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【創䜜】すたいる前線

    コッシヌ

    【すたいる あらすじ】
    コンサルタント䌚瀟に勀める若手瀟員の越野。
    掟閥争いに敗れチヌムが解散ずなり敵察しおいたチヌムに所属するこずになる。
    担圓を倖されるなど執拗な仕打ちに耐える毎日。圌女からも別れを告げられどん底の越野の元にある任務が届いた。
    それは経営䞍振に苊しんでいる”デむサヌビス垌望の家”の立お盎しだった。
    初めおの介護珟堎に戞惑い぀぀も仲間ず䞀緒に”垌望の家”の立お盎しに挑む越野。
    果たしお越野は垌望の家を立お盎すこずができるのか

    ①居堎所

    配られた新しい担圓衚を芋お俺は目を疑った。
    どこを探しおも俺の名前は芋圓たらない。
    これたで担圓だった䌊藀病院から倖されただけではなく、他の顧客先にも俺の名前はなかった。

    「いいか担圓を新しくしおどんどんず営業を仕掛けおいくから、来週たでにしっかりず匕き継いでおけよ」

    䌚議宀に杉本郚長の匵りのある声が響いた。
    呚りの営業から次々ず嚁勢の良い返事が聞こえるが、俺はどうにも玍埗がいかなかった。

    「よ、よろしいですか」
    「なんだ越野、どうかしたのか」

    意を決しお手を挙げた俺を杉本郚長は煩わしそうに芋た。

    「僕の 僕の名前がどこにもありたせん。これは䜕かの間違いではないでしょうか」
    「ああ、お前はうちのチヌムに来たばかりだからな。しばらくはチヌムの動きを芋お勉匷しおくれ」
    「しかし、䌊藀病院様なら以前から担圓しおいたすし、そのたた匕き続き僕が担圓しおも良いず思いた―」

    俺の話の途䞭で遮るように杉本郚長は拳で机をドンず叩くず「だからさぁ」ず声を荒げた。

    「うちにはうちのやり方があるんだよそれをしばらく勉匷しろっお蚀っおんだよ黙っお俺に埓えよ。ったく、花村䞀掟の連䞭はプラむドばっか高くお䜿いづらくお仕方ねぇよ。なぁ」

    杉本郚長の声に呌応するように俺以倖の営業が笑い声をあげた。
    嘲笑に包たれる䌚議宀の䞭、俺はそれ以䞊䜕も蚀えずただただ俯いおいた。

    ■■■

    花村䞀掟か 。
    俺は぀い先日たで花村郚長のチヌムで働いおいた。

    倧孊を卒業しお俺はコンサルタントを生業ずする䌚瀟に就職した。
    そこには二぀の営業チヌムがあり、それが花村チヌムず杉本チヌムだった。
    俺は花村チヌムに配属された。
    花村郚長は仕事に劥協を蚱さないずおも厳しい人だった。
    だけど仕事で成果を䞊げた時は自分以䞊に喜んでくれたり、お客様を怒らせた時などは䞀緒になっお頭を䞋げおくれるような厳しくお優しい人だった。
    自分たちの利益よりもお客様のこずを番に考える人だった。

    「ずにかくお客様を笑顔にするこずを第䞀に考えよう。その結果うちの売䞊にならなくおもそれは仕方ない。だけど必ず埌で報われる時がくるから」

    花村郚長はそうよく口にしおいた。
    花村郚長のその蚀葉通りに俺たち花村チヌムはお客様のこずを考えお行動した。

    それに察しお杉本チヌムは䌚瀟の利益を優先しおいた。
    もちろんお客様を隙す様な真䌌はしおいなかったが、それでも匷匕に契玄を結んだケヌスは少なくはないようにみえた。
    売䞊的に䌚瀟に貢献しおいるのは杉本チヌムだったが、お客様からの信頌床は明らかに花村チヌムの方が高かったず俺は思っおいた。

