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記憶の針を落とす|ブルースから、ソウルへ


※記事が増えてきたため、「ブルースから、ソウルへ」は[洋楽編]から独立した扉ページとして分けました。
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黒人音楽の流れを、聴いてきた時間とともに


私がブルースやソウルを聴き始めた頃、その音楽がどこから来たのかを深く考えていたわけではありません。

格好いいと思った。声が好きだった。リズムに身体が動いた。
最初は、それだけでした。

けれど、一枚のレコードから次の一枚へ進んでいくうちに、音楽の後ろに別の音楽があることを知りました。

ロックをたどればブルースへ行き着く。
ソウルの声をたどれば、教会のゴスペルが聞こえてくる。
R&Bの先にはファンクがあり、そのリズムはやがて世界中の音楽へ広がっていく。

ひとつの音楽が突然生まれたわけではありません。誰かが歌ったものを、次の誰かが受け取る。少し形を変え、別の時代へ渡していく。
そうして音楽は続いてきました。

このページでは、「記憶の針を落とす」で書いてきたブルース、R&B、ソウル、ファンクの記事をまとめています。

ここに並んでいるのは、私自身がレコードを聴きながら、何十年もかけて少しずつたどってきた道です。

最初から読む必要はありません。
知っている名前からでも、好きな一曲からでも。
どこからでも、針を落としてみてください。


ブルースから始まった


Vol.20|Robert Johnson『King of the Delta Blues Singers』

1930年代のミシシッピに残された、わずかな録音。
十字路で悪魔に魂を売ったという伝説よりも、そのギターと声が、その後の音楽へ残したものの大きさに驚きます。
ロックをたどっていくと、遠い場所にいるはずの一人のブルースマンへ戻っていく。ここから始めます。
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Vol.46|「Please Send Me Someone to Love」──誰か、私に愛をください

1950年、パーシー・メイフィールドが書いた一曲。
世界には争いがあり、自分には愛する人がいない。その二つが、一つの歌の中に置かれています。
何十年も後、Sadeの歌から原曲へ戻ってみると、そこにはブルースが持っていた祈りが残っていました。
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教会から、ソウルへ


Vol.7|Sam Cooke『Live at the Harlem Square Club』

サム・クックは、もともとゴスペルを歌っていました。
やがてポップスの世界へ進み、甘い声でスターになります。ところが、このライブで聞こえてくるのは、整えられたスターの声とは少し違います。黒人客を前にしたサム・クックが、声を剥き出しにして歌っている。
ゴスペルとR&Bとソウルが、まだ地続きだったことが聞こえてきます。
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Vol.12|Marvin Gaye──愛と祈りの旅〈前編〉

教会で歌っていた少年がモータウンへ入り、スターになった。
そして『What's Going On』で、自分の言葉を歌い始めます。愛の歌を歌っていた声が、戦争や貧困、人種、社会へ向かっていく。マーヴィン・ゲイという人をたどると、ソウルという音楽が持っていた「祈り」の意味が見えてきます。
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Vol.13|Marvin Gaye──愛と祈りの旅〈後編〉

『What's Going On』の後も、マーヴィンの人生は続きます。
愛、結婚、離婚、依存、逃亡。そのすべてが音楽へ入り込んでいきました。社会を見つめた声が、今度は自分自身の内側へ向かっていく。
そして『Midnight Love』へたどり着きます。
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Vol.5|Marvin Gaye『Midnight Love』

1982年。19歳だった私は、仙台のレコード店でこのアルバムに出会いました。そこから過去へ遡り、『What's Going On』『Let's Get It On』『I Want You』を聴き始めます。
私がマーヴィン・ゲイと出会ったのは、最後のアルバム『Midnight Love』でした。そこから時間を逆向きにたどっていきました。
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Vol.51 | Sam Cooke「A Change Is Gonna Come」

ゴスペルからポップスへ進み、黒人歌手として大きな成功を手にしたサム・クック。それでも、肌の色によってホテルの扉の前で拒まれる現実があった。ボブ・ディランの「Blowin’ in the Wind」に刺激を受け、自らの体験を重ねて書いた「A Change Is Gonna Come」。
ソウルが、個人の感情から時代の声へと広がっていく。その大きな転換点となった一曲を辿った。
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ソウルが、世界を語り始める


