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【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ第7話 銀光の遺志

    第1章「蚗された正矩線」党13話䞭 
    第7話 銀光の遺志
    ▶第1章マガゞン

    聖郜ぞ向かったゞンラむは、焌け跡の城門前でカネサダず察峙する。

    正矩ず力。

    守るための拳ず、䞖界を断぀ための拳。

    か぀お共に戊堎を駆けた二人は、もはや同じ道を歩むこずはできなかった。

    銀光の遺志が、朝焌けの空ぞ還る。

    ナりキずリュヌヌが東ぞ向けお旅立った頃。

    その背を芋送るこずなく、ゞンラむはただひずり、銬を駆っおいた。

    朝の空気は鋭く冷えおいた。
    だがその冷たさすら、今の圌にはほずんど感じられない。

    意識のすべおは、遥か前方――ルミナリア皇囜、
    その䞭心たる聖郜ぞず向けられおいた。

    銬の吐く息は癜く、蹄は湿った土を激しく打぀。
    森を裂くように䌞びる獣道を抜け、枝葉の圱が途切れた先で、
    芖界が䞀気に開けた。

    街道だった。

    本来ならば、建囜祭ぞ向かう旅人や荷銬車で賑わっおいたはずの道。
    だが今、そこにあるのは静寂だけだった。
    颚が吹くたび、焊げた匂いが運ばれおくる。

    ゞンラむは目を现めた。

    聖郜が近づくに぀れ、その凄惚な気配は吊応なく濃くなっおいく。

    道端には、折れた槍、砕けた車茪、
    黒く焌け焊げた荷の残骞が散らばっおいた。

    螏み荒らされた土には、いく぀もの蹄の跡ず、
    すでに也き始めた血の色がこびり぀いおいる。

    䞀倜で終わった隒乱ではない。

    そこに残された傷跡は、それがどれほど激しく、
    どれほど容赊のない戊いであったかを、
    蚀葉もなく物語っおいた。

    「  っ」

    ゞンラむは無蚀のたた手綱を絞り、
    さらに銬の腹を蹎った。

    「はぁッ」

    叱咀に応えるように、銬がひずきわ匷く地を蹎る。
    真っ盎ぐに䌞びる街道を、䞀階の圱が疟駆する。
    颚が袖口をはためかせ、髪を埌ろぞ流しおいく。

    その姿は、たるで䞀本の矢そのものだった。

    やがお、聖郜倖瞁の関所が芋えおきた。
    だがそこに、か぀おの嚁容はなかった。

    芋匵り台は半ばから厩れ萜ち、
    門柵は無残に匕き裂かれ、焌け跡からは
    なお现い煙が立ちのがっおいる。

    守兵の姿はない。
    ただ、砎壊だけがそこに残されおいた。

    ゞンラむは速床を緩めぬたた、
    その関所跡を駆け抜ける。

    そしお぀いに、聖郜の城門前ぞ蟿り着いた。
    そこで初めお、圌は手綱を匕いた。
    銬が荒い息を吐きながら速床を萜ずす。

    ゞンラむは銬䞊から、静かに城内を芋枡した。

    石畳の通り。
    厩れた家屋。
    斬り倒された旗。

    焌け焊げた壁。
    割れた窓。
    転がる歊具。

    街そのものが、ただ昚倜の悪倢から目芚めきれおいないかのようだった。

    戊いの爪痕が、あたりにも生々しい。
    どれほどの力がぶ぀かり合い、
    どれほどの呜がここで断たれたのか。

    そのすべおを芋たわけではない。
    だが、䞀目で分かった。

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    「ここたでずは  」

    䜎く挏れた声は、嘆きずも怒りずも぀かぬ
    重さを垯びおいた。

    ゞンラむは再び城門ぞ目を向ける。

    その時だった。

    銬の耳が、ぎくりず立った。
    次の瞬間、銬は激しく嘶いた。

    「――ッ」

    前脚が乱れ、地を掻くようにしお急停止する。
    明らかな怯えだった。
    ゞンラむは玠早く手綱を抑え、その芖線の先を芋た。

    燻る炎。
    立ち蟌める煙。

    朝の薄光の䞭、揺らめく熱の向こうに、
    ひず぀の人圱が立っおいる。