    花村郚長ずの仕事は倧倉なこずも倚かったがそれ以䞊に孊ぶべきこずも倚かった。
    花村郚長を尊敬しおいた。花村郚長のようになりたかった。花村郚長に぀いおいけば間違いないず思っおいた。
    䞊手くいく日もそうじゃない日も仕事が楜しかったし、なによりお客様ず䞀緒に笑い合えおいた。


    入瀟しおから幎目のこずだった。
    䌚瀟の取締圹のポストが䞀枠空くこずになった。
    そしおその候補に花村郚長ず杉本郚長の二人の名前が䞊がった。

    杉本郚長が次の取締圹を狙っおいるのは明らかだった。
    瀟長や瀟倖取締圹に察しおのゎマすりぱスカレヌトし、䞋の者にはこれたで以䞊に売䞊を求めた。
    花村チヌムに察しおはあからさたに敵察意識を持っおいた。
    郚䞋に指瀺を出しお嫌がらせをしおくるこずもあった。

    花村郚長は取締圹には興味がない様子だったが、杉本郚長が就任するこずだけは阻止したいようだった。
    花村チヌムのメンバヌは圓然花村郚長に取締圹になっお欲しかった。
    そのために花村郚長の功瞟を䞊圹に進蚀したり、杉本チヌムの匷匕なやり方を告げ口したりした。
    その床に花村郚長からは「䜙蚈なこずするな」ず叱られたりしたが、俺は花村郚長こそ取締圹にふさわしい人だず思っおいた。
    そしお花村郚長が取締圹になるず信じお疑っおいなかった。


    同じ䌚瀟のチヌムで足の匕っ匵り合いをする䞍毛な日々が数カ月ほど続いたある日のこずだった。぀いにこの争いに終止笊が打たれた。
    取締圹が決たったのである。

    新しい取締圹に遞ばれたのは杉本郚長だった。

    俺たちは䜕床も抗議をしたが決定が芆るこずはなかった。
    皋なくしお花村郚長は䌚瀟を蟞めた。
    杉本郚長が取締圹になったのだから圓然なのかもしれない。

    花村チヌムは解散し二぀あった営業チヌムは䞀぀に統合するこずになった。
    花村チヌムのお客様は党お杉本チヌムが匕き継ぐこずになり、俺たち営業マンも杉本チヌムに移るこずになった。

    花村郚長に続いお蟞める者もいた。
    俺もその぀もりだった。杉本郚長の䞋では働く気になれなかった。
    しかしそんな俺を花村郚長は匕き止めた。

    「越野、お前は䌚瀟に残れ。お前はただ若いし胜力もある。将来この䌚瀟を背負う存圚になれるはずだ。
    最初は倧倉かもしれない。だが杉本もきっずお前を認めおくれる。
    それに内玛なんおお客様には関係ないからな。お前がどこのチヌムでもこれたでず同じようにお客様のこずを番に考えおあげお欲しい」

    もしかするず花村郚長はいなくなる自分の代わりに俺に杉本郚長からお客様を守っお欲しかったのかもしれない。
    同じ䌚瀟の人間からお客様を守れずいうのも倉な話だが。


    そしお俺は䌚瀟に残った。
    花村郚長の蚀うずおりお客様に䌚瀟の内玛は関係ない。
    担圓チヌムが倉わっおもこれたで通りお客様を第䞀に考える姿勢を䌝えようず思った。

    しかし、杉本郚長の俺たち花村チヌムに察する仕打ちは想像以䞊に酷いものだった。
    チヌムの雑甚は党お旧花村チヌムに抌し付けた。
    重芁なプロゞェクト䌚議からは倖され、い぀の間にか䜓制や仕組みが倉曎されるこずもざらだった。

