
#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第18章|How To Make Natto-Champion|初代納豆王の栄冠と頭上の糸引きパニック!
第1ラウンドの1問目、2問目は三井田さんが圧倒的なスピードで1位勝ち抜けした。その瞬間、悔しがる僕の姿が数秒だけ映った。
3問目の「ブラック伯爵家」では、パネル前で高野さんと激しいバトルを繰り広げた、「あの」テイクツーがしっかりと放送された。
(あぁ…高野さんに当たり負けしてる自分の姿が情けないなぁ…)
4問目の「つぶわり」を勝ち取り、2位通過したけど、納豆をモグモグ食べながら答える自分の姿は、なんともダサかった。
すると5問目以降は半分がカットされ、高野さん、野口さんが勝ち抜けたあと、北大の古本さんが敗戦の弁を言うシーンまで、あっという間だった。
(90分番組に収めるには、ここまでカットしないとダメなのか…)
第1ラウンドが終了し、MCの田中義剛さん達が、
「納豆学会の三井田さん!スゴイですね!」
「くめ納豆の高野さんもメーカー代表として、
負けられないですよね!」
三井田さんと高野さんの活躍に注目し、2位の僕はほとんどスルーだった。
(彼らの方がビジュアル的に目立たったからなぁ…)
続いて第2ラウンドの様子がモニターに映ると、さらに三井田さんの職人技に多くの時間が割かれた。
また高野さんの覚束ない包丁使いにジモンさんがインタビューするシーンでは、
「高野さん、料理したことあるんですか?」
「料理は若干苦手です(笑)」
と答えていた。
(なるほど、これは敗退を臭わせる編集だな…)
と、次第に僕自身が評論家目線になってきたところで、スタッフがやってきた。
「そろそろ納豆中華まんの準備お願いします」
と、さらに別室に案内され、冷蔵庫からラップに包まれた納豆中華まんを取り出し、電子レンジで解凍した。
しかし1個試食すると皮が硬く、中身の餡も半解凍状態だった。
「霧吹きありますか?」
とスタッフに尋ねると、スタジオ内から霧吹きスプレーを持って来た。
霧吹きに水を入れて、中華まんに吹きかけ再度1分加熱した。
「本番と同じ状態ではないけど、仕方がないですね…」
と、スタッフに出来上がった納豆中華まんを差し出した。
第2ラウンド終了後にスタジオ内で田中さん達が実食すると、
「これがフランス人に好評だった味なんですね!」
と、ゲストの大久保さんがコメントした。
(本番の方が出来はもっと旨かったのに…)
と、納豆中華まんの残念な結果を後悔した。
ちなみにスタジオにもう1品登場したのが、三井田さんが作った手打ち納豆蕎麦だった。
「え?三井田さんも来てるんですか?」
とスタッフに尋ねると、
「三井田さんはいませんが、頂いたレシピを元に『そば職人選手権』に出演した方に作ってもらいました」
「でも、スタジオ内では火は使えないんですよね?」
「IHヒーターを使って、蕎麦を茹でました」
本物のそば職人が作った納豆蕎麦は、スタジオ内で大好評だった。
(本職の料理と比較されたら、でも僕の料理なんて…)
と肩を落とし、不満を漏らした。
ただ決勝ラウンドの模様は、ほぼ一日掛かった内容を見事な力技で圧縮し、僕が圧勝した内容に編集されていた。
「いやーー!蒲生さんのラストスパート、すごかったですね!」
と松本明子さんのMCに会場は大いに盛り上がった。
(なるほど、これだけ観たら『チャンピオンは凄い』と勘違いしてしまう!
競走馬が最後の直線で最後尾から一気に追い抜くシーンみたいだ)
そしてスタッフの案内でスタジオの舞台裏に案内された。
(いよいよ僕の出番だ!田中さん達とのトーク勝負だ!)
