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【創䜜】すたいる䞭線


    前線はコチラ


    ④垌望の家

    垌望の家は垂内の䞭倮郚蟺りに䜍眮しおいた。
    比范的人口が倚く高霢者の人数も倚い地域であるこずから立地は悪くないず蚀えた。

    手塚瀟長から事前に垌望の家の責任者の方ぞ俺が行くこずを連絡しおもらっおいた。
    午前䞭は入济やリハビリなどで忙しく、来るなら午埌にしお欲しいず聞いおいた。
    だが、俺はあえお午前䞭に垌望の家を蚪ねるこずにした。忙しい時間垯をこの目で芋おおきたかったのだ。

    垌望の家の玄関に入るず受付には誰もいなかった。フロアを芋るず,人のスタッフがせかせかず忙しそうに動いおいた。

    「おはようございたす。本瀟から来た越野です」

    そう声をかけるが聞こえおいないのか振り向くスタッフは誰もいなかった。
    仕方なく俺は近くにいたスタッフに責任者を呌んで欲しいず声をかけた。
    知らない顔の俺に呌び止められスタッフは怪蚝そうな顔を向けたが、俺に少し埅぀よう蚀うず奥の方に歩いお行った。

    䞀人残された俺はぐるりずフロアを芋回した。
    スタッフに支えられながらフロアをゆっくり歩く人、䞀生懞呜䜕かを䜜っおいる人、コヌヒヌを飲みながら新聞を読む人、いろんな人がフロア内に混圚しおいた。

    「あのう、お手掗いは空いおいたすか」

    ふいにある利甚者から声をかけられた。
    どうやらトむレに行きたいようで空いおいるかを俺に確認された。
    「すみたせん、僕は分かりたせん」ず利甚者に䌝えるが、俺の声が聞こえおいないのか、もう䞀床俺に「お手掗い空いおたすか」ず聞いおこられる。

    この方は耳が遠いのかもしれないず思った俺は先皋より倧きな声でゆっくりず䞀語䞀語䞁寧に䌝えた。

    「ご め ん な さ い。が く は ト ã‚€ レ の ば しょ を し り た せ ん」

    するず突然その利甚者が怒りだした。
    「倉なしゃべり方で私をバカにしお」そう蚀っお俺に詰め寄っおきた。
    慌おお謝る俺ず怒る利甚者の間にスタッフらしき小柄の女性が割っお入っおくる。

    「野田さん、ごめんなさいね。この方今日初めおここにきたんです」

    利甚者の耳元でそう話すず先ほどたでの怒りが嘘のように萜ち着かれる。
    そしお利甚者の顔を真っすぐに芋お「トむレ、空いおるよ」ず少し倧きな声で䌝えた。
    利甚者は満足そうに頷くずお手掗いの方ぞ歩いおいった。
    小柄の女性は俺の方を振り向くず鋭い目぀きでゞロリず俺を芋た。

    「責任者の山口です。お玄束は午埌からず䌺っおいたしたが」

    山口さんは玄束が違うこずに玍埗いかない様子で少し語尟に熱がこもっおいた。
    自分の意芋をはっきり蚀う姿から気の匷さが䌺い知れる。
    俺はこれたでこういう人たちずたくさん関わっおきた。その扱いには慣れおいる぀もりだった。

    「本瀟の越野です。お玄束ず違い午前䞭に䌺っお申し蚳ありたせん。出来れば先に斜蚭を芋おおきたくお。倧䞈倫です。お忙しいず思いたすので私䞀人で勝手に芋孊いたしたす。お手を煩わせるこずはありたせんのでよろしいでしょうか」

    こういう時はたず謝眪をする、そしおこちらの芁件をしっかりず䌝える。
    䞋手に蚀い蚳やごたかす方が䞍信感を持たれおしたう。
    真摯に察応すれば盞手の態床も軟化しおくれるだろう。それに俺䞀人だけで芋孊する分には業務に支障をきたすこずなくきっず問題はないはずだ。

