
【雑サメ。#12】 迷子の聖女/第3章 勇者の隣(距離感がよくわからん編)
なんか変な夢見た。
起きて顔を洗って、いつも通り神殿の食堂に向かう。
朝食のサラダのドレッシングがめっちゃうまくて幸せ。
ってところで、夢の内容が解けて消えた。
ふわっと湯気の立つ湯豆腐とお刺身をつついてると、
「シオリ様、大変です!」
いつもそそと歩く上品なシスター達が、裾を上げて小走りにかけてくる。
「どしたの?」
「連絡の手違いか、隣国cの聖女様が今日こちらにご到着なさるそうで」
「そうなんだ。じゃあ客間に行けばいい?」
「ミカル様の行方をご存知じゃありません?ここ数日、連絡がつかなくて」
「ミカルも会わなきゃいけないの?」
「慣例なので!!」
珍しく、きっぱりと言い切った。
「聖女様だけなら、シオリ様のみで問題なかったんですけど……」
「え、連れがいるんだ?」
こくこくと首を縦に振る。
「いつまで滞在予定なの?」
「三日間ですね」
「それなら、そのうち一回は帰って来るんじゃないの?後で一緒に挨拶に行ってもいいし」
「そんな、シオリ様!神殿の威厳をそんなに軽く扱ってもらうと困ります!」
……なんか怒られた。
外の客にやたら体面気にするのって、国家レベルでそうなんだな。
当たり前かもだけど。
その後、風呂に放り込まれえらい勢いで髪を解かされた。
香油みたいなものを全身に塗られた。
でも水着は水着のままだった。
唯一の抵抗で腰に巻いてた布も取られた。
――本当に、女性の尊厳に優しくない世界である。
◻︎◻︎
前に二列、十人。
左右に二十人。
後ろに二十人。
……シオリは、目の吊り上がったシスター達に囲まれて移送される。
水着だけで過ごすのが嫌すぎて逃げ出したら、塀をよじ登ったとこで門番に捕まった。
こんなにシスターって人数いたんだ。
それよりも、いつも優しいシスター達がこんなに怒ってるなんて。
今日はほんとに夕飯一品減らされるかもしれない。
恐怖に震えていると、後ろからまた別のシスターが、慌てた様子で走ってきた。
「大変です!院長!隣国の聖女様が、お庭で迷子に!!!」
「まあ!なんてこと!」
返事したシスターが院長だろうか。
シスター達は一斉に慌て始め、列を乱す。
「手分けした方が多分早いよ。私も探すから、みんなで探そっか」
「まあ!シオリ様、お優しい」
シスター達は目をキラキラさせると、それぞれの方向へ散っていった。
――うん。あれだ。
なんかこう、基本雑なんだよな、ここの住民。
いまさら逃げ出すつもりもないから、とりあえず探すの手伝うか。
聖女なら多分、ムービーだろうから、探し当てることは簡単なはず。
シオリが庭へ向かおうとすると、背の高い人物にぶつかった。
「D?」
名前を呼ばれた気がして顔を上げると、金髪の、紛うことなき美形が立っていた。
どうやら人違いらしい。けれど、
「ミカル?」
反射的に名前を呼んでしまった。
帰ってきてたんだ。
どこにいってたの?と聞こうとすると、
「……ああ、神殿の転移者か。初めまして。連れの聖女と格好が似ていたもので」
立ち姿、しゃべり方。
顔立ちは同じなのに、全てが違う。
「ミカルのお兄さん?」
瓜双子レベルでそっくりだ。
「違うよ。君もDと同じで、僕らの区別が付かないんだね」
「……別人なのは理解したわ」
抑揚のない声。
ミカルにしては、穏やかすぎる。
「そのDさんが聖女様?」
「そうだね」
「……あなたは?」
彼は、静かにEと名乗った。
「神殿に服装を強制されたのが嫌だったのか、
逃げ出してしまってね」
「あー……」
どこかで聞いた話だな。
「……なんか、つかぬこと聞きますけど。そのDさんって、こんな感じの格好です?」
シオリは、親指をくいっと自分に向ける。
「そうだね」
Eさんは、穏やかに微笑んだ。