
足湯は最高|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯30|第6章 上手くいくペアとは(静かにややこしい編)
「温泉?」
「はい、すごくいい湯なんですよ。遠くから湯治に来る人もいるくらいで」
「聖女が勧めるお湯とか、絶対効きそう! え、一緒入る?」
聞いた瞬間、Dは一気に真っ赤になり、
「……あ、足湯だけなら……」
と、消え入りそうな声で答えた。
Dと約束して、そのままミカルのところへ。
そう、今回は珍しくミカルも一緒。隣国だけど、なんだか旅行みたいでうれしい。
「温泉? ちょっと……めんどくさい」
思っていた反応と違って少しがっかりするが、仕方ない、と気持ちを切り替える。
「でも、すっごくいい湯なんだって。気が向いたら足湯だけでも入るといいよ」
「女性は割と好きだよな。一応男だからか、俺にはよくわからん」
「裸で開放感あるし。お湯に浸かるだけでも気持ちいいじゃん」
「プライバシーがない。テンション上がる理由がわからん」
「景色きれいだよ? 人も猿みたいに浸かってるだけで、なんか和むし」
「……お前が言いたいことはだいたいわかった」
ミカルはクッションにもたれかかって、目を閉じる。
「足湯だけなら、付き合ってもいい」
結局Eも誘って、みんなで足湯に浸かりに行くことになった。
「ダメだよ! そんなDのちっちゃい足を出すなんて!」
と、途中でEがわけのわからないことを言い出した。
ちっちゃい?
シオリはDと自分の足を比べる。
まあ同じサイズなのだが、ちっちゃいかも。
だからどうしたと言いたい。
なんなら白魚のように細くてきゃしゃとでも付け足そうか。
Eの目には私とDは別の生き物っぽいから、身体つきさえ違って見えるのかも。
ミカルには、どう見えてるんだろう。聞こうとして、なんとなくやめた。
「D、Eといて疲れない?」
「ちょ、シオリちゃん酷くない? ぼくはDを気遣っただけ!」
「足湯に来て足出すな、はないよ」
「だって……Dと一緒に入るって思ってなかったんだもん……」
Eは両手で顔を覆う。
「ちゃんと湯に浸かっちゃえば、へーきでしょ」
シオリはDの手を取る。
じゃぶじゃぶと、わざと少し音を立てて湯の中を歩く。
「わ、シオリさん、ちょっと歩くの早いです」
「あ、ごめん。ゆっくり行くね」
湯は柔らかくて気持ちよかった。
硫黄の香りがほんのり漂って、落ち着く。
Dと並んで、二人でタオルを膝に置いて座る。
Eはまだ両手を顔に当てたままだ。
「……心の準備が……」
「足湯に準備も何もないよ」
なんで一緒にいるんだろ、と思ってたけど、ちょっとわかった気がした。
◻︎◻︎
木の腰掛けに、シオリ、D、E、ミカルの順で横に並ぶ。
「あ、景色もいいですね」
Dが言う。遠くに海が見えて、船がいくつか浮かんでいた。ぽうっと汽笛を鳴らす船が、こっちを見ているようだ。
足をゆっくり動かしながら、湯の感触を確かめる。
「……これ、いつ出るんだ?」
と、ミカルがぼそっと呟く。
今日は気候も穏やかで、風もほとんど吹いていない。
「いくらでも入れるね」
「「「「…………」」」」
誰も否定しなかった。
Dの隣を見ると、Eはまだ両手を顔に当てたままだった。