暮らしの森|モコの部屋
この話は一話で読めますが、実はハヤトの冒険・遺跡編の、その後のお話です。
穏やかな昼下がり。
黄色い蝶がひらひらと舞っていた。
「わーい」
モコはぴょんぴょん跳ねながら追いかける。

蝶はふわりと向きを変え、その先へ。
モコもそのまま駆けていく。
すると、小道の向こうから誰かが歩いてきた。
「あっ!」
モコの耳がぴんと立つ。
「ハヤトーー!!」
モコは一目散に駆け寄る。
「ハヤト! 会いたかったモコ!」
「え?」

「見せたいモコ!」
「え、なにを? 」
モコはハヤトの手を引っ張る。
「家に来るモコ!」
「い、今? ちょっと待っ……」
ハヤトは久しぶりの外出だった。
先日親に怒られたこともあり、まだ少し元気がない。
たけど、モコはそんなことお構いなしに、
元気よく走り出す。
「はは……モコはいつも元気だなぁ」
ハヤトは苦笑いしながらそのあとを追った。
◆
森の奥にあるモコの家。
丸い窓から差し込む光が、
石畳の床をやさしく照らしている。

「モコの部屋ってさ、なんか森の続きみたい」
「ぜんぶモコが見つけたモコ」
モコは得意げに言う。
床には、何に使うのかわからないものまで転がっている。ハヤトはそれを見て、くすっと笑った。
その時、壁に掛けられたリュックが目についた。
「あれ? モコ、それって……」
「あー!そうだモコ!」
モコはぱっと顔を上げ、壁まで駆けていった。
「これずっと見せたかったモコ!」

「いいじゃん!」
「どうしたの、それ?」
「アツコに作ってもらったモコ!」
「へぇ。モコにすごく似合ってるよ」
「やったモコ〜!」
モコはその場で背負って見せた。
「ずっと見せたかったモコ」
「でもハヤト、いなかったモコ」

「いや、それは……」
言いながら少しうつむく。
見せたいものは、自分にもあった。
「あ……」
ハヤトは思い出したように顔を上げる。
「モコ、あのさ──」
「アツコはすごいモコ!」
そう言って、モコは嬉しそうにリュックを抱きしめる。ハヤトの言葉はまた飲み込まれてしまった。
それでも、モコを見ていると自然と笑みがこぼれる。
「いいなぁ……」
ハヤトはリュックを眺めながらつぶやく。
「僕も何か欲しいなぁ。
雨でも濡れない地図とか、リュックを開けなくても取り出せるライトとか」
モコの耳がぴくっと動いた。
「アツコに言ってみるモコ!」
「えっ? 」
「アツコは何でも作れるモコ!」
「……何でも、か。」
ハヤトは思わず笑った。
「ダメ元で相談してみようかな」

モコはもう一度、嬉しそうにリュックを背負うと、肩ひもをぎゅっと握る。
「ハヤトとおそろいだモコ」
「これで探検に行けるモコ!」
「探検……」
その一言で、この間見つけた木箱が頭をよぎった。
──「今度、返してきなさい。」
親の言葉がふとよみがえる。
ハヤトはポケットにそっと手を当てた。
「ねぇ、モコ。あのさ……」
(続)

この日につながる物語
ハヤトに会えなかった日⬇︎
アツコが作ってくれた日⬇︎