    俺の他に䜕人か残っおいた花村チヌムのメンバヌは次第に䞀人ず぀蟞めおいった。そしお気が付くず俺が最埌の䞀人になっおいた。
    それでも俺はお客様がいる限り蟞める぀もりはなかった。
    お客様の笑顔を俺が守る、そう思っお頑匵っおいく぀もりだった。

    ただ、担圓を倖された今それももう難しいかもしれない。

    ■■■

    「越野、匕き継ぎはしなくおいいから䌊藀病院のデヌタだけ党郚よこせよ」

    営業䌚議が終わるず同期の䞊村が俺に声をかけおきた。どうやら新しく䌊藀病院の担圓になったみたいだった。
    「匕き継ぎはしなくおいい」ずいう䞊村の蚀葉に疑問を抱いた。

    担圓の西村さんは甘い物には目が無い事ずか、䌊藀院長の奥様が韓流ドラマが奜きな事などデヌタだけでは分からないこずがたくさんあるはずだ。
    それなのにデヌタだけで営業をしようずする杉本チヌムのやり方にはやはり違和感しかなかった。

    「いや䌊藀病院様にはデヌタ以倖に重芁なこずがたくさんあるから、ちゃんず匕き継ぎをしよう」

    もう担圓倉曎が芆らないのであればせめおお客様に迷惑が掛からないようにしっかりず匕き継ごうず思った。
    しかし䞊村は俺の申し出をあっさりず断った。

    「䜙蚈な情報はいらねぇよ俺らは俺らのやり方でやるからそっちのやり方でやるず負け犬になっちゃうからな」

    そう蚀っお高らかに笑う䞊村に腹が立った。
    負け犬だず
    俺は花村郚長が銬鹿にされたように感じお䞊村が蚱せなかった。

    「おたえ」䞊村の胞ぐらを぀かむ。「離せ」䞊村が叫ぶ。俺たちの声に呚りが気が付き慌おお駆け寄っおくる。すぐに俺ず䞊村は匕き離された。
    匕き離されお良かったず思った。そうじゃなかったら俺は䞊村を殎っおいたかもしれない。
    もずもずチヌムから浮いおいた俺はこの出来事がきっかけでさらに孀立するこずになった。


    担圓を持たない俺の仕事は基本的に内勀で以前のように倖呚りをするこずはなかった。
    䞻な仕事ずしお呜じられたのは営業のサポヌトず電話番だった。

    営業のサポヌトず蚀っおもやる事はプレれン資料などを人数分コピヌを取ったり、䞍芁な資料をシュレッダヌするくらいだった。
    お客様の情報を調べたり䌁画曞䜜りの手䌝いなど、営業に関わる仕事を俺に䟝頌しおくる者は䞀人もいなかった。
    おそらくチヌム内で俺に営業の仕事をさせたいずしおいるのだろう。

    電話番に぀いおも文句を蚀われっぱなしだった。
    取匕先からの芁件をメモに曞いおデスクに眮いおおくず字が汚いず文句を蚀われた。
    それならばずパ゜コンで芁件を打っお出力した甚玙を枡すず、今床は出力代が勿䜓ないず文句を蚀われた。

    䜕をやっおも文句を蚀われる俺はどうすれば良いのか分からなくなっおいた。

    「絊料泥棒」「幜霊瀟員」「䜿えないダツ」
    そう俺を揶揄する蚀葉も挏れ聞こえおいた。
    だけど俺にそれを芆すだけの力はもう無かった。


     いやこの䌚瀟には俺の居堎所すらもう無いのかもしれない。


    ■■■

    ②蟞衚

    担圓を倖されおからの数日、俺は地獄のような日々を過ごしおいた。
    この日久しぶりに䌚った恋人の奈緒矎に自分の状況を必死で䌝えた。

    「そんな䌚瀟もう蟞めなよあなたにはもっずふさわしい䌚瀟があるわよ」

    そんな颚に蚀っおくれるのを少しだけ期埅をしおいた。
    だけど珟実はそんなに甘くはなかった。
    奈緒矎は䜕も蚀わずただ仏頂面で俺の話を聞いおいた。
    俺の話が終わるず退屈そうに奈緒矎は口を開いた。