Vol.18|Curtis Mayfield『New World Order』

カーティス・メイフィールドは、人種や貧困、希望を歌い続けました。
事故によって身体の自由を失った後も、歌うことをやめませんでした。寝たまま、少しずつ声を録音したという『New World Order』。
大きな声ではありません。
それでも、その声には最後まで意志が残っています。
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Vol.23|Stevie Wonder『Songs in the Key of Life』〈前編〉

1976年。愛、家族、街、社会、信仰、未来。
一枚のアルバムの中に、これほど多くの世界が入っている。スティーヴィー・ワンダーが作ったのは、ヒット曲を集めたアルバムだけではありませんでした。レコードそのものが、一つの世界になっていました。
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Vol.24|Stevie Wonder『Songs in the Key of Life』〈後編〉

同じアルバムを、多くの人が聴いていた時代がありました。
レコードを買い、最初の曲から最後の曲まで聴く。ジャケットを眺め、歌詞カードを読み、また針を落とす。『Songs in the Key of Life』から考えたのは、スティーヴィーの音楽だけではありません。
私たちの音楽の聴き方が、いつの間にか変わったことでした。
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リズムが身体へ入ってくる


Vol.15|James Brown『Live at the Apollo, Volume II』

高校生の頃からジェームス・ブラウンは知っていました。それでも、本当の面白さはよく分かっていなかった。何年も経ったロサンゼルスの夜、不意にそのリズムが身体へ入ってきました。
メロディを聴く音楽から、リズムそのものを聴く音楽へ。
私の中でファンクの扉が開いた一枚です。
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Vol.44|THE BLUES BROTHERS──映画より先に、ブルースが来た

高校2年生のとき、映画を見るより先にサウンドトラックを買いました。
そこにいたのは、Aretha Franklin、James Brown、Ray Charles、John Lee Hooker。
コメディ映画の形を借りながら、ブルースやソウルの巨人たちが次々と現れます。私にとって『THE BLUES BROTHERS』は映画である前に、黒人音楽への案内板でした。
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客席までが、音楽になる


Vol.45|Donny Hathaway『Live』

このアルバムでは、客席が静かに演奏を聴いているわけではありません。
歌い、叫び、手を叩く。ステージと客席の境目が少しずつ消えていきます。マーヴィン・ゲイを追いかけていて出会った一枚でした。
そして後になって、山下達郎の『It's A Poppin' Time』へもつながっていきました。音楽が、人と人の間で起きる「出来事」だった時代です。
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そして、歌は自分の記憶へ戻ってくる


Vol.50|The Manhattans『Kiss and Say Goodbye』

四谷・荒木町のバーで流れてきた一曲。
The Manhattansの「Kiss and Say Goodbye」でした。
その瞬間、六本木WAVEで一枚のレコードを女性に手渡した、若い日の記憶が戻ってきました。ブルースやソウルの歴史をたどってきても、最後に音楽が触れる場所は、とても個人的な記憶なのかもしれません。
別れの歌は、ときどき、過ぎた時間まで連れてきます。
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音は、受け渡されていく

ブルース、ゴスペル、R&B、ソウル、ファンク。
名前をつければ、それぞれ別のジャンルになります。けれど聴き続けていると、その境目は思っていたほどはっきりしていません。

Robert JohnsonのギターからSam Cookeの声へ。
Marvin GayeやCurtis Mayfieldが歌った祈りや問いを経て、James Brownのリズム、Stevie Wonderが作った大きな音楽の世界へ。
その音を受け取った人たちが、また次の音楽を作っていきました。

私自身も、そんな流れを知らず知らずのうちに聴いてきました。
十代には分からなかった声があります。
何十年か経って、ようやく意味が届いた歌もあります。

そして昔のレコードを聴いていると、音楽の歴史をたどっていたはずが、いつの間にか自分の時間をたどっていることがあります。



音は変わらない。
変わっていくのは、それを聴く自分のほうだ。
だからまた、記憶の針を落とす。


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