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『嘘を喰う少女』今日はこの物語10万字目指して書きます!まだどの公募にするか決めてませんが・・・

    LaLaLa

    【試行錯誤中のLaLaLaです。なぜ私が公募にこだわって小説を書き続けるのか?】

    その理由は至ってシンプルです。公募に応募するという目標があるからこそ、募集要項やルールを徹底的に読み込み、過去の受賞作を分析して自分の作品を磨き上げるという「成長のプロセス」が生まれるからです。

    これは競馬に例えるなら分かりやすいかもしれません。実際に馬券を買わない人が出馬表やオッズを真剣に分析しないのと同様で、自ら勝負の場に身を置くからこそ、過去の受賞作を必死になって読み解き、頭をフル回転させることができるのです。

    最初から一発で受賞できるなんて、夢のまた夢。一生受賞できない人の方が当たり前に多い厳しい世界です。だからこそ、まずは下読みを突破して1次選考に残ること。次は2次選考を突破し、最終的に審査員の方々に自分の文章を読んでもらうこと。ひとつずつステップをクリアしていくしかありません。

    振り返れば、かつて不動産営業の世界で揉まれていた頃もそうでした。約400名もの営業マンがひしめく中でトップを目指し、泥臭く戦ってきました。一度は2位まで登り詰め、「1位の人間と自分は何が違うのか?」を徹底的に研究・分析した結果、ついに1位を掴み取り、店長にも抜擢されました。そこからは、今度は店舗ごとの数字をかけて競い合う日々。

    そうした過酷な勝負の世界で長年戦い続けてきたからこそ、私の中には「現状に満足せず、常に分析と改善を繰り返して高みを目指す」という習性が、自然と染み付いているのだと思います。



    主人公

    • 18歳の少女。

    • 嘘を見抜く異能を持っている。

    • 戦闘能力は普通の女の子。

    • 短期間のアルバイトを転々としながら暮らしている。

    • 組織から命を狙われ、常に逃亡している。

    • お金に興味はない。食べて眠り、明日を生きるために必要なだけ稼ぐ。

    敵組織

    表向きは投資会社や企業、慈善団体など、社会に溶け込んだ組織。

    裏では異能を持つ者たちが活動している。

    それぞれの刺客が異なる能力と姿を持ち、少女の前に現れる。

    ただし、敵を倒すのではなく、敵の嘘を利用して罠を抜ける。

    山荘の設定

    ここは面白い。

    少女が過去の取引で得た金を、山奥の古い山荘に保管している。

    でも、山荘を単なる「大金の隠し場所」にしない方がいい。

    例えば、

    山荘には金だけではなく、彼女が逃亡を始めた理由に関係する秘密が残っている。

    あるいは、山荘の持ち主が、敵組織と関係していた。

    少女は金を取りに戻っただけなのに、そこで新たな嘘を見抜いてしまう。

    逃げるための場所が、逃げられない場所になる。

    この構造なら、山荘が物語の重要な舞台になる。

    物語の軸

    1. 短期バイトで暮らす。

    2. 敵の刺客が現れる。

    3. 嘘を見抜き、敵の計画を逆手に取る。

    4. 危機を脱して逃げる。

    5. 山荘に残したものが、次の事件につながる。

    毎回の逃亡に変化を持たせながら、徐々に敵組織の正体と少女自身の過去に近づいていく。

    この作品は、異能サスペンス+逃亡ロードノベル+コンゲームとして設計できる。

    次に決めるべきなのは一つ。

    なぜ、敵組織は18歳の少女をそこまで執拗に殺そうとしているのか?


    長第一部:逃亡者のルール(1〜5話)

    01 日払いの少女/02 偽りの警察官/04 顔を借りた男/05 山荘への切符(原案どおり)

    03 投資セミナーの客——ここで「詐欺師から金を奪い山荘へ送る」という基本エンジンを初めて成立させる。以降毎話このパターンが回る起点。

    第二部:刺客たちの街(6〜11話・1話増)

    06 笑わないピエロ——道化師の刺客に、オルタの理屈の断片(「秩序を守るため」)をわずかに語らせる。黒瀬の思想を終盤まで隠さず、ここで種を蒔く。

    07 嘘をつかない少年/08 逆張りの夜/09 雨宮紗夜の選択(原案どおり)