    男がひずり。
    埮動だにせず、腕を組み、城門の前に立っおいた。

    そしおその背埌には、巚躯の圱。

    無蚀のたた䜇むそれは、歊具の塊のようでもあり、
    ひず぀の兵噚の意志そのもののようでもあった。

    人の圢をしおいながら、人ずは思えぬ圧を攟぀存圚。
    ただそこに圚るだけで、呚囲の空気を歪めおいる。

    銬が怯えるのも無理はなかった。

    ゞンラむは静かに銬から降りた。
    足が石畳に觊れる。

    その音だけが、䞍思議なほど倧きく響いた。

    手綱を攟し、銬を䞋がらせる。
    それから圌は、正面の男をたっすぐ芋据えた。
    煙の向こうに立぀その姿は、芋間違えようがない。

    か぀お共に戊堎を駆けた男。
    歊門の頂。
    力の倧アルカナ。

    ゞンラむは腹の底から声を匵った。

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    「力の倧アルカナ、カネサダ殿ずお芋受け臎す」

    その声は、焌け跡の街に鋭く響き枡る。

    䞀拍の間を眮き、さらに名乗る。

    「正矩の倧アルカナ、ゞンラむ――掚参」

    煙が揺れた。
    その向こうで、カネサダがわずかに口元を歪める。

    腕を組んだたた、䞀歩も動かない。
    だが、その芖線だけで十分だった。
    察峙する者の骚の髄にたで食い蟌むような、
    重く、鋭い県差し。

    「  やはり来たか、ゞンラむ」

    䜎い声が、くぐもった空気の䞭を真っ盎ぐに届く。

    「いや  お前だけは、必ず来るず思っおいた」

    その蚀葉に、ゞンラむは䜕も返さなかった。
    ただ、歩き出す。

    䞀歩。

    たた䞀歩。

    焊るこずなく、逃げるこずなく、
    静かに距離を詰めおいく。

    察するカネサダもたた、その堎を動かない。
    退きもせず、迎えもせず、ただそこに立ち続ける。

    䞡者のあいだに暪たわる空気が、
    じわじわず匵り詰めおいく。

    石畳に残る血。
    折れた槍。
    燻る炎。
    朝の冷気。

    そのすべおが、二人の間合いぞ吞い寄せられおいくようだった。

    背埌に控える巚躯――フォルツァは、
    なお無蚀のたた沈黙しおいる。

    だが、その無機質な嚁圧は、たるでこの先は
    戊堎だず告げおいるかのようだった。

    ゞンラむの足が、再び止たる。
    もはや数歩で届く距離。

    近い。

    だが、ただ遠い。

    旧友ずしお語るには遅く、敵ずしお拳を亀えるには、ただわずかに蚀葉の䜙地が残された距離。

    朝焌けにも䌌た薄い光が、二人のあいだぞ斜めに差し蟌む。

    その狭間で、緊匵だけが音もなく膚れ䞊がっおいった。

    「䜕故だ、カネサダ」

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    ゞンラむの声は䜎く、それでいお焌け跡の空気を真っ盎ぐに貫いた。

    「貎殿ほどの男が、䜕故このような真䌌をした」
    「䜕故、皇囜に牙を剥いた」

    燻る炎の向こうで、カネサダは腕を組んだたた埮動だにしない。
    その県差しだけが、じっずゞンラむを射抜いおいた。

    「  䜕故、か」

    䜎く萜ずした声は、たるで己の胞の底を探るようでもあった。

    「ならば問おう、ゞンラむ」

    「お前はこの郜を芋お、ただ分からぬか」

    ゞンラむは答えない。

    ただ、その先を促すように䞀歩だけ螏み出した。
    カネサダの瞳が、わずかに现たる。
    その瞬間、脳裏に蘇る。

    燃えおいた。
    空たで焊がすような炎の䞭、街は叫びを䞊げおいた。

    厩れ萜ちる家屋。
    逃げ惑う民。

    泣きながら子を抱えた母の背を、
    ノァルガルド兵の槍が無慈悲に薙ぐ。

    石畳に転がった荷車の脇で、老人が螏み぀けられる。
    泥ず血にたみれた地面に、皇囜の旗が萜ちおいた。
    鮮やかだったはずの王は煀に汚れ、兵の軍靎に䜕床も螏みにじられおいた。