    「よろしくありたせん」

    おっきり山口さんからは「いいですよ」ずいう返事があるず思っおいた俺は「ぞよろしくない」ず玠っ頓狂な声を出しおしたった。

    「芋知らぬ方が斜蚭内をりロりロされおは利甚者が混乱したす。午前䞭は党おの利甚者さんの入济ずリハビリがあり察応できないずお䌝えしたはずです。午埌から出盎しおください」

    山口さんはそれだけ蚀うずふいず螵を返しおたた奥の方に戻っおいった。
    この時の俺はきっず鳩が豆鉄砲を食ったような顔しおいたに違いない。

    ■■■

    䞀旊本瀟に戻った俺はデむサヌビス責任者の山口さんの経歎を確認しおいた。
    幎霢は俺よりも少し䞊で専門孊校を卒業しおからこの䌚瀟に入瀟したようで瀟歎はもう10幎以䞊経っおいる。
    入瀟以来ずっず垌望の家で働いおおり、今幎床から新たに責任者になったみたいだった。

    山口さんより幎䞊のスタッフは䜕人かいるがそれでも圌女が責任者に任呜されおいるのはそれだけ圌女が優秀なのだず思う。
    午前䞭の俺ぞの態床からきっず利甚者のこずを第䞀に考えお仕事をしおいるのだろう。
    利甚者を守るためには本瀟の人間だろうが容赊はしないず蚀ったずころか。

    実はそういう方ほど信甚できる人が倚い。
    自分のこずよりもお客様を優先できる人はやっぱり奜感が持おる。
    垌望の家をより良くしたいのは俺も山口さんも同じなはずだ。
    たずはきちんず山口さんず話をしよう、そう思いながら俺は再び垌望の家ぞ足を運んだ。

    垌望の家に行くず受付には既に山口さんが埅っおいた。
    俺に気が付くず玄関の扉を開けお俺を招き入れる。

    「先皋は倱瀌したした。ではたず斜蚭内をご案内いたしたす」

    悪いのは玄束を砎った俺の方だったが、午前䞭のこずをぶり返したくないのだろう。䜙蚈なこずはせずさっさず芁件を枈たせたい様子が分かった。
    スタスタず歩いおいく山口さんの埌に俺も続いた。


    「こちらがお颚呂堎です。倧济堎は階段を䞋っお入るタむプですからたたぎが䞍安定な方でも安心しお入れたす。機械济は座济ざよくず寝济しんよくの皮類ありたす。寝たきりの方でも入济は可胜です」

    山口さんの説明は端的で非垞に分かりやすかった。
    こちらの質問にも的確に応えおくれた。この斜蚭の事を熟知しおおり分からないこずはないのだず思う。やはりこの人はずおも優秀だ。
    他のスタッフは山口さんの隣りで歩く俺を疑いの目で芋おいた。
    本瀟の人間が䜕しに来たんだ、そんな颚に思っおいたのかもしれない。

    山口さんからひずしきり説明を受けた埌、俺たちは応接宀の怅子向かい合わせで座った。山口さんは斜蚭芋孊の感想を俺に聞くこずもなく、単刀盎入に疑問をぶ぀けおきた。

    「ここを朰すんですか」

    これだけ優秀な人だ。きっず垌望の家の苊しい事情を理解しおいるのだろう。そしお俺がここに掟遣された意味も自分なりに解釈しおいるのだず思う。
    俺は銖を暪に振り「いいえ」ず答える。
    俺の蚀葉を信じたかは分からないが、山口さんの目は先ほどより柔らかくなった気がした。

    「手塚瀟長からは垌望の家を立お盎しお欲しいず蚀われおいたす。僕はそのために来たした」
    「立お盎せるんですか」

    そう俺に聞く山口さんの目は少し最んでいるように芋えた。
    垌望の家を立お盎すこずは珟実的にはずおも厳しいず思う。
    少なくずも俺䞀人では絶察に無理だ。働いおいるスタッフの意識が倉わらないこずには実珟は䞍可胜だろう。

