
【雑サメ。#11】 勇者にお嫁さんは必要ない/第3章 勇者の隣(距離感がよくわからん編)
「隣国の聖女が来る?……なんで」
自室でホットケーキをパクついてると、神官Bが入ってきた。
「形式的なものです。シオリ様と同じ転移者なのできっと縁を結びたいのでしょう」
「そうなんだ。それよりおやつ食べたら街に出かけてくるわ。日にち決まったら教えて」
転移者か。正直会うのは気が進まないが、拒否して外交問題に発展するのもちょっと重い。
気分転換がてら、今日も炊き出しに出かけることにした。
◻︎◻︎
いつも通り野菜をぶつ切りにしてると、
「ねえシオリちゃん、もう結婚してるの?」
突然、隣のおばちゃんが思ってもいなかったワードを投げてきた。
「……けっ?」
「ここに来てもう半年くらいかしら。もう籍入れたの?」
「せ、せき???」
口がぱくぱく空気だけ押し出す。
「え?何話してるんすか?」
比較的若い娘さんまで話に参戦してきた。
「恋バナ?シオリちゃんの??」
「そうそう!ミカルくんずっと独身でしょ?シオリちゃん来たからとうとうかなって」
きゃー!!!と黄色い声が揃う。
六ヶ月、確かにそれくらいいるが。
この世界では一緒にいると即結婚になるのか?
恐ろしい世界だ。
「けど勇者って結婚する必要あるんすか?」
「え?女神様が連れてきたならそう言うことでしょ?」
今日はここも居場所ではなかったか。
シオリはそっとその場を去ることにした。
「勇者にお嫁さんなんて必要ないわよ。勇者が結婚したなんて、今まで聞いたことある?」
シオリは途中から思いっきり速度を上げて、その場を去った。
◻︎◻︎
今日は何もせずゴロゴロする日にしよう。
シオリは部屋に着くなり鍵を掛けてソファーにダイブした。
今日はミカルもいない。
いつもなんとなく一緒にいるのだが、最近は忙しいのか留守にすることが多い。
(もしかしたら今までが暇だっただけでこれが通常なのかもね)
――ミカルは勇者だし。
ちくんと何かトゲが刺さった気がした。
クッションを抱っこしたままソファの上で回転する。
もしかしたら、自分は今の身分に満足してないのか。
義務的労働からは解放されて、三食ご飯付き。
たまに異世界のことを聞かれるだけ。
冒険者的な職業って勇者だけだと思ってたんだよな。
同じ転移者が聖女としてがんばってるとか聞くと、よくわからない焦燥感に駆られる。
……そもそも、ここにいていいのか?
異世界の知識なんて、あのシャークネード&チェーンソーでだいたい伝え切った気もするし。
そもそもただの一般人の知識が、こちらで真面目に働いてる神官の役に立つとも思えない。
――あれ?
私、ここにいる意味、なくない?
その日見た夢は何故かウェディングドレスを着てブーケトスをする夢だった。
真っ白で、自分も線画のように細くすっきりとした絵になっていた。
真上に遠ざかる花束。
弧を描き、視界の向こうに消えていく。
――振り返ると誰もいなかった。