
猫カフェ|雑サメ。〜勇者の隣で普通に暮らす……多分♯43|第7章 正しさが通り過ぎる(なんか通り過ぎてった編)
午前。いつもの炊き出し場にて。
いつも通りおばちゃん達の会話に耳だけ傾け、シオリは手元を動かす。
「ミドリウマ食べられてから言うこと聞かなくなった」
「それ前からでは?」
「前より頑固」
「一回サメ通るとズレるのよねえ」
「買い替えたいんだけど、まだ残クレ残ってる」
「え。残クレはあかんやつ」
「だってその時、どうしても買い替えなくちゃいけなかったのよ。なのに現金は納期1年って言われちゃって」
「あー。聞いた事あるわ」
「サメ通ってるならお金さらに取られそう」
「だよね〜」
「かじられたの尻だけだから、まけてもらえないかな」
「尻だけか〜そりゃまた微妙」
本当にここは変わらなさそう。シオリはのんびり人参の皮をピーラーでむいた。
薄く真っ直ぐむけた。
◻︎◻︎
「白地に金縁のローブの人? ああ、何人かd国から来てますね」
神殿内の食堂のキッチンで、シスターはぬか床の底を確認しひとまぜした。
「普段は、神殿から各国に派遣されてる方たちですね。勇者様と聖女様のサポートをされてるとか」
遠くを見ると、食堂の隅のテーブルに何人か同じローブの人が座っている。
やっぱり、神殿の関係者なのか。
(多分、私には関係ない方の)
「私も詳しくは知らないんですけどね。接点がないから」
神殿ってやっぱり大きい組織なんだな、と端的に思った。
「あのローブの人達ってみんな顔隠してるんだね」
「ああ、きっと神殿の女神様のお好みでしょう。意味づけを嫌いますから」
「ふーん。だから名前ないの?」
「通し名はありますよ」
シスターは唇に人差し指を当てた。
「意味づけを嫌う女神様です」
「それ、名前?まんまだね」
「まんまなんですよ。だからみんな小声です。他にはちょっと詩的に、名も無き女神、あとは小さな女神様、ですかね。」
「それ、結構好き勝手に呼んでない?」
「そうです。名前ないですから」
「宗教的によく通るね。それ。神殿ってそんないい加減でいいの?」
シスターはピタリと止まった。
「宗教じゃないですよ?」
「へ?」
「それよりシオリ様、お肌のお手入れした方がいいですよ。乾燥はお肌の大敵です」
あとでクリームお届けしますね、とシスターは糠床を床下に仕舞い込み席を立った。
お肌のお手入れ、かあ。
やってるつもりだったんだけどな。とシオリも席を立った。
廊下に出るとどこからか、猫の鳴き声が聞こえた。
猫? 誰か飼ってたっけ?
迷い猫?
どこにいるか探そうと一瞬考えたが、音が反響して方向が分からない。
「天井が高いのも、考えものだと思うのよねえ」
飼育できるか、後で神官Jに聞いてみよう。
シオリは廊下をのんびり歩き出した。
◻︎◻︎
翌日。Dが久しぶりに遊びにきた。
目的はパジャマパーティーだ。
Hさんも誘ったのだが、
「ごめん、まだ水着のままでいたい」
と丁寧に断られてしまった。
この世界に来たとき、水着のままが嫌だったけど、人の価値観てそれぞれだなと思った。
今回はDのお付きの人達が控えてたけど、人数が前より減っていた。
「だいぶ言えるようになりました」
とDが静かに微笑む。
微笑むDの後ろに、一人、白地に金縁のローブの人が控えていた。
「ねえ、どこ出かけたい?」
Dに聞くと手をもじもじしながら小さな声で、
「猫カフェ」
と言った。
「え? Dも猫好きなの? てっきり犬派なのかと思ってた」
「犬も好きですよ?」
「うん。Eとか犬っぽそう」
何気なく言っただけなんだけど、Dは真っ赤になった。
「あ、ごめん。聞かなかったことにしてw」
少し咳き込みながらDは手前のコップを持ち上げる。
「意味づけ禁止、です」
「そーだねwww」
勢いよく水を飲んで空になったコップにさらに水を注ぐ。
「けど、よくD一人で外出させてくれたね。てっきりEもくると思ってたよ」
正常な判断だ。
「とりあえず調べていこっか。猫カフェ」
立ち上がってシオリはコップの中の飲み物を一気飲みした。レモンの香りが鼻に抜けた。
シオリは端末を取り出し、検索する。
「街の通りに一ヶ所あるねえ」
早速行ってみると――
「わあーーーー!!!……ポリゴンだあ……」
「まあ、そこは変えようがないね」
猫を撫でるとふわっとした手触りになった。