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レ・バオ『TASTE テイスト』原始的で無機質なユートピアの創造

    KnightsofOdessa

    2021年ベルリン映画祭エンカウンターズ部門選出作品。ナイジェリア人のサッカー選手の男は、9歳の息子を残してサイゴンに渡るが、足を骨折したせいで戦力外通告されてしまい、今は床屋で働きながらスラムのような場所で四人のベトナム人女性と共に暮らしている。なぜかは明かされないが、四人の女たちにはそれぞれ暗い過去があり、流れ着くように現在地へと辿り着いたようだ。恐ろしく静かな映画で、まるで監獄のような無機質なコンクリートの部屋の中を往来しながら、誰も言葉を発さずに淡々と生活を続けていく。ツァイ・ミンリャンとペドロ・コスタのマリアージュと言ったところか?当初、男は床屋で、女たちは裁縫工場で働いていたが、突然古い要塞のような建物に移住し、全裸で生活を始めるのが強烈。全裸で食事を作り、全裸で皿を囲んで、全裸でカラオケをして、全裸でセックスする二人の横で残り三人の全裸の女たちが別のことをする。どのシーンでもほとんど誰も言葉を発さず、蒸した丸鶏から肉を剥く音、頭皮を揉む音、トウモロコシを食べる音、喘ぎ声などが何もない空間で反響しているのが妙に官能的。その空間では互いの肌の色とコンクリートの色以外余計な色が一切存在せず、その停滞した空気から時間が止まっているかのような印象を受ける。彼らの生活はどこまでも原始的で神秘的に撮られている。後半になると一つの目的に使用されていた部屋が連結された状態で空間が拡張されたり、二つ以上の目的で使用されるなど映像的/精神的な広がりを見せていく。

    また、ナイジェリア人サッカー選手の招待とその体力測定等の行為を奴隷売買のように見せたり、外国人とベトナム人女性とのセックスをベトナム戦争中の慰安婦と重ねたりという政治的な意味もあるらしいが、そんなことよりも握りしめたペニスに向かってペニスの思い出話を語ったり、ペニスにかたつむりを乗せて眺めたりしているシーンが強烈だった。強烈だったけど、模倣の域は出ないかな。

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    ・作品データ

    原題:Vị
    上映時間:97分
    監督:Lê Bảo / Le Bao
    製作:2021年(ベトナム)

    ・評価:60点

    ・ベルリン国際映画祭2021 その他の作品

    ★コンペティション部門選出作品
    1. ラドゥ・ジュデ『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』コロナ、歴史、男女、教育
    3. アロンソ・ルイスパラシオス『コップ・ムービー』メキシコシティの警察官についての物語
    6. フリーガウフ・ベネデク『Forest: I See You Everywhere』明けない夜、変えられない出来事
    7. マリア・シュラーダー『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』ガール・ミーツ・アンドロイドボーイ
    8. ホン・サンス『Introduction』ヨンホとジュウォンのある瞬間
    9. ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュ『メモリー・ボックス』レバノンと母娘を結ぶタイムカプセル
    10. マリア・シュペト『Mr. Bachmann and His Class』ぼくたちのバッハマン先生
    11. ナジ・デーネシュ『Natural Light』ハンガリー、衝突なき行軍のもたらす静かな暴力性
    12. ダニエル・ブリュール『Next Door』ベルリン、バーで出会ったメフィストフェレス
    13. セリーヌ・シアマ『Petite Maman』一つの家二つの時間、小さなお母さんと私
    14. アレクサンドレ・コベリゼ『見上げた空に何が見える?』ジョージア、目を開けて観る夢とエニェディ的奇跡
    15. 濱口竜介『偶然と想像』偶然の先の想像を選び取ること

    ★エンカウンターズ部門選出作品
    1. Samaher Alqadi『As I Want』エジプト、"Cairo 678"の裏側
    2. Andreas Fontana『Azor』レネ・キーズはどこへ消えた?
    4. ユリアン・ラードルマイヤー『Bloodsuckers』もし資本主義者が本当に吸血鬼だったら
    6. Silvan & Ramon Zürcher『The Girl and the Spider』深い断絶と視線の連なり
    7. Jacqueline Lentzou『Moon, 66 Questions』ギリシャ、女教皇と力と世界
    8. ファーン・シルヴァ『ロック・ボトム・ライザー』ハワイ、天文台を巡るエッセイ
    9. ダーシャ・ネクラソワ『The Scary of Sixty-First』ラストナイト・イン・ニューヨーク
    10. ドゥニ・コテ『Social Hygiene』三密を避けた屋外舞台劇
    11. Lê Bảo『Taste』原始的で無機質なユートピアの創造
    12. アリス・ディオップ『We』私たちの記録、私たちの記憶

     
     
     
    東欧/旧ユーゴ/カフカス/中央アジア映画研究家。好きな女優は必ず寡作。筋金入りの非線形天邪鬼。2026年はブルガリアを中心的に。2020年代はカンヌ映画祭のコンペ作品をコンプするぞ! 依頼等はknightsofodessa0715 at gmail まで!