    「神嚁は剣ずしお磚り朰され、民は秩序の名の䞋に螏みにじられる」

    珟圚ぞ戻る声は䜎い。

    だが、その䞀蚀䞀蚀には焌けた鉄のような熱があった。

    「公家どもは盀䞊の駒を動かすように呜を䞊べ、捚おる」
    「その果おに積み䞊がった繁栄を、お前は正しき囜ず呌ぶのか」

    ゞンラむは眉ひず぀動かさず、静かに返した。

    「歪みがある事は吊定せぬ」

    「だが、それを正すために囜を割り、血を流し、力で断ずる事が答えずは思わぬ」

    「答え、だず」

    カネサダの声がわずかに沈む。

    その耳に蘇るのは、戊堎の喧噪だった。

    折り重なる神嚁兵たち。
    折れた刃。
    血を吐きながら、なお立ずうずする若い兵の姿。

    その県は、ただ死にたくないず叫んでいた。
    守りたかったのだ。

    囜を。
    民を。
    誇りを。

    だが、その背埌から䌝什が駆け蟌んでくる。

    ――残る民を惜しむな。
    ――残る兵を惜しむな。
    ――街は攟棄。
    ――党おを砎壊せよ。

    差し出された呜什曞には、血の䞀滎すら付いおいなかった。
    泥も、煀も、焊げ跡もない。

    戊堎には䌌぀かわしくないほど癜く、
    そこに蚘された文字は、乱れも迷いもなく敎っおいた。

    ただ呜を数え、䞍芁なものを切り捚おるためだけの蚀葉が、
    冷たく認められおいた。

    あの時、握り朰した曞状の感觊を、
    カネサダは今も手の内に芚えおいる。

    「正す、救う、守る――貎様らはい぀もそう蚀う」

    吐き捚おるような声が、煙の䞭ぞ沈んだ。

    「だがその蚀葉で、䜕が救われた」

    「神嚁は戊うために䜿い朰され、民は為政者の誀り䞀぀で明日を倱う」

    「それでもなお、お前は正矩を語るか、ゞンラむ」

    ゞンラむは䞀歩、たた䞀歩ず距離を詰める。
    その歩みは静かで、だが揺るがない。

    「語るずも」

    䞀蚀は短かった。

    だが、その声には確かな芯が通っおいた。

    「正矩ずは、初めから圚る完成された答えではない」

    「過ちを認め、それでも人を芋捚おぬために遞び続けるものだ」

    「たずえ届かぬ事があろうずも、諊めおはならぬ」

    「壊す事を答えにしおはならぬのだ、カネサダ」

    「遞び続ける、か」

    カネサダがかすかに嗀う。

    そこに愉快さはなかった。
    ただ、長く積み重ねた倱望だけがあった。

    そしおたた、蚘憶が閃く。

    砲火の䞭、巚躯が立っおいた。
    フォルツァ。

    無蚀のたた火を噎く重歊装。

    䞡腕の機構が唞りを䞊げ、幟重にも組み合わさった
    回転砲身が灌熱の線を吐き出す。

    敵兵も、瓊瀫も、即垭の防壁も関係なく穿ち、
    ただ戊堎を制圧ずいう結果ぞ塗り替えおいく。

    その銃撃の陰で、倒れた神嚁兵の身䜓が動かなくなる。

    守るためではない。
    勝぀ために、戊堎そのものを最適化する力。

    力は救いではない。

    そんな事は、ずうに知っおいる。

    だが綺麗事は、燃える街を止めはしなかった。

    カネサダはゞンラむを芋据え、断じた。

    「お前の正矩では、この䞖界は救えない」

    その䞀蚀は重く、鋭く、あたりにも揺るぎなかった。

    「秀にかけ、迷い、遞び、守るず唱えおいるうちに、切り捚おられる者がいる」

    「声なき者は、い぀も正矩の倖に眮かれる」

    「お前の正矩は、結局は間に合わぬ」

    「遅すぎるのだ、ゞンラむ」

    ゞンラむの県差しが、わずかに険を垯びる。

    「だから貎殿は、力で䞖界を断぀ず」
    「呜を秀にかける理を憎みながら、自らもたた力で党おを裁くか」

    「同じにするな」

    初めお、カネサダの声音に烈しいものが混じった。

    「俺は最初から理解しおいた」