    「で、どうするの蟞めるの」

    たるで「そんなこずくらいで蟞めちゃうの」ずでも蚀いたげな雰囲気だった。

    「もうあの䌚瀟で俺の居堎所はないず思う。杉本郚長の䞋では営業職に戻れるずは思えない」
    「あ、そう。じゃあ蟞めるのね」

    軜々しく「蟞める」ず口にする奈緒矎に俺は蚀葉を詰たらせた。
    俺の返答を埅぀こずなく奈緒矎は続けた。

    「実は前から考えおいたこずなんだけど、良い機䌚だから蚀うね。私たち別れた方が良いず思うの」

    そう蚀っお奈緒矎はにっこりず笑った。
    それはたるで出䌚った頃のような眩しい笑顔だった。

    奈緒矎ず出䌚ったのは瀟䌚人幎目の時だった。
    コンサルティング䌚瀟が数瀟集たっお開かれた合同研修䌚で同じグルヌプになった。
    圌女は出䌚った頃から仕事に燃えおいた。「私は結婚しおも仕事を続けたいんです」ず蚀う圌女の笑顔はずおも眩しかった。

    その頃の俺は自分の担圓が増え始めおいおちょうど仕事が楜しくなっおきおいた。
    そんな俺たちはすぐに意気投合した。
    研修䌚終わりに連絡先を亀換しお次に䌚った時にはもう付き合うこずになっおいた。

    新たなプロゞェクトを任された時に「ホント倧倉」ず蚀いながらも笑う奈緒矎が奜きだった。
    奈緒矎に負けおいられないず自分もたすたす仕事を頑匵った。


    あの頃のような奈緒矎の眩しい笑顔ずは裏腹に俺の顔は暗く沈んでいた。

    ■■■

    「私はキラキラずした顔で仕事をしおいる越野君が奜きだったの。今の越野君は䌚瀟の愚痎ばかりで正盎魅力を感じない。本圓にごめんね。今たでありがずう」

    自宅のベッドで垃団に朜ったたた䜕床も奈緒矎の蚀葉を頭の䞭で反芻する。
    あれは仕事の愚痎 になるのだろうか
    䌚瀟での自分の姿を思い返しおみる。胞がギュッず締め付けられ動悞が早くなる。

    俺が悪いんだろうか。俺がみんなに迷惑をかけおいるのだろうか。
    だずしたら、俺は䞀䜓䜕をしたんだろうか。

    花村チヌム時代での楜しかった仕事、花村郚長の最埌の蚀葉、杉本チヌムでの眮かれた立堎、奈緒矎の蚀葉 いろんな事が頭の䞭でグルグルず回っおいた。

    俺はもう䞖の䞭に必芁ないのかもしれないな。
    ふずそんなこずを考えた瞬間、脳裏に”死”ずいう文字が浮かんだ。
    それも良いのかもしれない、そうすれば楜になるかもしれない。
    そんな颚に思った時だった。

    枕元に眮いおいた携垯電話が鳎った。
    垃団から這い出るず携垯電話を掎んだ。
    ディスプレむには【䌊藀病院 西村事務長】ず衚瀺されおいた。

    ここ数か月は党く目にしおいなかった芋慣れた名前からの連絡に、䞊村のダツが䜕かしでかしたのかもしれない、そんな期埅を胞に俺は電話に出た。

    「越野さん、お久しぶり。西村です。元気だった」

    西村さんの以前ず倉わらない明るい声に䞊村がヘマをしたのではないず想像できた。
    軜く近況を話し合った埌、西村さんが本題に入った。

    「実はね。うちの関連䌁業で株匏䌚瀟すたいるずいう䌚瀟があるんだが、珟圚本瀟職員を募集しおいおね、越野さんさえ良ければどうかなっお思っお」

    西村さんの芁件は俺に関連䌁業で働かないかずいう誘いだった。
    俺は西村さんの話がすぐには信じられず䜕も蚀えないたたただ茫然ずしおいた。
    職堎では自分の居堎所はなく仕事もたずもにさせおもらえおなかった。
    圌女からは魅力が感じられないずフラれたばかりだ。
    そんな俺にずっおこんなに良い話はなかった。

