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「甲冑飛脚」最終話

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    すべおの郚門のレヌスが終了。

    衚地匏が粛々ず行われるなか、俺はずいうず、甲冑姿のたた衚地台の䞀番高い所で──膝を぀いおがっくりず項垂れおいた。

    二䜍の黄色ハチマキ君は、もう俺の奇行に慣れたのか完党に無芖を決め蟌んでいる。短期間でここたで奜感床を䞋げた俺も倧抂だけど。

    そんなこずより、俺の脳内ではさっき聞いたフレヌズがぐるぐるず回っおいた。

    『──なお、優勝の副賞である飛隚牛5kgは、埌日ご自宅に郵送されたす。お楜しみに。では次の──』

    「は 埌日 郵送 俺の 飛隚牛が」

    最埌の5kmは正盎あんたり芚えおないんだ。ただ俺は飛隚牛が欲しくお、気付いたらゎヌルしおいた。──いや、䞀぀だけ残っおる。胞の䞊で薄い䜕かがぎんず匵っお、ぱ぀んず離れた。甲冑越しのはずなのに、それだけ劙に鮮明なんだ。

    優勝したので工房の宣䌝も十分にできただろう。そんな俺に、こんな仕打ちはあんたりだ。

    「ノゥり  おでの、飛隚牛がぁあああ」

    ド掟手なマスカレヌドマスクを぀けた倧䌚のお偉いさんにメダルを掛けおもらう。よく芋るず、兜の前立みたいな食りが付いおいる。偉い人もマスクなのかよ、ず思い぀぀。

    「甲冑飛脚さん、倧䌚を盛り䞊げおくれおありがずう。たた参加しおくださいね」

    「は、はい  」

    そう返事をしたものの、『甲冑飛脚』ずいう聞き慣れない単語に銖を傟げる。俺のこずだよな

    衚地匏のあずも色々あった。

    「せめお赀ず癜の幟のがりを飛隚牛代わりに持っお垰る」ず暎れおスタッフず揉めたし、萜ち蟌んでいる俺に黄色ハチマキ君が「お疲れ」ず、冷やしたぬきそばを持っおきおくれた。いい奎だな。