    10 山荘の扉——到着、侵入の形跡、母の録音機の一部を発見したところで包囲が始まる。

    11【新】敗走——複数の刺客に見抜く力だけでは対応しきれず、初めての本当の敗北。命からがら逃げる中、真白は積み上げた金は山荘に置き去りにし、とっさに母の録音機と記録の一部だけを掴んで逃げる。金より真実を選んだ、という行動が彼女自身にも意外な選択として残る。見抜けば勝てるという思い込みがここで完全に崩れる。

    第三部:山荘と過去(12〜16話)

    12 母親の録音/13 床下の名前/14 悠斗の嘘/15 黒瀬の招待状/16 オルタの子どもたち(原案どおり、番号のみ繰り下げ)

    14 悠斗の嘘は、彼が組織にいた理由を「保身」ではなく「誰かを守るため」に変更——裏切り後も情の残滓が透ける形に。

    第四部:最後の逃亡(17〜21話)

    17 真実を売る男/19 黒瀬蓮司/20 嘘をつけない夜/21 明日のバイト(原案どおり、番号のみ繰り下げ)

    18 山荘包囲網——一度敗走した同じ場所への再訪。今度は一人で見抜くのではなく、悠斗や後に助けた子どもたちと連携して臨む。11話の敗北がここで初めて意味を持つ。


    01 日払いの少女


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    真白は自動ドアの前で足を止め、貼り紙の求人票を指でなぞる。「未経験歓迎・日払い可」の文字は、どの街のどの店でも同じ顔をしている。リュックの中身は着替えが二枚、充電器、あとは四つに折った千円札が数枚。それだけあれば、次の街まで歩ける。

    面接らしい面接はなかった。店長は履歴書も見ずに「明日から入れる?」と聞き、真白がうなずくと、安堵したように息を吐く。深夜シフトを埋められる人間なら誰でもよかったのだろう。

    真白には、他人には見えないものが見える。嘘をつく人間の言葉には、必ずどこかにわずかな遅れが生まれる。用意していた台詞を、頭の中でもう一度なぞってから口に出す、その一拍分の遅れだ。声の速さが変わることもあれば、語尾だけが不自然に伸びることもある。意味までは分からない。ただ、そこに継ぎ目があることだけは、いつも分かる。

    ◇

    初日の夜、レジに立つ真白の耳に、店長の声が小さな笑いを含んで届く。

    「無理しなくていいからね。困ったことがあったら、いつでも言って」

    言葉そのものに嘘はない。ただ語尾がほんの少し伸びている。誰かに向けて何度も用意してきた台詞を、初対面の人間に使うときの伸び方だ。真白はそれを気に留めない。世の中の親切の大半は、こういう小さな作り物でできている。命に関わるほどの嘘は、そうそうない。

    深夜二時、客は一人。若い男が缶コーヒーとタバコをレジに置き、「お釣り、いらないです」と笑う。財布の中はほとんど空に見える。それでも真白は釣りを渡す。男は小さく舌打ちして受け取り、自動ドアの向こうに消えていく。見栄と呼ぶには小さすぎる嘘で、誰も傷つかない。真白の中で、それはただの雑音として消えていく。

    金に興味はない。今日食べて、今日眠れるだけあればいい。多すぎる金は、置き場所に困るだけの荷物になる。

    ◇

    シフトの終わり際、店長が缶コーヒーを二本持って裏に来た。一本を真白に差し出す。

    「住むところ、決まってないんだろう。知り合いが古いアパートを持ってて、安く貸してくれるかもしれない」

    真白は缶を受け取り、礼を言う。悪い話ではない。屋根のある場所で眠れるなら、それに越したことはないはずだ。

    けれど、「知り合いが」と言った瞬間、声の速さがわずかに変わっていた。事実を話すときの速さではない。誰かから渡された筋書きを、初めて自分の口で読み上げるときの速さに近い。

    「その人、店長の古い友達とかですか」

    「まあ、そんなようなもん。真白ちゃんみたいな子、放っておけないタイプでさ」

    今度は継ぎ目がない。少なくとも、その一言だけは本音だ。だからこそ厄介だと真白は思う。嘘と本音が同じ器に入っていると、どちらも同じ味がする。

    真白は缶のプルタブを開けながら、何も聞こえなかった顔をする。懐疑を顔に出すのは早すぎる。今はまだ、遅れの正体を確かめる段階ですらない。

    ◇

    レジ裏のモニターには、店内の四区画が順番に切り替わって映る。駐輪場のカメラに切り替わった瞬間、真白の目が止まる。

    自転車の陰に、女が一人立っている。傘も差さず、雨の中でスマートフォンも見ず、ただ店の入り口を見ている。買い物に来た人間の姿勢ではない。誰かを待っている姿勢でもない。立ったまま、店だけを見ている。

