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48歳コンビニバイト〜おでんの汁で世界を救う〜|第2話 『 倉庫の怪異。消えた女子高生 』

※本作品は創作です。

※登場する人物、企業、生物、 巨大なタコ、    すべての出来事は フィクションです。
   ……たぶん。

※本作品を読んだあと。
  深夜二時のコンビニへ行きたくなっても、  
  作者は責任を負いかねます。

※本物語は全10話で完結します。
  第1週は、月・水・金に更新。
  第2週は、毎日更新します。……多分。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇
48歳コンビニバイト
〜おでんの汁で世界を救う〜
第2話 『 倉庫の怪異。消えた女子高生 』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「ミクちゃん――っ!」

大木健次はレジカウンターを飛び出した。

さっきまで将来を悲観していた四十八歳の深夜アルバイトは、今やそんなことを考える余裕などない。

バックヤードへ続く扉を開けると、後ろから例のジャージ姿の男も慌てて追いかけてくる。

「おい! 
 逃げるな! 
 塩じゃ! 
 まずは塩を持ってこい!」

「だから何に使うんですか?
 その塩は??」

健次は振り返る余裕もなく叫ぶ。
しかし、男は真剣そのものだ。健次には、その真剣さが……かえって恐ろしい。

勢いよく倉庫の扉を開ける。その瞬間、冷たい空気が顔を撫でた。

「……なんじゃ、これ……」

健次は思わず立ち尽くいた。

積み上げられていたダンボールは崩れ、飲料ケースは床へ散乱している。

掃除用品の棚も倒れ、モップや洗剤があちこちへ転がっていた。まるで台風でも通り抜けたかのような惨状だった。

そして、その異様な光景の中心には大型の業務用冷蔵庫があった。

分厚い扉は半開きになり、中から白い冷気がゆっくりと流れ出している。まるで霧が床を這うように広がり……倉庫全体を包み込んでいた。

「ミクちゃん!」

しかし、返事はない。

健次は冷蔵庫の裏を覗き込み、棚の陰を確認し崩れた段ボールをかき分ける。

……どこにも姿が見えない。同時に、胸の鼓動だけが速くなる。

「ミクちゃん! 
 おるんじゃろ!? 
 返事してくれ!」

……。

……。

……。


震えるような声が、頭上から聞こえた。


「店長……」


「うえぇ……」


「助けてください……」


「……え?」

健次が見上げると、そこには信じられない光景があった。

倉庫の天井近く。換気ダクトの縁へ女子高生アルバイトのミクが、必死にしがみついていた。

両腕は震え、今にも力尽きそうだ。

「なんでそんな所へ!
 危ないから、降りて!!」

「無理です! 
 降りられません!」

「いや、降りられんじゃなくて、
 なんで登れたんじゃ!」

こんな状況でも思わずツッコミが出る。

ミクは泣きそうな顔で床を指差した。

「下にいます……!」

健次もゆっくり視線を落とす。

冷気の流れる床。

棚の影。

暗がりの奥。

……何かが動いた。

ぬらり。ゆっくりと長い影が這う。同時に、床を擦る音が静かな倉庫へ響く。

「……っ!」

健次の背中に冷たい汗が流れる。

ーーその時だった。

「見たか若者よ!」

いつの間にか倉庫へ入り込んできたジャージ男が、大きく腕を広げて叫ぶ。

「あれこそ伝説に残る地下水脈の守り神! 
 古代より眠り続けた巨大ヌメリ生物じゃ!」

「誰が信じるんですか、そんな話!」

健次は即座に否定する。

「この街に地下遺跡なんかありません!」

「ある!」

「ありません!」

「あるかもしれん!」

「急に弱気になるな!」

二人が言い合っている間にも、影はゆっくりとこちらへ近付いてくる。

ミクは泣きそうな声で叫んだ。

「来ます! 
 来ますって!」

その瞬間、倉庫の蛍光灯が影を照らした。


全員が息を呑む。


現れたのは、巨大な緑色の怪物ではなかった。ましてや、伝説の生物でもない。

一匹の大きなアオダイショウだった。

体長は一メートルを優に超え、黒く艶のある身体が床を滑るように進んでいる。

「……ヘビ?」


……。

……。

……。


「ヘビじゃねえか!」

健次の全力のツッコミが倉庫中へ響いた。
ジャージ男も目を丸くする。

「えっ?」

自分の手を見る。握っていた緑色の物体を見る。……改めて、マジマジと眺める。

それは、スーパーの特売で買った長ねぎを輪ゴムで束ねただけのものだった。

「……長ねぎ?」

「そうじゃ!」

「タコじゃない?」

「最初から長ねぎじゃ!」

「じゃあ…
 わしは何を追いかけとったんじゃ?」

「それをこっちが聞きたいわ!」

健次は頭を抱えた。

四十八歳。

正社員経験なし。

将来への不安を抱えながら夜勤を続ける毎日……そんな人生のはずだった。

なのに今、自分は深夜のコンビニ倉庫で巨大なヘビと…長ねぎを持った謎の男に囲まれている。

人生というものは、本当に何が起こるかわからない。できれば…こういう " わからない " は遠慮したかった。

しかし感傷に浸る時間は与えられなかった。アオダイショウがゆっくり鎌首をもたげる。舌を細かく震わせる。

「シュー……」

威嚇の音が倉庫へ響いた。

ヘビは床を滑るように加速すると、一直線に健次の足元へ突進してきた。

「うわあああっ!」

健次は悲鳴を上げて飛び退く。

その混乱の中…誰も気付かなかった。

店内のレジカウンター近く。

静まり返った売り場で、もう一つの小さな影が、音もなくゆっくりと動き始めていたことを……。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

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