
商団のイケメン|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯47|第8章 ときめかない棚活(だいたい未遂編)
ある日、ちまたで名高い商団が神殿を訪ねてきた。
「シオリ様は物欲なさそうですし興味もなさそうですが、神殿との繋がりのため一度会ってもらえませんか?彼、ちょっと頭角を現しそうなんですよね」
「えー、Jじゃだめなの?」
「こういうのは向こうからすれば、転移者と会うから意味があるんですよ。私はただの一介の神官です」
神官Jに言われて渋々会うことになった。
◻︎◻︎
神殿の客間にて。
「初めましてシオリ様、この度の謁見光栄に存じます」
緑髪に青い目の珍しい外見。
もしかしたら只者ではないのかも?と思いながら、対面ソファで話を聞く。
「一般の物も扱ってますが、シオリ様達転移者となりますとオーダー品になりますね」
彼は立ち上がり、次から次へと商品を部屋中に広げだす。
布地とか宝石とかキレイなのはわかる。
神官Jに気に入ったものがあれば買っていいと言われているが、いかんせん、目がアレな仕様である。シオリは食指が動かないのを残念に思った。
触れば質感は分かるけど、買う気もないのにいちいち触るのも気が引ける。
となると、ここはあれかな。万が一のために地金を買っとくか。
というか、それくらいしか商団の使い道なんて思いつかない。
それより―――
シオリは、後ろに控えてるシスター達の顔をチラッと見て手を上げる。
「あ、すみません、シスター。お茶をいっぱいおかわりいただけませんか?」
一人のシスターが黙ってポットのお茶をカップに注ぐ。ついでにイケメンにも注ぐ。
伏せ目がちに。
シスターのアイラインが微妙にいつもより濃い。
シオリは部屋の中をぐるっと見渡した。
シスターが1人、シスターが2人、シスターが3人、4人、5人……。
シオリは羊を数えるように数え続ける。
シオリの周りには、いつもはこんなに人がいない。
そしてみんなほんのり、いつもより化粧が濃い。
……この人きっとイケメンだな。
目の前の人はふわっと緑の髪をかきあげ、ウインクした。
ときめけない。
シオリは地味に損した気分になった。
◻︎◻︎
「はー、イケメンでしたねえ」
「かっこよかったあ。一瞬目が合ったかと思って勝手にドキドキしちゃいました」
「わかる」
「わかる」
コクコクとみんなで頷きあってる様子が可愛らしい。
何気にみんなお年頃のようだ。
「なんかいいね。イケメンに騒げるのって」
なんとなくボソッと呟くと。
「シオリ様にはミカル様いらっしゃいますから、これ以上望むのは贅沢ってもんです」
とキッパリ言われてしまった。
いや、そういう意味じゃないんだけどなあ、とぽりぽりと気持ち頬をかいた。
商団には小さめの装飾品だけ頼んでおいた。
神官Jには
「もっと頼んでも良かったんですよ?」
なんだか残念なものを見るような目で見られた。