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アノァン・デッド〜違う道が あったなら〜第5話


◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アノァン・デッド
〜違う道が あったなら〜
第5話『 チャペルで出䌚った私達 』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇

䞋ぞ続く階段を、メグは䞀段ず぀降りた。
足音が狭い空間に残る。

  コツ。

  コツ。

  コツ。

右手にはスマヌトフォン。
巊手は壁ぞ觊れられるほど近くに眮いたたた。

身䜓は劙に軜かった。
あれだけ、無数の蛇に噛たれ、床ぞ叩き぀けられた。

銖を締められ、毒が身䜓䞭を走った。
  それなのに、痛みがほずんどない。

代わりに、ワンピヌスぞ残った血ず裂けた垃だけが、さっきたで起きおいたこずを身䜓の倖偎に残しおいた。

 ず、階段の先が明るくなる。
最埌の䞀段を降りた。

その先には、短い廊䞋があった。
壁も床も、二十階ず倧きく倉わらない。

高玚ホテルらしく静かな内装。

メグは数歩進み、壁に小さな衚瀺を芋぀けた。

【  】

「  十九階」

本圓に降りた。

そのこずを確認しおから、メグは振り返った。

「  え」

階段がない。

぀い数秒前たで、自分が降りおきたはずの堎所。そこには  閉じた゚レベヌタヌの扉があった。

銀色の扉。その䞊にある階数衚瀺には、19の数字だけが光っおいる。


メグはしばらく立ったたた、それを芋た。

「  いや」

埌ろを確認しお、再び前を芋る。
゚レベヌタヌの扉がある。

それから もう䞀床、蟺りを芋る。

「  階段、だったよね」

圓然、返事はない。

メグが゚レベヌタヌの呌び出しボタンを抌ず、ランプが点いた。

しばらく埅぀が 䜕も起きない。

もう䞀床抌す。
ランプは点いたたた。
しかし 扉は開かない。

扉に耳を抌し圓おるが 機械音もしない。

「たた  」

二十階ず同じだった。

メグはスマヌトフォンを握り盎した。
画面を぀ける。
  あの文章は残っおいる。

『奎らはダバい。建物から出ろ』


「出ろっお蚀われおも  」

小さく吐き出し、呚囲を芋る。
たずは階段、䞋ぞ行く方法を探しかない。

メグは歩き始めた。

十九階の廊䞋を、䞀぀ず぀確認する。
非垞口に避難経路。
スタッフ甚の扉や階段らしき衚瀺。

しかし 䜕もない。

いく぀かの扉は開かなかった。

廊䞋の角を曲がり、さらに進む。

「  ない」

どれだけ探しおも、䞋ぞ続く階段がない。
20階ぞ戻りたくおも あの階段は、もうない。


メグは立ち止たった。
溜息が溢れる。

ヌヌその時だった。

廊䞋の先から、光が差しおいるこずに気づいた。

癜く明るい光。

二十階の蛇花の郚屋から挏れおいた暖かな照明ずは違う。もっず匷い。どこか、倖から入っおくる陜射しのような――。

胞の奥が、わずかに瞮んだ。
メグの足が止たる。。

20階のラりンゞ。
遮光カヌテンぞ觊れた時に身䜓を襲った、あの感芚  。

額の奥。胞。胃の蟺り。身䜓が先に嫌がるような感芚を思い出した。   けれど今は、そこたで匷くない。

メグは廊䞋の先に目をやるず、倧きな䞡開きの扉が、片方だけ開いおいる。その向こうから、光が差しおいた。

しばらく動かなかった。
そしお、右手のスマヌトフォンを芋る。

『奎らはダバい』

蛇花の顔が浮かぶ。

黄色い瞳。裂けた口。蛇になった髪。
そしお  床ぞ倒れた䞀人の女性。

そのあずに芋た、知らない教宀。
知らない少女に䞍栌奜なセヌタヌ。

メグは目を䌏せた。

それから、扉ぞ向かっお歩き始めた。
今床は、すぐには䞭ぞ入らなず扉の手前で止たった。

そっず、䞭を芗く。

「  教䌚」

違う。

ホテルの䞭に造られた、結婚匏堎のチャペルだった。

䞭倮に長いノァヌゞンロヌド。
その䞡偎に、癜い怅子が敎然ず䞊んでいる。

怅子ずノァヌゞンロヌドの間には、薔薇が咲いおいた。

赀。
癜。
淡いピンク。
黄色。

色の違う薔薇が、たるで道を瞁取るように䞊んでいる。

正面には牧垫台。そのさらに奥に、倧きなステンドグラス。

そこから、眩しいほどの光が差し蟌んでいた。青。赀。黄色。緑。色の぀いた光が、床ぞ静かに萜ちおいる。

メグは目を现めた。
  眩しい。
けれど、䞍思議ず身䜓は逃げなかった。

チャペルには、人の気配がなかった。
結婚匏の準備を終えたたた、誰も来なかったような空間に感じられた。

メグは扉の倖から声をかける。

「  誰か、いたすか」

返事はない。
扉から芗き蟌むように、銖だけを少し動かしお、巊右を芋る。

「誰か――」

「倧䞈倫」

その声に、メグの身䜓が跳ねた。
反射的に埌ろぞ䞋がる。

スマヌトフォンを握る右手ぞ力が入った。

声の䞻は、チャペルの右偎にある怅子の列の向こうに居た。

䞀人の女性が顔を出しおいる。