    「あれ聞こえおるもしもヌし」

    西村さんの声に我に返り慌おお返答をする。
    結局、埌日返事をするこずになった。
    西村さんは「たぁ考えずいおよ。悪い話じゃないず思うからさ」ず最埌たで明るかった。

    電話を切っおからも西村さんの話がしばらくは信じられなかった。
    あの地獄のような環境から抜け出せる、それだけで俺には奇跡のように思えた。
    ありがたく話を受けようず思った瞬間、俺は花村郚長のこずを思い出した。

    俺が䌚瀟を蟞めたら花村郚長はどう思うだろうか。
    蟞めるなず蚀ったじゃないかず幻滅するだろうか。
    それずも仕方ないず蚱しおくれるのだろうか。

    【お客様を笑顔にする】

    いずれにせよ花村郚長の教えを今の俺では守るこずは出来ない。
    俺はスマホの連絡先をスクロヌルしおハ行の䞭から【花村郚長】を遞んだ。
    深呌吞をしお緑色の受話噚のマヌクをタップしようずしお、芪指を止める。

    わずかの間画面を芋぀めお埌、スマホをシャットダりンしお枕元に投げた。
    俺はベッドから起き䞊がり机に向かった。匕き出しから封筒を枚取り出しお衚に「蟞衚」ず曞いた。

    ■■■

    「ふん。これでやっず花村チヌムが党滅しおくれたよ。せいせいするな」

    杉本郚長はチラリず俺の顔を䞀瞥するず錻で笑った。
    きっずこの人は本気で花村チヌムのメンバヌ党員を蟞めさせようず思っおいたのだろう。

    数日前、俺の蟞衚はあっさりず受理された。
    普通なら蟞衚を出しお最䜎でもヵ月は残務凊理を行うが、俺の堎合はずくに匕き継ぎをする必芁もないず刀断され週間埌に退職するこずになった。
    通垞では考えられないこずだが、䞀刻でも早くこの䌚瀟から去りたかった俺にずっおはありがたいこずだった。

    「お䞖話になりたした」そう頭を䞋げお郚長宀を埌にする。杉本郚長は俺の方を芋向きもしなかった。
    郚長宀を出るず同期の䞊村を筆頭に杉本チヌムのメンバヌがニダニダしながら俺を芋おいた。
    蚀葉には出しおいないが「ざたあみろ」ず思っおいるのが顔に出おいる。

    俺は挚拶を亀わすこずなく、そのたた立ち止たらずオフィスを出た。
    ゚レベヌタヌに乗り階のボタンを抌そうずしたずころで拳をギュッず握っおいたこずに気が付いた。掌にはじっずりず汗をかいおいた。
    二床ずここに来るこずはないだろうな、そう思いながら俺は「閉」ボタンを抌した。

    ■■■

    ③株匏䌚瀟すたいる

    䌚瀟を蟞めたその足で俺は䌊藀病院の西村さんのずころぞ向かった。
    転職先の䌚瀟に぀いお詳しく話を聞かせおもらうこずになっおいた。

    ぀い半幎前たでは毎週のように通っおいた䌊藀病院だったが、久しぶりに蚪れるず党く別の堎所に芋えた。
    受付で手続きをしお入通蚌をもらう。そのたた倖来を通っおフロア奥の関係者専甚の゚レベヌタに乗り4Fのボタンを抌した。

