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「おでの手料理に、ハエが!」
ムブは皿の上にウロツくハエたちをシッシッと手で払いのけました。
なかなかどこうとしないハエたちに ムキになった彼がハエタタキを手に追いまわすと、おちょくるかのようにそれをうまくかわします。
空いた缶詰の山、釣り道具、そして窓際にある小さな収納棚へとテンテン飛びうつってひやかしました。

そんな騒がしい彼らを尻目に、ガララは小さな収納棚の上に置かれている写真立てに目をとめました。
飾られている写真には四人のアナグマがうつっています。
一人はこの男ムブ、その横に女のアナグマ。
笑顔でうつる彼らの腕の中にはそれぞれに 幼い子どもを抱きかかえています。
果たして 彼の家族でしょうか?

気になったガララでしたが いつの間にやら外はすっかり暗く「ホロゥ、ホロロゥ・・・」。
 オカリナの音のようなフクロウの鳴き声が聞こえてきました。
そろそろオヤスミの時刻のようです。



「実は・・・あんたに言ってないことがあるだよ。」
寝る支度をしているとき、ムブは唐突にそうつぶやきました。
ガララが顔を向けると、さきほどの陽気さとはうって変わって 神妙な面持ちでこちらを見つめているのです。
「どうしたの?何を教えてくれていないの?」
ガララは大きく首を傾げました。
「実はここ、・・・出るんだよ。」

ムブはギュッと目を瞑り、ガタガタと身体を震せました。
「夜になると唸り声がするんだよ。ううーん、ううーんって。おでは幾度となくきいた。その恐ろしい声に何度も叩き起こされた。」
そのせいで寝不足だと言い、目の下のクマを見せびらかしました。
・・・が、目の周りは黒毛に覆われておりよく確認できません。
このアナグマにクマがあるかどうかはともかくとして、ガララも大きく身震いしました。

こんな夜はランプの火をつけたまま、コウコウとした部屋で眠りにつきたいところです。
しかし恐れるべきは、お化けよりも火事が起きてしまうこと。
こんなとき蛍尻石があればなぁ・・・、ガララは夜に発光する石のことを思いました。
暗闇の中、二人はそれぞれのブランケットにくるまり、身を寄せ合うようにして瞼を閉じました。



「寝よう、寝よう」と声をかけ合いながらも結局、二人はカードゲームをして遊んでいました。
ちょうどガララが負けてしまいそうなあたりから眠気がやってきてウトウトウト。
「まだ眠るなよ、おだの勝利は目前だ!」
ガララの下がりゆく瞼を指でつまみ上げ、耳元で声をかけ、なんとか起こそうと必死です。

しかしそんなムブ自身もやがてだんだんと口数が減り・・・。
いつの間にか二人は真っ暗な室内で深い眠りについていました。



“ううーん!子ども・・・”



眠っているガララの耳が少しだけピクピクと動きます。
続けて、地響きのような声がガララの鼓膜を襲います。

“うう・・・、ううーん! 子どもを・・・子どもを・・・”
そう大きく嘆くと今度はすすり泣きをするのです。

奇妙な声で目を覚ましたガララは、ブランケットの中で目を見開いていました。
そして 止むことのないこの不気味な声を聞かないよう、両手で耳を塞ぎました。
しかしそれでも 声は耳の奥へ響いてきます。

ガララは思い切って、ブランケットの外へ飛び出しました。
“化けモノをとっつかまえてやるんだ!”
カードやジュ-ス瓶が散らばる床をピョンピョンと飛び跳ねながら、キッチンへ向かい部屋を照らす灯りを探しまわります。
テーブルの上に 倒れているランプがありましたのでそれに火をともし、意を決して声のする方へ向けてみました。

「ううーん、があ、ううん!!!」

ランプの光に照らし出されたのは、大きく口を開けて寝言を言うアナグマの男ムブの姿でした。
「ギリギリ・・・、があ、ギリギリギリ、ひぃっ!」
歯ぎしりをしていたムブは 目をかっ開いて飛び起きると、「出たっ!また出たようっ!」
声をうわずらせ ガララの元へ走り寄りました。
「せ、せ、成敗してやる!」

ムブは自身よりうんと小さな体をしたガララの後ろへ身を隠し、ブルブルと体を震わせながら暗闇にむかって小さく怒鳴りつけました。


ムブ「ガララ、いけ!ヤツを成敗するんだ!」




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