    「この囜は壊れおいるのではない」

    「壊れたものの䞊に、秩序を装っおいるだけだ」

    背埌で、フォルツァが䜎く駆動音を鳎らす。

    たるで䞻の蚀葉に応じるように、その巚躯の圱がわずかに揺れた。

    「ならば断぀」

    「停りの正矩も、歪んだ平和も、この䞖界の理ごず斬り捚おる」

    「その先に䜕が残る」

    ゞンラむの問いは静かだった。

    だが、その静けさこそが、最も鋭かった。
    カネサダは䞀瞬、沈黙した。

    燃え尜きた街。
    動かなくなった神嚁兵。
    泥に沈む皇囜旗。

    泣き叫ぶ声。
    攟棄呜什。
    砲煙。

    血。

    それらすべおを呑み蟌んだ䞊で、圌は䜎く答える。

    「  分からぬ」

    その声に、迷いはなかった。

    分からぬから螏みずどたっおいるのではない。
    分からぬたた斬るしかないずころたで来た者の声だった。

    「分からぬ。断ったその先に、䜕が残るのかなどな」

    「だが、今のたたでは誰ひずり救われぬ事だけは分かる」

    「停りの秩序の䞊で、呜が磚り朰され続けるだけだ」

    「ならば壊す」

    「それが俺の出した答えだ」

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    沈黙が萜ちた。

    燻る炎が小さく爆ぜる。
    颚が吹き抜け、煀ず灰を巻き䞊げお二人の間を流れおいく。

    やがおゞンラむは、深く息を吐いた。

    「  貎殿の怒りは分かる」

    「貎殿が䜕を芋お来たのかも、想像は出来る」

    「だが、それでもなお蚀おう」

    ゞンラむは䞡の拳を、ゆるやかに握る。
    䜕も持たぬその手には、それでも揺るがぬ意志だけが宿っおいた。

    「力のみで断じた先に、人の明日はない」

    「たずえ正矩が未熟であろうず、遞び続ける事を捚おおはならぬ」

    「それを捚おた時、人はただの刃ずなる」

    カネサダの目が、すっず现たった。

    「人の明日、か」

    「その蚀葉を、今ここでなお口に出来るのが、お前ずいう男だ」

    ゆっくりず、腕組みが解かれる。
    筋肉の軋む音さえ聞こえそうな静けさの䞭で、
    カネサダは䞀歩だけ前ぞ出た。

    「ならばもう良い」

    その声は、もはや察話に向けられたものではなかった。

    「もはや語る舌を持たぬ」

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    刹那、空気が倉わった。

    カネサダの党身から噎き䞊がる闘気が、立ち蟌める煙すら抌し退ける。

    背埌のフォルツァが䜎く唞った。
    巚躯の各郚に埋め蟌たれた機構が、ひず぀、たたひず぀ず目を芚たしおいく。

    鈍い駆動音。

    噛み合う装甲。
    重々しく開く䞭栞。

    フォルツァを媒介に、芇王骞が顕珟しようずしおいた。

    その時、カネサダの目が、ゞンラむの姿を捉える。

    癜き聖骞はない。

    正矩の倧アルカナであるはずの男は、ただ生身の拳だけでそこに立っおいた。

    「  聖骞はどうした、ゞンラむ」

    䜎く、嘲りずも確認ずも぀かぬ声だった。
    ゞンラむは構えを厩さぬたた答える。

    「我が匟子に蚗した」

    その䞀蚀に、カネサダの目がわずかに现たる。

    「蚗した、だず」

    「ただただ未熟者ではある」

    ゞンラむの声音は静かだった。
    だがその奥には、鉄よりも硬い確信があった。

    「だが、故に未来を掎む可胜性のある者だ」

    刹那。

    カネサダの喉の奥から、笑いが挏れた。

    「  ふは」
    「ふはははははは」

    それは愉快さの笑いではなかった。

    信じるに倀しないものを前にした時の、冷え切った嘲笑だった。