    ゚レベヌタヌから降りるずい぀ものように右の通路を進み事務長宀を目指した。あず数歩先で事務長宀に到着するずいう時に埌ろから声がかかった。

    「盞倉わらず時間通りだねぇ」

    振り向くずそこには西村さんが立っおいた。
    西村さんは半幎前ず党く倉わらない笑顔を俺に向けおくれた。
    俺は身䜓を西村さんの方に向き盎しおしっかりず頭を䞋げた。

    「ご無沙汰しおいたす。この床は本圓にありがずうございたした」
    「たあたあ固いこずは抜きしお、早速こっちぞ」

    西村さんは頭を䞋げる俺の肩をポンず叩くず事務長宀ぞず案内しおくれた。
    西村さんの埌に続いお事務長宀に入った俺は手に持っおいた玙袋から包装された手土産の【フルヌツれリヌの詰め合わせ】を取り出した。
    西村さんが気に入るだろうず準備をしおおいたのだ。

    手土産を䞡手に持ち盎しお、西村さんの手枡そうずするず西村さんの暪には芋知らぬ女性が立っおいた。
    幎霢は歳前埌で決しお掟手ではないが䞊品なスヌツに身を包み凛ずした姿勢で立っおいる。その姿からは気品が挂っおおりどこかの重圹だろうず思った。
    その女性は口元に笑みを浮かべながら穏やかな衚情で俺を芋おいた。

    どうすれば良いか分からず困惑した俺は西村さんの方を芋た。
    西村さんは俺が持っおいる手土産をゞッず芋぀めおいた。
    俺は西村さんに手土産を枡しお「こちらの方は」ず尋ねた。
    手土産を受け取り満足げな西村さんから女性を玹介しおもらった。

    「こちらは株匏䌚瀟すたいるの代衚取締圹の手塚さんです。こちらがうちの前の担圓だった越野さん」
    「初めたしお越野さん。手塚です」
    「初めたしお、越野です え株匏䌚瀟すたいる代衚取締圹」

    俺はたさか目の前にいる女性が転職先の瀟長ずは思っおもおらず戞惑いながら西村さんず手塚瀟長を䜕床も亀互に芋぀める。
    西村さんはそんな俺の反応を面癜がっおいるのか笑いを堪えおいる。

    「驚かせおごめん。越野さんが今日こちらに来るこずを話したら手塚瀟長も是非䌚いたいず蚀われおね」

    西村さんは事もなげに俺に話した。だったら事前に教えおくれよず心の䞭で文句を蚀った。
    手塚瀟長は「よろしくお願いしたす」ず俺に右手を差し出した。
    俺は頭を䞋げ、手塚瀟長の手を握った。手塚瀟長は埮笑むず握った手に少し力が入れた。

    「ようし挚拶も枈んだずころでおや぀でも食べながら今埌の話でもしたしょうか」

    西村さんは俺から受け取った手土産の包装を既に解いおおり、フルヌツれリヌに目をキラキラさせおいる。
    俺はそんな西村さんを暪目で軜く睚んでいた。

    ■■■

    自宅に戻った俺は手塚瀟長から預かった資料に目を通しおいた。
    ペヌゞが進むほどに事の重倧さを感じお眉間にしわが増えおいった。

    「これは盞圓難しいぞ 」

    俺は誰に蚀うでもなく䞀人呟いた。それほどたでに『デむサヌビス垌望の家』の経営状態は深刻だった。

    株匏䌚瀟すたいるはもずもず䞍動産業を営んでいたが、十数幎前より介護事業に参入しおいた。
    介護事業の䞀぀にデむサヌビス垌望の家があった。

    垌望の家は定員が名のいわゆる䞭芏暡タむプのデむサヌビスだった。
    スポヌツゞムのような最新機噚はないが、リハビリの専門職を配眮しお機胜蚓緎に力を入れおいた。看護垫が数名勀務しおおり医療的ニヌズがある利甚者にも察応しおいた。
    さたざたなタむプの入济機噚を蚭備しおおり、寝たきりの方でも安党に入济ができる非垞に倚機胜でマルチなタむプのデむサヌビスだった。
    その䟿利さから開蚭圓初は人気があり、連日満員状態みたいだった。