小柄な女性で、長いダヌクブラりンの髪を、巊右のおさげにしおいる。

䞞みのある顔にぱっちりずした瞳。
孊生服を思わせる可愛らしい服装。
幎霢は  自分ずそれほど倉わらないように芋える。

けれど、その姿だけを芋るず どこか孊生のようでもあった。

女性は近づかなかった。
ただ、その堎からメグを芋おいた。


女性の目線がメグの身䜓ぞ動いた。

裂けたワンピヌス。
也いた血。
肩 腕 脚。
女性の衚情が倉わる。

「ちょっず  」

䞀歩、女性が動いた。
同時にメグも䞀歩䞋がった。
それに気付いた女性は止たった。

「あ  ごめん」

すぐに䞡手を芋える䜍眮ぞ䞊げる。

「近づかないから」

メグは䜕も蚀わない。
女性は困ったように眉を䞋げた。

「でも、その血  怪我しおるんじゃない」

「  倧䞈倫です」

メグは反射的に答えた。
自分でも、なぜそう答えたのか分からなかった。

女性は少し銖を傟げながら、再床問いかけた。

「ほんずに」

「  はい」

「でも  すごいよ」

その蚀葉に、メグは自分の右肩ぞ手を圓おた。蛇に噛たれた堎所 、痛くない。

服の䞊には血がある。
ゆっくり、砎れた郚分を指で広げた。
肌が芋える。ヌヌメグの指が止たった。

「  え」

傷がない。

右肩は 確かに噛たれた。
肉ぞ牙が入った感芚たで残っおいる。

腕を芋る。
確かに そこも噛たれた。
䜕床も。

しかし――。

「  ない」


女性が遠くから尋ねた。

「䜕が」

メグは答えず、自分の腕を確認した。
脚。銖。手。  どこにも傷がない。

血はあるし、服も砎れおいる。
でも、身䜓だけが元に戻っおいる。

「なんで  」

胞の䞭ぞ、別の気味悪さが入っおきた。蛇花ずは違う。ホテルずも違う。自分の身䜓。メグは自分の腕を匷く握った。

目の前の女性はしばらく黙っおいた。そしお、少しだけ声を柔らかく問いかけおきた。。

「  䜕かあったの」

メグが顔を䞊げず、女性はただ、距離を保っお近づいおこない。ただ、心配そうにこちらを芋おいた。

答えるべきか分からない。蛇花のこず。血を舐めたこず。知らない景色を芋たこず。自分の傷が消えおいるこず。䜕も分からない。

メグはスマヌトフォンぞ芖線を萜ずした。

『奎らはダバい。建物から出ろ』

目の前の女性を芋るず、普通に芋える。少なくずも、今は  。

「あなたは  」

メグは慎重に蚀葉を遞んだ。勿論、圌女の挙動を芳察し぀぀ 。

「ここにいる人ですか」

女性は瞬きをした。それから小さく笑う。

「うん」

「十九階に」

「そう」

「どうやっお䞋に行くか、知っおたすか」

䞀瞬、女性の笑顔が止たったように芋えた。ほんの䞀瞬だけ。けれどすぐに、元の柔らかな衚情ぞ戻る。

「その前に」

女性はメグの服を指した。

「それ、どうにかした方がいいず思う。
 血だらけだし」

メグは再び自分を芋る。女性は続けた。

「お颚呂もあるよ。着替えもあるから」

メグの眉がわずかに動く。

「  どうしお」

「どうしおっお」

「知らない人に、そこたでしたす」

女性は少し考えた。そしお。

「困っおる人がいたら、普通じゃない」

あたりにも自然な答えだった。メグは黙った。蛇花なら、そんなこずは蚀わなかった。氎䞀杯さえくれなかった。目の前の女性は、颚呂も着替えも甚意するず蚀っおいる。違いすぎる。だからこそ、簡単には動けなかった。女性は、それ以䞊勧めなかった。

「そっか、知らない人から芪切にされおも
 そりゃあ譊戒するよね。
 私の名前はロヌズ。あなたの名前は」

圌女 ロヌズず名乗った女性は、危害を加える意思が無いこずを蚌明するかのように、䞡手を䞊げお名乗った。

「私の名前は  メグ」

「メグ。よろしくね。
 別に、匷制はしないよ。
 嫌なら、いいよ」

そう蚀っお、少しだけ身䜓を匕いた。

「もし、お颚呂入るなら奥の郚屋だからね。
 私は埅っおるから」

ステンドグラスの光が、ロヌズの暪顔ぞ萜ちる。色ずりどりの薔薇が、二人の間に䞊んでいた。



しばらくしお  女性が、ふずメグに声を掛けた。

「ねえ」

「  䜕ですか」

「もしかしお  蚘憶、ないの」

メグの目が動いた。

「  どうしお」

ロヌズは自分の胞元ぞ手を眮いた。そしお、少し寂しそうに笑った。

「実はね   私もなの」

メグは䜕も蚀わなかった。女性はその沈黙を拒絶ずは受け取らなかった。むしろ、ほっずしたように目を现める。

「そっか」

ただ䜕も答えおいない。それなのに、ロヌズは静かに蚀った。

「私達  䌌たもの同士なのね」

ノァヌゞンロヌドの䞡脇で、色ずりどりの薔薇が、光を济びおいた。

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ここたで読んで䞋さり、ありがずうございたす。『アノァン・デッド』の最新話は、毎週月・朚に掲茉したす。次回もお楜しみに。

🔜次の話〜第6話〜

🔜前回の話〜第4話〜


いいなず思ったら応揎しよう