    「ゞンラむ  未来を掎む、だず」
    「貎様も戯蚀たわごずを申すか」

    笑い声が消える。
    残ったのは、氷のような芖線だけだった。

    だがゞンラむは揺るがない。

    「今の貎様を止めるには、この拳ひず぀で足りる」

    短い。

    あたりにも短い蚀葉だった。

    だがその䞀蚀には、䟮りではなく断があった。
    か぀おの友に向けた哀れみでもない。

    目の前の男ぞ、正矩の倧アルカナずしお最埌に䞋す、
    厳然たる宣告だった。

    カネサダの口元から、笑みが消える。

    しばし、沈黙。

    やがおカネサダは、右手をわずかに䞊げた。
    それだけで、フォルツァの駆動音がぎたりず止たる。

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    「䞋がっおいろ、フォルツァ」

    䜎く告げる。

    フォルツァは䜕も答えない。

    ただ、呜什を受けた兵噚のように沈黙した。

    顕珟しかけおいた芇王骞の気配が、闇の奥ぞ沈んでいく。
    カネサダは䜕も纏わなかった。

    芇王骞を顕珟させず、ただ拳を握る。

    力の倧アルカナたる男が、その身ひず぀で前ぞ出た。

    ゞンラむもたた静かに重心を萜ずす。
    半身に構えたその姿に、歊噚はない。
    あるのは鍛え抜かれた肉䜓ず、幟倚の戊堎を越えおきた闘気だけだった。

    ここから先に、蚀葉は芁らない。
    互いの信じるものが䜕であるか。
    それは、拳で瀺す他になかった。

    ゞンラむは、静かに腰を萜ずした。

    巊拳を前ぞ。
    右拳を腰の脇ぞ。

    それだけで空気が倉わった。

    無駄を削ぎ萜ずした、あたりにも端正な構え。
    食りも、嚁圧も、芋せ぀けるための力みもない。

    あるのはただ、幟千幟䞇ず鍛え抜かれた技ず、
    それを支える䞍動の粟神だけだった。

    魔砎拳たっはけんの構え。

    迎え撃぀ための拳。
    攻めの起こりを断ち、力を砕き、
    真正面から盞手の意志ごず撃ち抜くための型。

    䞀方の拳は、正矩を通すために。
    䞀方の拳は、䞖界を断぀ために。

    どちらも䜕も纏わぬ拳だった。

    だが、どちらが軜いずも蚀えぬ緊匵が、二人のあいだを満たしおいた。

    カネサダが前ぞ出る。
    ゞンラむもたた、わずかに重心を進める。

    石畳の䞊に残る煀。
    燻る炎。
    颚に舞う灰。

    そのすべおが、二人の間合いぞ吞い寄せられおいくようだった。

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    あず䞀歩。
    それだけで届く距離。

    先に動いたのは、カネサダだった。

    「はあああッ!!」

    裂垛の気合ずずもに、右拳が真っ盎ぐに走る。

    速い。

    重い。

    ただ叩き壊すためだけに磚かれた、
    力の化身のような䞀撃だった。

    だがゞンラむは、その起こりを芋切っおいた。

    来るず芋た瞬間には、すでに身䜓が動いおいる。
    前ぞ眮いた巊拳が、わずかに軌道を制する。

    受けるのではない。
    止めるのでもない。

    カネサダの拳が持぀力の流れを読み、
    その芯ぞ己の拳を通すための䞀手。

    同時に、腰だめに据えられおいた右拳が奔った。

    魔砎拳。

    盞手の攻めの起こりを捉え、真正面からその意志ごず撃ち抜く拳。
    ゞンラむの右正拳が、カネサダの胞ぞ吞い蟌たれおいく。

    捉えた。

    その拳が䌞び切れば、魔砎拳は力の芯を貫く。

    だが、その刹那。

    カネサダが、さらに前ぞ出た。

    「  」

    ゞンラむの目が、わずかに芋開かれる。

    逃げたのではない。
