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上手くいくペアとは|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯34|第6章 上手くいくペアとは(静かにややこしい編)

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    「意味付けのある行為は禁止事項に該当する。分かりにくいですね」
    「――この世界に来たとき、言われたことがあります」

    聖女Dから、ずっと昔に届いたメールだ。
    スクロールするごとに、息が浅くなる。

    「繰り返しの違反は、個人判断に委ねる」
    そこまで読んで、そっと端末を閉じる。
    足は自然、神官Bの部屋に向かっていた。
    神殿の広い廊下に、自分の足音だけが響いていた。

    ◻︎◻︎

    「上手くいくペア、ですか」
    神官Bが椅子からゆっくり立ち上がる。
    「珍しいですね。シオリ様が、この世界について関心を持つなど」
    「特に聞かなくてもいいかなって、思ってたんだよね。普通に生活できるならって。あと、聞いてもどうしようもなさそうだしさ」
    「……回らなくなってきましたか?」
    普段はわからない表情のBが少しだけ微笑んだ気がした。

    「記録上は三例あります。共通点は、“期待しなかった”ことです」
    「期待、しない」
    「勇者を癒す、とでも言いましょうか。最低限の触れ合いのみ。それ以外はお互い何をやっても、どこにいても自由」
    「お互い興味を持たないってこと?」

    神官Bは静かに頷く。
    「それってご飯美味しいのかな?」
    「おいしく感じるように、お互い調整するしかないのでは?」
    「……そう、なの」
    自分の唇に触れ、今朝のことを思い出す。
    舌を僅かに動かす。
    メニュー名は思い出せなかった。

    「神官Bはさ。なんでペアのこと。教えてくれなかったの?」
    「教えてましたよ。最低限は」

    「……そうだっけ?」

    「詳細を語らなかったのはミカル様の希望です。転移者に負担が大きすぎる、と」
    「……」
    「たいていの転移者はこちらへ来ると、環境に適応できず消耗します。……まあシオリ様は例外に入るようですが」
    「褒めてる?」
    神官Bはふっと息を洩らす。
    「助かってます。なので、転移者がどういう存在なのか話しても良いのではないかと、ミカル様に交渉しましたが、断られ続け今に至る、と」

    神官Bは深く息を吐き出すと、ゆっくり椅子に身を預けた。
    衣服と皮が擦れる音、きい、と軋むような金属音。
    その音が耳の奥に居着く。

    適応か。
    サメ映画履修が進んでなかったら、自分もやばかったかもしれない。
    実は、サメ映画以外にもZ級映画を探してよく見ていた。
    死霊の盆踊り耐久92分。あれに耐えたら大抵のことはどうでも良くなる。……ならないかも。

    軋む音を振り切るように、シオリは髪ごと耳を覆った。

    ◻︎◻︎

    その日の晩の夕食。神殿の食堂。
    まだ食事は運ばれてこない。

    シオリもミカルも黙って端末を弄る。
    隣同士。食事しても肘が邪魔にならない距離。
    少し目が合い、また2人とも端末を見る。
    ミカルは画面に指を滑らせ、シオリは端末を2回ほど弾くように叩き、テーブルに置く。
    「答えなくてもいいんだけど」
    シオリの切り出しに、ミカルが視線を上げる。
    「以前、……夜中に来てたのって癒されに来てたの?」
    「そういう言い方は、役割を産むからよした方がいい」
    ミカルは端末を閉じてテーブルに置いた。
    「ミカルは、ペアのことどう思ってるの」
    「……不自由だな、とは思う。自分だけで、存在できないのは、すごく」

    「……」

    「シオリの前にもペアがいた」

    「……」

    「踏み越えた。だから、もうやらない」

    彼は静かに息をついた。

    「俺が適切に処理すれば、お前は壊れない」
    シオリは気付かれないように、短く息を吐いた。
    「そっか。……なんか、不器用だね」
    「正直、これが正しいのかはわからない。誰も答えをくれない。女神さえも」

    運ばれてきたのは、何の変哲もない温かいスープとパン。
    ミカルは黙ってスプーンを動かしている。
    一度だけ、止まってから、また口に運んだ。
    隣に体温があるだけで、スープの塩気がやけにちゃんと感じられる。
    「……うん、調整いらないね。美味しいよ」
    「……そうか」

    スープ皿に手を添えていると指先からじわりと温まっていった。
    シオリは髪をかきあげ、耳の後ろに掛けた。

    ◻︎◻︎





    おまけ
    シオリ「踏み越えた。二度とやらない(by死霊の盆踊り

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    低予算・低体温で回る世界と、爆破でしか更新されない物語。 (雑サメ。連載お休み中。) ログライン『世界の変さより今日の生活』 ・低予算・低体温ファンタジー ・サメは爆破します(重要) ・合わなかったら、そっと閉じてOKです

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