なぜビヨンセは“ロック”へ向かうのか? ― Act III予想と黒人ロック史を読み解く
1. はじめに
Beyoncéの次回作「Act III」をめぐって、ファンやメディアの間で根強く語られているのが“ロック説”です。
公式発表はまだありません。しかし、ここ数年の彼女のビジュアルや過去の楽曲、黒人ロックアーティストとのつながりを追っていくと、「次はロックなのでは?」と思わせる材料がいくつも見つかります。
『Renaissance』(Act I)がハウス/ダンス、
『Cowboy Carter』(Act II)がカントリーだったように、
Act IIIは、「ロックの黒人ルーツを取り戻す作品」になるのでしょうか。
2. Act IIIが“ロック説”と呼ばれる理由
① ロック説を連想させるビジュアルが増えている
近年のビヨンセには、ファンが“ロック説”と結びつけたくなるビジュアルがいくつも登場しています。
特に話題になったのが、2024年のハロウィン。
彼女は伝説的なファンクロックシンガーBetty Davis(ベティ・デイヴィス)のコスプレを披露しました。
さらにLevi’sキャンペーンでは、馬やレザー、バイクなどが登場しました。こうした演出も、ファンの間ではAct IIIの“ロック説”と結びつけて解釈されています。
② すでにロック的楽曲を作ってきた
ビヨンセがロック色のある楽曲を発表したのは、最近のことではありません。
『Lemonade』― 怒りとしてのロック
「Don’t Hurt Yourself」 feat. Jack White(ジャック・ホワイト)
これは、ビヨンセの楽曲の中でも特にロック色の強い一曲です。
歪んだギターとブルースロックの重いサウンドに、叫ぶようなボーカルが重なり、生々しい怒りが伝わってくる一曲です。
特に印象的なのが、冒頭の一節です。
“Who the fuck do you think I is?”
さらに、
“You ain’t married to no average bitch, boy.”
という一節は、彼女の怒りと自己肯定を象徴するフレーズとして語られています。
「Don’t Hurt Yourself」では、Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)版の「When the Levee Breaks」がサンプリングされています。さらにその原曲をたどると、1929年にMemphis Minnie(メンフィス・ミニー)とKansas Joe McCoy(カンザス・ジョー・マッコイ)が発表したブルース曲へ行き着きます。
そう考えると、「Don’t Hurt Yourself」はロックからブルースへと歴史をさかのぼって聴くことのできる曲でもあります。
『Cowboy Carter』― 黒人音楽史の再構築
「YA YA」
『Cowboy Carter』では、ロック要素がさらに前面化しました。
「YA YA」は、Nancy Sinatra(ナンシー・シナトラ)の「These Boots Are Made for Walkin’」を取り込みながら、ロックンロール、ファンク、サイケデリックソウル、ロカビリーなどを混ぜ合わせた一曲です。
「Bodyguard」
「Bodyguard」には1970年代のソフトロックを思わせるサウンドがあり、歌詞には「mosh pit(モッシュピット)」というロックライブ文化の言葉も登場します。
3. なぜ“ロックの黒人ルーツ”が重要なのか
そしてAct IIIのロック説を考えるうえで欠かせないのが、ロックと黒人音楽の歴史です。
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