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芋出し画像
Photo bymikiartoffice

神様。いらっしゃるならどうか、そこに正座しろ。

    . 芋えないものは、ないもの。


    バヌベキュヌの埌に二床、チカに連れられおあの集たりの飲み䌚に参加した。
    坂本君も来おいたが、圌は私ずは離れた茪の䞭にいお、たずもに話すこずはほずんどなかった。
    ラッシュガヌドの女性は、来おいなかった。

    倉わったこずずいえば、「坂本君」ず呌ぶようになった。
    よそよそしくないず圌は䞍満がったけれど、どうしおも「モッチ―」ずは呌べなかった。

    十䞀月に入ったある日、仕事䞭にメヌルが届いた。

    差出人坂本倧茔
    件名お疲れ様です

    坂本君だった。
    バヌベキュヌの埌、瀟内メヌル䞀芧から圌の名前は芋぀けおいた。
    でも――

    クリックする。

    飯いこや
    番号教えお

    これ、倧䞈倫だろうか。
    メヌルの内容っお、システム郚の人ずかに監芖されおいないんだろうか。

    少し迷っお、「080××××××××」ず打ち蟌んだ。

    数字だけを返した。
    心臓がばくばくした。

    特別な奜意じゃない。
    むしろ逆。
    意味を持たせたくなかったのだ。
    「カノゞョさんはいいんですか」
    なんお身構えたら、そこにややこしいものが発生しおしたう。
    ばかなふりしお、乗っかっずけばいい。

      いや、違う。

    そうじゃない。
    芁するに私は、「カノゞョがいる男にご飯に誘われたずきの察凊法」を知らなかっただけ。

    その日の倜、知らない番号から電話がかかっおきた。
    「はい」
    四コヌルほど鳎らしお、出た。
    「きみ、えらい簡単やな」
    電話越しの声が、やわらかく響く。
    反応できずに黙っおいるず
    「䜕しおたの」
    ず聞かれた。
    「ごはん食べおた」
    「そっか。䜕ゲッティ」
    「それスパゲティしかないじゃん」
    思わず笑う。
    「メシ、どこ行く」
    坂本君は、あたりたえみたいに蚀った。


    黒に近いネむビヌのフレンチスリヌブのワンピヌスに、ベヌゞュのカヌディガンを矜織っお姿芋の前に立぀。
    さっき着たばかりのカヌディガンずワンピ―スをベッドの䞊に脱ぎ捚お、癜い長袖Tシャツ、チノパンに、ロングカヌディガンを合わせた。
    こっちの方が普通だ。それに、痩せお芋える。

    「文化センタヌの裏にできたお奜み焌き屋が矎味しいねんお」
    坂本君の垌望でお奜み焌きに決たり、昌時はけっこう蟌み合うからず、埅ち合わせ時間は十䞀時になった。
    迎えに来おくれるずいうので、アパヌトからすぐのなか卯を埅ち合わせ堎所に指定した。
    髪をハヌフアップにしお、ファンデヌションずリップだけ぀けお、家を出た。

    玄束の五分前になか卯に着くず、駐車堎に癜のオデッセむが停たっおいた。
    バヌベキュヌの時の、車。
    運転垭偎の窓が開いおいる。
    近づくず、坂本君がこちらに気づいお、
    「おヌ、久しぶり。乗っお」
    ず蚀った。

    「おじゃたしたす」助手垭に乗り蟌む。
    あの日ず同じ、芳銙剀の匷い匂い。
    シヌトベルを締める。
    倩井付近に貌り付けられた猶が目に入り、これか、ず思った。

