
靴下が見つからない|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯35|第6章 上手くいくペアとは(静かにややこしい編)
午前。街の炊き出し場は今日もにぎわっていた。
「靴下が片方しか出てこない」
「わかる。あきらめて捨てたら見つかるの」
「ベッドの隙間とかに挟まってるやつね」
「そう。ビミョーな隙間!」
「私こないだ全部同じ黒に揃えた」
「うちもやった。なのに旦那が微妙に違うの買い出した」
「あー、ありがちwww」
笑いながら皿をじゃぶじゃぶ洗う。
シオリも後を追うように手を動かすが、おばちゃん達の方が早い。拭くのも早い。
「なんか持ってかれてる気がするのよね」
「あーね」
「返してくれる時あるけど、タイミング悪いの」
……靴下の妖精はどこの世界にもいるのかもしれない。
最後の皿を拭き終わって、いつも通りエプロン畳む。
特に声を掛けられるわけでもなく、タッパーを差し出すと具入りのスープが注がれる。
そういえば、なんでここに通ってるのかな?とふと思う。
シオリはそんなに積極的にしゃべる方でもない。
ここの人達と見た目も違うし、この場所で生まれ育ったわけでもない。
けど、それ込みで拒否されてない気がする。
しゃべってるのおばちゃんが多いけど、最近は若い子も増えてる。
多分みんなボランティア。
なんか、謎な場所。
最初は自分もやることがなくて、仕方なく通いだしただけの場所。
けど居心地いい。
なぜだ。
考えてたら神殿に着いた。
シスターにお土産のスープを渡すと、ミカルとすれ違った。
「おかえり」
「ただいま」
ミカルの足元に視線を移すと。
「靴下?黒一択だろ?選ぶコストが低い」
「ふーん」
……リブが左右で違っているのは教えなかった。
◻︎◻︎
「靴下に穴が空いた」
「縫えば履ける気もするけど、そこまで力入れる?」
「うーん、お気に入りならやるかも」
「がんばってもなー。また別のところ破れるかも」
「ねー。」
「あと、たくさん予備買っても同じの履いちゃう」
「わかる」
翌日の炊き出し場では、変わらず靴下の話が繰り広げられていた。