
【雑サメ。#24】 安全装置/第5章 危険物は排除しない前提(普通に隣にいる編)
「シオリさん!本当に来てくれたんですね!」
隣国の聖女Dの所に遊びに来た。
ちょっと心配だったが今日は泣いてはいない。
……いないんだが。
……格好すごいな。
視線に気がついたのか、Dは自嘲気味に答える。
「なんか、変でしょ。前会った時は水着だったのに」
白い絹地の豪奢なドレス。袖も丈もとにかく長い。歩くと引きずるほど長い。
髪も高く盛られていて、髪飾りがちょっと重そう。
「服が出来てから、なんかみんな変なんです。以前は話題にもしなかったのに、着るものとか今日もすごい言われて」
「そう、なんだ。似合ってるけど、動きにくそうだね」
「まあ、水着しかない頃よりはましですけどね」
Dはふふっと微笑んだ。
「聖女だし、服があると、みんな着飾りたくなるのかもね」
奥から背の高い男が歩いてきた。
「あ、シオリちゃんだっけ?来てたんだ」
勇者E。ミカルと同じ外見なので、脳がバグってシオリは苦手だ。
「こんにちは」とだけ頭を下げる。
「そんな顔しなくていいよ。邪魔しないから。ただ、いる時だけDを貸してね」
またね、と手を振って去っていく。
なんか、掴みどころない人なんだよな。
ブルブルと寒気が来て二の腕を抱える。Dほど豪奢じゃないが、服は着てる。
私は守られてる。
シオリは心の中で呟いて、Dに並んで歩いた。
◻︎◻︎
王宮を案内する、との申し出を断ってまっすぐDの部屋に向かう。
本音は早く、二人きりになって、腰を落ち着けたい、だった。
残念ながら、部屋についてもお付の人は減らなかったけれども。
「なんか、窮屈じゃない?」
「ですよね」
困ったようにDは笑う。
お茶はもちろん、お付の人が入れてくれた。
出来ればでかいポットでドーンと置いてあって「ご自由に」と言われた方が楽なんだが。
「Eはなんにも言わないの?これ」
「聖女の私生活になにか言う権限はないみたいで。けど、たまに街に遊びに連れて行ったりしてくれます」
Eは勇者だからお付の人もいらないし、その時は空気が軽い、とDは嬉しそうに微笑んだ。
なんだか不憫に思えた。
「そういえば、聖女っていつもどんな仕事してるの?」
「えっと、孤児院の訪問とか、老人ホームとか、あとは国の観光資源特産物のPR、とかですかね」
……ふるさと大使かな?
「シオリさんのとこ前行ったときも、お土産品の紹介が目的だったんですよ」
あとでDに、美味しいお土産用の菓子を見繕って貰うことになった。温泉まんじゅうがおすすめらしい。
◻︎◻︎
客室に案内されてくつろいでると、ミカルが訪ねて来た。
座標シオリってやつかな?
一瞬驚いたが、しばらく手を握ると黙って帰って行った。
生存確認?理由なしにこういうことする人ではない。
が、心なしか、安心したのか眠気が来た。深く考えずに、そのまま寝ることにした。
◻︎◻︎
翌日、起きてDの部屋をノックする。
「どうぞ」
「おはよー。あれ?今日はお付きの人達いないの?」
「今は、Eがいるんで」
あ、いたんだ。
とは声に出さず、Eを見る。
「ねえねえ、シオリちゃん!どっちがDに似合うと思う?」
Eはワンピースドレスを二枚掲げる。
なんだか、朝なのに昨日よりハイだ。
ベッドやテーブルの方を見ると他にも衣装が一面に広げられている。
「いつもこんな感じなの?」
「服がきてから、Eもちょっとテンションおかしい日があって」
困ったようにDは微笑む。
「どっちも似合うと思う」
1枚はシックなワンピース。もう一方はフリフリふわふわ。
Dの柔らかい雰囲気なら、どっちも着こなせそう。
「そういえば、Eには私達の顔ってどう見えてるの?」
「え?」
「いや、私やDにはお互い同じ顔に見えるんだよね」
信じられないというふうにEが青ざめる。
「Dのこの可愛らしさがシオリちゃんと一緒!?全然違うじゃん!それ、一緒に見えるなんて絶対損だよ」
真顔で言われた。
「なんて返せば分かんないけど、Eにはそうなんだね」
Dの雰囲気は可愛らしいので、シオリもその点は異論は無い。
別の顔に見えるのなら、きっと可愛らしいのだろう。
「たまに一緒にいて疲れない?」
とDに話をふると、くすくすと和やかに笑っていた。
「あっ!その笑い方めっちゃかわいい!!!!」
「E、そろそろ自分のお部屋戻りませんか?」
恥ずかしそうにDが俯く。
以前会ったときは、もっと冷たい人かと思ってたけど、E。
Dのこと大事にしてるんだな。
シオリは胸を撫で下ろす。
◻︎◻︎
夕方、DとEが見送りしてくれた。
「シオリさん、また遊びに来てくださいね」
「Dの方が、遊びに来た方が良いと思う」
「……別にいいけど、さりげなくDを攫おうとするのやめてくれる?僕の安全装置なんだから」
Eが不機嫌そうにDとの間に身体を割り入れた。
……え?割と束縛系だったのだろうか。
空気が変わった気がした。
「ミカル君から聞いてないの?ペアの転移者は勇者の負担を軽くする装置なんだよ。だから僕はいつも一緒じゃなきゃ嫌、かな。壊れちゃう」
ま、ミカル君なら結構な間は持つかもね。実績あるから、とも何やら言っていたが、あんまり耳には入って来なかった。
……昨日のミカルの手の温度だけ、思い出す。
シオリは爪先を見つめ、晩ご飯のことを考えた。
◻︎◻︎
「ただいま〜」
帰るとシスターが、
「ご飯できてますよ〜」
と出迎えてくれた。
食堂でいつも通り、ミカルと夕食を迎えた。
ご飯はしっかり美味しかった。