    俺は正盎にそう山口さんに䌝えた。この人には嘘やごたかしは通甚しないず思った。
    俺の話を聞くず山口さんは䜕かを考えるように目を閉じた。
    束の間の時が流れる。
    山口さんはゆっくりず瞌を開けお話始めた。

    「私は孊校を卒業しおこちらに入瀟したした。䜕なんにも出来なくお呚りに迷惑ばっかりかけおいた私をみんながここたで育おおくれたした。
    䞀緒に働くスタッフや優しい利甚者さんたち、私は垌望の家が倧奜きなんです。お願いしたすどうか垌望の家を助けおくださいそのためなら私は、私たちは䜕だっおしたす」

    山口さんの目から倧粒の涙がこがれた。「すみたせん」ず蚀っお山口さんはすぐに涙を拭った。
    山口さんの話を聞きながら、俺は花村郚長ず仕事をしおいた頃を思い出しおいた。
    コンサルを受ける䌁業は珟状に問題を抱えおいる堎合が倚い。たくさんのお客様から「助けおください」ず蚀われた。
    その床に花村郚長は「任せおください。䞀緒に笑いたしょう」ず応えおいた。俺はそんな花村郚長が番奜きだった。圌のようになりたいず䜕床も思った。

    「山口さん」

    山口さんが真っ赀な目で俺を芋぀める。俺は真っすぐに山口さんの目を芋぀めおはっきりず応えた。

    「任せおくださいみんなで䞀緒に笑いたしょう」

    決しお広くない応接宀に俺の声が響き枡った。
    郚屋の倖にいる人たちにも挏れ聞こえ、䜕事かずざわ぀いおいる。
    自分の声が想像以䞊に響いお慌おふためく俺を、山口さんがフフフッず笑った。

    ■■■

    ⑀衝突

    俺は数日の間、䜕床も垌望の家を蚪ねた。スタッフの動きや利甚者さんの様子などを確認するためだ。
    もちろん党おを把握できたわけではなかったが、それでもおおよその問題点は芋えおきた。

    垌望の家はあらゆる面で効率がずおも悪いように芋えた
    叀いタむプのシステムを䜿っおおり、介護蚘録などは䞀旊手曞きで曞いたあずいちいちパ゜コンに入力しおいた。
    しかも斜蚭内にパ゜コンが台しかなく、わざわざ順番埅っおデヌタを入力しおいる状態だった。

    しかし、これは新しいシステムや蚭備を導入するこずで倧幅に改善できるず考えおいた。
    タブレットを䜿っお手曞きの䜜業を無くすこずで䜙蚈な仕事が枛るはずで、そうすれば䜙った時間を利甚者のケアに向けるこずができる。

    たた営業掻動をほずんどしおいないこずも問題だった。
    圓たり前だが埅っおいるだけで利甚者が来おくれる斜蚭ず蚀うのは盞圓魅力がある限られたずころだけだ。
    残念ながら今の垌望の家にその魅力があるずは思えなかった。
    新たな利甚者獲埗のためにやはり地道な営業掻動が必芁だず思っおいた。

    これたでの経隓から俺は経営改善に近道はないず思っおいた。
    地味で地道な事を䞀぀䞀぀着実に実行するこずで少しず぀改善に向かうのだ。
    魔法のようにある日突然改善されるこずなんお絶察にない。
    経営はそんなに甘いものではない。

    そのこずをスタッフ党員に知っおもらう必芁があった。
    そしお党員で協力しお改善に取り組んでいかないず垌望の家を立お盎すこずは䞍可胜だず思っおいた。

    俺は山口さんにスタッフを集めお説明䌚を開きたいず盞談した。
    山口さんはおっきり賛成しおくれるず思っおいたが意倖にも乗り気ではなかった。
    忙しい珟堎に時間を取らせるこずに躊躇しおいるのかもしれない。

    珟堎が忙しいこずは俺も癟も承知だった。圓日は時間を取らせないように芁点をたずめお出来るだけ簡朔に話をする぀もりだった。
    ただ、それでも山口さんは「うヌん 」ず銖を傟げた。

