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「甲冑飛脚」第䞉話

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    ほんの数分埌。

    サングラス姿の母が運転する、癜い車の助手垭に俺は座っおいた。できるだけ身を瞮めながら。暪殎りの颚が厄介だ。

    「健ちゃん、兜をむンパネにぶ぀けるの止めおくれる」

    「その前に、なんでオヌプンカヌでルヌフ党開なんですか 公開凊刑ですよ ほら、子䟛に指を差されおるし」

    「今日は倩気がいいからね。それに7人乗りは今おじいちゃんが䜿っおるから。──あら残念、たた信号ね」

    「ぐぬぬ。  それになんで、孊校指定の運動靎なんですか これなら足袋ず草履のほうが良かったですよ ロヌルプレむ的にも」

    「その緑は、りチの海束みる色ず盞性がいいわよね。道ちゃんずの远いかけっこにも䜿っおるのでしょう 履き心地はどうなの」

    「  いや、意倖に悪くないですが」

    足元に芖線を萜ずしお、緑のラむンをなぞる。

    「じゃあ、いいじゃない。怪我もしにくいだろうし」

    「はぁ  今曎匕き返せたせんからね。䌚堎に行ったら䜕をすれば」

    「受付で孊生蚌を提瀺しおから、れッケンや蚈枬チップなどを受け取りなさい。──じゃあ、ちょっず飛ばすわよ」

    「うわっ 法定速床マむナス1km走行が始たった それ心臓に悪いんで止めおくださいっお」

    その埌、䌚堎に䜙裕を持っお到着。マラ゜ン前にドッず疲れた。

    車を降りた瞬間、芆面や仮装をした人からの芖線が䞀斉に突き刺さっおきた。いや、みなさんも同類ですよ

    「じゃあ、頑匵っおね。工房の宣䌝もよろしく」

    「  はい、行っおきたす 飛隚牛料理、期埅しおおりたす」

    受付テントのある堎所ぞそそくさず向かう。前だけ芋お歩く。

    「あ、あの、芆面マラ゜ンの受付はここですか」

    兜の隙間から息を荒くしお尋ねるず、受付の女子倧生らしきボランティアスタッフが、「ひっ」ず息を呑んで硬盎した。

    「  は、はい ご本人様確認曞類ずれッケン匕換祚のご提瀺をお願いいたすたっしゅす」

    「スマッシュ」みたいに噛んだなず、頷いおみるず、「こ、こわい」ずストレヌトに蚀われた。母が持たせおくれた黒いポシェットから、孊生蚌ずスマホを取り出し、そっず差し出した。

    「ありがずうございたす えヌっず、こ、高校生 あ、すみたせん、個人情報なのに  」

    「いえ、匕き続きお願いしたす」

    タブレット端末を高速でスクロヌルしおいる。

    「はい 『護國屋ごこくや 健匌けんいち』さたですね。確認が取れたした。区分は、垂民の郚Aブロックですね」

    「  Aブロックずは」

    カチャリず腕を組んでみるず、たた小さく悲鳎を䞊げおいた。本圓に申し蚳ない。

    「はい、垂民の郚ぱントリヌタむム順にブロックを分けおいるんです。速い方からAブロック、Bブロック、C──」

    「母䞊ぇぇえええ」

    「きゃぁぁあああ」

    二人の叫びが共鳎した。

    その埌、半泣きの受付の方に「スタヌト30分前には競技堎に集たっおくださいね。今の時間なら、そのたた向かっおも倧䞈倫です  のでどうかお早く」ず催促された。

    俺を早く芖界から消し去りたかったのだろう。

    小走りでスタヌトゲヌトたでやっおきたら、䞀番乗りだった。れッケンはマグネットで胎郚分に四点止めし、蚈枬チップは脛圓すねあおの䞋にベルトで巻き付けた。

    「あずで人が来たら、埌ろに行けばいっか」──そんなこずを考えおた自分を埌ろから袈裟斬りしたい。生憎、刀は家に眮いおきた。

    そのすぐあずから、遞手たちがどっず集たっおきた。気づけば、俺は人の壁にぐるりず囲たれおいる。

    最前列のど真ん䞭。いい目印代わりになっおるのかもな──今日は絶察厄日だ。

    兜の现い隙間から芋える範囲だけでも、状況は最悪だった。すぐ暪で念入りに身䜓をほぐしおいるのは、孊生がほずんど。色ずりどりの郚掻ナニフォヌムの胞に「◯✕高校」の刺繍、その䞋に俺ず同じピンクのれッケン。

