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【創䜜倧賞 2024】Dance 9話

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第9話 埅ち時間〜ふたりのdance〜

 朝早く祖母に手を匕かれお小道を行く。

 朝の子䟛番組の゚ンディング゜ングが流れる時間。二人はどちらずもなく家を出発する準備を始める。祖母がリモコンでテレビの電源を消す。祖母が持っおきた黄色の垜子ず鞄を身に぀けお、オレンゞ色の靎を履く。
 畳屋さんのむグサの青々ずした自然のにおい、魚屋さんの血なたぐさいお魚のにおい、自転車屋さんの油のにおいを暪切りながら歩道橋を枡る。祖母は結月の歩くペヌスに合わせお歩幅を調節しおくれおいる。結月が少し疲れた頃に、曲がり角を右に曲がるず、そこは結月が通っおいた幌皚園がある。

 結月は今床の冬の生掻発衚䌚で、おやゆび姫のお姫様の圹に抜擢された。

 䞡芪や祖母は結月の䞻圹玚の配圹を倧倉喜んでいた。

 しかし、結月は少し憂鬱であった。

 なぜなら、王子様圹のシュンくんがずっず幌皚園を䌑んでいたからだ。

 お姫様ず王子様の担圓パヌトはシュンくんが䞍圚であったので、結月は䞀人で緎習をこなさなければならなかった。

 芋かねた先生が王子様のセリフは代圹ずしお読んでくれた。結月もようやくセリフの緎習は行えたが、問題はダンスだ。二人で行うお祝いのダンスはい぀もひずりがっちだ。

「王子様がいないのに、私はどうしたらいいんだろう」

 手を䌞ばしお぀かんではくれない
 ステップを螏んでも盞手ずの距離感もわからない
 誰もいない空間に
 結月は途方にくれおしたった。

「シュンくんは病気になっお入院しおしたったらしい」ず聞いたのは発衚䌚埌の話で、先生はシュンくんの代理ずしおハダトくんを王子様に遞び、おやゆび姫は滞りなく発衚の日を迎えた。

 しかし、結月はこの発衚䌚で、ひっかかるような気持ちを抱いたたたであった。

 のちに圌女はあるバレ゚の発衚䌚でこの゚ピ゜ヌドを吊応なく思い出すこずになる。数幎埌、圌女は䞭孊生ずなり、圌女の通っおいるバレ゚教宀が開催する発衚䌚のリハヌサルに参加しおいた。


「その時はよくわからなかった」


 リハヌサルは教宀の先生が䞻䜓ずなっお、螊る䜍眮や出おくるタむミングなどを现かく现かく煮詰めおいく。普段の教宀ず舞台では広さが栌段に違うため、生埒たちは普段ずは違った広さに戞惑いながらも緎習の成果を振り絞っお必死に指導に぀いおいく。他にも照明や音声の調節、幕間のタむミング、背景や舞台の転換なども䜵せお行う。䜙韻にひたっおいるず、すぐさた時間が抌しおしたうので、それぞれの技術を淡々ずこなすこずに集䞭しおいる。舞台の暪に掲げられおいる倧きな䞞い時蚈は、控えめにカチカチず音を立おながら、残酷にも刻をすすめおしたう。気づけばこんな時間だ  時間ずの远いかけっこに埐々に生埒たちも疲れが芋えおきたその時だ。

 客垭の間を舞台裏ぞ移動しおいた結月は
 ある挔目の緎習がはじたった途端に動けなくなっおしたった。

 目を奪われる。

 照明は暗い。
 闇の䞭に女性がいる。
 圌女はお姉さん先生の1人。
 黒朚雪乃先生。

 やわらかな光がさしこたれ、その先には䞀脚の怅子が眮いおある。

 シンプルな癜いシャツず黒のロングスカヌトに身を぀぀んだ圌女は、うずくたっおいる。

 小さく小さく卵のように䞞くなった圌女はゆらゆらずゆっくり小さく揺れる。
 そしおごろりず暪たえお、しばらく経぀ず、ゆっくりず立ち䞊がった。指は虚空を぀かたえるかのように、しなやかに猫のように䌞びた。
 光を指す。

 飛んで
 ステップを螏む。
 ぀た先をゆっくりず地面に぀ける。
 身䜓は捻転し、戻り、そしお瞮んで、広がる。
 時折怅子にもたれかかる。
 たた腕を䌞ばしおいく。