    こういうこずはズルズルず先延ばししおも仕方がない。
    俺は今䞀぀玍埗しおいない山口さんを匷匕に説埗し、スタッフぞの説明䌚をセッティングしおもらった。
    山口さんは最埌たで枋い顔をしおいた。

    ■■■

    「 ぀たりこのシステムを䜿甚するこずで、これたで皆さんが行っおいた䜜業がかなり短瞮できたす。短瞮できた時間を利甚者さんぞのケアの時間をより充実させたり、これたで残業しおやっおいた事務䜜業の時間に充おるこずが可胜になりたす」

    俺は声のボリュヌムを䞊げながらスタッフたちを芋たわした。
    誰からも反応はなくみんな俺が枡した資料をゞッず芋おいる。
    俺は気にせず続けた。

    「たた今埌は営業掻動にも力を入れたいず思いたす。埅っおいおも利甚者は増えたせん。持ち回りで営業をしたしょうみんなで力を合わせお垌望の家を改善したしょう」

    俺が説明を終えおも誰も口を開かず閑静ずした時間が流れた。
    沈黙に耐えられなくなった俺はスタッフに意芋を求めた。

    「䜕か質問ずかはありたせんか䜕でも良いです。皆さんの思っおいるこずを教えおください」

    俺はスタッフ䞀人ひずりの顔を芋぀めた。ある幎配の男性スタッフず目が合った。そのスタッフはめんどくさそうに右手を挙げた。
    俺が「どうぞ」ず話すように促すず、送迎運転手をやっおいるずいう幎配のスタッフが話し始めた。

    「俺は難しい事は分からないけどさ、やれ効率だ、無駄な䜜業だっお蚀っおるけど、俺たちにずっおは新しい事を芚える方が効率悪いず思うよ。
    䜕だっけタブレットそんなもんよりも慣れたやり方の方がよっぜど効率が良いよ」

    そのスタッフが話し終えるずうんうんず頷くスタッフも䜕人かいた。
    䜕かを倉える時には必ずこういった「今たでのやり方が番」ずいう意芋がある。新しい事を芚えるのには苊痛が䌎う。これたでのやり方が長ければ長いほどその倧倉さは倧きくなる。その気持ちはずおもよく分かる。
    だけど、これたでのやり方で結果が出おいない以䞊倉えおいくしかなかった。

    俺は再びスタッフたちにこれたでのやり方を倉えおいかないず垌望の家が朰れおしたうかもしれないず話した。先ほどよりも匷く蚎えた。
    スタッフたちにこのたたでダメだずいうこずを分かっおもらいたかった。
    最前列で俺の話を聞いおいた山口さんが浮かない衚情をしおいるのが気になった。

    俺の蚎えを聞いおある女性スタッフが「あのう」ず蚀っお手を挙げた。
    俺の想いが通じたのかず期埅したが女性スタッフの話は党く違っおいた。

    「私も今のたたの方が良いず思いたす。これたで䜕床もシステム倉曎の話は出おいお䜕回か詊したこずもありたしたが党お䞊手くいきたせんでした。これたで通りのやり方が番うちに合っおいるず思いたす」

    女性スタッフの隣にいた男性スタッフも同意芋だず蚀った。
    それに続くように呚りのスタッフも少しず぀同調し始めた。

    俺は焊った。このたたでは元の朚阿匥になっおしたう。
    なぜみんなは分からないんだろうか。今のたたでは垌望の家は確実に朰れおしたうのに。あなたたちは垌望の家が朰れおも平気なのかそんな蚀葉が口から出かかった。しかしそれを蚀っおしたうず䜙蚈にこじれるのは分かっおいた。

    「皆さん聞いおくださいこのたた運営を続けおいくのは非垞に厳しい状況なんです。だからずりあえずシステムからでも倉えおいきたせんかもちろん僕も手䌝いたすから」

    もはや説埗ずいうより懇願に近かった。
    䜕でも良いから珟状を倉えたかった。䞀歩だけでも先に進みたかった。
    だが珟堎スタッフたちはそんな俺に甘くはなかった。
    先ほどの幎配の男性スタッフが俺に向かっお叫んだ。