    受付で蚀われたAブロック──芆面着甚の矩務がないガチ勢の矀れに、俺はすっぜり埋たっおいた。肩や股関節のストレッチをする者、手銖の内偎に付けたランニングりォッチを調敎する者、靎玐を結び盎す者──。

    隙間の向こう、ずっず埌方にちらりず芋えるレスラヌマスク、着ぐるみ、戊隊モノ。初回開催ずは思えない熱気だ。──本来なら、俺はあっち偎のはずなのに。

    䞞刈りに黄色いハチマキをした遞手は、ストレッチをするフリをしお俺の前を暪切っおれッケンを確認しおいった。──目が「マゞで」ず蚀っおるのに気付いおるからな。君ず同じピンクだよね  。

    そのずき、真埌ろにいる遞手たちから困惑の声が䞊がる。

    「なんで、シュヌズは孊校の運動靎ぜいんだ 足袋たびずかじゃないの」

    たったくそのずおりだず思う。これは孊校指定の、灰色地に孊幎色の緑のラむンが入ったよくある運動靎だ。自宅に足袋ず草履ぞうりがあったが、母に「10km走るなら、こっちにしずきなさい」ず蚀われたので玠盎に埓った。時間もなかったしね。

    でもこのスタヌトゲヌトに集たっお、それを倧倉埌悔した。なぜなら──。

    「かかずに、『護國屋』っお曞かれおるぞ」「ごくにや ごこくや」 「字が䞊手ぇ」ずいう声が聞こえおくるのである。党身は甲冑に芆われおいるが、䞭身は汗が濁流のように流れおいる。お願いだから、あたり芋ないでほしい。

    実を蚀うず、俺は字だけは無駄にうたい。孊校の運動靎には名前を曞くだろう りチでは「小さく曞くな」ず昔からデカデカず曞かされる。それに埐々に芋えないずころに曞いたりするよね  護國屋にそういうのはないんだ。

    それから──お察しの通り、非垞に䞍本意だが──腰から股間にかけお少しもこもこしおいる。

    今日のアンラッキヌカラヌは「青」である。

    呚囲の青いナニフォヌムを着た遞手に思わず、兜の䞭から鋭い芖線を向けおしたう。その床に「ヒィィィ」「怖っ」ずいう悲鳎が聞こえる。すたんな。青だけは蚱せねぇんだ。他にも──

    『ランナヌの皆さた、スタヌト号砲たであず10分ずなりたした。ただご自身のブロックに入られおいない方は、れッケンカラヌをご確認ください』

    ざわざわずした䌚堎が静かになる。俺も胞元のれッケンずカラヌコヌンを芋比べる。うん、ピンクだね。

    『倧型の被り物や芖界が極端に狭くなっおいるマスクをご着甚の方は、安党第䞀での走行をお願いいたしたす』

    呚りからの芖線が俺に向かっおくる。真暪の遞手たちが少しだけ間隔をあけた。ちょっず傷぀くぞ。

    『本日の倩候は晎れ。日䞭の気枩䞊昇が予想されたすので、こためな氎分補絊をお忘れなく』

    朝食埌からずっず、氎分を口にしおいない。取ったら悲惚な結末ぞ䞀盎線なのがわかるからね。

    緊匵感が挂う䞭、遞手たちは目を぀ぶったり、時蚈のスタヌトボタンに手をかけたり、片足を匕いおスタヌトの号砲を今か今かず埅ちわびおいる。

    俺もずりあえず、ふぅヌっず息を吐き出しおみる。集䞭を高めおいるわけではない。ただ雑念が倚すぎるのだ。

    反察偎にあるフィニッシュゲヌトに目を向ける。倧䌚を圩る赀地に癜の幟のがりが颚になびいおいる。──ふふ  ふぞぞぞ、あれはたさに、赀身にサシが入った──、

    「飛隚牛ゥ  牛しゃぶゥ」

    遞手たちからの戞惑いの芖線なんかもう意に介さない。

    ただそれを求める捕食者ずしお、おもむろに右足をガチャっず匕いお構えた。

    『──䜍眮に぀いお』

    匵り詰めた空気を切り裂くように、着物姿のお偉いさんがスタヌタヌピストルを高らかに倩ぞ向ける。

    『──パヌンッ』

    火薬の匟ける也いた音ずずもに、俺の芆面マラ゜ンが、いた開幕した。

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    ゚ッセむや小説を曞いおいたす。 30代男。関東圚䜏

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