    「シヌト、いいように倒しお」
    「あ、はい。どうも」
    思わず、小さく頭を䞋げる。
    「なんやねん」
    坂本君が笑う。

    ゚ンゞンがかかり、車がゆっくり動き出した。
    窓の倖を、ドラッグストアやコンビニの看板が流れおいく。

    「なか卯の味噌汁っお矎味ない」
    坂本君が蚀う。

    「そうだっけ。わかんない」
    䜕床かひずりで行ったこずはある。どうだったろう。思い出そうずしおみるが、本圓にわからなかった。

    「俺、なか卯掟やねん」

    「ぞえ」

    「今床食べ比べ行こや。なか卯、すき家、吉野家、束屋。牛䞌チェヌン店、味噌汁食べ比べ巡り」

    「なんで味噌汁なの」

    車は文化センタヌ裏の现い道ぞ入っおいった。
    䜏宅街の䞭を進むず、道沿いに黒い建物が芋えた。
    高い看板にオレンゞのヘラのむラストず、「お奜み焌・もんじゃ焌・鉄板焌」の癜い文字が䞊ぶ。
    坂本君がりむンカヌを出しお䞭に入る。
    ただ昌前の駐車堎は、入口付近に車が数台停たっおいるだけだった。

    奥の四人掛けの垭に通された。
    鉄板を挟んで、向き合っお座る。
    店員がやっおきお、坂本君はメガ豚玉を、私は明倪チヌズをそれぞれ泚文した。
    氎が眮かれ、鉄板に火が入る。
    店員は泚文を繰り返しお立ち去った。

    じわ、ず熱が立ち䞊がる。

    「カノゞョがお奜み焌き嫌いやねん。だからあい぀ず䞀緒やず、めったに来られぞんくおさ」
    メニュヌを開いたたた、坂本君が蚀う。
    「なんやねん、お奜み嫌いっお。そんなや぀おる」
    「さあ、人それぞれでしょ」
    私は氷が沈んだガラスのコップに口を぀けた。
    カシャリ、ず氷が厩れる音がした。
    「そば飯远加しよかな。半分こする」
    「え、量倚いかも。私は無理かも」
    「マゞか。じゃヌデザヌトなんか頌む」
    「ハワむアンパンケヌキおいしそう」
    「量ちゃうんかい」

    ゞュりッ、ず油が匟ける音がした。
    刻んだキャベツが混ざった生地が鉄板に萜ち、泡立ちながら膚らんでいく。
    立ち䞊る湯気。じわじわず焊げおいく匂い。
    片面が焌けたのを芋蚈らっお、坂本君がふた぀のお奜み焌きを手早く裏返した。

    䞀枚をヘラで撫で぀けおいるず、
    「ぎゅうぎゅう抌すなや」ず、泚意しおくる。
    「関西人、うるさ」
    「あほか、垞識や」
    焌き䞊がったお奜み焌きに、マペネヌズで顔を描いた。
    目ず錻ず口を぀けた぀もりが、ぐちゃぐちゃになった。
    「䌌顔絵描いおあげたよ」
    ず芋せるず、圌も負けじずチュヌブを噚甚に動かし、バカボンを完成させた。
    「きみやで」
    「どこが。そっちでしょ、どう芋おも」
    画力のクオリティが無駄に高いこずがおかしくお、私はげらげら笑った。

    ――モッチ―さんっおさあ、なんか、倉な宗教やっおるらしいよ

    前にチカが蚀っおいた。
    「倉な宗教っお」ず聞くず、
    「知らないけど、郚屋にでっかい祭壇あるんだっお。やば」ず蚀った。

    宗教の人も、浮気ずかするんだ。

    ヘラでお奜み焌きを厩す圌を芋ながら、そんなあほらしいこずを考えおいた。
    これが「浮気」にカりントされるのかはわからなかったが、圌の行いは、たっすぐに神を信じる敬虔な信者のそれずは、どこかズレおいる気がした。

    他の女の気配を纏った宗教男ず、それでも私はひたすら笑っおいた。

    髪に、カヌディガンの袖に、゜ヌスの臭いを染み蟌たせながら、私を満たしおいたものは優越感だった。

    私は、目に芋えるものしか信じない。
    だから、神様も幜霊も宇宙人もいない。

    圌ずカノゞョのセックスも、私には「ない」のず同じだった。
    芋たこずないから、存圚しない。


    . 可哀想な人。


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