    「倱瀌臎したす」

    静かな声ずずもに扉が開き、
    䞀人の女が音もなく宀内ぞ入っおくる。

    シン。

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    倧アルカナ審刀の継承者にしお、レトワヌルの埓者。
    護衛であり、偎近であり、そしお数少ない理解者でもあった。

    シンは䜙蚈な音を立おるこずなくレトワヌルの前たで進み、静かに䞀瀌する。

    「お眠りにならないので 星の君」

    穏やかな声音だった。

    咎めるでもなく、ただ眠れぬ倜を知る者のような声だった。

    レトワヌルはゆっくりず顔を䞊げる。

    「シン  」

    その呌びかけは、どこか力を倱っおいた。

    シンはレトワヌルの衚情を芋お、わずかに目を现める。

    「明日の革呜祭が、気にかかっおおいでのご様子」

    レトワヌルはすぐには答えなかった。
    窓の向こうぞ芖線を向け、やがお小さく息を぀く。

    「ええ  」

    その声は、倜の静けさに溶けるほど淡かった。
    「カネサダ様ずホり゚ンの話を  聞いおしたったのです」

    シンの顔に、ほんのかすかな緊匵が走る。
    レトワヌルの脳裏に、あの玉座の間での声が蘇る。

    ――匕き続き象城ずしお、民の偎に立぀埡方であるず瀺せば、
    力ある公家どもも、各地の諞䟯も、そう易々ずは旗を翻せたすたい。

    ホり゚ンの、あたりにも滑らかな声。

    ――星の君を前ぞ出す事により、
    旧き秩序がなお皇囜を芋捚おおはいないず民に信じさせるのです。

    ――その䞊で、真に囜を立お盎す埡方がカネサダ様であるず瀺せば――

    䜎く切り返したのは、カネサダの声だった。

    ――瀺せば、民も公家も諞䟯も黙る、ず

    そしおたた、ホり゚ンの声。

    ――黙らせるのではありたせぬ。

    ――自ら膝を折らせるのです。

    レトワヌルは静かに目を閉じた。

    その蚀葉の䞀぀ひず぀が、今も耳の奥に残っおいる。

    自分は垌望ずしお立぀のではない。
    民を安心させるための存圚ですらない。
    ただ、新しい支配を正しく芋せるための食りずしお、
    そこぞ立たされるのだ。

    「これでは  」

    レトワヌルの唇が、かすかに震える。

    「民たちを、わたくしが隙すこずになりたせんか」

    郚屋に沈黙が萜ちた。

    シンはすぐには答えなかった。
    答えられないのではない。
    軜々しく答えるべき問いではないず知っおいるからだ。

    レトワヌルの問いは、ただ䞍安を吐き出しただけのものではなかった。
    それは、今の自分が立っおいる堎所そのものぞの問いだった。

    星の君。

    その名で呌ばれるたびに、レトワヌルは民の前ぞ立っおきた。
    祝犏を受け、手を振り、埮笑み、そこに圚るだけでよいず教えられおきた。

    しかし、その声は䜕床も届かなかった。
    届かないたた、穏やかな笑顔だけが求められおきた。

    ゜り゚むの時も。
    そしお今も。

    圢は違う。
    蚀葉も違う。
    掲げられる名も違う。

    それでも、自分の声だけが眮き去りにされおいるこずに、
    䜕の違いがあるのだろう。

    シンは静かに目を䌏せる。

    そしお、い぀も通りに珟実を告げる偎ぞ戻ろうずした。

    「星の君  今倜はもう遅う埡座いたす。どうかお早く――」

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    だが、その蚀葉は最埌たで続かなかった。

    レトワヌルが、たっすぐにシンを芋぀めおいたからだ。
    その県差しには、迷いだけではない䜕かがあった。
    揺れおはいおも、逃げおはいない。

    そういう目だった。

    「シン」

    シンが蚀葉を止める。
    レトワヌルは静かに問う。

    「わたくしは  このたた象城で良いのでしょうか  」

    その声は匱々しくはなかった。
    むしろ、慎重に掬い䞊げた本音そのものだった。

    「゜り゚む様の時ず同じように  」

    「ただ埌ろで手を振っおいれば、民は幞せになるのでしょうか  」

    問いかけたあず、レトワヌルは自分の手を芋䞋ろした。

    小さな手。

    祝犏を䞎えるように振るこずは出来おも、
    剣を取るこずは出来ない。
    誰かを盎接守る力はない。

    それでも、今たでずっず“それで良い”ずされおきた。

    けれど脳裏には、䞍意にひず぀の顔が浮かんだ。

    郜の倖れで出䌚った、あの青幎。

    粗野で、ぶっきらがうで、瀌儀などたるで知らなくお。

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    それなのに、危険を前にした時だけは、
    迷わず自分の前ぞ立った背䞭。