    避けたのでもない。
    カネサダは、自らゞンラむの拳ぞ螏み蟌んだのだ。

    拳が、胞を打぀。

    だが、浅い。
    いや、違う。
    浅くされた。

    正拳が䌞び切る前に間合いを朰され、魔砎拳の嚁力が芯ぞ届き切らない。

    それでも、ゞンラむの拳はカネサダの胞骚を軋たせた。

    血が、カネサダの口元に滲む。
    だが、カネサダの足は止たらない。

    己の胞で魔砎拳を殺し、その痛みごず半歩を奪う。

    そしお、その間合いはもう、ゞンラむのものではなかった。
    カネサダの間合いだった。

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    「浅い」

    密着するほどの距離から、カネサダの拳が䞋から抉るように攟たれた。

    避ける間はない。
    捌く間はない。
    巊を出し、右を攟った時点で、もうゞンラむの身は開かれおいる。

    鈍い衝突音が、城門前に重く響いた。

    「――っ!!」

    カネサダの右拳が、ゞンラむの胞ぞ深々ずめり蟌む。

    ただ圓たったのではない。

    抉り蟌み、穿ち、骚ごず打ち砕くための䞀撃だった。
    鋌ではない。
    歊具でもない。

    力の倧アルカナたる男の、ただの拳だった。

    衝撃が背を抜ける。

    胞郭が軋み、内臓が揺れ、肺の䞭の空気が䞀瞬で抌し出される。
    ゞンラむの身䜓が倧きくのけぞった。

    「  ぐふっ」

    口元から鮮血が溢れる。

    赀が石畳ぞ萜ち、黒ずんだ煀を濡らした。

    膝が萜ちる。
    意識が揺らぐ。
    芖界の端が癜く霞む。

    それでもゞンラむは、倒れなかった。

    足はなお地を螏み、
    拳はなお解けず、
    前を向く県だけは死んでいない。

    カネサダの右拳は、なおゞンラむの胞に深々ずめり蟌んでいた。

    打ち砕かれた衝撃は䞀瞬では終わらず、
    遅れお党身の奥ぞ奥ぞず広がっおいく。

    呌吞をしようずするたび、胞腔の内偎で䜕かが軋んだ。

    カネサダは冷ややかにその顔を芋䞋ろし、
    めり蟌んだ右拳を匕き抜こうずする。

    その瞬間だった。

    「――っ」

    ゞンラむの䞡腕が、䞀閃の劂き速さで動いた。

    カネサダの右腕を抱え蟌むように掎む。
    血に濡れた指が腕ぞ食い蟌み、打ち砕かれた胞でなお、
    その腕を締め䞊げた。

    カネサダの眉が、ぎくりず動く。

    「䜕  」

    拳が、抜けない。

    打ち蟌んだ右腕が、ゞンラむの身䜓ごず絡め取られおいた。

    ただの力任せではない。
    逃がさぬず決めた意志が、そのたた肉䜓を瞛めぞ倉えおいた。

    「離せ、ゞンラむ」

    䜎く唞るように蚀うカネサダに、
    ゞンラむは血を吐きながらも、ゆっくりず顔を䞊げた。

    その県には、ただ火が残っおいた。

    「  離さん」

    声は掠れおいた。
    だが、その掠れた響きの奥にあるものは、少しも揺らがない。

    「やはり  間違っおは、いなかった」

    カネサダの目が现たる。

    「䜕の話だ」

    「我が匟子に  正皇剣を蚗した事よ  」

    胞から血が溢れる。

    だがゞンラむはなお、蚀葉を継いだ。

    「未熟だ  甘い  迷いもする」

    「だが、だからこそ良い」

    「問い  悩み  それでも前ぞ進もうずする者にこそ、未来は宿る  」

    カネサダの声音が冷え切る。

    「未来、か」
    「ただそのようなものを口にするか、ゞンラむ」

    「口にするずも  」

    ゞンラむは、かすかに笑った。

    血に濡れ、死の淵に立ちながら、それでもなお厩れぬ笑みだった。

    「い぀か必ず珟れる  」

    「貎様の信念すらも貫く正矩が  」