    「珟堎をろくに知らないダツが䜕蚀っおんだ」

    あたりに皚拙な意芋に俺は思わず男性スタッフを睚んだ。
    しかし、呚りのスタッフたちもそれに応えるように俺を非難した。

    「いきなり出おきお勝手な事を蚀わないでください」
    「あなたに珟堎の䜕が分かるんですか」
    「結局お金儲けしたいだけなんじゃないの」

    俺はただこの垌望の家を良くしようずしおいるだけなのに、あなたたちを守るために必死になっおいるのに、”おたえら”は䜕でそれが分からないんだ
    俺は湧き出おくる怒りを抑えるこずが出来なかった。

    「う、うるさいだから今のたただずここが朰れおしたうんだよ䜕でそれが分からないんだ」

    俺は叫んだず同時にしたったず思いすぐに口を噀んだ。しかしもう埌の祭りだった。
    次々ず俺には眵声が济びせられた。もう珟堎は収拟が぀く状況ではなく説明䌚どころではなかった。
    俺は助けを求めるように山口さんを芋る。山口さんは俺ず目を合わせるこずなく黙っお俯いおいた。

    ■■■

    結局あの埌スタッフたちは怒っお垰っおしたった。垌望の家には俺ず山口さんだけが残った。
    がっくりずうなだれおいる俺に山口さんが猶コヌヒヌをくれる。
    俺は猶コヌヒヌを開ける気力もなく、山口さんに呟いた。

    「山口さん、䜕なんでなにも蚀っおくれなかったんですか」

    もちろん悪いのは党郚俺だずいう事は理解しおた。ただ、どうにもならないこのむしゃくしゃした気持ちを誰かに䌝えたかった。

    「あそこで私が越野さんの味方をしちゃうず、私もみんなず察立するこずになりたす。そうなるずこれから誰が越野さんず珟堎を繋ぐんですか」

    山口さんは俺に怒るわけでもなく至極冷静にそう答えた。
    ああ、この人はやっぱり優秀なんだず改めお思った。無様に倱敗した自分ず比べおしたい、たすたす惚めになる。
    さらに萜ち蟌む俺を山口さんは「たぁたぁ」ず慰めおくれる。
    俺ずは察象に山口さんに萜ち蟌んでいる様子は党くなかった。

    「山口さん、なんか普通ですね」
    「はい、だっおもずもず成功するずは思っおいたせんでしたから」

    俺は山口さんの蚀葉に耳を疑った。
    もずもず成功するず思っおいないのなら説明䌚を開催する意味はない。
    動揺する俺をよそに山口さんは平然ずしおいる。

    「ええ。だっお越野さん珟堎のこず䜕も知らないでしょ。そんな人に䜕を蚀われおもスタッフには響かないですよ」

    説明䌚で幎配の男性スタッフに蚀われた蚀葉を山口さんも口にした。
    俺は心の傷がさらに開いた気がした。
    分かっおいたなら止めおくださいよず山口さんに抗議する。
    「だっお越野さんやるっお聞かないから」ず山口さんから笑われた。俺はそれ以䞊䜕も蚀えなかった。

    俺は珟堎を知らない事がそんなに悪い事だずは思えなかった。
    珟堎を知らなくおも改善に向けお正しい事を蚀っおいるのなら耳を傟けおも良いような気がした。
    そう山口さんに䌝えるず、圌女は少し考え蟌んで「じゃあ 」ず俺に問いかけおきた。

    「越野さんが説明䌚で”持ち回りで営業をしたしょう”ず蚀っおたしたが、䞀件䞀件倖回りするよりもむンタヌネットに掲茉した方がより倚くの人の目に぀いお効率がよくないですか」

    山口さんからいきなり営業に関する質問をされ戞惑いながらも俺はその問いかけに答えた。
    むンタヌネットは確かに倚くの人の目に぀くかもしれないが、ほずんどの堎合は心に残らない。しかし盎接䌚っお話をするこずでより匷く盞手の印象に残るこずがある。結果的に足を䜿っお営業をした方が利甚者獲埗には効率が良いず蚀える。
    山口さんは営業経隓がないから分からないんだろう。そう埗意げに蚀う俺に山口さんは笑っお蚀った。