    真白はモニターから目を逸らし、何でもない顔で品出しに戻る。手は缶詰の並びを数えているのに、頭の別の場所では別の計算が動いている。

    店長が「知り合いのアパート」と言ったのは今夜だ。見知らぬ女が駐輪場に立っているのも今夜だ。二つが無関係だという保証は、どこにもない。

    ◇

    時計を見る。シフト終了まであと一時間。長いようで、動くには十分すぎる時間だ。

    「すみません、ちょっと体調悪くて。今日はもう上がっていいですか」

    嘘をつくのは苦手ではない。ただ、自分がつく嘘には、いつも小さな苦みが残る。店長は驚いた顔をして、すぐに「送っていこうか」と言う。その申し出には、さっきまでとは違う響きがある。損得の計算が入っていない、ただ心配しているだけの声だ。

    真白は首を振り、リュックを背負う。

    「大丈夫です。歩いて帰れる距離なので」

    店長がそれ以上引き止めないうちに、真白は裏口から夜へ出る。

    ◇

    湿った空気が肌に貼りつく。駐輪場を大きく迂回して、女がいた場所を確認する。傘も、女の姿も、もうそこにはない。いなくなったことは、安心材料にはならない。むしろ、探す側に回ったということでしかない。

    真白は来た道とは違う道を選んで、歩き出す。表通りを避け、裏路地を選ぶ。コンビニのカメラ、ATMのカメラ、コインパーキングの精算機——顔が残る場所を、無意識に数えて避けている。もう何年も続けている癖で、今さら意識するまでもない。

    たどり着いたのは、駅前の古い漫画喫茶だ。会員証は作らない。身分証を求められない個室を選び、現金だけを差し出す。店員は真白の顔をろくに見もせず、鍵の番号を渡す。

    個室に入り、リュックを下ろす。中身を確認する作業は、もう何百回目かになる。着替え、充電器、財布。増えているものは何もない。

    半年前、瀬戸内のある港町で、缶詰工場の選別ラインに三ヶ月近くいた。三ヶ月は、これまでのどの街よりも長い。

    隣のラインにいた老女が、休憩のたびに飴をくれた。名前を聞かれても答えなかったが、老女は勝手に「みっちゃん」と呼んだ。ある晩、老女は言った。

    「みっちゃん、うちの孫と歳が近いんよ。よかったら泊まっていき」

    嘘はなかった。継ぎ目のない、ただの親切だった。真白はその夜、初めて誰かの家の布団で眠った。

    三日後、帰省した老女の孫が、玄関先で警察官らしき男と立ち話をしているのを見た。内容までは聞こえない。ただ、孫の口から出た一言に、いつもの継ぎ目があった。「最近この辺、見かけない子とかいませんかね」

    嘘か、ただの世間話か。確かめる前に、真白はその夜のうちに港町を出た。老女がくれた小さな貝殻の置物だけ、鞄の底に入れたまま忘れている。捨てるべきだと分かっていて、まだ捨てられずにいる。

    液晶の光を消し、狭い椅子に体を沈める。眠りは浅くていい。物音がすれば、すぐに動ける程度でいい。

    財布の中の千円札の枚数と、リュックの重さと、背中に感じる夜の温度だけが、今の真白が知っているすべてだ。立ち止まらないことだけが、今の真白が唯一守れるルールになっている。

    ◇

    朝、五時。液晶画面の光で目が覚める。眠ったというより、意識が浅い水面をただ漂っていただけだ。

    会計を済ませ、外に出る。まだ薄暗い商店街に、人影はほとんどない。

    駅前のロータリーに、見覚えのない白いバンが停まっている。エンジンはかかったままだ。荷物を積んでいる様子もなく、誰かを迎えに来た様子でもない。ただ停まっている。

    真白は歩調を変えない。バンの脇を通り過ぎる瞬間、運転席の男と目が合う。会話をしたわけではない。ただ、男の視線が一瞬だけ真白の顔の輪郭をなぞった。人違いを確かめるような、値踏みするような視線だ。

