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Beyoncéはなぜヘアケアブランドを作ったのか ― Cécredと“髪は神聖”という思想

25年ブロンドを続けても、なぜビヨンセの髪は美しいのか?


はじめに

2024年、ビヨンセ(Beyoncé)が立ち上げたヘアケアブランド
「Cécred(セクレド)」は、単なるセレブブランドとして登場したわけではありませんでした。

それは、母娘の長年の夢であり、ブラックヘア文化の継承であり、ビヨンセ自身が長年向き合ってきた髪のダメージやケアの経験を形にしたものでもありました。

Cécredの中心にある言葉は、非常にシンプルです。

Hair is sacred

―― 髪は神聖なもの

この言葉には、幼少期から美容室で育ったビヨンセ自身の人生、家族、コミュニティ、そして25年以上ブロンドを続けながら髪を守り続けてきた経験が詰まっています。

この記事では、Cécredのコンセプトと、その世界観を作り上げた人々について整理していきます。


Cécredとは何か

Cécredは2024年2月に発売されたヘアケアブランドです。

ブランド名は、Beyoncéの名前の末尾「Cé」とSacred(神聖)を組み合わせた造語。

つまりブランド名そのものが、「髪を神聖なものとして扱う」という哲学を表しています。

特徴的なのは、Cécredが単なる“見た目のツヤ”ではなく、頭皮、毛髪内部、ダメージ修復、長期的な健康を非常に重視している点です。


なぜビヨンセはヘアケアブランドを作ったのか

ビヨンセは、10代の頃からブロンドヘアをトレードマークにしてきました。

Destiny’s Child時代から、

  • ブロンドのコーンロウ

  • ハニーブロンド

  • プラチナブロンド

  • 超ロングウェーブ

などを次々と披露し、25年以上にわたり“ブロンドのビヨンセ”というイメージを維持しています。

しかしその裏では、ブリーチ、熱ダメージ、ウィッグ、エクステ、長時間のステージパフォーマンスによる負荷と常に向き合ってきました。

ビヨンセ本人も、25年間ブロンドを続けてきた自然髪を健康で強く保つことの難しさを語っています。

実はビヨンセも、若い頃に“ブリーチ失敗”を経験しています。

2001年のグラミーの際には、カラーを待ちきれず、眉用のブリーチ剤を髪の前側に使ったこともあったそうです。

かなり明るいプラチナになったものの、2週間後には前側の髪がひどく切れてしまったと本人が振り返っています。

今では「完璧なブロンド」のイメージが強いビヨンセですが、最初から順風満帆だったわけではありません。

つまりCécredは、スターが名前を貸した美容ブランドというより、「長年ダメージと向き合ってきた人が、本気で作ったヘアケアブランド」に近いのです。


Beyoncéと“髪の変遷”

Destiny’s Child期

90年代後半〜2000年代初頭のBeyoncéは、ハニーブロンドのロングヘアや編み込みスタイルで知られていました。

当時のR&B/Y2Kカルチャーを象徴する存在でもあり、“ブロンドのBeyoncé”というイメージはこの頃から形成されていきます。


ソロ初期

ソロ転向後は、よりグラマラスなスター像が強化されていきます。

大きなウェーブ、ゴールド系ブロンド、風になびくロングヘアなどは、2000年代のBeyoncéを象徴するビジュアルでした。


Formation〜Lemonade期

この時期の髪は、単なる美しさだけではありませんでした。

ロングブレイズや自然な質感など、ブラックカルチャーや歴史的なヘアスタイルを意識した表現も目立つようになります。

私には、髪も『Lemonade』が扱うルーツや南部文化と結びついた表現の一部に見えます。


Renaissance期

未来的なシルバー衣装と共に、プラチナブロンドが強調された時代。

私には、髪型も近未来的なビジュアルの一部に見えます。


Cowboy Carter期

近年のBeyoncéは、Big Texas Hairとも呼ばれるボリューム感のあるブロンドヘアを披露しています。

大きく華やかなシルエットは、Cowboy Carter期のカントリーや南部を意識したビジュアルともよく重なります。


母・ティナ・ノウルズという原点

Cécredを語る上で欠かせないのが、ビヨンセの母である
ティナ・ノウルズ(Tina Knowles)です。

ティナは、テキサス州ヒューストンで「Headliners」というヘアサロンを経営していました。

幼い頃のビヨンセは、その美容室で床掃除を手伝ったり、お客さんの前で歌ったりしながら育ったそうです。

後の世界的スターが、美容室の子どもとして育っていたと思うと少し微笑ましいですね。

ビヨンセにとって美容室は、髪を整えるだけの場所ではありませんでした。人が集まり、会話をし、髪を通して自分を表現する場所でもあったのです。

Cécredの「Hair is sacred」という発想の大きな原点の一つが、ここにあります。


ニール・ファリナ ― ビヨンセの髪を約20年支える男

Cécredの中心人物の一人が、
ニール・ファリナ(Neal Farinah)です。

トリニダード・トバゴ出身のヘアスタイリストで、2000年代半ばから約20年にわたりビヨンセの髪を支えています。

現在はCécredの「Lead Global Stylist」を務めています。

彼の強みは、ウィッグから自然髪、シルクプレス、ブレイズまで、幅広いスタイルを手がけられること。

長年にわたりBeyoncéのさまざまなヘアルックを支えており、近年ではCowboy Carter Tourのボリューム感のあるBig Texas Hairも担当しています。