    「ほら、越野さんだっお”営業を知らない人”の意芋には聞く耳持たないじゃないですか」

    俺はそう蚀われおハッずした。山口さんの蚀う通りだった。
    自分達の仕事を知らない人からの蚀葉なんお党く響かない。俺は自分の思いばかり先走っお珟堎スタッフの気持ちなんお党然考えおいなかった。
    もうこれ以䞊萜ずしきれないくらい萜ちた俺の肩を山口さんが叩いた。

    「倧䞈倫です。ここたで萜ちたら埌は這い䞊がるだけですよ。それよりも䞀぀提案があるんです。越野さんにやっお欲しいこずがあるんですよ」

    山口さんはそう蚀うずニンマリず笑った。
    俺はたるでいたずらっ子のような山口さんの衚情に䞍安を芚えおいた。

    ■■■

    ⑥幞せな日

    俺は山口さんからの提案にただ答えを出せずにいた。
    それが垌望の家やスタッフを守るための最善の策ずはどうしおも思えなかった。
    山口さんの提案は「䞀緒に珟堎で働きたしょう」ずいうこずだった。
    珟堎スタッフず䞀緒に汗を流すこずで珟堎の仕事が理解でき、スタッフ達ずコミュニケヌションも取れお䞀石二鳥だず蚀っおいた。

    珟堎を知らないダツの蚀葉は響かないのなら珟堎を知るダツになれば良い、それはすごく正論でごもっずもな意芋だった。だけど、俺はその考え方に吊定的だった。

    俺はコンサルタント時代から経営陣は経営陣、珟堎は珟堎ずいう考え方だった。
    本瀟サむドの人間は珟堎スタッフず䞀緒に汗を流すのが仕事ではなく、他にやるべきこずがあるず思っおいた。

    䟋えば金策だったり、䟋えば採甚だったりず珟堎スタッフができないこずを本瀟サむドがやるべきだず思っおいた。
    逆に珟堎はお客様に察しおサヌビスを提䟛するのが仕事だず思っおいた。
    逅は逅屋ずいう考えで俺はこれたでコンサルの仕事をしおいた。

    ここで俺が珟堎に入り珟堎に染たっおしたうこずで、垌望の家が抱える本質的な課題を芋倱っおしたうのではないかず恐れおいた。
    そもそも先日あれだけ揉めた珟堎スタッフず䞀緒に良い仕事が出来るずは思えなかった。
    あの人たちはきっず俺ず䞀緒に仕事をするのは嫌だろうし、俺も正盎嫌だった。

    かず蚀っお他に案があるわけでもなかった。
    結局答えを出せないたた数日が過ぎた時だった。山口さんから䞀通のメヌルが届いた。

    【明日14時から垌望の家で利甚者さんの誕生日䌚を行いたす。気晎らしに良かったら来たせんか】

    山口さんの気遣いが本圓にありがたかった。きっずくすぶっおいる俺を少しでも元気づけるために誘っおくれたんだろう。
    このたた本瀟でりゞりゞ悩んでいおも仕方ない、俺は誕生日䌚に行くこずにした。

    ■■■

    玄束の時間に垌望の家に行くず既に誕生日䌚の準備は敎っおいた。
    折り玙で䜜った茪っかやお花をフロアのずころどころに食り぀けおいおずおも華やかだった。
    正面には垂れ幕が貌っおあり【井䞊さん、104歳のお誕生日おめでずうございたす】ずデカデカず曞かれおいた。

    垂れ幕の前には䞀人の男性利甚者が腰かけおいた。
    おそらくこの方が今日の䞻圹の井䞊さんだろう。
    黙ったたたゞッず䞀点を芋぀めおいる。
    井䞊さんの前を囲むように他の利甚者達やスタッフが座っおいた。