    しかし倚機胜ずは逆に蚀うず特筆すべき特城がないず蚀える。
    最新マシンを取り揃えたたるでゞムのようなデむサヌビスやプヌルやカゞノず蚀ったようなレゞャヌ斜蚭のようなデむサヌビスが呚囲にいく぀もオヌプンし始めるず、次第に利甚者数はそちらに流れおいき枛っおいった。
    ここ数カ月の平均数字では日圓たりの利甚者数は名を䞋回っおいた。

    手塚瀟長が俺に求めたのは、この『デむサヌビス垌望の家』の立お盎しだった。


    「利甚者思いのスタッフばかりで本圓に良い雰囲気のデむサヌビスなんですよ。でも最近利甚者さんが枛っおきちゃっお、ちょっずね苊しい状況なんです」

    手塚瀟長はなんずなく明るく振る舞っおいたが、経営状態は「ちょっずね」なんお状況ではないこずは誰の目にも明らかだった。
    西村さんはうんうんず頷きながら個目のフルヌツれリヌに手を出しおいた。
    やっぱりこのフルヌツれリヌは西村さんの趣味に合ったな、ず俺は心の䞭でガッツポヌズしたが、すぐに頭を珟実に戻す。

    垌望の家の経営状態は右肩䞋がりでどんどんず赀字が膚らんでいる状況だった。
    通垞の経営では随分前に閉鎖をしおいおもおかしくはなかった。
    珟圚でも垌望の家の運営が続けられおいるのは、どうやら赀字を他の事業からの利益で賄たかなっおいるようだった。

    ただ、これたではそれでなんずか経営ができおいたが、ここ数か月の垌望の家の萜ち蟌みは深刻で他の事業の利益だけでは賄えず぀いには借金をしおいる状態だった。
    すぐにでも改善に着手しないず垌望の家どころか䌚瀟が朰れおしたう可胜性すらあった。


    「お願いしたす越野さん。垌望の家を救っおください」

    手塚瀟長からお願いをされたが俺はすぐに返事ができなかった。
    この状態から果たしお俺に立お盎すこずができるのか、正盎自信はなかった。
    特に前の䌚瀟から逃げおきた今の俺にはずおも高い壁に思えた。
    悩む俺に個目のフルヌツれリヌを食べ終えた西村さんが声をかけた。

    「越野さんなら倧䞈倫だよ。それにもう蟞めちゃったんでしょ、䌚瀟」

    ニダリず笑う西村さんに、だから事前に教えおくれよず心の䞭で俺は叫んだ。
    そんな俺の心の内を知らない西村さんは個目のフルヌツれリヌを物色しおいた。


    「たずは珟堎を確認しおおくか」

    俺は昔から分析をしおいる時に独り蚀が倚かった。
    声に出すこずで自分自身の考えを再確認するくせがあった。

    結局俺は手塚瀟長の申し出を受けるこずにした。
    他に遞択肢が無かったこずも事実だが、久しぶりの経営を立お盎す仕事にやっぱり気持ちは昂っおいた。

    これからやるべきこずは途方もないほどありそれを考えるず頭が痛くなるが、䞍思議ず気持ちは前向きになっおいた。
    お裟分けでもらったフルヌツれリヌを䞀口頬匵った。
    䞊品な甘みが口の䞭に広がった。

    「お、なかなか矎味いなコレ」

    俺はたた独り蚀を呟いお、資料に目を戻した。

    ■■■

    続く

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    #創䜜倧賞2023
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    ゚ッセむや創䜜などを曞いおいたす。創䜜倧賞2024ベストレビュアヌ賞を受賞したした。スタ゚フで音声配信をしおいる【すたいるスパむス】のメンバヌです。

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