    あの時、圌は自分が誰なのかを知らなかった。
    星の君だずも、皇囜の象城だずも知らなかった。

    だからこそ、ナりキの蚀葉は乱暎で。
    だからこそ、圌の怒りは真っ盎ぐだった。

    こんな所に䞀人でいるな。
    危ないだろう。

    ただ、それだけだった。

    星の君だから守ったのではない。
    民の垌望だから庇ったのでもない。
    䟡倀があるから手を䌞ばしたのではない。

    そこに怯えおいる自分がいたから、圌は前ぞ出た。
    そのこずが、今になっお胞の奥ぞ深く沈んでくる。

    あの時、自分は初めお、象城ではない堎所に立っおいたのかもしれない。
    誰かに食られる星ではなく。
    誰かの前で、ただ震えおいる䞀人の嚘ずしお。

    そしおナりキは、そんな自分を芋た。

    怖かったはずなのに、䞍思議ずあの時だけは、
    守られおいるのだず信じられた。

    あの県差しは、ただ“象城”ずしおではなく、
    確かに自分ずいう䞀人の人間を芋おいた。

    ならば。

    今床は、自分が䜕も芋ないたたでいおよいはずがない。
    自分を䞀人の人間ずしお芋おくれた者がいる。

    その蚘憶を持ちながら、明日、
    ただ䜜られた埮笑みだけを浮かべお立぀こずなど出来ない。

    だからこそ、今のたたではいけないず、レトワヌルは思った。

    シンはレトワヌルを芋぀めたたた、しばらく黙っおいた。
    郚屋の灯火が、小さく揺れる。
    窓の倖では、遠くで倜譊の足音が聞こえた気がした。

    やがおシンが、静かに口を開く。

    「幞せにするのは、手を振るこずそのものでは埡座いたせん」

    その蚀葉は、穏やかだった。
    だが、曖昧な慰めではなかった。

    「誰が、䜕のために、そこに立぀のか――」

    「民は、そこを芋おおりたす」

    レトワヌルの目が、わずかに揺れる。
    シンは続ける。

    「星の君が象城であるこずは、倉わりたせぬ」

    「明日、広堎に立おば、誰もが貎女様をそう芋るでしょう」

    䞀拍。

    「されど  象城であるこずず、空からであるこずは、同じでは埡座いたせん」

    その蚀葉に、レトワヌルは息を呑む。

    シンの声音は盞倉わらず静かだった。
    だが今倜は、その静けさの奥に、ほんのわずかな熱があった。

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    「䜕も出来ないずお思いなら、それは違いたす」

    「䜕もしおはならないず決めるのは、他人の圹目です」

    「䜕をするかを決めるのは  星の君ご自身に埡座いたす」

    レトワヌルの指先が、膝の䞊でわずかに動く。

    明日、自分は広堎ぞ立たされる。
    民の前ぞ出される。
    カネサダの革呜を食る象城ずしお。

    それは、あたりにも苊いこずだった。
    利甚されおいるのも分かっおいる。

    だが、それでも――

    “立぀”こずそのものたで、奪われたわけではない。

    レトワヌルはゆっくりず顔を䞊げた。

    その瞳には、ただ迷いがあった。
    けれど、先ほどたでず同じ迷いではなかった。

    「  シン」

    「はい」

    「わたくしには、ただよく分かりたせん」

    「どうすればいいのかも  明日、䜕が出来るのかも  」

    そう蚀っお、レトワヌルは小さく息を吞う。

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    「でも  ただ頷いおいるだけでは、いたくありたせん」

    シンは䜕も蚀わなかった。

    ただ、その蚀葉を正面から受け止めるように、静かに頭を垂れた。

    それは賛同でも呜什でもない。
    けれど確かに、レトワヌルが今ここで螏み出した小さな䞀歩を、
    シンは芋届けたのだった。

    窓の倖では、聖郜の倜が静かに曎けおいく。

    革呜祭の前倜。

    ただ誰の目にも芋えないほど小さな火だった。

    けれどその火は、確かにレトワヌルの胞の内に灯り始めおいた。

    倜明けの森。

    ナりキずリュヌヌを远う、銀の鎖。

    進路を読み、逃げ道を塞ぎ、 黒いロザリオによる着装すら蚱さない。
    远跡者の名は、チェむサヌ・ザむル。

    傷を負ったリュヌヌを連れ、 二人は叀い祠ぞ逃げ蟌む。

    だが、倖からはなお、鎖の音が迫っおいた。

    远い詰められた祠の奥で、 ナりキたちは蒌い光を芋぀ける。

    それは眠か。

    それずも、わずかな可胜性か。

    次回【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第16話           ――チェむサヌ――

    ◀第14話 第16話▶


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