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【雑サメ。#7】 眠れない勇者/第2章 この愛しい世界で(なんか普通に暮らしてる編)

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    【ミカル視点】

    ポーションを飲みすぎたせいで、ミカルは目を閉じても眠れなかった。
    頭だけが妙に冴えて、天井の模様を数え終わったあとも、まだ眠気が来ない。

    「……参ったな」

    しばらく悩んだ末、彼は静かに神殿内の廊下を歩いた。

    扉の前。ノックは一度だけ。
    返事を待つ前に、扉が少しだけ開く。

    「……どうしたの?」

    眠そうな声。
    シオリは肩に羽織りをかけただけで立っていた。

    「……あー、やっぱりいい」

    シオリから視線を外し、回れ右をする。

    自分らしくない。
    ドアまで開けさせて完全に不審者だ。

    「え?ミカル?」

    シオリがミカルを呼び止める。
    ミカルは一度下を向き、自分に言い聞かせるように口を開いた。

    「眠れなくてさ。……その……少し話したら帰るから」

    言いづらそうに視線を逸らしたままのミカルに、
    シオリはきょとんとしてから、ふっと笑った。

    「お茶入れるね」

    シオリはミカルを自室に招き入れる。

    「いいでしょ。シスターに分けてもらったんだ。いい香りだし、少しあったまると寝つきやすくなるから」

    湯気と一緒に、甘くて草花みたいな匂いが広がる。
    カモミールと、シオリの部屋の匂いが混じっていて、思わずあくびが出た。

    「そうだ、そのまま一緒寝よっか?」
    「……うん」

    シオリは少し目を丸くして、ベッドを指差す。

    「じゃ、ごろんして」

    ミカルは黙って靴を脱いで寝転んで背中を向ける。
    シオリは何も言わずにミカルの背中を軽くさすった。

    一定のリズム。
    魔法でも呪文でもない、ただの手の温度。

    不思議と呼吸が揃ってくる。
    髪が頬に触れるくらいの距離で、
    シオリの匂いがふわっとした。

    石鹸と、少しだけ甘い匂い。
    シオリの、小さな歌声。

    ――一緒にいたやつ。
    昔話だっけか、
    途中で寝てたから結末は知らない。
    勇者と魔王と、ホットミルクの甘い匂い――

    ――長く編んだ赤い髪

    ――あのときは、ホットミルクだったかな

    (……自分の部屋、帰んないとな)

    ◻︎◻︎

    朝。

    目を覚ましたミカルは、見慣れないシーツの模様が目に入る。

    「あれ……?」

    そして――
    シオリの部屋――布団に残る、昨日と同じ匂い。

    「……っ」

    鼻の奥が熱くなって、
    ミカルは慌てて顔を覆った。

    「なんで……俺シオリのベッドで寝てるんだよ……!」

    廊下の向こうから、何事もなかったような声。

    「起きた? 朝ごはんできてるよ」

    ◻︎◻︎

    【シオリ視点】

    ――びっくりした。
    シオリはミカルを起こさないよう、そっと身を起こす。

    お茶を入れて、しばらく背中をトントンしていると安心したように寝息を立てていた。
    「もう帰る」と声にならない声で呟いていたが、背中をさすって寝かしつけた。

    ――時々、ミカルは窓の外を一人で眺めてたりする。

    金髪に、ところどころピンクが覗く髪を、ふわっとなでる。
    かの美形は、その色を忘れたように、あどけない顔で眠っている。

    肩まで布団を掛けるとシオリはベッドから降り、そっと自室の扉を閉め出て行った。

    朝起きるとミカルが固まっていた。
    ティッシュを渡すと「助かる」と上を向いた。

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    低予算・低体温で回る世界と、爆破でしか更新されない物語。 (雑サメ。連載お休み中。) ログライン『世界の変さより今日の生活』 ・低予算・低体温ファンタジー ・サメは爆破します(重要) ・合わなかったら、そっと閉じてOKです

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