リタ・ハザン ― ビヨンセの“ハニーブロンド”を作ったカラリスト

ビヨンセのシグネチャーとも言える“ハニーブロンド”を支えてきたのが、
リタ・ハザン(Rita Hazan)です。

ニューヨークを拠点に活動する著名カラリストで、単色ではなく、トーンやハイライトを調整しながら、立体感のあるブロンドを作っています。

ビヨンセのブロンドは、単に明るくするだけではなく、色味や明暗を細かく調整して作られています。

そして重要なのは、髪の健康を損なってまで明るくしないという姿勢です。

これはCécred全体の方向性とも一致しています。


Cécred最大の特徴 ― 伝統と科学の融合

Cécredは、蜂蜜、発酵米水、植物オイル、バターなど、世界各地の伝統的なヘアケア習慣を参考にしています。

一方で、ブランドは非常に科学重視でもあります。

その象徴が、

Bioactive Keratin Ferment(バイオアクティブ・ケラチン・ファーメント)

(生物活性ケラチン発酵)

と呼ばれる、ケラチンを発酵技術で浸透しやすくした特許出願中の独自技術です。

これは、加水分解したウール由来ケラチン、蜂蜜、乳酸菌由来の発酵成分を組み合わせたものです。

Cécredは、分子量を小さくしたケラチンが毛髪内部のコルテックスまで届き、ダメージを受けた髪を強化すると説明しています。

簡単に言うと、表面を整えるだけでなく、毛髪内部まで成分を届けて強度を補うことを目指した技術です。

ただ、Cécredの面白いところは、科学ブランドなのに妙に生活感があることです。

洗髪動画では、ビヨンセ本人がシャンプーの泡を見ながら、

“Look at that lather!”

「この泡立ち見て!」

と嬉しそうに話しています。

世界的スーパースターなのに、良いシャンプーでテンションが上がるところは意外と普通で、少し面白いですね。


なぜボトルが「神殿」みたいなのか

Cécredのボトルデザインは非常に特徴的です。石のような重厚感、古代建築を思わせるシルエット、静かな高級感。

このデザインを担当したのは、ブランドデザインやパッケージ開発を手がけるクリエイティブスタジオAruliden。

Arulidenは、古代建築を思わせる形と石のような質感によって、ヘアケアの「過去・現在・未来」をつなぐデザインを目指したと説明しています。


Cowboy Carter時代と「ビッグ・テキサス・ヘア」

Cowboy Carter期のビヨンセは、再びハニーブロンドを前面に押し出しました。この時代の特徴は、大きなブローアウト、柔らかいウェーブ、動きのある毛先、カウボーイハットとの組み合わせです。

Neal Farinah自身は、この時期のヘアについてBig Texas Hairから着想を得たと説明しています。大きなボリュームを出しながらも、髪が固く見えないよう動きを重視したスタイルです。

髪型まで含めて、『Cowboy Carter』の世界観が作られているように見えます。

カントリー歌手ドリー・パートン(Dolly Parton)的な…ね!


一方で、ビヨンセ本人のヘアケア習慣は意外と地道です。

CécredのWash Day動画では、髪を細かくセクション分けしながら、「髪を真っ直ぐに保ちながら洗う」ことをかなり大切にしていました。

超人的なステージの裏で、こういう細かな積み重ねをしているのが印象的です。


おわりに

Cécredは、「有名人が作った美容ブランド」という枠だけでは説明できません。

そこには、母娘の歴史、ブラックヘア文化、南部コミュニティ、ステージ表現、科学技術、髪への信仰にも近い感覚が重なっています。

そして何より興味深いのは、ビヨンセが25年以上にわたり“ブロンド”を続けながら、「髪を壊す」のではなく「髪を守る方法」を探し続けてきたという点かもしれません。

よく考えると、25年以上ブロンドを維持し、大規模なステージ活動を続けながら、自然髪の健康を維持してきたというのは、かなり異次元です。

だからこそCécredが髪の内部修復を重視していることには、妙な説得力があります。

髪を守ることそのものが、ビヨンセにとっては自己表現の一部なのかもしれません。

詳細はCécred公式サイトでも公開されています。


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