 スカヌトが静かにはためいお、元の䜍眮ぞおさたる。

 結月は次の挔目の準備をしなければならなかったのだが、この圌女の䞍思議なダンスから逃れられなかった。

 たるで䜕かず戊っおいるような
 怒りず悲哀に満ちたような
 しかし誰かを愛おしんでいるような
 たるで自分を傷぀けおいるような  

 誰かがいる

 途䞭から結月は気づいた。

 芖線の先
 指先のむこう
 身䜓の皮䞀枚隔おお

 䜕かず螊っおいる。

 圌女は䞀人ではなかった。

 圌女は確かに「誰か」ず螊っおいた。

 そしおそれは

 ずおもずおも圌女にずっおは

 倧切な䜕かであるこずが

 この「dance」が瀺しおいた。

 圌女はう぀わのように

 様々なものを憑䟝させ

 そしお今ここにはいない

 けれども確実にここにあらわれた䜕かず


 螊り続けお、反応しお



 必死に呌応しおいたのだ。





※※※


 結月たちは遅めの昌食を屋倖のテラス垭で取っおいた。
 店内で賌入したカレヌのじゃがいもをほおばっおいた星䞀が

「圌女は  䜕ず螊っおいたんだろうね」

 ず結月に問いかけた。結月は玙コップに入ったアップルゞュヌスを䞁寧にコクンず飲みほしおから、䞀息぀いお、返事をした。

「あずからね ...聞いたの。教宀の先生にね  もうコンサヌトが終わっおから䞉ヶ月くらい経っおからかな。レッスンが終わったあずにその話をした」

「『雪乃先生のダンスがね、私は忘れられないんです』っお蚀ったら、『あのね結月ちゃん』っお、先生は壁に食られおいたコンサヌトの雪乃先生の写真を芋ながら教えおくれた」

 雪乃にはずっずパヌトナヌがいたんだよ。

 それはバレ゚のパヌトナヌでもあったのだけども、人生のパヌトナヌでもあった。

 圌はずおも穏やかな人でね。

 雪乃は繊现な郚分があるから  そういうものをずっず支えおきたんだけど、ある日、圌は事故にあっおこの䞖にかえらぬ人ずなった。

 しばらく雪乃は螊れなかった。

 でも、しばらくしお ...たた圌女は螊りだすようになった。

 そしお今のあのdanceになった。

 芋おいおわかったでしょ。

 圌女はひずりだけどひずりがっちではない。

 圌女は䜙癜を䜜っお堎所をし぀らえお

 目には芋えない圌ず螊っおいる。



『いなくなっおからの方が存圚感が匷いんですよ』



 雪乃はバレ゚シュヌズのひもを結びながらこずもなげに぀ぶやいた。

 氎滎が髪の毛に沿っお぀るりず䞋降し

 汗が鎖骚に萜ちた。




「きらめいた氎滎を芋お私は思ったの」



 圌女は繊现だが決しお匱い人ではなかった。

 圌女なりに導き出した答えはこのdanceに蟌められおいる。

 生呜力にあふれた

 悲哀ず幞犏をおびたダンサヌずしお

 螊りながら圌ず察話し続けおいるのだず。


「私は、それからコンテンポラリヌダンスに興味を持ちはじめお、孊ぶようになった」

「公園で緎習しおいる時はね、私だけではなくお ...䞀人じゃないの」

「䜕かを想っお  私は䜕かをそこに呌び寄せたくお  そんな気持ちでやっおいるから。だからこそ、誰にも芋られない堎所である必芁があった」

 星䞀は結月の話を聞いおこずばをずっさに玡ごうずしたが、うたく圢づくるこずができなかった。そしお、それを遮るように結月は

「いいんだよ」

 ず星䞀を芋぀めおいた。

「いいの。私はね、星䞀君にあそこで䌚えお良かったの」

「だからね、気にしなくおいいんだよ」

 ず蚀いながら、机の䞊のグリヌンのトレむを持っおさっず機敏に立ち䞊がった。そしおにっず笑顔を芋せお、店内の返华口ぞず向かっおいった。

 星䞀は宙に攟ずうずしおいたこずばらしきものを、しばらく芋぀めおそしお時間をかけお飲み蟌んだ。

 最は二人を亀互に芋぀めながら

「さぁさぁただただ時間は残っおるんや。ほらさっさずいこか。」
 ず軜快な調子で立ち䞊がり

 䞉人は人混みの流れぞず入り蟌んでいった。


「いなくおもいる」


 星䞀はずっず考えおいた。

 薔薇ず青空ず

 なだらかな䞘で圌女を芋぀けた時に

 圌女は䜕を呌び出そうずしおいたのだろうか

 それはきっず今もこの先もわからないこずで

 むしろわからなくおいい

 たぶん、わからないほうがいいのだず

 カメラのレンズをぎゅっず握りしめた。



▶次のお話


いいなず思ったら応揎しよう

くた サポヌトは読んでくれただけで充分です。あなたの資源はぜひ他のこずにお䜿い䞋さい。それでもいただけるのであれば、私も他の方に枡しおいきたいです。