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〔講義008〕『大宮アルディージャ2015シーズン〜J2優勝までの軌跡〜』[シェッツェン大学|蹴球学部|分析学科]

【序論】
今シーズンもJ2を戦う大宮アルディージャ。昨シーズンの昇格プレーオフでの敗戦が記憶に新しい。いかに自動昇格が重要かが身に沁みたシーズンだった。
十年ほど前のシーズン、大宮アルディージャは昇格を果たした。渋谷洋樹監督の下、シーズンを通して成長していた大宮。今回はその2015シーズンにフォーカスしました。

【シーズン序盤戦】
GK 加藤
DF 渡部・菊地・河本・大屋(和田)
MF 横谷(家長)・横山(金澤)・カルリーニョス・泉澤
FW ムルジャ(富山)・播戸(清水)

GKの一番手は加藤順大、サブに塩田仁史・清水慶記。ベテランの北野・江角を放出し、加藤・塩田という年齢的に同じくらいの選手を獲得したことで、ファンからは一部批判もあったが、結果的にGKの戦力は上昇した。GKに安心感があると、DFも積極的なプレーが増え、DFラインの上げ下げといった統率力が増す。
ただ一点気になったことは、加藤がビルドアップにほとんど参加しないことだった。
加藤といえば、浦和時代にミシャの下で足元の技術を買われレギュラーにのし上がったからだ。
しかし、これはチームとしてのスタイルを優先させた結果でもあり、GKに余計な仕事を減らしGK本来の役割に特化させ、無理に後ろから繋がずにシンプルに裏を狙う戦い方を序盤のうちに浸透させることができたのは大きかった。
一方、攻撃面では家長・泉澤の2大エースがまだエースといえるレベルの活躍もできず、停滞していた。泉澤は守備面での不安から準レギュラーの扱いだったし、家長に関しては、どのポジションで起用するのか?という最適解をまだ見定めることができていなかった。
ボランチのカルリーニョスがゲームメイクからチャンスメイクまでを一手に担っていたので、序盤戦のMVPは個人的にカルリーニョスだ。


【シーズン中盤戦】
夏場になると、全体的に運動量が落ち失速。一時、GKを加藤から塩田にチェンジするなどローテーション起用で活性化を狙ったが、序盤戦で積み上げた戦い方を継続できず。内容は悪くないのに勝ち点を拾えないという大宮の悪しき伝統がこのシーズンにもあった。また、繋ぐのか飛ばすのかという戦い方もチグハグでスタイルの転換期にありがちなミスも多かった。
序盤戦の相手は、繋ぐスタイルを前提とした大宮対策をしてきて、それに対して大宮はシンプルな裏抜けで対応していた。
中盤戦の相手は、裏抜けしてくる大宮対策をしていて、それに大宮は苦戦していた印象を受けた。
レギュラー陣の消耗・サブメンバーの質・対策の対策・スタイルの転換期。こうした諸要因が中盤戦の苦戦を招いたと思われる。

【シーズン終盤戦】
GK 加藤
DF 渡部・菊地・河本・和田
MF 横谷・金澤(横山)・カルリーニョス・泉澤
FW 家長・ムルジャ

GKを含めた最終ラインは、盤石の布陣。相変わらずGKはビルドアップにあまり参加しないが、右SBがかなり高い位置まで張り、ボランチの一角の金澤がクロースロールと言われる動きで右SBと右CBの間に立ち、カルリーニョスは中央で構える。
これにより、右サイドで作りカルリーニョスを経由して左サイドの泉澤に展開するという形ができた。
FWの一角に入った家長は、我慢して前線に残っていたものの、一般的なストライカーに比べるとキープ力や展開力は格段に上なので、時折り下がってボールを受け捌くプレーもあった。そのため前述した序盤戦のときとは違い、カルリーニョスの負担は軽減され、ゲームメイクに専念することができた。カルリーニョスの大胆な攻め上がりからのチャンスメイクやミドルシュートが減ったのは事実だが、そのときのチームにマッチしたプレーを彼はしていたのだ。

【総括】
結果的にJ2優勝という形で昇格を果たすのだが、このシーズン「優勝する力があった」というよりも、渋谷監督を中心に「優勝するだけの力をつけていった」ように映る。
もちろん夏場にもう少し勝ち点を拾えていれば独走での優勝も可能だったと結果論では言えるが、サブメンバーの能力も含めての長丁場での戦いであることを踏まえると順当な結果だった。
いわゆる平均年齢は高めのレギュラー陣だが、中堅・ベテランが多いからこそ、時折り起用された若手は躍動感があった。若手選手のコンスタントな活躍がなかったのは残念だが、選手個々の役割を限定しハッキリさせる渋谷監督のチームマネジメントはさすがだ。
よく「適材適所」という言葉があるが、この言葉は適材を適所に当てはめるというイメージだ。
しかし、このシーズンの渋谷監督は、家長昭博をFW起用したように、個・組織ともに一段上に引き上げた。
一つのチームを見続ける楽しさがこのシーズンにはたくさんあった。それは完成されたチームだったからではない。渋谷監督の下で、チームが一年を通して成長していく姿を見ることができたからだ。
このチームひいてはクラブを見続けたいと思うほど魅力的なシーズンだった。

【了】

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