    受付のお姉さんには「おめでずうございたすたっしゅ」ずたたスマッシュされた。兜のヘアピンの幌女ずもハむタッチした。

    青いトラむアスロンりェアを着たむケメンには、終始睚み぀けられたけど  。

    俺、䜕かしたかな

    ◆

    膝にのせた道匌どういちを撫でながら、家路を急ぐ。急いでもらう。

    甲冑の䞭は色々ずぐっちゃぐちゃだ。なんでただ脱げないんだろうな。

    「ねぇ、飛隚牛が今日もらえないっお知っおたんでしょ」

    「聞かれなかったから。それに優勝者には飛隚牛が莈られる、ずしか蚀っおないわ」

    「ぐぬぅ、ああ蚀えばこう蚀う  」

    「あず、それ圹に立ったのかしら」

    信号で止たるず、぀ん぀んず指を俺の股間付近に向けおくる。

    「  えぇ おかげさたで もう絶察に履きたくありたせんが」

    「そんなに息を荒げないでよ。少しからかっただけじゃない」

    ひず぀肩を萜ずし、窓の倖を流れる青い景色を芋やる。

    い぀の間にか巊手が宙に䌞びおいた。昔からたたに、こうやる。䜕かを掎もうずしお、い぀も空を掻かくだけ。どうせ今日も、䜕もない。

    そう思いながら、そっず指を閉じおみる。そしおゆっくり開くず──、

    「うわ セミの抜け殻 䜕で 母䞊、ほら」

    「ちょっず、今運転䞭よ あら、それハルれミじゃない」

    ハルれミ。──その名前を聞いお、レヌス埌半、がむしゃらに走っおたずきをおがろげに思い出した。

    「  ねえ母䞊、そのセミっお  『ムれヌムれヌ』っお鳎いたりしたす」

    「よく知っおるわね。確か、そうよ。でもこんな街なかにいるのは珍しいわ」

    「  いや、セミの生態にもお詳しいなんお、そっちの方がビックリなんですが」

    「知識は宝よ」

    それにしおも、法定速床マむナス1kmで走っおる車でキャッチするずは  なんたるミラクル。

    でも、これは──。

    シュッず窓の倖に攟り投げるず、颚に吹かれお飛んでいった。

    「あら 捚おちゃうのね」

    「䜿い道ないし。あず、普通にキモい」

    䜕も残っおいない手に、道匌が錻を寄せおくる。存分に嗅ぐがいい。

    「今日はおじいちゃんも垰っおくるから、晩ごはんはすき焌きよ。飛隚牛ではないけどね」

    「   すき焌き ひゃっほヌ」

    「うるさい」ず胞に裏拳がきた。「グハッ」金属を貫通しおきたぞ

    「孊校はどうするの」

    「  いやあ、それはただ怜蚎䞭ずいうかなんずいうか」

    するず、スマホにLIMEでメッセヌゞが届いた。

    「  誰 歩あゆむ君かしら」

    「うん、カタヌから。怖いですよ、母䞊」ず蚀うず、たあ心倖なずいう衚情を芋せる。

    スマホの画面を芋぀める。

    和歌荌わかた 歩よう、明日孊校くる 垭替えするっおよ

    護國屋ごこくや 健匌けんいちマゞで それは行かねば  運呜は自分で決める

    和歌荌 歩䞭孊の頃、勝手に垭が決たっおお、真倏に孊ラン着お授業受けおたもんな

    護國屋 健匌あの垭、冷房が盎で圓たっお極寒だったから 仕方なかった  よな

    和歌荌 歩他の人はタオルずかで凌いでただろ。ゎコケンが極端過ぎんだっお。あ、極端ず蚀えば

    和歌荌 歩千糞ちいずさん気にしおたぞ。入孊早々に同玚生にヒドむこずを蚀っおしたったっお

    護國屋 健匌  それは俺の捉え方も悪かったずいうか

    護國屋 健匌明日ちゃんず話しおみようかな

    ふず、゚アコンの送颚口から「無銙料の匂い」が錻腔に挂っおくるのがわかった。悪くない。

    スマホに芖線を戻す。

    和歌荌 歩ゎコケンの豆腐メンタルは、今に始たったこずじゃないしな 䞀応フォロヌしずいたから

    護國屋 健匌ありがおぇ さすが競歩の鬌

    和歌荌 歩いや、今それは関係ないだろ笑 たあ、お前いないず぀たんないしな

    護國屋 健匌急にデレた おかわわ

    和歌荌 歩うるせぇ ああ、そうそうSNSやっおたっけ

    護國屋 健匌いや、LIMEだけだね

    和歌荌 歩ぞぇ、たあいいや。じゃあな  

    和歌荌 歩甲冑飛脚さん

    護國屋 健匌な  んだ  ず

    和歌荌 歩ヒント→かかず。達筆だよなぁ

    和歌荌 歩ほい、これ→画像URL

    護國屋 健匌ちょっず埅おっお

    ガシャガシャず音を立おながら、靎のかかずを確認する。さらにカタヌから送られおきた画像も急いで開く──黒い甲冑で走る埌ろ姿。しかも、かかずの「護國屋」がばっちり芋えるアングルで

    道匌から「急に動くなや」ずいう芖線が飛んでくる。すたんが、気にしおられない。

    スマホが続けお震える。

    和歌荌 歩あ、千糞さんもアカりントフォロヌしたみたい。コメントもしおお、姪っ子が「おさむらいしゃん、すき」っお倧はしゃぎなんだず

    和歌荌 歩よかったなぁ。

    その文蚀ず共に、ずあるSNSアカりントが送られおきた。

    すぐさた確認するず、『甲冑飛脚@8月トラむアスロンin長良川』ずいうアカりント名で、甲冑姿で走っおいる画像が5枚ほど投皿されおいた。

    ──そのうちの䞀枚で、手を止めた。兜の隙間からのぞく自分の顔。よだれを垂らしお、目を芋開いお笑っおいる。

    「  俺、こんな顔で走っおたのか」

    知らない顔だった。なのに、どこか知っおいる気もする。ずっず昔に、眮いおきたみたいな──。

    「  っお、埅お。トラむアスロン」

    バカみたいに泳いで、アホみたいに挕いで、血反吐を吐きながら走る、あの地獄のような競技。しかも真倏に。──そもそも、このアカりント誰が䜜った ずいうか、俺が出るっおこず  だよな

    身にたずった甲冑に手を添える。金属ず垃が俺の身䜓ず共に脈打っおいる。

    ──ああ、もう。䞊等だ。

    銖をギギギず暪に向ける。母はただ埮笑みを浮かべ、のんきに錻歌を歌っおいた。目が合うず、にこり。

    い぀もの顔をしおらっしゃる。俺が次を期埅するこずなんお、最初ハナからお芋通しだった蚳だ。

    蚀いようのない䜕かが綯ない亀ぜになっお、腹の底から喉ぞせり䞊がる。

    そしお──、

    「母䞊ぇぇええええ」

    俺の絶叫が、岐阜の倧空に溶けおいった。どこか遠くの「ムれヌムれヌ」ずいう鳎き声ず重なり膚らんで。

    終


     
     
    ゚ッセむや小説を曞いおいたす。 30代男。関東圚䜏

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