
【雑サメ。#25】 白シャツならなお最高/第5章 危険物は排除しない前提(普通に隣にいる編)
「シャツってさ、色が曲者なのよ」
シオリは、神殿の裏庭で白いシャツを広げて歯ブラシを構える。
「何してるんだ」
「染み抜き」
「普通に洗濯機に入れれば取れるんじゃないか?」
横で見ていたミカルが首を傾げる。
「ううん。取れないやつがあるの」
普段はシスターに洗濯もおまかせしているが、しつこい染みはいかんせん見逃されてしまう。服は貴重だ。
着替えは女神が配給してくれるが、ちょいちょいミスがある。
シオリは重曹と食器洗剤と酵素系漂白剤を並べた。
「ま、表立ってやると、シスターに怒られるんだけどね」
「そうなのか?」
「うん」
「人の仕事を取るもんじゃありませんって」
「ふーん」
「予算が削れるからダメなんだって」
「神殿ってそういうとこあるよな」
ミカルは軽く目を瞑った。
だから基本、シオリは神殿でやることがない。
人手が足りないときはお使いに行かせて貰えるが、「働くな」という、強い意志みたいなものをたまに感じる。
……誰のだ?
シオリは空を見て一瞬考える。
「なんていうの?私時代劇で言うと食客なのかな?」
「あんまり深く考えるな」
ぽんとミカルが肩を叩く。
……まあいいか。
シオリはゴム手袋をして、ボールに目分量で液体を入れていく。
「お前、生き生きしてないか?」
「実はシミぬき好き。白シャツだとなお最高」
歯ブラシで液体を塗っていく。
はみ出さないように。
「薄いシミって見にくいんだよね」
光に当てて場所を確認し直す。この繰り返し。
「落ちるのか?これ」
「薄ーいシミだし余裕っしょ。で、つけ終わったら20分放置」
「洗濯って手間がかかるんだな」
「でしょ!もう向こうにいた頃はシミ抜きの本とか動画めちゃくちゃ見ててさ!素材別に使っちゃいけない洗剤とか、肌に優しい洗剤は意外とおしゃれ着洗いとか!もう読んでるだけで楽しくってさ」
一息で喋ったあと、ミカルの表情を見て固まった。
少し眠そう。
「あー。終わったら、なんか甘いものでも食べない?」
「なんでだ?」
「何となく」
「……食べる」
シャツをすすいで、シスターにバレないよう干した。
そのあと二人でアイスを食べた。