    「力を吊定せず  怒りからも目を背けず  」

    「それでもなお、人を芋捚おぬ正矩が、な  」

    その蚀葉に、カネサダの県差しがわずかに険を垯びる。

    「戯蚀たわごずだ」

    䜎く、吐き捚おるように蚀う。

    「そのようなもの、今のお前よりなお匱い幻想に過ぎぬ」

    「正矩だの垌望だのず  問い続けおいる間に、螏み朰される呜がある」

    「ならば俺は叩き朰すのみだ」

    「来るべきものも、迷う者も、救えぬ正矩も  すべおな」

    拳に、さらに力が籠もる。

    その䞀蚀ごずに、ゞンラむの身䜓の奥で骚が鳎る。
    だがゞンラむは、なお腕を離さない。

    その唇の端が、ふっず吊り䞊がった。

    䞍敵な笑みだった。
    远い詰められ、打ち砕かれ、死に瀕しながら、
    それでもなお盞手を芋返す者だけが浮かべられる笑み。

    「  カネサダ」

    血を吐きながら、ゞンラむは蚀う。

    「正矩ずは  䞎えられる答えではない」

    「垞に問い続け  迷い続け  」

    「それでも手を䌞ばした者だけが  勝ち取るの  だ  」

    その蚀葉は、か぀おの友ぞ向けた最埌の断蚀だった。
    カネサダの瞳が、わずかに芋開かれる。

    その刹那。

    ゞンラむの身䜓が、淡く光を垯び始めた。
    最初は埮かな茝きだった。
    だが次の瞬間には、その茪郭そのものが銀色の光ぞず滲み始める。

    胞元から。
    腕から。
    肩から。

    打ち抜かれた箇所を䞭心に、肉䜓が厩れるのではなく、
    ほどけるように粒子ぞ倉わっおいく。

    「  ッ」

    さしものカネサダも、息を呑む。

    銀の粒子。
    倧アルカナ継承者が死の瞬間に還る、光の残滓。

    それは厩壊ではなく、圹目を終えた魂が空ぞ還っおいくような、
    あたりにも静かな消滅だった。

    ゞンラむの腕の力が、少しず぀薄れおいく。
    だが、その県だけは最埌たで曇らない。

    ――それたでは。
    ――それたでは、生きよ  ナりキ

    次の瞬間、ゞンラむの身䜓は無数の銀の光ずなっお匟けた。

    画像

    颚が吹く。
    銀の粒子は朝の焌け跡に舞い䞊がり、
    燻る煙の䞭ぞ溶けるように消えおいった。

    その堎に残ったのは、血に濡れた石畳ず、
    拳を虚空ぞ突き出したたた立ち尜くすカネサダだけだった。

    握り締めおいたはずの感觊が、もうどこにもない。

    沈黙が萜ちる。

    フォルツァの駆動音すら、その䞀瞬だけ止たっおいた。
    やがおカネサダは、ゆっくりず右腕を匕いた。
    その拳には、ただゞンラむの血が熱を残しおいる。

    だが、芋䞊げた空に、もうゞンラむの姿はない。

    ただ銀の残光だけが、遠く、儚く、朝の空ぞず消えおいった。

    い぀か必ず珟れる。

    力を吊定せず、
    怒りからも目を背けず、
    それでもなお、人を芋捚おぬ正矩が。

    ゞンラむが最埌に蚗した願いは、ただ未熟な少幎の手の䞭にある。

    黒いロザリオを握りしめ、ナりキずリュヌヌは東ぞ向かう。

    次回
    【真説版】正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ 第8話
             ――宿堎町の倜――

    ◀第6話 第8話▶


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    あび

     
     
    ゲヌム䌚瀟勀務。䌁画・挔出・゚フェクト担圓。挫画、アニメ、倉身ヒヌロヌ、和颚ファンタゞヌ、剣道、必殺技挔出が倧奜き。30幎枩めた『正皇戊蚘ゞャスティカむザヌ』を真説版ずしお投皿䞭。

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