    角を曲がってから、真白は初めて振り返る。バンは動いていない。それでも、男の視線の重さだけが、まだ背中に残っている。

    ◇

    コンビニの前を通ったとき、シャッターはまだ半分しか開いていない。店長が一人で品出しをしている。真白に気づいて、片手を挙げる。

    「あ、真白ちゃん。昨日大丈夫だった? 例の話、知り合いに連絡しておいたから」

    真白は小さく頭を下げるだけで、足を止めない。店長の声には、今度も継ぎ目がある。「連絡しておいた」の「た」の重みが、少しだけ軽い。もう済んだ過去ではなく、これからのつもりを先に過去形で言ってしまった重みだ。

    それだけなら、疑う理由にはならない。人は誰でも、少し先の予定をつい過去形で語ってしまうことがある。

    問題は、白いバンの男の方だ。あの視線は、店長の紹介とは無関係に、真白という個体そのものを確かめていた。

    「ごめんなさい、今日でこの街出るので」

    言い終える前に、真白は歩き出している。店長が何か言い返す声が、背中の遠くで小さくなっていく。

    ◇

    駅の方向とは逆に歩く。次のバス停までは徒歩で四十分。四十分あれば、この街のことはもう思い出さなくなる。

    歩きながら、鞄の中の貝殻の置物を指先で確かめる。捨てられなかったものが、今日も一つ増えないまま、鞄の底に沈んでいる。

    小さいころ、同じような貝殻を握らされたことがある気がする。誰の手だったかは、もう輪郭でしか覚えていない。思い出そうとすると、記憶の方が先に継ぎ目を隠す。自分の中の何かが嘘をついているのか、それとも本当にただ覚えていないだけなのか、その区別さえ真白にはつかない。

    朝日が路地の先からゆっくり伸びてくる。バス停のベンチに、まだ誰も座っていない。

    真白はまだ、名前を呼ばれていない。


    02 偽りの警察官


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    真白は缶詰工場の選別ラインに立って三日目になる。単純作業だ。ベルトコンベアの上を流れる缶を等間隔に並べ直すだけの仕事だが、指先の感覚だけを残して頭を空にできるのがいい。

    昼休み、更衣室を出たところで、男に声をかけられた。

    「真白さん、ですよね」

    紺色のスーツに、警察手帳らしきものを一瞬だけ提示する。「堂本」と刻まれた名札が見える。

    「少しお話を伺いたいんですが」

    ◇

    「お母さんのことです。三年前の事故、覚えてますよね」

    真白は答えない。答える代わりに、堂本と名乗る男の言葉を、頭の中でもう一度なぞる。

    「あなたは今、保護対象になっています。ある団体に狙われている可能性がある。お母さんが亡くなったのも、本当は事故ではなかったかもしれません」

    継ぎ目がある。「三年前」という言い方に、事前に調べた数字をそのまま読み上げるときの硬さがある。真白の母が死んだのは、三年前ではない。もっと前だ。何年前かは、真白自身にも正確には分からない。数えることをやめてから、もうずいぶん経つ。

    だが、男が間違えたのは数字だけではない。「事故ではなかったかもしれない」と言うときの声に、迷いがなかった。初めて口にする仮説を語る声ではなく、何度も練習した台詞を決められた場所に置くだけの声だ。

    ◇

    本物の警察かどうかを確かめても仕方がない。手帳の偽造くらい、この世界には驚くほど多い。知りたいのは、この男が今、何を欲しがっているかだ。

    男の視線が、真白の左手首をちらりと見た。時計でも指輪でもない、ただの手首を。それから、更衣室の奥、真白のロッカーがある方向にも一瞬だけ動いた。

    ――荷物を確かめたいのだ。あるいは、荷物を確かめられる場所まで、真白を自分から歩かせたい。

    「話、聞きます。でも休憩、十五分しかないので」

    真白は自分からロッカーの方に歩き出す。男がついてくる。鍵を開けるふりをして、わざと手間取る。

    「すみません、鍵が固くて」

    男が痺れを切らして手を伸ばした瞬間、真白は身を引いて、通路の方へ声を張る。

    「すみません、この人、困ってるみたいで。守衛さん呼んでもらえますか」

    男の顔から表情が抜ける。周囲の視線が集まったのを確認すると、「また来ます」とだけ言い残し、足早に出口へ向かう。

    ◇

    真白はロッカーを開けず、そのまま午後のシフトに戻る。荷物は結局、確かめられなかった。

    数日後、別の街の定食屋のテレビに、地方ニュースが流れる。「堂本」という名の警察官が、傷病休暇中に何者かに個人情報を利用された疑いがある、と小さく報じられていた。顔写真は、あの男とは似ても似つかない。