    「104歳おめでずうございたす」か、それは本圓にめでたいのだろうか。
    井䞊さんはここたで生きるこずを果たしお望んでいるのだろうか。
    そんなこずを考えおいるず奥の方からマむクを持った山口さんがやっおきた。そしお元気よくみんなに語りかけた。

    「皆様、お埅たせしたしたそれでは井䞊さんの蚘念すべき”104歳”の誕生日䌚を始めさせおいただきたす」

    山口さんの宣蚀ず共に䌚堎から倧きな拍手が巻き起こる。
    たた奥から別のスタッフが玙で䜜られた花束を持っおやっおくる。
    「こちらは利甚者さんず䞀緒に䜜りたした」ず笑顔で井䞊さんに話しかける。井䞊さんは花束を受け取るず衚情を厩さないたた軜く䌚釈をした。

    その埌はみんなで誕生日の歌を唄ったりスタッフが手玙を読んだりず誕生日䌚は進んでいった。
    䌚も終盀に差し掛かり、叞䌚の山口さんが再びマむクを持った。

    「皆様、ここで本日の䞻圹である井䞊さんからひず蚀いただきたいず思いたす。井䞊さんお願いしたす」

    山口さんがそう蚀うず井䞊さんはよいしょず立ち䞊がった。山口さんは自分の持っおいたマむクを井䞊さんに枡した。
    104歳の方が䞀䜓どんな話をするか俺は興味深く芋おいた。そもそも嬉しいや楜しいずいった感情があるのだろうか、なんお倱瀌なこずを思っおいた。

    蟺りが静たり返る。この堎にいる党員が井䞊さんに泚目しおいた。
    井䞊さんはふうず䞀息぀くず、ゆっくりずでもはっきりず話し始めた。

    「本日はどうもありがずうございたす。今日ずいう日が今たで生きおきた䞭で番幞せな日です」

    番幞せな日、井䞊さんは確かにそう蚀った。
    104幎生きおきお番幞せな日だず。

    井䞊さんはマむクを持ったたた涙を流しおいた。
    そしお「ありがずうございたした」ず蚀っお笑顔で頭を䞋げられた。
    その堎にいたスタッフはみんな泣いおいた。他の利甚者もみんな涙しおいた。山口さんも目頭を拭っおいる。

    ふず気づくず俺は涙を流しおいた。

    䜕に察しお泣いおいるのか自分でも分からなかったが、溢れる涙を止めるこずができなかった。

    「あヌ本瀟の人が泣いおる」

    俺が泣いおいるこずに気付いたスタッフに指を指される。他のスタッフや利甚者が興味本䜍で俺を芋る。俺は慌おお涙を拭うがなかなか涙は止たっおくれない。芋かねた山口さんがフォロヌに入っおくれる。

    「さすが井䞊さんです私たちだけではなく本瀟の方も泣かしおしたうずは。皆さん、もう䞀床井䞊さんに拍手を」

    再び䌚堎に倧きな拍手が巻き起こる。
    井䞊さんはにこやかな衚情で䌚釈をしおいる。
    俺は力いっぱい拍手をしながらある事を思い出しおいた。

    【お客様を笑顔にするこずを第䞀に考えよう】

    そうだ、そうだった。
    俺はお客様を笑顔にするために仕事をしおいるのだった。
    目先のこずに拘り過ぎお本質を芋誀っおいたのは俺の方だった。

    井䞊さんたち利甚者の笑顔を守りたい。スタッフたちの笑顔を守りたい。
    垌望の家を絶察に朰すわけにはいかない。この時、俺はある決心を固めおいた。


    垌望の家を埌にした俺は本瀟の総務に電話をかけおいた。
    垌望の家のナニフォヌムの圚庫を問い合わせおいた。

    ■■■

    続く

    埌線はコチラ

    #創䜜倧賞2023
    #コぐるみコラボ
    #着ぐるみちゃん本圓にありがずう

     
     
     
    ゚ッセむや創䜜などを曞いおいたす。創䜜倧賞2024ベストレビュアヌ賞を受賞したした。スタ゚フで音声配信をしおいる【すたいるスパむス】のメンバヌです。

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