
雨の日には雨の日しかやれないことがある|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯33|第6章 上手くいくペアとは(静かにややこしい編)
雨を思うと体がだるい。
少し体が重くて、動くのがおっくう。
シオリは寝巻きのまま顔を洗いに行く。
洗いながら今日の炊き出しのことを考えた。
おばちゃん達には行くって伝えてある。
しばらく水道の水を流し、ばしゃんと冷たい水で気持ちを切り替えた。
着替えて食堂でミカルと会う。
「だるそうだな」
「うーん体はね」
「雨降ってるな」
「そう、それ」
運ばれてきたスープを飲むと、少し温まった。
「送っていくか?」
「ううん、いい」
食べ終わって、準備して、傘をさして、まっすぐ炊き出し場へ向かう。
傘に白いポリゴンの粒が当たっては溶ける。
音はしっかり雨音。
地面もいつもよりワントーン暗い色。
触るとしっかり湿っていて。
長靴でときどき水溜まりに入ると、しっかり沈む。
空も暗かった。
人通りも少ない。
「うーん、嫌いじゃない」
少し歩く速度が上がった。
「おはようございまーす」
「あら、早いわね」
「シオリちゃん、いらっしゃい」
おばちゃん達に出迎えられる。
シオリはエプロンをつけて準備をする。
「今日、人来ますかね」
「手伝う人?それとも食べる人?」
「雨の日には雨の日が好きな人が来るわよ」
「静かなのが好きな人ね」
「わかる気する」
いつもよりゆっくり、みんな作業に掛かる。
まな板に包丁が当たる音。
ボウルや鍋を洗う音がキッチンに響く。
いつもより音が大きい気がする。
おばちゃん達のおしゃべりも、ワントーン低め。
テンションも。
心なしか声も。
台所がスープの匂いで満ちる。
味見をさせてもらうと、しっかりまろやか。
「みんな来るかしら」
「来るでしょ」
いつもよりどこかのんびり。
のびをしたり、腰を叩いてみたり。
洗えるものは洗ってしまおうと、使い終わったザルや包丁を洗う。
窓の外を見ると沈み込むように暗い。
昼になってもキッチンの明かりは付いたままだった。
「雨だからか」
「そう、シオリちゃん、今日は雨」
隣で洗ってたおばちゃんがシオリの独り言を拾う。
人は少しずつ来て、鍋の中身が減っていく。
「減らないわね」
「余ったらみんなで持ち帰りましょ」
「それだけでも来たかいあった」
「暇だから備品チェック」
「私窓拭いとこうかな」
関節痛いとか、体おっくうとか言う割にはみんなそれぞれ動き出す。
「雨の日には雨の日しかやれないことあるわよね」
「あとこんな日にはきっとサメは来ない」
「あーね」
「わかる。なぜだか分からんけどわかる」
「サメも雨だとおっくうなんでしょ」
「雨粒当たるのだるいとかね。きっとそんな理由」
「わかる」
「わかる」
シオリも黙って床を拭く。
雨だから、やることがいっぱい。
だけど、それなりの範囲で。
体をときどき、横に揺らしながら。
鍋の中身が半分になった頃にタッパーでみんなに分け出す。
「ちょっと早いけど解散」
「雨だからね」
「理由になる?」
「なります」
みんなふふっと笑う。
傘を差して神殿に帰る。
小脇に抱えたスープが暖かくて、雨の冷たさは気にならなかった。