
【雑サメ。#6】 世界の隙間と聖域/第2章 この愛しい世界で(なんか普通に暮らしてる編)
a村の役場。村長さんの自室にて。
「行方不明の家族を探してほしい?」
村長さんはこくっと頷く。
例によって顔の個性はない。
「家族がb村に引っ越したはずなのに、連絡がなくて」
村長さんが両手を脇に上げ、首をブンブン降り始めた。
……もしかしたら頭を抱えているポーズなのかもしれない。
「シオリ様、ミカル様どうか遺体だけでも……」
彼はペコッと頭を下げた。
「わかった」
即答。さすが勇者。
引き受け方もイケメンである。
……シオリの頭に疑問が過ぎる。
勇者の仕事とは?人探し?遺体探し?便利屋?……特殊清掃?
「……」
シオリは考えるのをやめた。
◻︎◻︎
村長さんと話したあと、a村の外れを二人で歩く。
「だけど、どこ探せばいいんだろうね。子どもと3人家族って言ってたけど」
「歩いてたら引っかかるかな」
「……死体が?」
シオリは微妙な顔になる。
いくら処理の甘い世界でも、死体や骸骨を見るのはあんまり気が進まない。
ミカルは目を細め、遠くを仰ぎみた。
そしてシオリの歩く速度に合わせて一歩前を行く。
「あっちに丘があるだろ、もしかしたらあの辺かもな」
「えー」
「そんな顔するなって、案外生きてるかもだぞ」
草をかき分けて進んでいく。
着いた先は土色と緑色のパーツが積み上がっている。
丘?登るとパキッといきそう。
シオリは言葉を寸前で飲み込んだ。
そんなシオリに構うことなく、ミカルはぐるっと回り、「ここだな」と足を止めた。
ミカルが指さしたところを見ると、
……空白地帯がある。
ミカルはまっすぐ進み出す。
――空白地帯めがけて。
「え、ちょちょちょっと待って」
シオリはミカルのパーカーの裾を掴んで引き止めた。
「え、なにこれ」
「え?隙間」
「隙間?」
「ま、そういうとこだな。たまにある」
「え?ミカル?」
「俺だいたい入れんだわ、こういうとこ」
そのまま隙間に足を突っ込んだ。
「シオリも来い。多分入れっから」
恐る恐るミカルの手を取り、中に入る。
入れた。なんじゃこりゃ。
中から眺めるとペラい崖の素材の隙間から、元いた景色が見えた。
バグだな。
「うーん、いなかったね。やっぱり野原で骸骨コースかなあ」
ミカルは右手に真っ白な球体を出し、フワッと宙に飛ばす。
「なにそれ?」
次の瞬間、見たことのない景色が広がっていた。
「ここがb村な。とりあえず話聞いてくる」
「え?どういうこと?何が起こったの?」
「例の家族の引越し先だろ?」
「いや、そうじゃなくて……」
「ん?ああ、前行ったとこならこれ使って飛べるってこと」
「聞いてない」
「言ってないからな」
「ええ?」
ミカルは一度しゃがんで地面を触り、
「……まあいいか」
と立ち上がった。
そしてダッシュで消えていった。
「……とりあえず座ろ」
そのうちセーブのやり方も来るかもしれない。
シオリはのびをして目の前の喫茶店に入った。
シオリが紅茶を飲み終わると、まもなくミカルが戻ってきた。
「わかったわ。色々聞けた」
「そうなんだ。なんかわかった?」
「んじゃさっきの隙間戻るぞ」
「ええ……」
シオリはミカルを振り返る。
「一体どういうことなの?」
「うん?踏んだら出る的なやつだろ。きっと。尋ねりゃいるさ」
◻︎◻︎
それからしばらくして、例の家族を訪ねると。
居住地に【選ばれたものだけの聖域】という看板が立っていた。
あと家族にリポビタもらった。
「グレーの袋が降ってきたんですよね」
家族は不思議そうに顔を見合せていた。
帰り道
ミカル「リポビタいっぱいもらっちゃったな」
シオリ(……ポーションって言わなくなったな)