    本物の堂本という人間は、どこかに実在している。名前も階級も本物で、顔と声だけが、別の誰かのものにすり替わっていた。

    そのことだけを、真白は今、覚えている。

    ◇

    シフトが終わって、更衣室で着替えながら、真白は男が最後に何をしたか思い出す。守衛を呼ぶ声を上げた瞬間、堂本と名乗った男は身を引きながら、名刺のようなものをロッカーの上にそっと置いていった。「また来ます」と言ったときの、あの手の動きだ。

    名刺には電話番号と、聞いたこともない相談窓口の名前が印刷されている。裏返すと、紙にしては妙に厚みのある一角があった。

    角を少しめくると、髪の毛より細い金属の線が覗く。

    紙に見せかけた何かだ。意味までは分からない。ただ、これを持ち歩けば、真白がどこにいるか、誰かに伝わり続けることだけは分かる。

    ◇

    ロッカーの前で固まっていると、同じラインの女が声をかけてきた。

    「お疲れ様。今日、変な人来てたんね」

    「親戚と勘違いしてたみたいです」

    「ふうん。まあ気をつけや」

    女は軽く手を振って、先に更衣室を出ていく。継ぎ目のない、ただの世間話だった。こういう会話が普通にできる相手を、真白は嫌いではない。だからこそ、長居はできない。

    真白は名刺をポケットに入れたまま、荷物搬出口へ向かう。ちょうど、隣町行きの配送トラックが荷台を開けて、積み込みを待っている。ドライバーが伝票を確認している隙に、空の段ボール箱の隙間へ、名刺をそっと滑り込ませる。

    作業員の一人が振り返りかけて、真白は自分の携帯を確認するふりをする。何も見なかった顔で、視線が通り過ぎるのを待つ。

    トラックの扉が閉まり、エンジンがかかる。

    これで、真白の居場所を示す点は、あと数時間のうちに隣町へ向かって動き出す。追う側が地図の上でその点を追いかけている間に、真白自身は反対方向へ歩ける。嘘を見抜くことと、嘘を作ることは、同じ筋肉でできている。堂本と名乗った男から教わったつもりはないが、結果として、似たやり方を返したことになる。

    ◇

    工場の裏門を出ると、日が傾き始めている。トラックのエンジン音が遠ざかっていく方向を、真白はしばらく見送る。

    母の死んだ年を、正確に数え直す気にはまだなれない。数え直せば、堂本の嘘のどこがどう本当だったのか、はっきりしてしまう気がする。

    分からないままでいることも、今の真白には、必要な逃げ場の一つになっている。

    ◇

    バス停のベンチに座ると、隣に貼られた求人情報誌のラックが目に入る。めくるつもりもなかったページで、指が止まる。

    「イベントスタッフ募集・日払い・資産運用セミナー会場設営」

    写真の下に小さく、「初心者歓迎、経験不問」と添えられている。堂本という嘘の名前を名乗った男も、同じような言葉を使った。誰かを勧誘するときの言葉には、業種を問わず似た型がある。歓迎、保証、安心――どれも、聞く側の警戒を先回りして外すための言葉だ。

    だからといって、すべてが嘘というわけでもない。型を使うことと、中身が空であることは、必ずしも同じではない。真白はその区別を、まだこの写真の男については判断できない。

    判断できないまま、次の街を選ぶことに、真白はもう慣れている。

    写真の中で、スーツ姿の男が壇上で笑っている。「元本保証」という文字が、ポスターの端に小さく躍っている。保証、という言葉には、たいてい継ぎ目がある。断言するには、この世界はできすぎている。それでも、日払いという条件は変わらない。次の街で、これを選ぶ理由には十分だ。

    バスが来る。真白は情報誌を元の場所に戻し、乗り込む。

    窓の外を工場の煙突が流れていく。堂本と名乗った男の顔も、老女の飴の味も、名刺に仕込まれた金属の線も、少しずつ後ろへ流れていく。

    流れていくものを、真白は引き止めない。引き止めないことだけが、今の真白にできる唯一の対処法になっている。

    つづく







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