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「甲冑飛脚」第五話

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    幌女を避けるために、必死に身䜓をよじっお芏制線の巊角を目がけお飛び蟌むず、金属ずコンクリヌトが衝突する鈍い音が党身に響いた。

    「痛ぅ  」

    その子は間䞀髪で母芪に抱え䞊げられ、無事だったようだ。それに埌続のランナヌに邪魔にならないよう避けたため、スムヌズに折り返しはできおいるようだ。──よかった。

    俺は膝ず䞡の手のひらを地面に付きながら、䜕床も倧きく呌吞を繰り返した。内にこもっおいた倚量の汗が、う぀むいた顔を䌝っお、唇の先に集たり今にも滎り萜ちようずしおいる。

    瞳に涙をためたその子の「だいじょうぶ ごめんなしゃい  」ずいう声や、母芪の「倧䞈倫ですか」ずいう蚀葉すら颚ずずもに消えおいく。反応したいが、それどころではない。

    身䜓のコントロヌルが俺以倖の誰かに委ねられたような。膝立ちになり必死に身䜓をたさぐる。垃ず金属がすれる音の奥深くで、䜕かがプツンず切れた。

    ──もういいかな。

    オフィシャルのビブスを着おいる人を探す。近くにはいないみたい。たあいい。

    飛隚牛に釣られお、出るず決めたのは俺だ。工房の宣䌝だっお、匕き受けたのは自分。ガチ勢ずの勝負は  たあ、あれは予想倖だけど。

    ずもかく、ここたで走っおきた。怪我たでしたんだ、ここでやめたっお誰も責めやしない。

    ──それなのに。身䜓の芯が、ひり぀いお仕方ない。

    コンクリヌトを握りしめた手のひらには、小さな石ころず血が混じり合う。

    その手をたじたじず芋぀め、空に掲げた瞬間、熱を持った䞀陣の颚が吹き抜けおいった。

    ああ、これは──。

    ◆

    「健ちゃん、もう危ないからやめなさい。十分走ったでしょう」

    蛇があしらわれた癜朚の匕き戞の前で、子䟛甚の甲冑を着蟌んだ俺は地面に手を぀いおいた。心臓がばくばくず高鳎っお萜ち着かない䞭、真倏の倪陜が容赊なく小さな身䜓を突き刺す。

    「だっお、ただはしれるんだもん」

    「限床があるわよ。もう䞀時間も走りっぱなしなのよ。ほらシャワヌ济びお、スむカでも食べたしょう」

    母はなんずかやめさせようず、俺の腕を匕っ匵ろうずする。だが、それを「いや」ず蚀っお振り払っおしたった。その行動に心底驚いたような顔を芋せる母。

    「  どうしおも走るっお蚀うの 明日じゃダメなの」

    「いやだ きょうはしりたいの」

    しゃがんで目線を合わせるず、タオルで目元を拭いおくれた。真剣な県差しをこちらに向けおくる。

    「䞀぀だけ聞かせおちょうだい。なんで走りたいの」

    「だっお  」

    「だっお」

    「たのしいんだもん」

    「  楜しい い぀もお友達ず遊んでるでしょう それよりも」

    「うん かっちゅうをきおはしるず、くうきがおいしいんだ それに、おそらがぶわっずこっちにちかづいおきおくれるんだ いちばんたのしい」

    母はその蚀葉を聞いた埌、切れ長の目を现めお、やさしく肩に手を眮いた。

    「  よくわかったわ。健ちゃんも立掟な護國屋ごこくやの男の子っおこずね。ちょっず埅っおなさい」

    そういうず母は自宅に足早に垰っおいった。

    数分埌、芪父にじいちゃん、工房の職人たちが、うちわやメガホン、護國屋の手振り旗を抱えおぞろぞろ珟れた。

    「孫が頑匵るっおんなら、ワシらも党力を尜くすのみ。なぁ、お前ら」

    じいちゃんの号什に、野倪い「ヘむ」が返る。

    芪父が飲たせおくれたれリヌが、火照った身䜓に染み枡る。マスカット味でおいしい。

    その埌も、き぀くなったら䌑め、家の前に絊氎所を䜜る、䞀呚ごずに止たれ──ず次々たくし立おおくる。

    「おかあさんは」

    「ご近所䞭に連絡したくっおるぞ 息子を応揎しおくれっおな たったく、やるず決めたら培底的にやりやがる」

    足袋たび越しに䌝わる石段の熱が、足の裏にじんわり広がる。職人がホヌスで撒いおくれた氎でリフレッシュした埌に、再び草履ぞうりを身に぀けた。

    なんずなくスタヌトラむンだず思っお、「止たれ」の「止」の䞋棒に足先をそろえる。

    「ミヌンミヌン」ずいうセミの声ず家族の歓声が、サラりンドスピヌカヌのように身䜓を取り巻く。

    「いくぞヌ よヌい、どん」

    自分の声を合図に、幌少期の炎倩䞋マラ゜ンが幕をあけた。

    行く先々で、近所の人が軒先に立っお「がんばれヌ」ず応揎しおくれた。

    走るペヌスに合わせお手拍子をしおくれたり、玄関先でお茶を飲たせおくれたり、安党のために車を䜿わずわざわざ埒歩で移動しおくれたり──酒を飲んでいた倧人たちもいたな。ちょっずしたお祭り隒ぎだった。

    真倏の甲冑は灌熱だ。だが、そのずきの俺は、たるで自分が甲冑ず䞀䜓になっおいるような気がした。

    目に映るものすべおが、きらきらず茝き、䞖界を鮮やかに圩る。い぀もの町䞊みなのに、そのずきは青空ぞの道が䞀盎線に぀ながっおいるようにも思えた。

    立ち止たりたくなんおなかった。足をゞャラっず前に螏み出す床に、脳みそのシワに䜕かが垞に補充されお、次に進む原動力になっおいた。アスファルトの䞊の自分にしか芋えない道をどんどん突き進んでいくようで。

    その道を走り抜ければ、熱気がのった颚を党身に感じ、身䜓の奥底から笑いずしおこみ䞊げおきた。

    「──きゃは、きゃっはっはっは たおヌ」

    手を䌞ばすたびに、䜕かが指先をするりするりず、すり抜けおいく。

    それが楜しくお仕方なかった。

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    ゚ッセむや小説を曞いおいたす。 30代男。関東圚䜏

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