と気合が入った。
「第1回全国納豆王選手権!初代チャンピオンの蒲生さんです!」
と田中さんのコールで僕が後方の舞台に立った。
しかし、これまで経験したことがない照明を浴び、100人近い観客のエキストラの注目を浴びて足が竦んだ。
そしてロボットのようなぎこちない足取りで階段を降りた。
そして田中義剛さん、松本明子さんが右手に、デーブ大久保さんが左手に並び、これまでの激戦について振り返ったが、既に頭の中は真っ白になり、何を語ったのかほとんど覚えていない。
ただデーブ大久保さんが、
「僕が巨人で日本一になった時よりもスゴイ!」
と称賛してくれたことに、
「そうですね!」
とただ素直に答えたら、
「『そうですね!』じゃ、ないよ!!」
と突っ込まれ、会場が大爆笑した。
そしていつもならMCから月桂冠を被され、優勝トロフィーが授与されるのだが、この日は違った。
優勝トロフィーを松本さんから渡されたが、田中さんから月桂冠の代わりに、なんと藁で編んだ冠を被された。
「いやーー!納豆があった方が納豆チャンピオンらしいよね?」
と田中さんが言うと、スタッフが急遽納豆を持ってきて、藁の冠の上に納豆を乗せた。
(せっかくチャンピオンになったのに、頭から納豆の糸が垂れてきそうだ……
これじゃまるで罰ゲームの晒し者みだいだ…)
それでも最後に田中さんから
「蒲生さんにとって、納豆とは何ですか?」
といつもの質問を受けると、
「人と人を繋ぐ、粘り強い絆です!」
と、力強く答えた。
ただの納豆好きが高じて、納豆開発委員会というウェブサイトを通じて、築いてきた人間関係に感謝の気持ちを込めた。
「蒲生さん!改めておめでとうございます!
チャンピオンシートへどうぞ!」
と田中さんが右手で正面の階段を差した。
エキストラが座る観客席の最前列の左隅に目をやると、両親がエキストラと一緒に拍手をしていた。
(両親が喜んでくれたら、こんなみっともない姿でも構わない)
と思い直し、盛大な拍手喝采を受けながら階段を上ると、そこにもカメラがあって、チャンピオンシートに座る直前一瞬カメラ目線になってしまった。
ただチャンピオンシートやトロフィーはかなり使い回されていた。これが番組の歴史なのか、と感慨深くなった。
そして番組終了直前に、キャッチフレーズの「明日は君もチャンピオン」のテロップと一緒に
「一日一食納豆を食べよう」
と、納豆を食べる人が増えてほしいという願いを込めて番組を締め括った。
収録が無事終わると、両親と合流して改めて田中さん達に挨拶した。
「俺は青森出身だから、同じ東北岩手の蒲生さんが優勝して嬉しかったよ」
と田中さんから握手を求められた。
「そう言えば田中さんは八戸出身でしたよね!
納豆かに玉丼で使ったタラバガニは『八食センター』で買ってきました」
「八食センター?!懐かしいね!」
と青森ネタで盛り上がり、最後は青いゼッケンに田中さん、松本さん、大久保さんからサインを書いてもらった。
そして最後にスタッフから、
「最後までお疲れ様でした。
賞金と交通費は後ほど振り込みますね」
「賞金はいくらなんですか?」
「50万円です」
「ご、ごじゅう……!?」
横で聞いていた親父の声が裏返った。
「放送日がわかったら連絡します」
「よろしくお願いします」
こうしてスタジオ収録は約2時間で終了し、両親と一緒に茨城の実家に帰った。
後日スタッフからメールで11月16日が放送日だと連絡がきた。
ただ岩手ではリアルタイムで放送されないので、茨城の父に録画をお願いした。
しかし、運命の放送日、想定外の出来事が起こった。まさか、あんな形でリアルタイムで視聴することになるとは、この時の誰も予想だにしていなかった――。
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